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ハッチ 再会

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 別荘に戻り、3時のお茶にした。
 アイスコーヒーに、持って来た双子の花壇のスイカを食べた。
 響子はホットコーヒーだ。

 「甘いです!」

 雪野さんが真っ先に言った。

 「ルーとハーがうちの花壇で育ててるんですよ」
 「そうなの! 凄いのね!」

 早乙女も驚いている。
 そう言えば、こいつらに持って行ったことは無かったか。
 うちでもみんなスイカが好きだし、あとは院長宅と、御堂家にも毎回持って行っている。
 一江がスイカが好きなので、必ずやる。
 スイカ畑ではないので、それで大体消費する。

 「じゃあ、今後は早乙女家にも一つな!」
 「「はーい!」」

 雪野さんが、種をもらってうちでも育てようと早乙女に話していた。

 「雪野さん! スイカは難しいんだよ!」
 「舐めちゃダメだよ!」

 お前ら、ナゾ光線を出しただけだろう。

 「御堂の奥さんの澪さんもこのスイカの種で甘いのを作ってますよ」
 「そうなんですか!」
 「ああ、近くの河原でも。前に適当に種を飛ばして遊んでたのが自然に育って。それも結構美味いですから」
 「まあ!」

 雪野さんが嬉しそうだった。
 双子が俺を睨んでいた。

 「まあ、ルーとハーのが最高ですけどね!」

 双子がニコニコして、またスイカ喰いに戻った。
 スイカはすぐに無くなったので、店長さんに貰ったイチゴ大福を出した。
 
 「また栃木の名産が真似されてますね」

 六花が言う。

 「お前、東京でもよく喰ってるだろう」
 「ワハハハハハハ!」
 「吹雪にはまだ食わせるなよ!」
 「分かってますよ!」

 気管に詰まらせたら大変だ。
 まあ、六花も当然よく分かっているが。
 響子のための勉強と同様に、育児のことも大分勉強している。
 決して頭の悪い女ではない。
 中学しか出ていない六花が、ナースになれたことがそれを証明している。
 高卒の資格を取り、その上で看護学校へ通って正看護師の資格を取った。
 並大抵の努力ではないし、また優秀でなければ越えられない道だ。

 人間関係でも同様のことが言える。
 一部、気が小さいかのように脅えることもあるが、決して人間嫌いではない。
 「紅六花」という固い絆の仲間がいる。
 ほとんどが癖の強い人間たちだった。
 それに、社会からはみ出した連中ばかりだったはずだ。
 六花は一人一人に真摯に向き合い、彼女らの心をほぐし、相愛の絆を結んだ。

 大使夫妻や上流階級の人間たちには緊張はするが、決して逃げたことはない。
 最初の頃に響子の買い物に付き合うという無茶な命令にも臆しながらも堂々と従った。
 響子のためだ。
 それを響子の祖父のアビゲイルが認め、一気に六花を信頼してくれた。

 「六花、俺はもう甘いのはいいや。お前、食べるか?」
 「はい! いただきます!」

 輝く笑顔で、俺のイチゴ大福を食べた。

 「タカさん、いつか士王ちゃんと吹雪ちゃんと天狼ちゃんとで会わせたいですね!」

 亜紀ちゃんが楽しそうに言う。
 
 「そうだなぁ。吹雪は天狼と会ったけど、まだ士王には会ってないもんな」
 「野薔薇ちゃんには会いましたよね?」

 六花が余計なことを言いやがる。
 亜紀ちゃんが俺を睨んでいた。

 「タカさん、他にはいませんよね?」
 「いねぇよ!」

 「まあ、野薔薇ちゃんもカワイイですけどね」
 「そうだろう!」

 カワイイ。




 「敵襲!」

 ルーとハーが叫んで、瞬時に亜紀ちゃんが早乙女達の前に立った。
 六花は吹雪を抱き、響子の前に立った。
 しかし俺は危険なプレッシャーを感じていなかった。
 敵ではない。

 窓の外にでかいハチがいた。

 「おい! そいつは敵じゃねぇ!」

 六花も思い出した。

 「小判のハチ!」
 「そうだよ。去年仲間になって、六花と小判を掘ったもんな!」
 「はい! その後でちょっと「訓練」しましたよね!」
 「余計なことは言うな!」

 双子が「ギャハハハハ」と笑った。
 俺は窓を開けてウッドデッキに出た。

 「よう!」
 「あるじさまー! いらしたのを感じてまいりましたー!」

 みんなが出てきたので、テーブルの上に降りさせた。

 「「ハッチ」だ! みんなよろしくな!」

 ハッチがみんなに頭を下げて挨拶している。
 意外と礼儀正しい。

 「なかなか呼ばれないので寂しかったです」
 「そ、そうか」

 忘れてたもん。

 「ところで、お前の能力って小判をくれることなのか?」
 「いいえ! あれは余技と言いますか。自然に出来ちゃうことなので、能力とは別です」
 「ほう」
 「ハチミツを出しましょうか?」
 「いや、食い物はちょっとなぁ」

 気持ち悪い。
 でも、ハーがちょっと欲しいと言った。
 キッチンから皿を出して来る。

 「ここに」
 「はい」

 ハッチが尻から粘液を出した。

 「……」

 「どうぞ」
 「お前、どっから出したんだよ」
 「お尻からですが?」
 「それはちょっとなぁ」
 「?」

 抵抗が増した。

 「私、石神先生のなら食べれますよ?」
 「やめろ!」

 俺はそこまでヘンタイじゃねぇ。

 「口から出しましょうか?」
 「そっちもなぁ」

 「私、石神先生のなら食べれますよ?」
 「やめろって!」

 早乙女達が俺を目を細めて見ていた。
 誤解を解こうと近付いた時、後ろでハーが皿の蜂蜜(?)を指で掬って口に入れた。

 「おい!」

 「あ、甘いよ!」
 「やめとけよ!」
 「でも、美味しい! 普通のハチミツよりもスッキリしてるよ!」
 
 そういう問題じゃねぇ。

 「あの、わたしはウンコなどはしませんので」
 「そうかもしれないけど、そうじゃないんだよ!」

 妖魔が出したものを口にするのが不味い。

 「大丈夫、危険なものはないよ」

 ハーが言ったので、食いしん坊の子どもたちが早速舐めてみる。

 「美味しい!」
 「普通のハチミツより美味しいよね」
 「なにこれ! 最高じゃん!」

 「おい、辞めろって」

 早乙女達も近づいて来た。

 「ハーちゃん、大丈夫なの?」
 「うん! 綺麗な波動だよ!」
 
 俺は容易く口に入れるなと怒った。

 「タマ!」
 「なんだ、主」

 タマが俺の前に現われる。

 「これを口に入れても大丈夫か?」
 
 タマが俺が指さした蜂蜜(?)を見た。

 「大丈夫だな。人間の身体には物凄く良いもののようだ」
 「分かんのかよ!」
 「こいつの意識を読んだ。滅多にこの世界には来ない者だが、主の下に付いたのだな」
 「まあ、成り行きでな」

 安全なようなので、早乙女たちにも一口舐めさせる。
 二人が驚いていた。

 「ハッチ」
 「はい!」
 「ところでお前の能力って、この美味い蜂蜜を出すことか?」
 「それもありますが」
 「他には?」
 「歌も歌えます」
 「間に合ってる」
 「ダンスも」
 「それもいいや」
 「夜に光って灯になります」
 「電灯があるからさ」
 「ボケよりもツッコミが得意です」
 
 大した能力は無さそうだ。
 
 「俺たちは戦える奴が欲しいんだ。悪いな、時々蜂蜜をくれよ」
 「ああ、なんだ! そっちでしたか!」
 「ん?」

 ハッチが喜んでいた。

 「あるじさまが優しい方だったんで! そっちの方面は御嫌いかと」
 「なんだ?」
 「暗殺から広域破壊まで、お任せ下さい」
 「いや、お前さ」
 
 ハッチの身体がブレた。
 亜紀ちゃんの後頭部に、長い針を突き付けていた。

 「!」

 亜紀ちゃんが驚愕した。
 まさか自分が一瞬で殺されるとは思っていなかった。
 音速で移動しても、亜紀ちゃんは回避出来る。

 ハッチは続けて空を見上げた。
 別荘を覆うほどの大量の蜂が現われた。
 
 「群体です。今は4万ほどですが、呼べば数億は来ますから」
 「あいつらは何が出来るんだ?」

 一匹が目の前に来た。
 俺に背を向け、身体を折って前方に何かを発射した。
 上空に向けてだったが、物凄い熱を感じた。
 突然風が吹き荒れた。

 急激な空気の熱膨張で、小さな嵐のようなものが発生したのだ。

 「すげぇな!」
 「では、いつでも御呼び下さい」
 「おう!」

 ハーが広口瓶を幾つか持って来た。

 「……」

 ハッチが一杯入れてくれた。
 



 いつの間にか、六花が食パンに皿の蜂蜜を塗って食べていた。
 ハーに怒られていた。
 
 お尻から出たんだぞ?
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