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「砂漠の虎」作戦 Ⅶ
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指揮車両の100メートル手前に、ソレは降り立った。
亀に似ている姿だ。
虎白たちは必死で戻って来るが、まだ2キロ先にいる。
桜が指揮車両の武装で応戦すると同時に、羽入と紅が攻撃を始めた。
羽入が亀に迫り、紅が「バハムート」の武装で後方支援をする。
亀の身体が輝き始めた。
その下の地面に魔法陣のような幾何学模様が浮かび、指揮車両と紅の攻撃を阻む。
「羽入! 突っ込むな!」
紅が叫び、羽入は一旦立ち止まった。
何らかの攻性の防御結界があることを紅が察知した。
虎白たちも到着する。
紅が防御結界に注意するように、全員に伝える。
その間にも、「バハムート」での攻撃の手を緩めない。
全員が魔法陣の手前で様子を窺う。
「虎白!」
剣士の一人が叫び、虎白も同時に振り返って身構えた。
「俺の後ろを取ったのか!」
気配は何も無かった。
視認した剣士が叫んだのだ。
虎白たちの後方50メートルの位置に何かが立っていた。
体長3メートル。
冗談のような姿だった。
まるで子どもが悪戯で大きな布を被ったような姿。
頭が丸い円柱のようなボディに、両手の先は1メートルほどに拡がり、大きな穴が空いている。
下半身は円柱が拡がったようになっており、足は見えない。
全身は柔らかそうな白い皮膚。
顔の辺りには巨大な目が一つだけで、鼻も口も無い。
顔の脇に7対の切れ目がある。
亀の姿のものは、解け崩れていた。
「気を付けろ! こいつは「地獄」から来た奴だ!」
虎白が叫んだ。
石神家の剣士たちが散開して距離を取る。
同時に、白い怪物の顔脇の切れ目が開いた。
周囲の大気を物凄い勢いで吸い込んで行く。
「来るぞ! 離れろ!」
怪物は羽入に両手を向けた。
紅が高速で羽入に迫り、身体を抱えて空中へ逃げようとした。
紅の両足が消失した。
そのまま二人は惰性で空中に投げ出され、地面に衝突した。
その場にいた全員が驚愕していた。
「桜! 高虎を呼べ!」
虎白がインカムに叫んだ。
剣士たちの数人が羽入と紅の救出に走った。
「剣持! アラスカへ救援要請! 石神さんが必要だと言え!」
「はい!」
通信係の剣持は「高速皇紀通信」を開いた。
その時、また虎白の叫びがスピーカーから響いた。
「お前たちを狙っている! すぐに車から出ろ!」
「全員退避!」
桜が指揮車両の「ファブニール」の後部を開いた。
桜、東雲、月岡の3人が即座に外へ出る。
「剣持! お前も出ろ!」
剣持が通信機を操作しながら笑って敬礼した。
「緊急連絡! 石神さんに救援要請! 至急乞う!」
「剣持!」
指揮車両が消滅した。
白い怪物との射線を外していたが、何かの強力なエネルギーに桜たちも吹き飛ばされた。
桜が起き上がって見ると、虎白たちが白い怪物に襲い掛かって行くのが見えた。
「カサンドラ」をロングソードモードにし、白い怪物を斬ろうとする。
しかし、何か見えないものに阻まれ。「カサンドラ」のプラズマが霧散していた。
腰の日本刀を抜くが、それが帯電し剣士たちが感電して倒れた。
桜たちは「槍雷」や「ブリューナク」を撃ったが、それも白い怪物の周囲で霧散する。
虎白が叫んだ。
「桜! こいつは滅多にねぇ「地獄」の奴だ! 今の俺たちじゃ手が出ねぇ!」
意味は分からなかったが、石神家の剣士も歯が立たない強力な敵だということは桜たちにも分かった。
デュール・ゲリエが3体高速飛行して来て、白い怪物を襲った。
恐らく、剣持が最後に指示したのだ。
5メートルの距離で、デュール・ゲリエが爆散した。
「虎風! お前は逃げろ! 虎明、黒虎、鉤虎は離れて見ていろ! お前らの誰かがやられたら、虎風を追って見たもの伝えろ!」
「「「「はい!」」」」
虎白が指示を出した。
剣士の一人が高速で離れて行く。
桜が虎白の傍へ行き、白い怪物へ一緒に構える。
「何をするんだ?」
「石神家はよ、やられてもやり返すんだよ!」
「なんだ?」
「俺たちは、あいつの能力を全身で浴びる。虎風たちが、必ず返し技を編み出してぶっ殺す」
「!」
「ずっとそうやって来たんだよ、俺らは」
虎白が豪快に笑った。
そして残った剣士たちに指示を出す。
「あの顔の横の口を開かせるな! 攻撃の前に必ずやるからな!」
石神家の剣士たちが怒号で応える。
離れた場所から「奥義」で攻撃し、白い怪物に攻撃準備をさせないようにする。
「いつまでももたねぇ。あいつは必ず回避を覚えてぶち込んで来るぞ!」
桜たちも、必死で「花岡」で攻撃していく。
白い怪物には無効だが、攻撃の隙を与えないことは出来た。
石神家の剣士の一人が突っ込んだ。
「連山!」
激しい真空の斬り込みで白い怪物の絶対防御圏に立ち向かおうとする。
そして白い怪物が高速回転を始めた。
周囲に竜巻が生じる。
「ヤバいぞ!」
虎白が叫ぶ。
姿を視認出来ないので、どの方向が狙われるのかが分からない。
デュール・ゲリエ30体が飛行して来た。
白い怪物が巻き起こした竜巻に全方向から突入していく。
状況を瞬時に悟り、桜たちを助けるために特攻したことが分かった。
「あいつら!」
10体が消失し、残りのデュール・ゲリエも周囲に弾き飛ばされる。
竜巻自体に何らかの高エネルギーが発生していることが分かった。
飛ばされたデュール・ゲリエたちが、また竜巻に突っ込んで行く。
それしか、桜たちを救う方法が無いためだ。
「虎白さん、俺も突っ込みますよ!」
「ばかやろう! 俺が先だぁ!」
虎白と桜が笑い合った。
竜巻が上空から割れた。
巨大な電光が周囲に撒き散らされる。
構えていた虎白の刀に落雷した。
「ウワッチィー!」
虎白の髪が逆立ち、上着が燃える。
慌てて桜が上着を引き千切って捨てた。
右肩に火傷が生じており、肩の肉が一部爆ぜていた。
「高虎! てめぇ!」
「あ! すいません! 当主の高虎です!」
「虎王」を両手に握った石神高虎が上空から降り立った。
虎白が豪快に笑った。
「ぶっ殺せぇ!」
「はい!」
白い怪物が無表情にこちらを睨んでいた。
亀に似ている姿だ。
虎白たちは必死で戻って来るが、まだ2キロ先にいる。
桜が指揮車両の武装で応戦すると同時に、羽入と紅が攻撃を始めた。
羽入が亀に迫り、紅が「バハムート」の武装で後方支援をする。
亀の身体が輝き始めた。
その下の地面に魔法陣のような幾何学模様が浮かび、指揮車両と紅の攻撃を阻む。
「羽入! 突っ込むな!」
紅が叫び、羽入は一旦立ち止まった。
何らかの攻性の防御結界があることを紅が察知した。
虎白たちも到着する。
紅が防御結界に注意するように、全員に伝える。
その間にも、「バハムート」での攻撃の手を緩めない。
全員が魔法陣の手前で様子を窺う。
「虎白!」
剣士の一人が叫び、虎白も同時に振り返って身構えた。
「俺の後ろを取ったのか!」
気配は何も無かった。
視認した剣士が叫んだのだ。
虎白たちの後方50メートルの位置に何かが立っていた。
体長3メートル。
冗談のような姿だった。
まるで子どもが悪戯で大きな布を被ったような姿。
頭が丸い円柱のようなボディに、両手の先は1メートルほどに拡がり、大きな穴が空いている。
下半身は円柱が拡がったようになっており、足は見えない。
全身は柔らかそうな白い皮膚。
顔の辺りには巨大な目が一つだけで、鼻も口も無い。
顔の脇に7対の切れ目がある。
亀の姿のものは、解け崩れていた。
「気を付けろ! こいつは「地獄」から来た奴だ!」
虎白が叫んだ。
石神家の剣士たちが散開して距離を取る。
同時に、白い怪物の顔脇の切れ目が開いた。
周囲の大気を物凄い勢いで吸い込んで行く。
「来るぞ! 離れろ!」
怪物は羽入に両手を向けた。
紅が高速で羽入に迫り、身体を抱えて空中へ逃げようとした。
紅の両足が消失した。
そのまま二人は惰性で空中に投げ出され、地面に衝突した。
その場にいた全員が驚愕していた。
「桜! 高虎を呼べ!」
虎白がインカムに叫んだ。
剣士たちの数人が羽入と紅の救出に走った。
「剣持! アラスカへ救援要請! 石神さんが必要だと言え!」
「はい!」
通信係の剣持は「高速皇紀通信」を開いた。
その時、また虎白の叫びがスピーカーから響いた。
「お前たちを狙っている! すぐに車から出ろ!」
「全員退避!」
桜が指揮車両の「ファブニール」の後部を開いた。
桜、東雲、月岡の3人が即座に外へ出る。
「剣持! お前も出ろ!」
剣持が通信機を操作しながら笑って敬礼した。
「緊急連絡! 石神さんに救援要請! 至急乞う!」
「剣持!」
指揮車両が消滅した。
白い怪物との射線を外していたが、何かの強力なエネルギーに桜たちも吹き飛ばされた。
桜が起き上がって見ると、虎白たちが白い怪物に襲い掛かって行くのが見えた。
「カサンドラ」をロングソードモードにし、白い怪物を斬ろうとする。
しかし、何か見えないものに阻まれ。「カサンドラ」のプラズマが霧散していた。
腰の日本刀を抜くが、それが帯電し剣士たちが感電して倒れた。
桜たちは「槍雷」や「ブリューナク」を撃ったが、それも白い怪物の周囲で霧散する。
虎白が叫んだ。
「桜! こいつは滅多にねぇ「地獄」の奴だ! 今の俺たちじゃ手が出ねぇ!」
意味は分からなかったが、石神家の剣士も歯が立たない強力な敵だということは桜たちにも分かった。
デュール・ゲリエが3体高速飛行して来て、白い怪物を襲った。
恐らく、剣持が最後に指示したのだ。
5メートルの距離で、デュール・ゲリエが爆散した。
「虎風! お前は逃げろ! 虎明、黒虎、鉤虎は離れて見ていろ! お前らの誰かがやられたら、虎風を追って見たもの伝えろ!」
「「「「はい!」」」」
虎白が指示を出した。
剣士の一人が高速で離れて行く。
桜が虎白の傍へ行き、白い怪物へ一緒に構える。
「何をするんだ?」
「石神家はよ、やられてもやり返すんだよ!」
「なんだ?」
「俺たちは、あいつの能力を全身で浴びる。虎風たちが、必ず返し技を編み出してぶっ殺す」
「!」
「ずっとそうやって来たんだよ、俺らは」
虎白が豪快に笑った。
そして残った剣士たちに指示を出す。
「あの顔の横の口を開かせるな! 攻撃の前に必ずやるからな!」
石神家の剣士たちが怒号で応える。
離れた場所から「奥義」で攻撃し、白い怪物に攻撃準備をさせないようにする。
「いつまでももたねぇ。あいつは必ず回避を覚えてぶち込んで来るぞ!」
桜たちも、必死で「花岡」で攻撃していく。
白い怪物には無効だが、攻撃の隙を与えないことは出来た。
石神家の剣士の一人が突っ込んだ。
「連山!」
激しい真空の斬り込みで白い怪物の絶対防御圏に立ち向かおうとする。
そして白い怪物が高速回転を始めた。
周囲に竜巻が生じる。
「ヤバいぞ!」
虎白が叫ぶ。
姿を視認出来ないので、どの方向が狙われるのかが分からない。
デュール・ゲリエ30体が飛行して来た。
白い怪物が巻き起こした竜巻に全方向から突入していく。
状況を瞬時に悟り、桜たちを助けるために特攻したことが分かった。
「あいつら!」
10体が消失し、残りのデュール・ゲリエも周囲に弾き飛ばされる。
竜巻自体に何らかの高エネルギーが発生していることが分かった。
飛ばされたデュール・ゲリエたちが、また竜巻に突っ込んで行く。
それしか、桜たちを救う方法が無いためだ。
「虎白さん、俺も突っ込みますよ!」
「ばかやろう! 俺が先だぁ!」
虎白と桜が笑い合った。
竜巻が上空から割れた。
巨大な電光が周囲に撒き散らされる。
構えていた虎白の刀に落雷した。
「ウワッチィー!」
虎白の髪が逆立ち、上着が燃える。
慌てて桜が上着を引き千切って捨てた。
右肩に火傷が生じており、肩の肉が一部爆ぜていた。
「高虎! てめぇ!」
「あ! すいません! 当主の高虎です!」
「虎王」を両手に握った石神高虎が上空から降り立った。
虎白が豪快に笑った。
「ぶっ殺せぇ!」
「はい!」
白い怪物が無表情にこちらを睨んでいた。
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