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KYOKO DREAMIN XⅥ : Daed End & Challenge
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またあの夢だと分かった。
これまで何度か見ている。
私が絶対に変えたい未来。
保奈美さんはもう大丈夫だろう。
もう一つの、本当に最悪の夢。
何度も祈り、その未来を変えたいと願っている事象。
でも、未だ、それには届いていなかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
強大な「業」との戦いの過程で、タカトラは世界に君臨するほどの力と権力を得た。
タカトラには世界を支配するつもりなど全く無かったが、それでもタカトラを脅威と想い、憎む人間も多かった。
「反「虎」連盟(Anti-TORA-Union:ATU)。
アメリカの軍人や政治家などが中心となり、EUや中国他の各国の同調した人間たちで組織された。
タカトラに守ってもらい、助けてもらっているのに、本当に酷い連中だ。
ただ、もう一つの問題が利権とは別のその連盟との確執の原因ともなっていた。
「業」の放った「ニルヴァーナ」だ。
その汚染は地球規模に拡がり、ワクチンは「虎」の軍が独占していた。
実際には独占ではなく、最重要物資として懸命に生産している。
でも、汚染地域で懸命に戦う「虎」の軍を優先して配布しているので、他の人間、地域にはまだあまり回っていなかった。
感染すれば意識を喪い凶暴な怪物になってしまう。
近距離ではあるが空気感染も確認されており、何しろ爪や歯などで傷つけられると100%感染する。
なので各国はワクチンの生産法を「虎」の軍に求めたが、それは拒否され続けている。
そのため、「虎」の軍を恨む人間たちも多いのだ。
私は知っている。
「ニルヴァーナ」に有用なワクチンは、「虎」の軍にしか作れないのだ。
妖魔を使った方法だからだ。
これまでの医学とは全く異なる製法で作られる。
だから量産も限られているし、製法を伝えることも出来ない。
タカトラに従うある妖魔だけが作れるためだ。
妖魔を使った製法ということすら、公開することは出来ない。
それに、ワクチンの効能は、タカトラへの恭順が無ければ発揮しない。
それもまた、話せないことだった。
タカトラがそのようにしているのでもない。
そういうものしか作れないのだ。
「ニルヴァーナ」は単純なウイルス感染ではなかった。
それが他の人間には理解出来なかった。
夢はいつものように、タカトラの乗った自家用ジェットが撃墜されることから始まる。
何度もタカトラも私も、私たちに敵対しないで欲しいと話していた。
ワクチンが効かなくなるからだ。
でも「反「虎」同盟」はタカトラを攻撃し、タカトラもついに世界を浄化しなければならないと決断する。
このままでは世界大戦が勃発しかねないからだった。
私たちに味方してくれる人間たちを移動させ、汚染地域を「虎」の軍の最大戦力で破壊して行った。
そしてタカトラが南極大陸から、最終奥義「アベル」を発動する。
ワクチンが間に合わないために、タカトラ自身が命を燃やして世界を浄化する技だ。
親友だったというアベルさんは、暴れ回った半生を悔い、非暴力で神に身を捧げたそうだ。
愛する者たちを最後まで思い続け、その生涯を閉じた。
だからタカトラは最終奥義に、その親友の方の名前を冠した。
私は毎回見てしまう。
広大な南極大陸にタカトラが独りで立ち、最終奥義が地球を覆って行く。
真っ白で美しい光。
そこへ、物凄いスピードでヨウさんが飛んで来る。
崩れて行くタカトラの身体にしがみ付き、自分も一緒に崩れながら高虎の顔を守っている。
ヨウさんの身体にも、物凄いエネルギーが迸っていた。
いつもそこで最愛の六花の最期も観る。
中国大陸を破壊した六花と「紅六花」の人たち。
六花がバイクを停め、南の方を向く。
「みんな! さらばだ!」
全員が整列して、六花に向く。
みんな分かっている。
「私の「虎」が逝った! 私もすぐに逝く!」
『総長!』
みんなが大粒の涙を流す。
互いに身体を叩き合って、乱れないようにしている。
「世話になった! 楽しかった! 吹雪のことを頼む!」
『はい! 総長!』
「さらばだ!」
『おさらばです!』
六花の身体が粉になって消えて行く。
「紅六花」の全員がそれを見ながら敬礼している。
みんな泣き崩れて、大声で六花の名前を叫ぶ。
そして地球は浄化され、「ニルヴァーナ」は消滅した。
ヨウさんは右のお腹を全部喪い、左の胸にも大きな穴が空いている。
両足は多くの肉を喪い、両腕は肩から先までしかない。
その僅かに残った腕でタカトラの綺麗な顔を抱いている。
奇跡的に、ヨウさんの美しい顔も残っている。
残酷だが、荘厳な姿だった。
アキが飛んで来る。
「鷹さん!」
ヨウさんがほんの少し微笑む。
「亜紀ちゃん、石神先生の首は守ったわ」
「鷹さん!」
アキが一層大きな声で叫んだ。
「私は約束したの。あの別荘に最初に私だけ連れて行ってくれた時。石神先生が「お前は俺の首を抱くか?」と聞いた。私はそうすると約束した」
「鷹さん!」
「あの時はよく分からなかった。でも、きっとそうしようと思った。私の一生はね、あの約束を守るためにあったみたい。空を飛ぶことも、他の色々なことも、全部このためだった。今ならよく分かる」
ヨウさんの息が乱れて来た。
もう限界なのだ。
「亜紀ちゃん、私はやった。石神先生の綺麗なお顔だけは残せた」
「鷹さん!」
アキが大泣きしながらヨウさんに抱き着く。
ヨウさんの身体は次第に崩れて行った。
「い……しが……み……せん……せい……愛して……いま……」
ヨウさんの最期の言葉だ。
頽れるヨウさんの手から、アキがタカトラの頭を受け取る。
アキもしばらく泣いている。
激しく唸りながら、聞いていられないほどの叫び声を上げながら泣いている。
タカトラの顔は生きていた頃と変わりなく、傷もなく美しかった。
しばらくして、アキがタカトラの頭を持って立ち上がる。
「タカさん、帰りましょう。私たちの家に帰りましょうね」
アキが優しく語り掛け、タカトラの頭を抱いて空中に上がる。
私はいつも、そこで目が覚める。
今回もまたあの悲しい最期を見せられるのかと思った。
タカトラの乗った自家用ジェット。
「?」
少し形が違っていた。
銀色の、あれは……
そこで目が覚めた。
いや、誰かに起こされた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「何度も観てはいけない」
そう言われた。
いつもの私の部屋の、いつものベッドで寝ていた。
「それも神の罠だ。お前ほどの者が何度も観て確信してしまえば、それは現実になる」
「え!」
見たことも無い、黒い翼が6対ある天使だった。
「あなたは誰?」
私の傍にはレイがいる。
悪い者は絶対に近づけないはずだ。
だから、この人は敵ではない。
「その夢は絶対に変えるぞ」
「え?」
「私も手伝おう。今度こそ、あの方をお守りするのだ」
「それはタカトラのこと?」
「そうだ。「神殺し」の試練すら乗り越えた。その夢も、必ず乗り越える」
「うん! 絶対に!」
黒い天使が微笑んだように感じた。
「お前も励め。私もそうする。そして勝利し、この世界を変えるのだ」
「うん!」
「今度は負けない。卑しき神々を絶対に許さない。私も戦うぞ」
「私もだよ!」
黒い天使が何かを私に言った。
聞こえてはいたが、それは意味を為さなかった。
そして黒い天使は消えた。
「レイ」
私が呼ぶと、いつものように大きな顔をベッドの私の隣に乗せて来る。
「今のは誰?」
レイは答えてくれなかった。
まだ私が知るべきではないのだろう。
「あの未来は絶対に変えるよ!」
レイが嬉しそうに私の顔を舐める。
私はレイの大きな顔を抱いた。
「うん、まだ誰にも話しちゃいけないんだね。分かった。でもあの未来が変えられるのなら、本当に嬉しい! 私、絶対にやるからね!」
レイがもう寝るように言う。
私はまた目を閉じた。
美しく優しい、タカトラの顔が浮かんで来た。
これまで何度か見ている。
私が絶対に変えたい未来。
保奈美さんはもう大丈夫だろう。
もう一つの、本当に最悪の夢。
何度も祈り、その未来を変えたいと願っている事象。
でも、未だ、それには届いていなかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
強大な「業」との戦いの過程で、タカトラは世界に君臨するほどの力と権力を得た。
タカトラには世界を支配するつもりなど全く無かったが、それでもタカトラを脅威と想い、憎む人間も多かった。
「反「虎」連盟(Anti-TORA-Union:ATU)。
アメリカの軍人や政治家などが中心となり、EUや中国他の各国の同調した人間たちで組織された。
タカトラに守ってもらい、助けてもらっているのに、本当に酷い連中だ。
ただ、もう一つの問題が利権とは別のその連盟との確執の原因ともなっていた。
「業」の放った「ニルヴァーナ」だ。
その汚染は地球規模に拡がり、ワクチンは「虎」の軍が独占していた。
実際には独占ではなく、最重要物資として懸命に生産している。
でも、汚染地域で懸命に戦う「虎」の軍を優先して配布しているので、他の人間、地域にはまだあまり回っていなかった。
感染すれば意識を喪い凶暴な怪物になってしまう。
近距離ではあるが空気感染も確認されており、何しろ爪や歯などで傷つけられると100%感染する。
なので各国はワクチンの生産法を「虎」の軍に求めたが、それは拒否され続けている。
そのため、「虎」の軍を恨む人間たちも多いのだ。
私は知っている。
「ニルヴァーナ」に有用なワクチンは、「虎」の軍にしか作れないのだ。
妖魔を使った方法だからだ。
これまでの医学とは全く異なる製法で作られる。
だから量産も限られているし、製法を伝えることも出来ない。
タカトラに従うある妖魔だけが作れるためだ。
妖魔を使った製法ということすら、公開することは出来ない。
それに、ワクチンの効能は、タカトラへの恭順が無ければ発揮しない。
それもまた、話せないことだった。
タカトラがそのようにしているのでもない。
そういうものしか作れないのだ。
「ニルヴァーナ」は単純なウイルス感染ではなかった。
それが他の人間には理解出来なかった。
夢はいつものように、タカトラの乗った自家用ジェットが撃墜されることから始まる。
何度もタカトラも私も、私たちに敵対しないで欲しいと話していた。
ワクチンが効かなくなるからだ。
でも「反「虎」同盟」はタカトラを攻撃し、タカトラもついに世界を浄化しなければならないと決断する。
このままでは世界大戦が勃発しかねないからだった。
私たちに味方してくれる人間たちを移動させ、汚染地域を「虎」の軍の最大戦力で破壊して行った。
そしてタカトラが南極大陸から、最終奥義「アベル」を発動する。
ワクチンが間に合わないために、タカトラ自身が命を燃やして世界を浄化する技だ。
親友だったというアベルさんは、暴れ回った半生を悔い、非暴力で神に身を捧げたそうだ。
愛する者たちを最後まで思い続け、その生涯を閉じた。
だからタカトラは最終奥義に、その親友の方の名前を冠した。
私は毎回見てしまう。
広大な南極大陸にタカトラが独りで立ち、最終奥義が地球を覆って行く。
真っ白で美しい光。
そこへ、物凄いスピードでヨウさんが飛んで来る。
崩れて行くタカトラの身体にしがみ付き、自分も一緒に崩れながら高虎の顔を守っている。
ヨウさんの身体にも、物凄いエネルギーが迸っていた。
いつもそこで最愛の六花の最期も観る。
中国大陸を破壊した六花と「紅六花」の人たち。
六花がバイクを停め、南の方を向く。
「みんな! さらばだ!」
全員が整列して、六花に向く。
みんな分かっている。
「私の「虎」が逝った! 私もすぐに逝く!」
『総長!』
みんなが大粒の涙を流す。
互いに身体を叩き合って、乱れないようにしている。
「世話になった! 楽しかった! 吹雪のことを頼む!」
『はい! 総長!』
「さらばだ!」
『おさらばです!』
六花の身体が粉になって消えて行く。
「紅六花」の全員がそれを見ながら敬礼している。
みんな泣き崩れて、大声で六花の名前を叫ぶ。
そして地球は浄化され、「ニルヴァーナ」は消滅した。
ヨウさんは右のお腹を全部喪い、左の胸にも大きな穴が空いている。
両足は多くの肉を喪い、両腕は肩から先までしかない。
その僅かに残った腕でタカトラの綺麗な顔を抱いている。
奇跡的に、ヨウさんの美しい顔も残っている。
残酷だが、荘厳な姿だった。
アキが飛んで来る。
「鷹さん!」
ヨウさんがほんの少し微笑む。
「亜紀ちゃん、石神先生の首は守ったわ」
「鷹さん!」
アキが一層大きな声で叫んだ。
「私は約束したの。あの別荘に最初に私だけ連れて行ってくれた時。石神先生が「お前は俺の首を抱くか?」と聞いた。私はそうすると約束した」
「鷹さん!」
「あの時はよく分からなかった。でも、きっとそうしようと思った。私の一生はね、あの約束を守るためにあったみたい。空を飛ぶことも、他の色々なことも、全部このためだった。今ならよく分かる」
ヨウさんの息が乱れて来た。
もう限界なのだ。
「亜紀ちゃん、私はやった。石神先生の綺麗なお顔だけは残せた」
「鷹さん!」
アキが大泣きしながらヨウさんに抱き着く。
ヨウさんの身体は次第に崩れて行った。
「い……しが……み……せん……せい……愛して……いま……」
ヨウさんの最期の言葉だ。
頽れるヨウさんの手から、アキがタカトラの頭を受け取る。
アキもしばらく泣いている。
激しく唸りながら、聞いていられないほどの叫び声を上げながら泣いている。
タカトラの顔は生きていた頃と変わりなく、傷もなく美しかった。
しばらくして、アキがタカトラの頭を持って立ち上がる。
「タカさん、帰りましょう。私たちの家に帰りましょうね」
アキが優しく語り掛け、タカトラの頭を抱いて空中に上がる。
私はいつも、そこで目が覚める。
今回もまたあの悲しい最期を見せられるのかと思った。
タカトラの乗った自家用ジェット。
「?」
少し形が違っていた。
銀色の、あれは……
そこで目が覚めた。
いや、誰かに起こされた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「何度も観てはいけない」
そう言われた。
いつもの私の部屋の、いつものベッドで寝ていた。
「それも神の罠だ。お前ほどの者が何度も観て確信してしまえば、それは現実になる」
「え!」
見たことも無い、黒い翼が6対ある天使だった。
「あなたは誰?」
私の傍にはレイがいる。
悪い者は絶対に近づけないはずだ。
だから、この人は敵ではない。
「その夢は絶対に変えるぞ」
「え?」
「私も手伝おう。今度こそ、あの方をお守りするのだ」
「それはタカトラのこと?」
「そうだ。「神殺し」の試練すら乗り越えた。その夢も、必ず乗り越える」
「うん! 絶対に!」
黒い天使が微笑んだように感じた。
「お前も励め。私もそうする。そして勝利し、この世界を変えるのだ」
「うん!」
「今度は負けない。卑しき神々を絶対に許さない。私も戦うぞ」
「私もだよ!」
黒い天使が何かを私に言った。
聞こえてはいたが、それは意味を為さなかった。
そして黒い天使は消えた。
「レイ」
私が呼ぶと、いつものように大きな顔をベッドの私の隣に乗せて来る。
「今のは誰?」
レイは答えてくれなかった。
まだ私が知るべきではないのだろう。
「あの未来は絶対に変えるよ!」
レイが嬉しそうに私の顔を舐める。
私はレイの大きな顔を抱いた。
「うん、まだ誰にも話しちゃいけないんだね。分かった。でもあの未来が変えられるのなら、本当に嬉しい! 私、絶対にやるからね!」
レイがもう寝るように言う。
私はまた目を閉じた。
美しく優しい、タカトラの顔が浮かんで来た。
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