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石神家本家 釧路湿原/天使型戦 Ⅱ

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 「よう! 嬢ちゃんたち、待ってたぜ!」
 「「こんにちはー!」」
 「おお、今日も元気だな!」
 「「はい!」」

 虎白さんが嬉しそうに笑っていた。
 
 「またその飛行機に乗るんだな」
 「はい!」

 千両さんと桜さんとも挨拶した。
 千両さんはともかく、桜さんはぐったりしていた。

 「大丈夫ですかー?」
 「ああ、数日前からここに来て一緒に鍛錬してたんだけどね。どうにもとんでもなくて」
 「「ワハハハハハ!」」

 よーく分かるよ!

 「石神家というのは、本当に凄過ぎだよ」
 「桜さん、無事に生きてるだけスゴイですよ」
 「本当にね!」
 「タカさんはいつもシュワシュワだもん」
 「そうなんだ」

 みんなが荷物を運び込んだ。
 虎白さんに言った。
 タカさんから、それだけは確実にと言われてる。

 「タカさんから、「黒笛」は持って行かないようにと言われてます」

 虎白さんに言った。
 
 「ああ、大丈夫だよ」
 「良かったー」

 虎白さんたちの荷物は、ほとんど日本刀だけだ。
 それと「カサンドラ」。
 
 「あ、日本酒も置いてって下さいね」
 「ちょっとはいいだろう」
 「うーん」
 「大丈夫だって」
 「分かりましたー」

 まあ、しょうがないだろう。

 荷物の積み込みが終わって、全員乗り込んだ。
 千両さんと桜さんは「虎王」と「カサンドラ」の他に、通信機器なども積んでいた。
 虎白さんたちは機械は苦手で、反対に千両さんたちはコンピューターもちゃんと使える。
 「皇紀通信システム」を扱うことも出来る。
 もうすっかりインテリヤクザだ。
 スゴイなー。

 今回は早乙女さんの「アドヴェロス」が掴んだ釧路湿原での妖魔の駆逐だ。
 「業」との繋がりは不明だけど、土地の人間の聞き込み調査で判明した。
 虎白さんたちは、すぐにデータから「天使型」というものだと言った。
 度々日本に来る外来の妖魔らしい。
 虎白さんたちは慣れているということで、今回タカさんが頼んだ。
 千両さんたちは、同行して石神家の戦力を見て勉強することが目的で、もう一方で石神家と共同作戦が出来るかのテストも兼ねている。
 タカさんは虎白さんたちは独立した運用になるだろうと思っているけど、もしも他の人間と共闘出来れば、今後の戦略の幅が大きく拡がる。
 がんばー。

 「あれ、食料は?」
 「北海道だろ? あっちは何を喰っても美味いんだよ」
 「そっかー!」

 タカさんも前に言ってた。
 ジャガイモが絶品に美味しいんだって。
 行ったことないらしいけどさ。
 私はハーと毛ガニラーメンを食べようとか話してた。

 5分で釧路湿原に出て、適当な着陸場所を見つけて降りた。
 全員で荷物を運び出した。

 「虎白、あっちだな」
 「おう」

 もう何か感じているらしい。
 私もハーもまだ全然だ。
 石神家って本当に凄い。

 桜さんの荷物が多いので、手伝ってあげた。

 「悪いね」
 「「いいよー!」」

 通信機で30キロある。
 石神家の人たちは、大きな木の箱に日本刀を突っ込んでいるのを、若い剣士の人たちが担いでいた。
 他に日本酒が30本。
 一人一本かー。

 「今回は怒貪虎さんは来ないですかー?」
 「ああ、あの人は呼ぶか、俺らが危なそうな時しか来ないよ」
 「そうですかー」
 「なんだ、会いたかったのか?」
 「「うん!」」

 虎白さんが笑って私たちの頭を撫でてくれた。
 
 「あれでなかなか忙しい人でな」
 「そうなんですかー」
 
 まあ、しょうがない。
 1時間ほど走って、目的の場所に着いた。
 私たちは虎白さんたちに付いてきただけ。

 「おう、ここだ」
 「「あれ!」」

 びっくりした。
 怒貪虎さんの銅像が建っている。

 「アハハハハハ! 驚いたか。天使型はよ、よくここに来んだよ」
 「どういうことですか?」
 「前にな、怒貪虎さんが散々天使型をぶっ殺してさ。その後で大分恨まれてよー。だからここに銅像を建てたら、よくぶっ壊しに来んだよ」
 「「えぇ!」」
 
 じゃあ、ここで天使型の妖魔が出没するのって、石神家のせいってこと?

 「一定の周期があってな。36年に一回な。そろそろ準備しようって思ってたら、高虎から連絡が来た」
 「なんだぁー!」
 「ワハハハハハ! 今回はタダで移動出来たな!」
 「まあいっかー!」

 タカさんも妖魔騒ぎを虎白さんたちが解決してくれれば嬉しいだろう。
 虎白さんたちの役にも立てたようだし。

 「千両さん、今夜あたりだぞ」
 「分かりました」

 みんな荷物を置いて、食事の準備を始めた。

 「おい、誰か獲物を狩って来い!」

 若い剣士たちが出て行こうとしたので、私たちが立候補した。

 「また嬢ちゃんたちに頼んでいいか?」
 「「はい!」」

 ハーと一緒に獲物を探した。
 すぐに森の近くでエゾシカの群れを見つけ、6頭捕まえた。
 一度「飛行」で虎白さんたちのところへ戻る。
 虎白さんたちが大笑いで、解体を始めた。
 私たちは川に行った。

 「お魚も食べたいよねー」
 「ほっかいどーだもんねー」

 いつも通りに、ハーが「轟雷」を川に放った。

 「「ほっかいどー でっかいどー!」」

 1メートル以上のおっきい魚が何匹もプカプカ浮いてきた。
 急いで二人で掬い上げて持って帰った。
 20匹も捕まえた。

 「おう! イトウかよ!」

 みんな喜んでくれた。
 幻の魚らしい。
 へぇー。
 桜さんがイトウを捌いた。
 結構上手い。
 一応刺身も美味しいらしいんだけど、念のために火を通した。
 身に日本酒を振りかけて、塩焼きとムニエルにした。
 桜さんがガーリックを持ってきていて、みんなに褒められた。
 大きなお釜でコメを一杯焚き、エゾシカに塩を振って焼いて行く。
 イトウはみんなに人気で、どんどん食べられた。
 流石にお酒を飲む人はいない。

 「虎白さん、天使型って強いの?」
 「あー、そこそこはな。でも油断しなきゃ大丈夫だ」
 
 虎白さんが、天使型が両手を上げたら「天雷」という雷撃の攻撃が来ると教えてくれた。
 
 「半径2メートルって感じかな。まあ、手を挙げた瞬間に移動すれば当たらねぇ」
 「ふーん」
 「あとは「天歌」だ。今度は両手を広げるから、そうしたら耳を塞げ。広範囲の攻撃で、そのままだと気絶することもある」
 「分かりましたー!」

 きっと、タカさんだと教えてもらえないんだろうなー。
 なんでだろ。

 「それだけ気を付けて、あとは適当に斬り刻めばいい。体長は10メートルはあるからな。倒れる時には注意しろな」
 「「はーい!」」

 みんな「カサンドラ」があるから、おっきい敵も大丈夫だろう。

 「嬢ちゃんたちも楽しめよ」
 「え、一緒にやっていいんですかー!」
 「ああ。あいつら弱いからなー。でも、数だけは来るからな」
 「「はい!」」

 虎白さんに認めてもらえて嬉しい。
 みんな食事を終えて、鍛錬を始める人たちもいる。
 真面目だなー。
 私とハーは残った食事をもったいないので、バクバクした。

 2時間後。
 午後8時になっていた。
 北の空がちょっと明るくなったと思ったら、段々こっちの上まで裂け目のようなものが出来て、金色の雲が拡がって行った。
 なんだこれ?

 「おい、来たぞ!」

 石神家の剣士たちが刀を構えた。
 千両さんも桜さんも身構える。

 金色の雲がどんどん増えて、辺りが明るくなっていく。
 そして雲の間から天使たちが舞い降りてきた。

 「来いやぁー!」
 「今回もぶっ殺しまくってやるぜぇー!」
 
 一人の剣士が鞘を払い、刀身を高速で薙ぐ。
 黒い闇が迸り、天使を斬り裂いた。
 ソプラノの歌うような悲鳴が聞こえ、真っ二つになった天使の死骸が地上に落ちてくる。

 ドッスーン

 体長10メートルもあるから、巨大な死骸だった。

 「ルー! あれって!」
 「う、うん!」

 「黒笛」じゃんか!

 「みんな! どんどんやれ!」
 『オーウ!』

 「親父!」
 「もう止められん! 俺たちもやるぞ!」
 「おう!」

 千両さんたちは早々に諦めた。
 私たちも無理だわー。
 虎白さんたちは嬉々として散らばって、天使型に襲い掛かっていた。
 天使型は空中にいると攻撃出来ないようだ。
 どんどん地上に降りて来て、ようやく「天雷」なんかを使い始めた。
 でも、もちろん誰も当たらない。

 「ギャハハハハハハハ!」

 石神家の人たちの爆笑があちこちで聞こえる。
 天使型は、ソプラノの悲鳴でどんどんいなくなっていく。
 でも、多分1000体近い。
 多過ぎだよー!
 私とハーも「「ブリューナク」をぶち込んでいった。
 「トールハンマー」だと範囲攻撃が出来るけど、虎白さんたちが楽しめないと思う。
 
 適当に相手してたら、虎白さんが「そろそろやっぞぉー」と叫んだ。
 なんだ?

 「連山!」
 「疾風!」
 「蓮華!」
 「煉獄!」

 『ギャハハハハハハハハハ!』

 どんどん奥儀技を使い始めた。
 「黒笛」を握ってのことなので、奥儀が巨大な威力になってぶっ放されていく。
 天使型がどんどん少なくなっていく。
 地表がガンガン削られていく。

 「「……」」

 しらないー。

 30分後。
 釧路湿原は3分の2を喪失していた。
 怒貪虎さんの像は無事だ。

 「おい、虎白、ちょっとやり過ぎじゃねぇのか?」
 「おう、まあ、高虎が何とかすっだろ」
 「そうだな! 当主だもんな!」
 「あいつの頼みだったんだからよ」
 「そうだそうだ」

 うわぁ。

 千両さんたちが呆然としていた。

 「じゃあ、そろそろ宴会にすっか! おい、桜! 一応高虎に終わったって連絡してくれ」
 「あの、虎白さん」
 「あんだよ?」
 「これはちょっと……」
 「あんだよ!」
 「い、いいえ」

 千両さんが桜さんの肩を持って、首を振っていた。
 諦めろってことらしい。
 北関東で数万人の武闘派ヤクザの親分さんだったんだけどなー。
 やっぱ石神家はなー。







 アラスカまで来た千両さんと桜さんが、タカさんに怒鳴られていた。
 私たちがどうしようもなかったと言った。

 「まあ、そりゃそうかぁ」

 タカさんも納得した。
 桜さんがちょっと泣いてた。
 がんばー。

 タカさんが「ロボ肥料」を空中散布して、抉られた地形はクロピョンに補修させた。
 私たちも「手かざし」を頑張った。
 半年後に、釧路湿原は以前よりも豊かな自然に帰った。
 イトウの8メートルサイズのが見つかった。
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