1,884 / 2,859
代官山の喫茶店
しおりを挟む
4月29日。
朝食を食べ、双子を誘って散歩に出た。
亜紀ちゃんは柳に手伝ってもらい、食材のチェックをしている。
また長いこと留守にするので、生鮮食品は今日中に消費するのだ。
もちろん事前に考えて、計画通りに進んでいるはずなのだが。
双子といつもの公園のベンチでまったりする。
缶ジュースを飲む。
本当に気持ちがいい。
「かぁー! お前らとの散歩はいいなー!」
「「ワハハハハハ!」」
「タカさん、散歩って好きだよね?」
「「訓練」もね!」
「ガハハハハハ!」
その通りだ。
「私たちが来る前にも散歩してたの?」
「まあ、そうだな」
「本当に好きなんだ」
「うーん、まあドライブも好きだけどな」
「外に出るのが好きなの?」
「そうとも言えるけどなぁ。別に家の中でのんびりするのも好きだしなぁ」
「なんだろうね?」
他愛無い会話だ。
「お前たちもよく「走り」に行くじゃない」
「「ギャハハハハハ!」」
自分たちの趣味が下品なことは自覚している。
裸で夜中に走るのだ。
しかも動物の頭を両肩に提げて。
「あれってなんだよ?」
「青春の疾走だね!」
「パッションだよね!」
「「「アハハハハハ!」」」
三人で笑った。
「まあ、そうなんだろうけどな。でもさ、俺は結局人間ってどこかへ行きたいんだと思うんだよ」
「へー」
「なるほどー」
「散歩っていうのは、自由にどこへでも行けるじゃない。まあ、近所だけどな。遠くへ行くのは大変だ。だから近所で行きたい所へ行く、知らない所へ行く、何かを発見とか経験するかもしれない、そういうことが散歩の醍醐味だよな」
「そうだね!」
「そうだよ!」
双子がちょっと興奮する。
「まあ、大体大したことにはならないんだけどな。でも、いつでも気が向いたら出来る。だからいいんだよな」
「「うん!」」
「それがお前らみたいなカワイくて気持ちいー連中となら、こりゃ最高だ」
「「うん!」」
「ドライブもツーリングもな。同じことだよな」
「私たちも早く免許が欲しいな」
「亜紀ちゃん、時々出掛けるよね?」
「そうだろう。まあ、俺に比べたら全然少ないけどなぁ」
「亜紀ちゃん、タカさんの傍がいいもんね」
「時々ウザいよな!」
「「「アハハハハハハ!」」」
三人で笑った。
「柳ちゃんは全然だよね?」
「そうだなぁ。あいつはロマンティシズムが少ねぇからなぁ」
「「アハハハハハハ!」」
「タカさん、でも柳ちゃんって、もう行きたい場所にいるからなんじゃないの?」
「ルー! お前、大人になったな!」
「アハハハハハ!」
まあ、あいつはヒマがあれば庭で鍛錬している。
自分がやりたいことは、人それぞれだ。
「奈津江さんとはよく散歩に行ったの?」
「おい、今日は突っ込むな、ルー」
「だって、知りたいんだもん」
俺は笑って奈津江との思い出を話してやった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ねぇ、タカトラ」
「おう!」
「どっか行こうよ」
「おう! そうだな!」
「ねぇ、どこへ行く?」
「うーん」
奈津江に腕を叩かれる。
「もう! 本当にダメ彼氏なんだから!」
「ダメでもお前の彼氏ならいいんだけど」
「ダメよ!」
学食でよく交わされた会話。
俺は奈津江がいればもうそれで十分で、奈津江は俺との思い出を欲しがった。
「南の島のビーチとか」
「おお、いいな!」
「お金が無いじゃない!」
「そっか」
付き合って1年くらい。
確か、6月頃のことだ。
部活は試験前で休みだった。
まだ二人ともデートのスキルは殆ど無かった。
一緒に映画を観る。
そんな程度。
デートの食事も、高級店などはない。
顕さんが御馳走してくれる時だけだ。
食事が無いことも多かった。
羽田空港に時々行く。
あそこはいい。
ただ、缶ジュースを飲むだけだったが。
あとは大体「歩く」ということだけだった。
それでも、十分に楽しかった。
「明治神宮に行く?」
「もう! あそこは小石の数まで覚えたわよ!」
「マジ!」
奈津江は2億8千万個だと言った。
まあ、確かにしょっちゅう行っている。
「たまには原宿とか」
「私、あんまり好きじゃないんだよね」
人が多い。
服屋が多いが、奈津江の好みではないようだ。
「渋谷をぶらぶら」
「高虎、いつも喧嘩になるじゃん」
「そっか」
行くと大体喧嘩になっていた。
俺のせいじゃねぇ。
奈津江がカワイイから絡まれるのだ。
俺は木村が言っていたことを思い出した。
代官山がお洒落な街なのだと。
「たまには代官山に行ってみるか」
「あ、いいかも!」
「お洒落な店が多いんだってさ」
「いいね!」
食事を終え、午後の授業を終えた俺たちは、代官山に向かって歩いた。
電車でも行けるが、金の無い俺たちは歩く。
まあ、奈津江と歩くのは楽しい。
奈津江も同じだっただろう。
旧山手通りを歩いた。
奈津江が歌えと言えば歌い、笑えと言えば笑う。
何か楽しい話と言えば話す。
「隣の家に塀ができたってね。ブロォォォック!」
「なにそれ?」
「アレ?」
俺が両手を上げて跳び上がると、奈津江が大笑いする。
歩き慣れていない奈津江が途中で疲れる。
ゆっくり休んで、話をする。
そういうことまでが、奈津江と一緒だと楽しかった。
「おぶってやろうか?」
「やらしー」
「なんでだよ!」
その通りです。
奈津江に触りたいです。
「喉が渇いたけど、おしゃれな代官山で飲むからね!」
「おう!」
缶ジュースですら節約する俺たちだった。
そういうもので良い二人だった。
朝食を食べ、双子を誘って散歩に出た。
亜紀ちゃんは柳に手伝ってもらい、食材のチェックをしている。
また長いこと留守にするので、生鮮食品は今日中に消費するのだ。
もちろん事前に考えて、計画通りに進んでいるはずなのだが。
双子といつもの公園のベンチでまったりする。
缶ジュースを飲む。
本当に気持ちがいい。
「かぁー! お前らとの散歩はいいなー!」
「「ワハハハハハ!」」
「タカさん、散歩って好きだよね?」
「「訓練」もね!」
「ガハハハハハ!」
その通りだ。
「私たちが来る前にも散歩してたの?」
「まあ、そうだな」
「本当に好きなんだ」
「うーん、まあドライブも好きだけどな」
「外に出るのが好きなの?」
「そうとも言えるけどなぁ。別に家の中でのんびりするのも好きだしなぁ」
「なんだろうね?」
他愛無い会話だ。
「お前たちもよく「走り」に行くじゃない」
「「ギャハハハハハ!」」
自分たちの趣味が下品なことは自覚している。
裸で夜中に走るのだ。
しかも動物の頭を両肩に提げて。
「あれってなんだよ?」
「青春の疾走だね!」
「パッションだよね!」
「「「アハハハハハ!」」」
三人で笑った。
「まあ、そうなんだろうけどな。でもさ、俺は結局人間ってどこかへ行きたいんだと思うんだよ」
「へー」
「なるほどー」
「散歩っていうのは、自由にどこへでも行けるじゃない。まあ、近所だけどな。遠くへ行くのは大変だ。だから近所で行きたい所へ行く、知らない所へ行く、何かを発見とか経験するかもしれない、そういうことが散歩の醍醐味だよな」
「そうだね!」
「そうだよ!」
双子がちょっと興奮する。
「まあ、大体大したことにはならないんだけどな。でも、いつでも気が向いたら出来る。だからいいんだよな」
「「うん!」」
「それがお前らみたいなカワイくて気持ちいー連中となら、こりゃ最高だ」
「「うん!」」
「ドライブもツーリングもな。同じことだよな」
「私たちも早く免許が欲しいな」
「亜紀ちゃん、時々出掛けるよね?」
「そうだろう。まあ、俺に比べたら全然少ないけどなぁ」
「亜紀ちゃん、タカさんの傍がいいもんね」
「時々ウザいよな!」
「「「アハハハハハハ!」」」
三人で笑った。
「柳ちゃんは全然だよね?」
「そうだなぁ。あいつはロマンティシズムが少ねぇからなぁ」
「「アハハハハハハ!」」
「タカさん、でも柳ちゃんって、もう行きたい場所にいるからなんじゃないの?」
「ルー! お前、大人になったな!」
「アハハハハハ!」
まあ、あいつはヒマがあれば庭で鍛錬している。
自分がやりたいことは、人それぞれだ。
「奈津江さんとはよく散歩に行ったの?」
「おい、今日は突っ込むな、ルー」
「だって、知りたいんだもん」
俺は笑って奈津江との思い出を話してやった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ねぇ、タカトラ」
「おう!」
「どっか行こうよ」
「おう! そうだな!」
「ねぇ、どこへ行く?」
「うーん」
奈津江に腕を叩かれる。
「もう! 本当にダメ彼氏なんだから!」
「ダメでもお前の彼氏ならいいんだけど」
「ダメよ!」
学食でよく交わされた会話。
俺は奈津江がいればもうそれで十分で、奈津江は俺との思い出を欲しがった。
「南の島のビーチとか」
「おお、いいな!」
「お金が無いじゃない!」
「そっか」
付き合って1年くらい。
確か、6月頃のことだ。
部活は試験前で休みだった。
まだ二人ともデートのスキルは殆ど無かった。
一緒に映画を観る。
そんな程度。
デートの食事も、高級店などはない。
顕さんが御馳走してくれる時だけだ。
食事が無いことも多かった。
羽田空港に時々行く。
あそこはいい。
ただ、缶ジュースを飲むだけだったが。
あとは大体「歩く」ということだけだった。
それでも、十分に楽しかった。
「明治神宮に行く?」
「もう! あそこは小石の数まで覚えたわよ!」
「マジ!」
奈津江は2億8千万個だと言った。
まあ、確かにしょっちゅう行っている。
「たまには原宿とか」
「私、あんまり好きじゃないんだよね」
人が多い。
服屋が多いが、奈津江の好みではないようだ。
「渋谷をぶらぶら」
「高虎、いつも喧嘩になるじゃん」
「そっか」
行くと大体喧嘩になっていた。
俺のせいじゃねぇ。
奈津江がカワイイから絡まれるのだ。
俺は木村が言っていたことを思い出した。
代官山がお洒落な街なのだと。
「たまには代官山に行ってみるか」
「あ、いいかも!」
「お洒落な店が多いんだってさ」
「いいね!」
食事を終え、午後の授業を終えた俺たちは、代官山に向かって歩いた。
電車でも行けるが、金の無い俺たちは歩く。
まあ、奈津江と歩くのは楽しい。
奈津江も同じだっただろう。
旧山手通りを歩いた。
奈津江が歌えと言えば歌い、笑えと言えば笑う。
何か楽しい話と言えば話す。
「隣の家に塀ができたってね。ブロォォォック!」
「なにそれ?」
「アレ?」
俺が両手を上げて跳び上がると、奈津江が大笑いする。
歩き慣れていない奈津江が途中で疲れる。
ゆっくり休んで、話をする。
そういうことまでが、奈津江と一緒だと楽しかった。
「おぶってやろうか?」
「やらしー」
「なんでだよ!」
その通りです。
奈津江に触りたいです。
「喉が渇いたけど、おしゃれな代官山で飲むからね!」
「おう!」
缶ジュースですら節約する俺たちだった。
そういうもので良い二人だった。
1
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる