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百家の来訪 Ⅳ

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 俺以外は全員がテーブルにうつぶせている。
 攻撃ではないので、心配はいらないと分かっている。
 「響子」が語り出した。
 今度はちゃんと言葉として捉えられた。

 「戦いはこれからです。本当の戦いが始まるのです。この戦いは大きく激しい。この地球だけではありません。宇宙の半分の運命を決するほどの規模となるのです。だから心して下さい。破壊の王はこれまでにないほど強く大きい。貴方もまたそれ以上の力を得て、かつての全ての仲間が集まります」

 「……」

 響子の姿を借りたものが、途方もない予言を続けていく。
 俺は一言一句を聞き逃さないように集中した。
 それを聴いているのは俺だけだった。
 やがて予言を語り終えて、響子も眠った。

 ロボが俺を見ていた。
 みんなが寝ているので気にしている。

 「……」

 俺は柳を指さした。
 ロボが「激烈蟹座冥界波キック」を柳に見舞った。
 いつも通りに柳がぶっ飛ぶ。
 俺はみんなと同じようにテーブルに突っ伏した。
 ロボも床に伏せて目を閉じた。
 付き合いのいい奴だ。

 「いったーい!」

 柳が叫ぶ。

 「あ! みんな、どうしたの!」

 柳が大騒ぎする。

 「石神さん!」

 柳が騒いでいるので、六花も目を覚ましたようだ。

 「トラ! 響子!」

 こいつは最初から寝ていたので、不思議な何かの影響をあまり受けなかったのかもしれない。

 「六花さん! みんな気を喪ってますよ!」
 「うん!」

 二人が俺や響子を揺する。
 
 「う、うーん」

 俺は起きた振りをした。
 他の人間も揺すられて徐々に起きていく。
 目覚めてみんなが騒いでいる。
 柳が気付いたら床に寝ていて物凄く痛かったのだと言った。

 「何で私だけ床にいたんでしょうか!」

 柳が尊正さんに聞いていた。

 「分かりません。私はてっきり石神さんに神託が降ったのだと思ったのですか」
 「いや、俺も寝てましたよ?」
 「そうでした! 石神さんもみんなと同じように眠ってました!」

 ナイス、柳。

 「そうでしたか。そうなると、私にもさっぱり」
 「あの、私が床にいたことは」
 「それも、分かりません」
 
 ロボキックだぞー。

 「さあ、じゃあこの辺で休憩にしましょうか」

 俺が手を叩いて宣言した。
 不思議なことは起きたが、尊正さんたちも伝えるべきことは終わったようで、何も言わなかった。
 ロボが俺の所へトコトコ来た。
 抱き上げてやり、頭を撫でてやる。
 ゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らした。
 柳を見ると、額にロボの足跡があった。
 気付かれると厄介だ。
 
 「おい、柳。ちょっと額が赤くなってるぞ」
 「え、本当ですか!」

 俺はキッチンで「Ω軟膏」を取り出し、柳に塗ってやった。

 「え、ありがとうございます!」

 柳が俺に優しくされて喜んだ。
 赤いのはすぐに消えた。
 ふぅー。





 夕飯まで、俺は尊正さんたちと軽い話をした。
 以前に伺った時に俺が土産で六花にやった買った縁結びの箸が素晴らしかったと六花が言うと、お二人が喜んだ。

 「あの後で、石神先生との間に子どもが出来たんです!」
 「それはおめでとうございます!」

 六花がニコニコして、吹雪をお二人に見せた。
 
 「今度、特別なものをお送りしましょう」
 「本当ですか!」
 「一般には出さないものがあるのです。六花さんには、響子が大変お世話になっていますから」
 「そんな! でも嬉しいです!」

 六花が、ウサギのトートバッグもお気に入りなのだと言うと、緑さんが喜んだ。
 緑さんがデザインしたものらしい。

 「カワイイですよね! あれ!」
 「本当ですか! ありがとうございます!」

 なんか良かった。
 緑さんが響子に言った。

 「響子ちゃんはまた綺麗になったね」
 「ありがとう!」
 「石神さんや六花さんが大切にしてくれてるのね」
 「うん。でも時々パンツを脱がされて困ってるの」
 「「!」」

 緑さんがよく分からないという顔をする。
 尊正さんと二人で俺を睨む。
 
 「え、どういうこと?」
 「そ、それは検査のためですよ!」
 「そ、そうです!」
 
 六花と一緒に誤魔化した。

 「なによ! いつも「チャーハンを食べる時はパンツを脱げ」とか言うじゃん!」
 「おまえぇ!」

 誤魔化し切れなかった。
 尊正さんと緑さんが大笑いしていた。

 「石神さん、あんまりそういうことは」
 「じょ、冗談ですって!」

 響子がバラしてやったとニコニコしている。

 「お前、明日からパンツが履けると思うなよ!」
 「何よ!」

 みんなで笑った。




 子どもたちがバーベキューの準備が出来たと呼びに来た。
 5時だ。

 「うちはいつも夕飯が早いのですが、よろしかったですか?」
 「私たちも早いですよ。もっと早い時間のこともあります」
 「良かった」

 問題ないようだった。
 1階のウッドデッキに案内する。
 
 「バーベキューなんですが、うちでは食材をそのまま焼くようにしていまして」
 「ああ、そうですか」

 トンを渡し、お好きな食材を焼いて頂く。
 もちろん俺が良いものを選んで、焼いて渡していく。
 コンソメスープもカップに入れて二人に渡す。

 「美味しい!」

 緑さんが喜び、尊正さんも美味しいと言ってくれた。

 「一杯ありますから、何杯でも召し上がって下さい」
 「ありがとうございます」

 お二人は別なバーベキュー台で争っている子どもたちに驚いている。

 「俺の教育が悪くて申し訳ありません。まあ、兄弟仲が良すぎるもので」
 「そういうものですか」
 「緑さんも、お兄様とこんなでしたでしょ?」
 「え、とんでもない」
 「アハハハハハ!」

 まあ、違うだろうが。

 「争いながらも、誰も怪我しないんですよ」
 「あら、そのようですね」
 
 緑さんも、段々分かって来た。
 亜紀ちゃんが旋風脚を放つが、誰も当たらない。

 「まるで格闘技のショーのようですね」
 「ええ、そんな感じです!」
 
 全然違うが。
 普通の人間は当たれば死ぬが。

 「前はうちも串に刺して焼く普通のバーベキューだったんですよ」
 「そうなんですか」
 「ええ。でもね、串を武器にしやがって。皇紀が何本も刺されたんで辞めたんです」

 「「……」」

 しまった。

 「す、素手なら怪我しませんから!」

 柳が双子の連携飛び膝蹴りでぶっ飛んだ。

 「「……」」

 俺が慌てて抱き起し、脳震盪を起こしている柳を支えて立たせた。

 「ほら! 全然平気ですよ!」

 柳は3分間意識を喪っていた。

 


 尊正さんたちに、ホタテのバター醤油を作った。
 非常に感動された。
 うちのバーベキューにも慣れた。

 そう思いたい。
 あいつらー。
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