1,678 / 2,859
蓮花研究所 慰安旅行 Ⅳ
しおりを挟む
昼食を食べてから、蓮花さんたちと六花さんたちと一緒に行動した。
蓮花さんと響子ちゃんは休みながら、一緒に私たちがアトラクションを楽しむのを待っていた。
シャドウさんが毎回一緒にいた。
響子ちゃんは蓮花さんとシャドウさんと仲良くなっていた。
シャドウさんの背中に乗ったりして、喜んでいた。
「シャドウさんは、タカトラの血で大きくなったんだ!」
「そうなのです。幾ら感謝しても足りません」
「そっかー!」
シャドウさんのモフモフのお腹が気持ちいのだと、蓮花さんが言った。
響子ちゃんも喜んでお腹に身体を預けていた。
「レイもモフモフなんだよ?」
「そうなのですか」
「レイ!」
響子ちゃんが何もない空間を呼んだ。
「おお! 大きな虎ですな!」
『!』
みんなで驚いた。
誰にも何も見えない。
シャドウさんに、レイが虎なのだと話していない。
「これは立派な! ああ、そうなのですか! 石神様に御縁がある方でしたか!」
話しているようだった。
「そうなのです! あの方は御優しいのですよね!」
「シャドウさんにはレイさんが見えるのですか?」
蓮花さんが聞いた。
「はい。ああ、皆様はこういう存在は見えないのですね?」
「はい」
「なるほど。この方は響子さんを護るために遣わされたそうです。お強い方ですよ。それにお優しい」
「そうですか」
凄い発見だった。
シャドウさんには、私たちが見えないものが見えるようだ。
タカさんの血のせいなのだろう。
休憩を入れながら、夕方まで楽しく回った。
最後の方は、蓮花さんと響子ちゃんはほとんど休んでいた。
六花さんが時々響子ちゃんの様子を見て、熱を測ったりしていた。
「じゃあ、またあの船に乗りましょうか!」
丁度夕暮れになって、船には幻想的な灯が点いていた。
ゆっくりと進む船の中で、みんなで雰囲気を楽しんだ。
6時を回り、そろそろ終わりだ。
美しい電飾を施したパレードがあり、みんなが集まって楽しんだ。
最後にみんなで集まって、記念写真を撮った。
研究所のみなさんがバスに乗り込んで行く。
蓮花さんはそれを眺めていた。
「前鬼」
「はい!」
「今日は楽しかったですか?」
「はい! とても!」
「それは良かった。石神様に、あなたがここの映像を観て懐かしそうな顔をしていたと御伝えしたのです」
「はい?」
「『アナと雪の女王』をみんなで観た時ですよ」
「!」
「それを聞いて、石神様が即座に今日の手配をして下さったのです。申し訳なかったと仰りながら」
「なんですと!」
「自分はあなたたちに、何の楽しい思いもさせてやらなかった、済まないことをしていたと」
「石神様!」
「あなたたちは愛されているのです、あの方に」
「はい!」
傍で聴いていたミユキさんや後鬼さんも驚いていた。
「御自分が研究所を守っているから、楽しんで来て欲しいと。そう仰っていました」
「そうだったんですか……」
蓮花さんが泣き出しそうな前鬼さんの背中を撫でていた。
「さあ、帰りましょう! 家に帰るまでが遠足ですよ!」
「はい!」
私たちも帰った。
六花さんも響子ちゃんを後ろのシートに寝かせて帰った。
響子ちゃんも今日は楽しかっただろう。
「さーて! 夕飯はどうすっかな!」
みんなで笑って帰った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
また散々、斬に相手をさせられた。
組み手は飽きたので木刀で遣り合ったが、もう斬の剣技はまるで俺に通用しなかった。
仕方が無いので、また組み手に戻った。
「おい、俺はもう両手は使わない。足だけで相手してやる」
「ふん!」
迫って来た斬の顔面にストレートを放つ。
斬がぶっ飛んで、鼻血を出した。
「お前ぇ!」
「ふん! 「狩人の言葉を獲物が信じるんじゃない」!」
「なんじゃと!」
「『チェンソーマン』くらい読んどけ!」
「なんじゃぁ!」
6時まで付き合わされた。
本当に、他にやることがねぇのか、このジジィは。
また俺が夕飯を作った。
さっき斬がポッドに入っている間に少し仕込みをしたので、多少はマシな飯になった。
鯛の煮付け。
シソご飯。
ステーキにエリンギとメイクイーンの付け合わせ。
カリフラワーとベーコンのバター炒め。
ほうれん草のおひたし。
アサリの味噌汁。
90歳の年寄りには重いものだが、斬は別だ。
多分、肉体的には40歳そこそこに戻っている。
顔の皺はどうしようもないが。
そこは自分で化粧水でも付けろ。
食事を終えて、一緒に風呂に入った。
「おい、今日は楽しかったか?」
「ふん!」
楽しかったようだ。
顔が笑っている。
言うと怒るので黙っていた。
まったくめんどくさいジジィだ。
9時になり、二人で庭に出て、冷やした紅茶を飲んでいた。
デュール・ゲリエが大勢で戻って来た。
俺の前で整列し、一礼して自分でハンガーに戻って行った。
直掩機以外が先に戻ったらしい。
Dランドの連中はびっくりしただろう。
まあ、その記憶もタマが消しているはずだ。
9時半頃、バスが戻って来た。
正門が開き、次々に敷地に入って来る。
先頭のバスから蓮花が降りて来た。
俺に駆け寄って来る。
「おい! 転ぶからゆっくり来い!」
ミユキが笑って並走し、よろけた蓮花を助けた。
「石神様!」
「おう!」
「楽しゅうございました!」
「そうか!」
全員が降りて来て、俺と斬の前に並んだ。
一斉に礼を言い、頭を下げた。
「よし! じゃあ、俺たちは帰るからな!」
「あの、今日はどうぞお泊り下さい」
「いいよ。また来るからな!」
楽しい話があるのだろうが、まあ今日はみんなで話して欲しい。
斬と研究所を出た。
「おい、今晩はうちへ泊れ」
「冗談じゃねぇ! また早朝からお前の相手をさせられるだろう!」
「ふん!」
斬はそうして欲しいようだったが。
「また機会を見て相手をしてやるよ」
「そうか」
「ああ、うちの本家とやるか? あの人たちも鍛錬マニアだからよ」
「いつもで良いぞ」
面白そうだが、きっと俺も巻き込まれそうだと思った。
「まあ、そのうちにな!」
斬が手を伸ばして来た。
「なんだよ?」
握手をしたがるなど、こいつらしくもない。
でも、きっと礼を言いたいのだろう。
俺は笑って斬の手を握った。
右の腹に強烈なフックをぶち込まれた。
「ふん! 狩人の言葉を信用するな!」
「このやろう!」
俺は笑って手を離し、上昇した。
「今日は楽しかったぞ!」
「ああ、わしもじゃ!」
大笑いしながら、俺は家へ帰った。
蓮花さんと響子ちゃんは休みながら、一緒に私たちがアトラクションを楽しむのを待っていた。
シャドウさんが毎回一緒にいた。
響子ちゃんは蓮花さんとシャドウさんと仲良くなっていた。
シャドウさんの背中に乗ったりして、喜んでいた。
「シャドウさんは、タカトラの血で大きくなったんだ!」
「そうなのです。幾ら感謝しても足りません」
「そっかー!」
シャドウさんのモフモフのお腹が気持ちいのだと、蓮花さんが言った。
響子ちゃんも喜んでお腹に身体を預けていた。
「レイもモフモフなんだよ?」
「そうなのですか」
「レイ!」
響子ちゃんが何もない空間を呼んだ。
「おお! 大きな虎ですな!」
『!』
みんなで驚いた。
誰にも何も見えない。
シャドウさんに、レイが虎なのだと話していない。
「これは立派な! ああ、そうなのですか! 石神様に御縁がある方でしたか!」
話しているようだった。
「そうなのです! あの方は御優しいのですよね!」
「シャドウさんにはレイさんが見えるのですか?」
蓮花さんが聞いた。
「はい。ああ、皆様はこういう存在は見えないのですね?」
「はい」
「なるほど。この方は響子さんを護るために遣わされたそうです。お強い方ですよ。それにお優しい」
「そうですか」
凄い発見だった。
シャドウさんには、私たちが見えないものが見えるようだ。
タカさんの血のせいなのだろう。
休憩を入れながら、夕方まで楽しく回った。
最後の方は、蓮花さんと響子ちゃんはほとんど休んでいた。
六花さんが時々響子ちゃんの様子を見て、熱を測ったりしていた。
「じゃあ、またあの船に乗りましょうか!」
丁度夕暮れになって、船には幻想的な灯が点いていた。
ゆっくりと進む船の中で、みんなで雰囲気を楽しんだ。
6時を回り、そろそろ終わりだ。
美しい電飾を施したパレードがあり、みんなが集まって楽しんだ。
最後にみんなで集まって、記念写真を撮った。
研究所のみなさんがバスに乗り込んで行く。
蓮花さんはそれを眺めていた。
「前鬼」
「はい!」
「今日は楽しかったですか?」
「はい! とても!」
「それは良かった。石神様に、あなたがここの映像を観て懐かしそうな顔をしていたと御伝えしたのです」
「はい?」
「『アナと雪の女王』をみんなで観た時ですよ」
「!」
「それを聞いて、石神様が即座に今日の手配をして下さったのです。申し訳なかったと仰りながら」
「なんですと!」
「自分はあなたたちに、何の楽しい思いもさせてやらなかった、済まないことをしていたと」
「石神様!」
「あなたたちは愛されているのです、あの方に」
「はい!」
傍で聴いていたミユキさんや後鬼さんも驚いていた。
「御自分が研究所を守っているから、楽しんで来て欲しいと。そう仰っていました」
「そうだったんですか……」
蓮花さんが泣き出しそうな前鬼さんの背中を撫でていた。
「さあ、帰りましょう! 家に帰るまでが遠足ですよ!」
「はい!」
私たちも帰った。
六花さんも響子ちゃんを後ろのシートに寝かせて帰った。
響子ちゃんも今日は楽しかっただろう。
「さーて! 夕飯はどうすっかな!」
みんなで笑って帰った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
また散々、斬に相手をさせられた。
組み手は飽きたので木刀で遣り合ったが、もう斬の剣技はまるで俺に通用しなかった。
仕方が無いので、また組み手に戻った。
「おい、俺はもう両手は使わない。足だけで相手してやる」
「ふん!」
迫って来た斬の顔面にストレートを放つ。
斬がぶっ飛んで、鼻血を出した。
「お前ぇ!」
「ふん! 「狩人の言葉を獲物が信じるんじゃない」!」
「なんじゃと!」
「『チェンソーマン』くらい読んどけ!」
「なんじゃぁ!」
6時まで付き合わされた。
本当に、他にやることがねぇのか、このジジィは。
また俺が夕飯を作った。
さっき斬がポッドに入っている間に少し仕込みをしたので、多少はマシな飯になった。
鯛の煮付け。
シソご飯。
ステーキにエリンギとメイクイーンの付け合わせ。
カリフラワーとベーコンのバター炒め。
ほうれん草のおひたし。
アサリの味噌汁。
90歳の年寄りには重いものだが、斬は別だ。
多分、肉体的には40歳そこそこに戻っている。
顔の皺はどうしようもないが。
そこは自分で化粧水でも付けろ。
食事を終えて、一緒に風呂に入った。
「おい、今日は楽しかったか?」
「ふん!」
楽しかったようだ。
顔が笑っている。
言うと怒るので黙っていた。
まったくめんどくさいジジィだ。
9時になり、二人で庭に出て、冷やした紅茶を飲んでいた。
デュール・ゲリエが大勢で戻って来た。
俺の前で整列し、一礼して自分でハンガーに戻って行った。
直掩機以外が先に戻ったらしい。
Dランドの連中はびっくりしただろう。
まあ、その記憶もタマが消しているはずだ。
9時半頃、バスが戻って来た。
正門が開き、次々に敷地に入って来る。
先頭のバスから蓮花が降りて来た。
俺に駆け寄って来る。
「おい! 転ぶからゆっくり来い!」
ミユキが笑って並走し、よろけた蓮花を助けた。
「石神様!」
「おう!」
「楽しゅうございました!」
「そうか!」
全員が降りて来て、俺と斬の前に並んだ。
一斉に礼を言い、頭を下げた。
「よし! じゃあ、俺たちは帰るからな!」
「あの、今日はどうぞお泊り下さい」
「いいよ。また来るからな!」
楽しい話があるのだろうが、まあ今日はみんなで話して欲しい。
斬と研究所を出た。
「おい、今晩はうちへ泊れ」
「冗談じゃねぇ! また早朝からお前の相手をさせられるだろう!」
「ふん!」
斬はそうして欲しいようだったが。
「また機会を見て相手をしてやるよ」
「そうか」
「ああ、うちの本家とやるか? あの人たちも鍛錬マニアだからよ」
「いつもで良いぞ」
面白そうだが、きっと俺も巻き込まれそうだと思った。
「まあ、そのうちにな!」
斬が手を伸ばして来た。
「なんだよ?」
握手をしたがるなど、こいつらしくもない。
でも、きっと礼を言いたいのだろう。
俺は笑って斬の手を握った。
右の腹に強烈なフックをぶち込まれた。
「ふん! 狩人の言葉を信用するな!」
「このやろう!」
俺は笑って手を離し、上昇した。
「今日は楽しかったぞ!」
「ああ、わしもじゃ!」
大笑いしながら、俺は家へ帰った。
1
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる