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ジョナサンの破壊検証
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俺と聖がセイントPMCに行くと、スージーが待っていた。
六花と子どもたちもいる。
食堂に入り、コーヒーを貰った。
「スージー、あの時は世話になったな!」
「いいえ! 楽しかったですよ」
子どもたちもスージーに話しかける。
楽しく話していると、ジョナサンが案内されて来た。
そろそろ出発の時間だ。
「スージー、また会おう! 出来れば日本に来いよ!」
「はい! 石神さんはいろいろ事件が多そうですしね!」
「よせよー!」
みんなで笑いながら、「タイガー・ファング」の着陸している演習場に向かった。
「聖、またアラスカにも来てくれな!」
「ああ、必ずな!」
聖とスージーは何度かアラスカへ来ている。
聖の手を借りることは無いだろうが、俺たちの戦力を知っておいて欲しかった。
俺たちはアラスカへ飛び立った。
まあ、数分で着いたが。
「ジョナサン、ここが俺たちの本拠地だ」
「タイガー・ファング」を降りたジョナサンは、「ヘッジホッグ」の異様な光景に目を奪われていた。
ジョナサンは栞の区画へ入れるわけにも行かず、別な部屋を用意している。
まずはそこへ案内した。
「これだけ広いと軍事基地に見えませんね」
「人が多いからな。そうすると自然に都市機能が必要になるんだ。まあ、別途本当の都市もあるから、夜に案内するよ」
「はい!」
ジョナサンと一度別れ、俺たちは栞の区画へ行った。
「あなたー! みんないらっしゃい!」
栞が大歓迎で俺たちを迎える。
退屈しているので、俺たちが行くと大喜びだ。
桜花たちとも挨拶し、リヴィングでコーヒーを飲んだ。
ニューヨークとアラスカは時差があるので、現在は午前10時だ。
「みんな、お昼はどうする?」
「「「「食べるー!」」」」
六花と子どもたちは食べるようだ。
俺は笑って断った。
俺は人間だ。
「俺はいいよ。ああ、ジョナサンと出掛けるかな」
「そう。着いたばっかりなのに」
「後でな」
俺はジョナサンに連絡し、これから行くと言った。
「ジョナサン、食事は済んでいるか?」
「いいえ、まだなんです。どうせならこちらで食べようかと」
「じゃあ、案内してやるよ」
俺は東雲が気に入っているレストランに案内した。
「スペシャルAランチを! 俺はデザートとコーヒーをくれ」
ジョナサンが大振りの鮭のステーキに感動した。
「アラスカはサーモンばっかでさ。今はいろいろなものも喰えるようにしたけど、やっぱりアラスカに来たら美味いサーモンを喰わないとな」
「はい!」
説明はしていたが、俺は改めてジョナサンを連れてきた目的を話した。
「ジョナサンのPK能力を検証したいんだ。お前は日本でも自分の能力を明かさずにいてくれたからな。信頼出来る人間と思って、ここへ案内した」
「はい! 光栄です! 自分があの「虎」の軍で働けるとは!」
「そう言ってもらえるとな。でも、戦場に出るかどうかはまだ先の話だ。戦闘に組み込むにしても、ジョナサンの能力を知っておかないとなぁ」
「はい!」
何度か亜紀ちゃんと柳とで、丹沢の訓練場へ連れて行っている。
だが、聞いた限りではそれほどの破壊力は無いようだった。
地面を直径2メートル、深さ40センチ程吹っ飛ばすことは出来る。
人間ならば死ぬだろうが、「業」の改造兵には厳しいだろう。
ただ、敵の動きを止めたり空中へ投げ上げることで、俺たちの攻撃の補佐にはなるかもしれない。
そして、俺は他の使い方を考えていた。
食事が終わり、俺たちは準備した演習場へ向かう。
電動移送車に、ジョナサンはまた感動していた。
「量子コンピューターが全ての電動移送車を制御しているんだ。それによって、優先順位が成立して、基地の機能がスムーズになっている」
「なるほど! それでは「巡回路問題」も解決しているんですね」
「ああ、よく知っているな」
別名「セールスマン・ルート」という難問で、どのような順番、経路が最も効率的かの解を出す問題だ。
変数が多すぎて、これまで解を出すことは困難だった。
演習場に着いた。
補佐をしてくれる人間が8人揃っている。
技師たちだ。
「ここの戦闘要員は全員、年に2回の戦力検定を受けるんだ」
「戦力検定?」
「ああ。例えば「花岡」についてだけどな。習得し、訓練を積めば強くなっていく。だから定期的に破壊力や精度、技の運用なんかを確認しているんだよ」
「なるほど」
「もちろんそれだけではない。指揮能力や銃火器の扱い、戦闘機や戦車などの操縦など、項目は多岐にわたっている」
「はい」
「君の場合は、まずは破壊検証からだ。現在、どの程度の破壊力があるのか。それに精密さやその他のことも出来るだけ見てみたいと思っている」
「はい! 宜しくお願いします!」
ジョナサンは嬉しそうだ。
まったく未知の力であり、本人ですら分かっていない。
単純な破壊力だけの能力であろうはずがないと、俺は考えていた。
デュール・ゲリエに似た人形が演習場に用意された。
「あれは攻撃力を測るための人形なんだ。CランクからAランク。CとBは対人のものだけど、Aランクになると「業」の改造兵と渡り合えると想定されている」
「はい」
「今用意したのはAランクだ」
「その上もあるんですか?」
「ある。Sランク、SSランク、SSSランク、その上は「クロピョン」だ」
「「クロピョン」?」
「まあ、そこまで行けば上位の妖魔とソロで戦える。今、「虎」の軍では10人もいないよ」
「そうなんですか!」
ジョナサンの目が輝く。
最高位は要はクロピョンの触手を破壊できるかどうかだ。
俺はジョナサンに、Aランクの人形を破壊しろと言った。
ジョナサンは構えることなく、人形を見た。
人形が頽れた。
「おめでとう! これで君は「業」の改造兵と戦えるぞ」
「はい!」
技師たちが解析を始める。
人形には様々なセンサーが内臓されており、どのような攻撃を受けたのかが分かるようになっている。
「胸部内に厚さ20ミリの鋼鉄の板を曲げる圧力が掛かっています。範囲は50ミリほど。でも、その外側にも何かのエネルギーを感知しています」
「じゃあ、もう一度だ」
その後三度繰り返し、同じ結果となった。
「ジョナサン、今度は直径1ミリ程度に集中することは出来るか?」
「はい、やってみます」
「もっと小さくてもいいぞ」
「分かりました」
何度かジョナサンが試みたが、上手く行かなかった。
「気にしないで、ゆっくりやれ」
「はい!」
ジョナサンが両手を前に付き出し、人差し指を伸ばした。
「ああ、行けそうです」
ジョナサンが満足そうな顔をした。
その瞬間に、俺は人形から猛烈なプレッシャーを感じた。
人形を蹴り上げ、「虚震花」で消し飛ばす。
しかし僅かに間に合わずに、上空20メートルで人形が爆発した。
ジョナサンも俺たちも吹っ飛んだ。
「!」
俺は確信した。
ジョナサンのPKは、極小にすることで、反物質を生成する。
「花岡」はプラズマを生成し、俺たちが第三階梯と呼んでいる「虚震花」などの技は、そこから反物質を生成させる。
ジョナサンは「花岡」の技を使わずに、反物質が作れる。
十河さんとはまた違った技かもしれない。
俺はPKについて、仮説を持っていた。
量子を操ることによって、ニュートン物理学が適用出来ない現象を起こす。
物体を浮かせたり、曲げたり切断することも出来る。
しかしそれは、我々が慣れ親しんだニュートン物理学の中での現象だ。
量子を操れると言うことは、もっと別な運用法がある。
「花岡」と同じく、反物質を生成することだ。
だから俺はジョナサンに、ニュートン物理現象ではなく、極小の中に能力を集中させたのだ。
恐らく、結果は俺の仮説通りだったと思う。
幸い怪我人は出なかった。
反物質の対消滅が「虚震花」の分解によって半端に終わったためだ。
でも、コンマ1秒遅れたら、どうなったか分からない。
基地内で警報が鳴っている。
「石神さん!」
「大丈夫だ。今解除する」
「はい!」
技師たちも倒れた機材のチェックに入った。
俺はポケットからメモを取り出して、自分の端末を中枢のマザーコンピューターに接続した。
メモを開く。
「えーと、「にゃんこニャンニャン」……」
みんなが俺を見ていた。
日本語が分かるジョナサンは呆然と俺を見ている。
「「イヌはパグパグ」か。それから……」
数分後、警報は解除された。
六花と子どもたちもいる。
食堂に入り、コーヒーを貰った。
「スージー、あの時は世話になったな!」
「いいえ! 楽しかったですよ」
子どもたちもスージーに話しかける。
楽しく話していると、ジョナサンが案内されて来た。
そろそろ出発の時間だ。
「スージー、また会おう! 出来れば日本に来いよ!」
「はい! 石神さんはいろいろ事件が多そうですしね!」
「よせよー!」
みんなで笑いながら、「タイガー・ファング」の着陸している演習場に向かった。
「聖、またアラスカにも来てくれな!」
「ああ、必ずな!」
聖とスージーは何度かアラスカへ来ている。
聖の手を借りることは無いだろうが、俺たちの戦力を知っておいて欲しかった。
俺たちはアラスカへ飛び立った。
まあ、数分で着いたが。
「ジョナサン、ここが俺たちの本拠地だ」
「タイガー・ファング」を降りたジョナサンは、「ヘッジホッグ」の異様な光景に目を奪われていた。
ジョナサンは栞の区画へ入れるわけにも行かず、別な部屋を用意している。
まずはそこへ案内した。
「これだけ広いと軍事基地に見えませんね」
「人が多いからな。そうすると自然に都市機能が必要になるんだ。まあ、別途本当の都市もあるから、夜に案内するよ」
「はい!」
ジョナサンと一度別れ、俺たちは栞の区画へ行った。
「あなたー! みんないらっしゃい!」
栞が大歓迎で俺たちを迎える。
退屈しているので、俺たちが行くと大喜びだ。
桜花たちとも挨拶し、リヴィングでコーヒーを飲んだ。
ニューヨークとアラスカは時差があるので、現在は午前10時だ。
「みんな、お昼はどうする?」
「「「「食べるー!」」」」
六花と子どもたちは食べるようだ。
俺は笑って断った。
俺は人間だ。
「俺はいいよ。ああ、ジョナサンと出掛けるかな」
「そう。着いたばっかりなのに」
「後でな」
俺はジョナサンに連絡し、これから行くと言った。
「ジョナサン、食事は済んでいるか?」
「いいえ、まだなんです。どうせならこちらで食べようかと」
「じゃあ、案内してやるよ」
俺は東雲が気に入っているレストランに案内した。
「スペシャルAランチを! 俺はデザートとコーヒーをくれ」
ジョナサンが大振りの鮭のステーキに感動した。
「アラスカはサーモンばっかでさ。今はいろいろなものも喰えるようにしたけど、やっぱりアラスカに来たら美味いサーモンを喰わないとな」
「はい!」
説明はしていたが、俺は改めてジョナサンを連れてきた目的を話した。
「ジョナサンのPK能力を検証したいんだ。お前は日本でも自分の能力を明かさずにいてくれたからな。信頼出来る人間と思って、ここへ案内した」
「はい! 光栄です! 自分があの「虎」の軍で働けるとは!」
「そう言ってもらえるとな。でも、戦場に出るかどうかはまだ先の話だ。戦闘に組み込むにしても、ジョナサンの能力を知っておかないとなぁ」
「はい!」
何度か亜紀ちゃんと柳とで、丹沢の訓練場へ連れて行っている。
だが、聞いた限りではそれほどの破壊力は無いようだった。
地面を直径2メートル、深さ40センチ程吹っ飛ばすことは出来る。
人間ならば死ぬだろうが、「業」の改造兵には厳しいだろう。
ただ、敵の動きを止めたり空中へ投げ上げることで、俺たちの攻撃の補佐にはなるかもしれない。
そして、俺は他の使い方を考えていた。
食事が終わり、俺たちは準備した演習場へ向かう。
電動移送車に、ジョナサンはまた感動していた。
「量子コンピューターが全ての電動移送車を制御しているんだ。それによって、優先順位が成立して、基地の機能がスムーズになっている」
「なるほど! それでは「巡回路問題」も解決しているんですね」
「ああ、よく知っているな」
別名「セールスマン・ルート」という難問で、どのような順番、経路が最も効率的かの解を出す問題だ。
変数が多すぎて、これまで解を出すことは困難だった。
演習場に着いた。
補佐をしてくれる人間が8人揃っている。
技師たちだ。
「ここの戦闘要員は全員、年に2回の戦力検定を受けるんだ」
「戦力検定?」
「ああ。例えば「花岡」についてだけどな。習得し、訓練を積めば強くなっていく。だから定期的に破壊力や精度、技の運用なんかを確認しているんだよ」
「なるほど」
「もちろんそれだけではない。指揮能力や銃火器の扱い、戦闘機や戦車などの操縦など、項目は多岐にわたっている」
「はい」
「君の場合は、まずは破壊検証からだ。現在、どの程度の破壊力があるのか。それに精密さやその他のことも出来るだけ見てみたいと思っている」
「はい! 宜しくお願いします!」
ジョナサンは嬉しそうだ。
まったく未知の力であり、本人ですら分かっていない。
単純な破壊力だけの能力であろうはずがないと、俺は考えていた。
デュール・ゲリエに似た人形が演習場に用意された。
「あれは攻撃力を測るための人形なんだ。CランクからAランク。CとBは対人のものだけど、Aランクになると「業」の改造兵と渡り合えると想定されている」
「はい」
「今用意したのはAランクだ」
「その上もあるんですか?」
「ある。Sランク、SSランク、SSSランク、その上は「クロピョン」だ」
「「クロピョン」?」
「まあ、そこまで行けば上位の妖魔とソロで戦える。今、「虎」の軍では10人もいないよ」
「そうなんですか!」
ジョナサンの目が輝く。
最高位は要はクロピョンの触手を破壊できるかどうかだ。
俺はジョナサンに、Aランクの人形を破壊しろと言った。
ジョナサンは構えることなく、人形を見た。
人形が頽れた。
「おめでとう! これで君は「業」の改造兵と戦えるぞ」
「はい!」
技師たちが解析を始める。
人形には様々なセンサーが内臓されており、どのような攻撃を受けたのかが分かるようになっている。
「胸部内に厚さ20ミリの鋼鉄の板を曲げる圧力が掛かっています。範囲は50ミリほど。でも、その外側にも何かのエネルギーを感知しています」
「じゃあ、もう一度だ」
その後三度繰り返し、同じ結果となった。
「ジョナサン、今度は直径1ミリ程度に集中することは出来るか?」
「はい、やってみます」
「もっと小さくてもいいぞ」
「分かりました」
何度かジョナサンが試みたが、上手く行かなかった。
「気にしないで、ゆっくりやれ」
「はい!」
ジョナサンが両手を前に付き出し、人差し指を伸ばした。
「ああ、行けそうです」
ジョナサンが満足そうな顔をした。
その瞬間に、俺は人形から猛烈なプレッシャーを感じた。
人形を蹴り上げ、「虚震花」で消し飛ばす。
しかし僅かに間に合わずに、上空20メートルで人形が爆発した。
ジョナサンも俺たちも吹っ飛んだ。
「!」
俺は確信した。
ジョナサンのPKは、極小にすることで、反物質を生成する。
「花岡」はプラズマを生成し、俺たちが第三階梯と呼んでいる「虚震花」などの技は、そこから反物質を生成させる。
ジョナサンは「花岡」の技を使わずに、反物質が作れる。
十河さんとはまた違った技かもしれない。
俺はPKについて、仮説を持っていた。
量子を操ることによって、ニュートン物理学が適用出来ない現象を起こす。
物体を浮かせたり、曲げたり切断することも出来る。
しかしそれは、我々が慣れ親しんだニュートン物理学の中での現象だ。
量子を操れると言うことは、もっと別な運用法がある。
「花岡」と同じく、反物質を生成することだ。
だから俺はジョナサンに、ニュートン物理現象ではなく、極小の中に能力を集中させたのだ。
恐らく、結果は俺の仮説通りだったと思う。
幸い怪我人は出なかった。
反物質の対消滅が「虚震花」の分解によって半端に終わったためだ。
でも、コンマ1秒遅れたら、どうなったか分からない。
基地内で警報が鳴っている。
「石神さん!」
「大丈夫だ。今解除する」
「はい!」
技師たちも倒れた機材のチェックに入った。
俺はポケットからメモを取り出して、自分の端末を中枢のマザーコンピューターに接続した。
メモを開く。
「えーと、「にゃんこニャンニャン」……」
みんなが俺を見ていた。
日本語が分かるジョナサンは呆然と俺を見ている。
「「イヌはパグパグ」か。それから……」
数分後、警報は解除された。
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