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挿話: ネコ塗れ「秘密兵器」 Ⅱ

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 「にゃー!(タカトラさんだったぜ!)」
 「にゃー!(すっげぇー! 久しぶりに近くに寄れたぁー!)」
 「にゃー!(相変わらずいい匂いだったぁー!)」
 「にゃー!(お顔に触っちゃったよ!)」
 「にゃー!(私、撫でてもらっちゃった!)」
 「にゃー!(まさか集会に出てくれるなんて!)」
 「にゃー!(また来てくれないかなー!)」

 「にゃー(みんな、良かったね!)」
 『にゃー!(はい! ロボさん!)』




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 ネコの集会の帰り、俺は上機嫌だった。

 「タカさん、いーなー」
 「石神さんばっかり!」

 亜紀ちゃんと柳がまだ言ってる。

 「お前ら、ちょっとクサイからな」
 「「なんですってぇー!」」

 二人が俺の背中をポコポコする。
 双子もネコ塗れになりたかったと言っている。
 うちはみんなネコが好きだ。

 「御堂にいいものもらっちゃったな!」
 「次の集会までとっときます?」
 「もういいよ、捨てておけよ」
 「はーい」

 あまり集会の邪魔をしたくない。
 ネコはネコ同士の付き合いがあるのだろう。
 よくは知らないが。
 



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 ある5月の土曜日。
 タカさんは六花ちゃんと吹雪ちゃんに会いに行っている。
 昼食には戻ると言っていたので、ちょっと顔を見るだけなのだろう。
 
 土曜日は家のことを重点的にやる日だ。
 みんなTシャツとジャージになってる。
 亜紀ちゃんはタカさんの部屋を中心に家の中全体の掃除。
 皇紀ちゃんはまだフィリピン。
 私とハーとでいつもの洗濯をしようとしていた。
 うちは人数が多いので、週に3回やる。
 今週は雨が降ったので、今日で2回目だ。
 タカさんが嫌いなので、なるべく乾燥機は使わない。
 それに土曜日はシーツやらも入り一番多くなる。
 終わったら庭の掃除と「虎温泉」の掃除だ。
 頑張らなきゃ。
 
 「私も手伝うよー」
 
 柳ちゃんが来た。
 柳ちゃんは鍛錬があるので、ちょっと家事は少ない。
 今日はウッドデッキの掃除のはずだ。
 本人もそのことを気にしているので、時々他の人の手伝いに来る。

 「「ありがとー」」

 ハーと一緒にお礼を言い、まず洗濯物の仕分けをした。

 「あ!」

 柳ちゃんが小さく叫んだ。

 「ちょ、ちょっとこれ借りるね」
 「ん?」

 柳ちゃんがタカさんの下着のシャツを持って出て行こうとした。
 慌ててハーと止めた。

 「何すんの、ヘンタイ!」
 「ち、ちがうよー!」

 両手を私たちに掴まれて、柳ちゃんが叫ぶ。
 なんか本能的に顔に当てて匂いを嗅いでる。
 柳ちゃんがムッツリなのは知ってる。

 「ちょっとさ、これを着て「猫三昧」に言ったらモテるかなって!」
 「「おぉー!」」

 ナイスアイデアだった。
 絶対にいい!
 三人でタカさんの下着を探して自分のTシャツを脱いで着た。
 タカさんは身体が大きいから、余裕がある。

 「そうだ、亜紀ちゃんも誘おうよ」
 「「うん!」」

 亜紀ちゃんを内線で呼んだ。
 柳ちゃんのアイデアを話すと大興奮だった。
 飛んで来る。
 
 「す、すぐに行こう!」

 亜紀ちゃんもTシャツを脱いで、タカさんのシャツを着た。
 柳ちゃんが下も脱いでいた。

 「柳ちゃん、何やってんの!」

 隅で隠れて、柳ちゃんがタカさんのパンツを履こうとしていた。

 「それはマズイよ!」
 「こ、これ履いたら完璧だよ?」
 「「「おぉー!」」」

 亜紀ちゃんも賛成した。
 もう、誰も止まらない。

 「あ、柳さん、鼻血……」
 「……」

 柳ちゃんはムッツリだ。
 みんなでタカさんの下着の上を着て、下はジャージの中にタカさんのパンツを履いた。
 タカさんはトランクス派なので、ちょっとヘンな感じがする。
 タカさんのパンツはZimmerli(ヅィメリー)のオーダー品だ。
 世界中のセレブやロイヤルファミリーの御用達なんだって。
 こんな感じなんだー。
 シルクだよー。
 四人で出掛けた。




 「猫三昧」で大歓迎され、既定の料金を払った。

 「今日は猫神様は?」
 「出掛けてます」
 
 店長とタマさんは残念そうだった。
 だって、タカさんがいたら私たちダメじゃん。
 座敷の前まで来る。

 「あ、もうみんな見てるよ!」
 「なんか、匂いを嗅いでない?」
 「ほんとだ! クンクンしてる!」
 「これは期待できるね!」

 四人で座敷に上がると、ネコたちが寄って来た。
 私たちの身体の匂いを嗅いで、すぐに身体を預けてくる。

 「スゴイよ!」
 「大成功だね!」
 「ネコ塗れだよー!」
 「すっごい気持ちいいー!」

 四人で寝転がって、ネコに埋まった。

 「あんたら、何をしたんだい?」

 店長さんとタマさんがコーヒーを持って来て驚いて聞いてきた。
 タカさんの下着を身に着けてきたと話すと、大笑いされた。
 一杯のネコに擦り寄られて、大満足で「猫三昧」を出た。




 「おい! 玄関からなんか毛だらけだぞ!」

 出かけていたタカさんが戻って来て下で叫んでいた。
 階段を上がって来る。
 みんな急いでタカさんの下着を脱ごうとしていた。
 タカさんがロボを抱いてリヴィングに入って来た。
 脱いでる途中だった。

 「お前ら何か知らな……」
 「「「「!」」」」

 「何やってんの?」
 「「「「……」」」」

 「脱げぇー!」
 「「「「はい!」」」」

 柳ちゃんだけ、直接タカさんのパンツを履いてた。
 下半身がスッポンポンだ。

 「柳、お前……」
 「「「……」」」
 「ごめんなさい……」


 


 久しぶりにぶん殴られた。
 四人で一生懸命に玄関から掃除をし、洗濯の続きをした。
 私たちのジャージのネコ毛がタカさんの下着に一杯ついて、また怒鳴られた。
 タカさんの下着だけ丁寧に毛を取ってからまた洗濯した。

 柳ちゃんの変態ムッツリのせいだ。
 
 
 
 
 柳ちゃんが、洗濯当番から外れた。
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