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みんなで冬の別荘 Ⅱ 三人の雪像
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昼食の席で全員に言った。
「今晩は御堂と澪さん、柳も一泊するからな!」
柳も冬の別荘に来たいと言い、俺はそれならと御堂と一緒に来るように言った。
柳はゴールデンウィークと年末年始は実家へ帰している。
だから石神家の行事には参加しないことが多かった。
柳のためというよりも、実家のみなさんが久し振りに柳と過ごしたいだろうという思いだった。
御堂も同じだ。
澪さんは年末年始は忙しいはずだが、菊子さんが是非一緒に行くように言ってくれた。
大掃除やおせち料理の準備は菊子さんが仕切ってくれるそうだ。
まあ、たまにはのんびりとしてもらいたい。
昼食後、響子をロボと士王と一緒に休ませ、俺たちは庭に出て遊んだ。
「じゃー、恒例の雪合戦な。チーム分けするから」
皇紀対全員。
「なんだよー!」
「この! 姉を差し置いて風花ちゃんと幸せにやりやがって!」
「このヘンタイ魔人がぁ!」
「チンコ凍らせてやる!」
皇紀がたちまち雪に埋まった。
「亜紀ちゃん! そろそろ買い出しに行くか!」
「はーい!」
鷹も一緒に行きたいと言うので、三人で出発した。
鷹を助手席に乗せる。
後ろで亜紀ちゃんが叫んだ。
「今日も一杯買うぞー!」
鷹が笑った。
スーパーで、いつもの「石神家専用駐車場」にハマーを入れると、すぐに店長さんが飛んで来た。
「石神先生! お待ちしておりました!」
店長さんが満面の笑みで迎えてくれる。
俺たちも笑いながら挨拶した。
「また石神先生のアイデアを実行しましたら、売り上げが倍増しました!」
「そうですか」
新館のピザの実演が好評のようだったので、本館でも大きな鮭やマグロの解体即売をやってはどうかと言った。
俺が学生時代に銀座のデパートでやっていたことだ。
精肉コーナーでもローストビーフなどの即売や、生鮮品での料理教室なども始めた。
どれも好評で、またテレビの取材も入ったようだ。
「もう、何と言ってお礼を申し上げて良いか!」
「いえ、店長さんたちの取り組みが成功しただけですって」
本当にその通りだ。
アイデアなど、誰でも言える。
それを実現し、成功させるのは当事者の努力だ。
それでも店長さんはずっと俺たちに付いて礼を言い続け、今日の買い物は全て無料にするとまで言った。
「冗談じゃないですよ! 俺たちはここで買物をするのが楽しみなんですから!」
せめて割引をとも言われたが、そうするとここに来れなくなると言い、定価で頂くことを了承してもらった。
俺たちは本当に何もしていないのだ。
最初に肉や海産物の注文を確認し、あとはいつものように三人で観て回った。
主に鷹に任せる。
もう正月の装いだった。
鷹がタラバガニや幾つかの食材をカートに入れて行く。
俺たちも慣れてきているので、大体必要な食材は揃っている。
「茶碗蒸しを作ってもいいですか?」
「おお! いいな!」
鷹が笑ってまた食材を集めた。
背脂なども買うので、流石だと思った。
カートを店長さんが預かり、俺たちはフードコートへ移動した。
店内は温かいので、三人でクリームメロンソーダを頼んだ。
「何十年ぶりかで飲みますよ」
「俺はたまに飲みたくなるんだよな」
「双子の大好物ですよね!」
店長さんがショートケーキを三つ持って来た。
「いつも遠慮されて飲み物だけですよね! 何か召し上がって下さいよ」
三人で笑って礼を言った。
「新館のイタリアン・レストランのものです。美味しいですよ?」
「それはわざわざ、ありがとうございます」
本当に美味かった。
鷹が新館を見ていないので、亜紀ちゃんと案内した。
亜紀ちゃんがダンス・スペースではしゃぐ。
「石神先生!」
大きなテレビ画面に、俺と六花が映っている。
鷹が喜んだ。
亜紀ちゃんは子どもたちと踊りながら、楽しんでいる。
「元々は子どもが遊ぶだけのスペースだったんだけどな。俺と六花で調子にのって踊ったら、録画されてたんだ」
「そうなんですか!」
店長さんが来た。
エレキギターを抱えている。
「石神先生はギターがお上手だと伺いまして」
「誰から!」
店長さんが亜紀ちゃんを指差した。
「一曲、弾いていただけませんか?」
断れない状況だった。
俺は最近お気に入りの米津玄師『KICK BACK』を弾いて歌った。
即興のギターソロで子どもたちも大興奮だ。
亜紀ちゃんがノリノリでくるくる回る。
大盛況で終わった。
店長さんがビデオカメラを回していた。
「これ! また使ってもいいですか!」
俺は笑って好きにしてくれと言った。
ただ、著作権の問題はちゃんとしてくれとも話した。
俺たちも楽しんで帰った。
別荘に戻ると、響子も起きていた。
みんなでお茶を飲んで店長さんに頂いたイチゴ大福を食べる。
「ふん、「紅オイシーズ」には遠く及びませんね」
「お前! 美味そうに全部喰ってるじゃないか!」
「ワハハハハハハハ!」
六花が大笑いした。
御堂と澪さん、柳が到着した。
「おい、雪道は大丈夫だったか?」
「途中で何度か滑ったよ」
「危ねぇな! 御堂に何かあったらどうすんだ!」
「え、私は?」
「大事なのは御堂だ!」
「酷いですよ!」
澪さんが大笑いした。
「明日は俺が幹線道路まで運転する!」
「分かりましたよ!」
お茶を出して、夕飯まで時間があるのでみんなで外で雪像を作った。
亜紀ちゃんとハーが「ウンコの妖魔」を作る。
「あいつ、幸せにやってるかなー」
「きっとそうだよ」
「うん」
柳が離れてコワイ顔で見ていた。
柳はちょっと疲れたと言い、ロボとウッドデッキでのんびりした。
やはり慣れない雪道で緊張したのだろう。
俺と栞、鷹はルーに手伝ってもらって、士王の立像を作った。
桜花たちは散歩に出掛けた。
一人乗りのソリを貸してやった。
順番に乗って楽しんだようだ。
六花は響子と雪だるまを作った。
士王の雪像を見に来る。
「あれ、吹雪は?」
「「「「!」」」」
慌ててみんなで急いで作った。
六花がニコニコして、みんなで安心した。
もちろん天狼も作る。
写真を撮って麗星に送った。
すぐに電話が来て、礼を言われた。
三人の子どもたちが並んでいる。
俺は何か大事なことをしたような気になった。
何が大事なのかは言葉にならない。
でも、それはきっと本当に大事なことなのだ。
「今晩は御堂と澪さん、柳も一泊するからな!」
柳も冬の別荘に来たいと言い、俺はそれならと御堂と一緒に来るように言った。
柳はゴールデンウィークと年末年始は実家へ帰している。
だから石神家の行事には参加しないことが多かった。
柳のためというよりも、実家のみなさんが久し振りに柳と過ごしたいだろうという思いだった。
御堂も同じだ。
澪さんは年末年始は忙しいはずだが、菊子さんが是非一緒に行くように言ってくれた。
大掃除やおせち料理の準備は菊子さんが仕切ってくれるそうだ。
まあ、たまにはのんびりとしてもらいたい。
昼食後、響子をロボと士王と一緒に休ませ、俺たちは庭に出て遊んだ。
「じゃー、恒例の雪合戦な。チーム分けするから」
皇紀対全員。
「なんだよー!」
「この! 姉を差し置いて風花ちゃんと幸せにやりやがって!」
「このヘンタイ魔人がぁ!」
「チンコ凍らせてやる!」
皇紀がたちまち雪に埋まった。
「亜紀ちゃん! そろそろ買い出しに行くか!」
「はーい!」
鷹も一緒に行きたいと言うので、三人で出発した。
鷹を助手席に乗せる。
後ろで亜紀ちゃんが叫んだ。
「今日も一杯買うぞー!」
鷹が笑った。
スーパーで、いつもの「石神家専用駐車場」にハマーを入れると、すぐに店長さんが飛んで来た。
「石神先生! お待ちしておりました!」
店長さんが満面の笑みで迎えてくれる。
俺たちも笑いながら挨拶した。
「また石神先生のアイデアを実行しましたら、売り上げが倍増しました!」
「そうですか」
新館のピザの実演が好評のようだったので、本館でも大きな鮭やマグロの解体即売をやってはどうかと言った。
俺が学生時代に銀座のデパートでやっていたことだ。
精肉コーナーでもローストビーフなどの即売や、生鮮品での料理教室なども始めた。
どれも好評で、またテレビの取材も入ったようだ。
「もう、何と言ってお礼を申し上げて良いか!」
「いえ、店長さんたちの取り組みが成功しただけですって」
本当にその通りだ。
アイデアなど、誰でも言える。
それを実現し、成功させるのは当事者の努力だ。
それでも店長さんはずっと俺たちに付いて礼を言い続け、今日の買い物は全て無料にするとまで言った。
「冗談じゃないですよ! 俺たちはここで買物をするのが楽しみなんですから!」
せめて割引をとも言われたが、そうするとここに来れなくなると言い、定価で頂くことを了承してもらった。
俺たちは本当に何もしていないのだ。
最初に肉や海産物の注文を確認し、あとはいつものように三人で観て回った。
主に鷹に任せる。
もう正月の装いだった。
鷹がタラバガニや幾つかの食材をカートに入れて行く。
俺たちも慣れてきているので、大体必要な食材は揃っている。
「茶碗蒸しを作ってもいいですか?」
「おお! いいな!」
鷹が笑ってまた食材を集めた。
背脂なども買うので、流石だと思った。
カートを店長さんが預かり、俺たちはフードコートへ移動した。
店内は温かいので、三人でクリームメロンソーダを頼んだ。
「何十年ぶりかで飲みますよ」
「俺はたまに飲みたくなるんだよな」
「双子の大好物ですよね!」
店長さんがショートケーキを三つ持って来た。
「いつも遠慮されて飲み物だけですよね! 何か召し上がって下さいよ」
三人で笑って礼を言った。
「新館のイタリアン・レストランのものです。美味しいですよ?」
「それはわざわざ、ありがとうございます」
本当に美味かった。
鷹が新館を見ていないので、亜紀ちゃんと案内した。
亜紀ちゃんがダンス・スペースではしゃぐ。
「石神先生!」
大きなテレビ画面に、俺と六花が映っている。
鷹が喜んだ。
亜紀ちゃんは子どもたちと踊りながら、楽しんでいる。
「元々は子どもが遊ぶだけのスペースだったんだけどな。俺と六花で調子にのって踊ったら、録画されてたんだ」
「そうなんですか!」
店長さんが来た。
エレキギターを抱えている。
「石神先生はギターがお上手だと伺いまして」
「誰から!」
店長さんが亜紀ちゃんを指差した。
「一曲、弾いていただけませんか?」
断れない状況だった。
俺は最近お気に入りの米津玄師『KICK BACK』を弾いて歌った。
即興のギターソロで子どもたちも大興奮だ。
亜紀ちゃんがノリノリでくるくる回る。
大盛況で終わった。
店長さんがビデオカメラを回していた。
「これ! また使ってもいいですか!」
俺は笑って好きにしてくれと言った。
ただ、著作権の問題はちゃんとしてくれとも話した。
俺たちも楽しんで帰った。
別荘に戻ると、響子も起きていた。
みんなでお茶を飲んで店長さんに頂いたイチゴ大福を食べる。
「ふん、「紅オイシーズ」には遠く及びませんね」
「お前! 美味そうに全部喰ってるじゃないか!」
「ワハハハハハハハ!」
六花が大笑いした。
御堂と澪さん、柳が到着した。
「おい、雪道は大丈夫だったか?」
「途中で何度か滑ったよ」
「危ねぇな! 御堂に何かあったらどうすんだ!」
「え、私は?」
「大事なのは御堂だ!」
「酷いですよ!」
澪さんが大笑いした。
「明日は俺が幹線道路まで運転する!」
「分かりましたよ!」
お茶を出して、夕飯まで時間があるのでみんなで外で雪像を作った。
亜紀ちゃんとハーが「ウンコの妖魔」を作る。
「あいつ、幸せにやってるかなー」
「きっとそうだよ」
「うん」
柳が離れてコワイ顔で見ていた。
柳はちょっと疲れたと言い、ロボとウッドデッキでのんびりした。
やはり慣れない雪道で緊張したのだろう。
俺と栞、鷹はルーに手伝ってもらって、士王の立像を作った。
桜花たちは散歩に出掛けた。
一人乗りのソリを貸してやった。
順番に乗って楽しんだようだ。
六花は響子と雪だるまを作った。
士王の雪像を見に来る。
「あれ、吹雪は?」
「「「「!」」」」
慌ててみんなで急いで作った。
六花がニコニコして、みんなで安心した。
もちろん天狼も作る。
写真を撮って麗星に送った。
すぐに電話が来て、礼を言われた。
三人の子どもたちが並んでいる。
俺は何か大事なことをしたような気になった。
何が大事なのかは言葉にならない。
でも、それはきっと本当に大事なことなのだ。
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