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ネコ男
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「ねえ、真夜! また悪人狩りに行こうよ!」
「カタ研」の集会の後、私は真夜をお茶に誘った。
柳さんと双子は一緒に帰っている。
「え! 亜紀さん、石神さんに止められてるじゃないですか!」
前に真夜とネットの動画サイトにアップしているのをタカさんに知られ、こっぴどく怒られた。
「大丈夫だよ、もうネットには上げないから」
「いや、そういう問題じゃなくてー!」
真夜の言うことは分かるけど、私はヤリたい。
「ほら、真夜だって実戦を経験しないと上達しないよ?」
「でも、不味いですって」
真夜と妹の真昼は本格的に「花岡」を習得しつつある。
二人とも才能があり、どんどん上達していた。
ルーとハーが週に何度か教えている。
あの二人は理論的にも把握している上に、教え方が上手い。
私は下手だ。
どうして出来ないのかが、私には理解出来ないのだと双子から言われている。
「ねー! ちょっと渋谷に行こ?」
「でも……」
真夜は渋っている。
私がタカさんに怒られるのを心配してくれているのだ。
「じゃあさ、渋谷をブラブラして、絡まれたら撃退するってことでどう?」
「うーん」
「こっちからは積極的にやらない! でも襲われたらしょうがないじゃん?」
「まあ、そうですけど」
真夜は基本的に私のしたいようにさせてくれる。
私の大親友だ。
「じゃ! そういうことで!」
「もう、亜紀さんは」
真夜も笑って一緒に来てくれることになった。
私一人では不安なのだろうけど。
今日は10月の第三週の木曜日。
私たちは地下鉄を乗り継いで渋谷へ出た。
タカさんから、なるべく学生はタクシーを使うなと言われている。
私たちはお金を沢山持っているが、贅沢に慣れるなということだった。
タカさんはいつも私たちのことを考えてくれている。
そういうことを地下鉄の中で真夜に話した。
「でも、言うことを聞かないこともありますよね?」
「……」
真夜は時々厳しい。
「最初はセンター街ね!」
「分かりました」
「さー、悪人はいるかなー!」
「亜紀さん!」
ちょっと見たところでは、みんな大人しそうだった。
ゲーセンに行ったけど、絡んで来そうな奴はいない。
「いないなー」
「そうですね」
「ちょっと腹ごしらえするか!」
「え、夕飯前ですが」
「いいからさ!」
真夜も最近はよく食べるようになった。
笑って付き合ってくれる。
道玄坂の焼き肉屋に入った。
「特上カルビ10人前!」
「私は2人前で」
「はい?」
店員が不思議そうな顔をする。
どうして別々に頼むのかということだ。
「いいから別なお皿で持って来てね?」
「はい。でも、うちのって結構ボリュームありますよ?」
「みんなそう言うけど、いいから!」
「はい!」
真夜が笑っている。
まだ夕飯前の時間なので、お店は空いていた。
すぐに店員が肉を乗せた皿が来て、コンロに火を入れた。
「時間がまだ早いのかなー」
「そうですね」
チーマーたちも夕方からだろう。
「ちょっとブラついたら帰ろうか」
「そうですね!」
真夜が嬉しそうな顔で笑った。
まだまだ真夜は「悪人狩り」を楽しまない。
真夜が私が焼いている肉を箸で摘まんだ。
思わず飛び出しそうな右手を、左手で必死に押さえた。
「!」
「亜紀さん、もう焼けてますよ」
真夜が私の小皿に肉を乗せてくれた。
「真夜!」
「はい!」
「危ないから、もうそんなことはしないで!」
「は、はい! すみません!」
ヤバかったぁー。
急いで全部食べた。
「どうします? 他の通りを周りますか?」
「ううん。強いチームはセンター街をうろついてるから。今はどこのチームだったかなー」
「そうなんですか」
「あ、野方さんに聞いてみるか!」
「え?」
千万グループの渋谷の拠点の支部長だ。
以前にパレボレのアルバイトの件で顔は知っている。
千万グループのビルに行った。
「石神亜紀ですけど」
「はい! 存じてます!」
受付の女性が立ち上がって挨拶してくれた。
「野方さんはいらっしゃいますか?」
「はい! すぐに!」
千万グループは、不動産、飲食店経営、建設業、その他の事業を手広く展開している。
渋谷では主に不動産と飲食店業だったはずだ。
タカさんに、千万グループの飲食店にはなるべく行くなと言われている。
サービスされてしまうからだ。
私と真夜は、応接室へ案内された。
コーヒーが運ばれ、野方さんがすぐに来てくれた。
「忙しい所を突然すいません!」
「いいえ! 亜紀の姐さんの訪問が嬉しくない奴はうちにはいませんよ!」
「ありがとうございます!」
お邪魔しているのは分かっているので、すぐに用件を言った。
「ほう、渋谷で一番いきっているチームですか」
「はい! 何か御存知ですか?」
「あの、事件ですかい?」
野方さんが真剣な顔で聴いて来る。
「いいえ、ちょっと「悪人狩り」をしたくて」
「へ?」
真夜が笑って説明してくれた。
野方さんが大笑いした。
「なるほど! うちも目に余った連中は締めているんですが。最近はギャングとか言ってますね」
「ギャング!」
「ええ。まあ、チーマーと変わりはないですよ。好き勝手したいって若い連中が集まってるだけで。でも、中には上の組織から操られてるバカも多くて」
「それは?」
野方さんが、ネットでの指示で宝石店やお金持ちの家を襲う事件が多くなっていると言った。
「暴れたい連中、金が簡単に欲しい連中、そういうバカ共が頭のいい奴らの指示で動いてるんです。中には顔も知らない同士で襲うことも多くて」
「悪人ですね!」
「まあね。ああ、中にはね、そういうバカ共が裏切った場合に制裁するって奴らもいるんですよ」
「そうなんですか」
「うちらもまだ掴んでないんですが。でも、結構強い連中らしいですよ?」
「そうなんですか!」
興味が出て来た。
「ゴールドってギャングが強いっていうのは分かってるんです。カラーギャングってのが一時流行りましてね。ゴールドを名乗るってことは、相当な実力を示しているはずなんです」
「へぇ!」
リーダーは「獅子丸」と名乗っているらしい。
何度か、上部組織を裏切ったチームを潰していると聞いた。
ただ、「ゴールド」がその制裁の集団とは分からないと言う。
「まあ、こんなとこですかね。今後はいろいろ情報を集めておきますよ」
「はい! ありがとうございました!」
「いえいえ。いつでもいらして下さい」
「あの」
「はい?」
「どうかタカさんには内密で」
「ワハハハハハ!」
「カタ研」の集会の後、私は真夜をお茶に誘った。
柳さんと双子は一緒に帰っている。
「え! 亜紀さん、石神さんに止められてるじゃないですか!」
前に真夜とネットの動画サイトにアップしているのをタカさんに知られ、こっぴどく怒られた。
「大丈夫だよ、もうネットには上げないから」
「いや、そういう問題じゃなくてー!」
真夜の言うことは分かるけど、私はヤリたい。
「ほら、真夜だって実戦を経験しないと上達しないよ?」
「でも、不味いですって」
真夜と妹の真昼は本格的に「花岡」を習得しつつある。
二人とも才能があり、どんどん上達していた。
ルーとハーが週に何度か教えている。
あの二人は理論的にも把握している上に、教え方が上手い。
私は下手だ。
どうして出来ないのかが、私には理解出来ないのだと双子から言われている。
「ねー! ちょっと渋谷に行こ?」
「でも……」
真夜は渋っている。
私がタカさんに怒られるのを心配してくれているのだ。
「じゃあさ、渋谷をブラブラして、絡まれたら撃退するってことでどう?」
「うーん」
「こっちからは積極的にやらない! でも襲われたらしょうがないじゃん?」
「まあ、そうですけど」
真夜は基本的に私のしたいようにさせてくれる。
私の大親友だ。
「じゃ! そういうことで!」
「もう、亜紀さんは」
真夜も笑って一緒に来てくれることになった。
私一人では不安なのだろうけど。
今日は10月の第三週の木曜日。
私たちは地下鉄を乗り継いで渋谷へ出た。
タカさんから、なるべく学生はタクシーを使うなと言われている。
私たちはお金を沢山持っているが、贅沢に慣れるなということだった。
タカさんはいつも私たちのことを考えてくれている。
そういうことを地下鉄の中で真夜に話した。
「でも、言うことを聞かないこともありますよね?」
「……」
真夜は時々厳しい。
「最初はセンター街ね!」
「分かりました」
「さー、悪人はいるかなー!」
「亜紀さん!」
ちょっと見たところでは、みんな大人しそうだった。
ゲーセンに行ったけど、絡んで来そうな奴はいない。
「いないなー」
「そうですね」
「ちょっと腹ごしらえするか!」
「え、夕飯前ですが」
「いいからさ!」
真夜も最近はよく食べるようになった。
笑って付き合ってくれる。
道玄坂の焼き肉屋に入った。
「特上カルビ10人前!」
「私は2人前で」
「はい?」
店員が不思議そうな顔をする。
どうして別々に頼むのかということだ。
「いいから別なお皿で持って来てね?」
「はい。でも、うちのって結構ボリュームありますよ?」
「みんなそう言うけど、いいから!」
「はい!」
真夜が笑っている。
まだ夕飯前の時間なので、お店は空いていた。
すぐに店員が肉を乗せた皿が来て、コンロに火を入れた。
「時間がまだ早いのかなー」
「そうですね」
チーマーたちも夕方からだろう。
「ちょっとブラついたら帰ろうか」
「そうですね!」
真夜が嬉しそうな顔で笑った。
まだまだ真夜は「悪人狩り」を楽しまない。
真夜が私が焼いている肉を箸で摘まんだ。
思わず飛び出しそうな右手を、左手で必死に押さえた。
「!」
「亜紀さん、もう焼けてますよ」
真夜が私の小皿に肉を乗せてくれた。
「真夜!」
「はい!」
「危ないから、もうそんなことはしないで!」
「は、はい! すみません!」
ヤバかったぁー。
急いで全部食べた。
「どうします? 他の通りを周りますか?」
「ううん。強いチームはセンター街をうろついてるから。今はどこのチームだったかなー」
「そうなんですか」
「あ、野方さんに聞いてみるか!」
「え?」
千万グループの渋谷の拠点の支部長だ。
以前にパレボレのアルバイトの件で顔は知っている。
千万グループのビルに行った。
「石神亜紀ですけど」
「はい! 存じてます!」
受付の女性が立ち上がって挨拶してくれた。
「野方さんはいらっしゃいますか?」
「はい! すぐに!」
千万グループは、不動産、飲食店経営、建設業、その他の事業を手広く展開している。
渋谷では主に不動産と飲食店業だったはずだ。
タカさんに、千万グループの飲食店にはなるべく行くなと言われている。
サービスされてしまうからだ。
私と真夜は、応接室へ案内された。
コーヒーが運ばれ、野方さんがすぐに来てくれた。
「忙しい所を突然すいません!」
「いいえ! 亜紀の姐さんの訪問が嬉しくない奴はうちにはいませんよ!」
「ありがとうございます!」
お邪魔しているのは分かっているので、すぐに用件を言った。
「ほう、渋谷で一番いきっているチームですか」
「はい! 何か御存知ですか?」
「あの、事件ですかい?」
野方さんが真剣な顔で聴いて来る。
「いいえ、ちょっと「悪人狩り」をしたくて」
「へ?」
真夜が笑って説明してくれた。
野方さんが大笑いした。
「なるほど! うちも目に余った連中は締めているんですが。最近はギャングとか言ってますね」
「ギャング!」
「ええ。まあ、チーマーと変わりはないですよ。好き勝手したいって若い連中が集まってるだけで。でも、中には上の組織から操られてるバカも多くて」
「それは?」
野方さんが、ネットでの指示で宝石店やお金持ちの家を襲う事件が多くなっていると言った。
「暴れたい連中、金が簡単に欲しい連中、そういうバカ共が頭のいい奴らの指示で動いてるんです。中には顔も知らない同士で襲うことも多くて」
「悪人ですね!」
「まあね。ああ、中にはね、そういうバカ共が裏切った場合に制裁するって奴らもいるんですよ」
「そうなんですか」
「うちらもまだ掴んでないんですが。でも、結構強い連中らしいですよ?」
「そうなんですか!」
興味が出て来た。
「ゴールドってギャングが強いっていうのは分かってるんです。カラーギャングってのが一時流行りましてね。ゴールドを名乗るってことは、相当な実力を示しているはずなんです」
「へぇ!」
リーダーは「獅子丸」と名乗っているらしい。
何度か、上部組織を裏切ったチームを潰していると聞いた。
ただ、「ゴールド」がその制裁の集団とは分からないと言う。
「まあ、こんなとこですかね。今後はいろいろ情報を集めておきますよ」
「はい! ありがとうございました!」
「いえいえ。いつでもいらして下さい」
「あの」
「はい?」
「どうかタカさんには内密で」
「ワハハハハハ!」
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