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「堕乱我」狩り
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翌日の日曜日。
院長にはゆっくりと眠ってもらい、俺が9時頃に起きても、まだ部屋で寝ていた。
静子さんは何も言わずに7時頃に起きられ、子どもたちと一緒に朝食を作って食べられていた。
「夕べは長いことお話ししていたのね」
「はい。俺に付き合ってもらって。すいません」
「いいのよ。文学ちゃんも楽しかったでしょう」
「そうですね」
六花と響子も俺と一緒に起きて来た。
こいつらは早くに寝たはずだが。
一緒に朝食を食べる。
今朝は簡単なものだ。
サニーサイドアップの目玉焼きとレタスのサラダ。
塩昆布とタケノコの味噌汁。
六花はウインナーを別に食べる。
「昼食を摂ったら送って行くからな」
「はい!」
その時、電話が鳴った。
ハーが受けた。
「タカさーん!」
「ああ、俺か」
「虎白さんですよー!」
「!」
俺の顔色が変わった。
六花も緊張して俺を見ている。
「出掛けてるって言え!」
「ダメですよ。あの人分かっちゃいますから」
「仕方ねぇ」
俺は電話を取った。
「はい! 当主の高虎です!」
「待たせんなぁー!」
「す、すみませんでした!」
いきなり怒鳴られた。
当主なのだが。
「おう、来週出掛けっからな!」
「はい?」
「頑丈な刀を2,3本用意しとけ!」
「なんです?」
「熊野の〇〇に、昼に集合な! 遅れんなよな!」
「だから、なんなんですか!」
「妖魔狩りだぁ! 時々頼まれて行ってんだよ」
「そうなんですか?」
虎白さんはめんどくさそうに説明した。
「堕乱我(ダランガ)」という、コウモリ型の妖魔らしい。
「外来種なんだよ。何しろ増えるのが早くてなぁ。時々間引きしねぇと大変なんだ」
「そうなんですか」
「前に修験者が大勢襲われたんだ。それからうちに討伐依頼が来んだよ」
「へぇー」
「お前も当主なんだから顔を出せってこった」
「困りますよ!」
「ああ、「虎王」はダメだぞ」
「なんでです?」
「獲物が一遍に無くなるだろう! 楽しめねぇじゃんか!」
「なるほど」
「じゃあ、伝えたからな!」
「おい!」
「あんだぁ!」
「すみませんでした!」
「絶対来いよ! 来なきゃお前の家を討伐すっからな!」
「分かりました! 当主の高虎、電話を切ります」
行くしかなさそうだ。
俺は全員に話した。
「タカさん、私たちもいこっか?」
「うん、頼むよ」
双子が気を遣ってくれた。
まあ、前回のようなリンチは無いだろうが。
子どもたちはもう夏休みだ。
俺もいろいろ予定はあったが、仕方がない。
暗鬱な気分で、一週間を過ごした。
金曜日の夜。
俺はハマー出掛けた。
斬からもらった虎徹、それに「流星剣」と「黒笛」を積んでいる。
朝方に熊野の待ち合わせ場所近くに着き、俺たちは車の中で眠った。
遅刻は出来ないから、そういうスケジュールで動いた。
昼前に、虎白さんたちが近付いて来るのを感じた。
双子を起こす。
車を降りて待った。
「おう! ちゃんと来たな」
「はい! 当主の高虎、参りました!」
「また嬢ちゃんたちも一緒か!」
「はい! 石神家のことを見せようと思って連れて来ました!」
「おう! じゃあ後ろから付いて来るといい。面白ぇからな!」
「はい! ありがとうございます!」
俺たちはコンバットスーツを着ている。
靴はいつものようにビブラムソールの鹿革の頑丈なものだ。
腰に「流星剣」を差し、背中に「黒笛」を背負った。
虎徹は予備としてハマーに残した。
双子は「Ω」と「オロチ」の粉末だけだ。
怪我人が出るかもしれない。
虎白さんがまた簡単に俺に説明してくれた。
「元々はロシアの妖魔だったらしんだがな。こっちの「野衾」(コウモリの妖魔)と融合したら、とんでもない繁殖をしがやった」
「そうなんですか」
「まあ、実を言うとよ。俺らも定期的に暴れられっから! だからいつもちょっと残してる」
「ワハハハハハ!」
なんちゅう連中だ。
「依頼って言ってましたけど、どこから頼まれてるんですか?」
「ああ、表向きは金山寺だけどな。まあ、いろいろあるんだよ」
「そうですか」
虎白さんは、吉野の有名な寺の名を挙げた。
修験道者が多く集まる寺でもある。
「毎回千匹以上狩ることが条件でな。それで10億ほど入る」
「そんなにいるんですか!」
「なーに、一日で終わるよ」
「そうですかー」
今回は「剣士」15人と、もうちょっと若い連中も10人程いる。
腕は全員確かだろう。
みんな2本の日本刀を腰に差している。
「あいつら受肉してっからよ。だから簡単に刀で斬れる。楽勝だよ」
「はぁ」
修験道者しか通らない道が山にはある。
それは普通の人間には道には見えない。
日本の山にはそういう「道」があって、そこを通れば恐ろしい速さで遠方に移動できるそうだ。
「堕乱我」はそこにいるらしい。
修行を積んだ修験者の生気を喰うということだ。
出発前に、食事にすると聞いた。
俺たちも腹が減っていた。
みんな車からでかい鍋や釜を降ろす。
食材も積まれていて、俺たちもご馳走になった。
「虎白さん! 何か狩って来ていい?」
双子が聞いた。
「おう! 頼むぜ!」
「「はーい!」」
暫くして、双子は二頭のシカを狩って来た。
「嬢ちゃんたち! いいな!」
「「エヘヘヘヘヘ!」」
虎白さんたちがすぐに解体し、みんなで肉を焼いて食べる。
もちろん双子も旺盛に食べた。
二頭の鹿が全員の胃袋に消えた。
「おし! じゃあ、そろそろ行くかぁ!」
虎白さんが号令し、全員が雄叫びを上げる。
「あの、それ俺が言うんじゃ?」
「あ?」
「なんでもありません! 当主の高虎でした!」
「おう。じゃあ行くぞ」
俺、ほんといらねぇじゃん。
どうせこの人たちで十分やっつけるんだろ?
なんなんだ、一体。
もちろん、口には出さなかった。
それに、石神の血なのか、俺も楽しくなって来た。
院長にはゆっくりと眠ってもらい、俺が9時頃に起きても、まだ部屋で寝ていた。
静子さんは何も言わずに7時頃に起きられ、子どもたちと一緒に朝食を作って食べられていた。
「夕べは長いことお話ししていたのね」
「はい。俺に付き合ってもらって。すいません」
「いいのよ。文学ちゃんも楽しかったでしょう」
「そうですね」
六花と響子も俺と一緒に起きて来た。
こいつらは早くに寝たはずだが。
一緒に朝食を食べる。
今朝は簡単なものだ。
サニーサイドアップの目玉焼きとレタスのサラダ。
塩昆布とタケノコの味噌汁。
六花はウインナーを別に食べる。
「昼食を摂ったら送って行くからな」
「はい!」
その時、電話が鳴った。
ハーが受けた。
「タカさーん!」
「ああ、俺か」
「虎白さんですよー!」
「!」
俺の顔色が変わった。
六花も緊張して俺を見ている。
「出掛けてるって言え!」
「ダメですよ。あの人分かっちゃいますから」
「仕方ねぇ」
俺は電話を取った。
「はい! 当主の高虎です!」
「待たせんなぁー!」
「す、すみませんでした!」
いきなり怒鳴られた。
当主なのだが。
「おう、来週出掛けっからな!」
「はい?」
「頑丈な刀を2,3本用意しとけ!」
「なんです?」
「熊野の〇〇に、昼に集合な! 遅れんなよな!」
「だから、なんなんですか!」
「妖魔狩りだぁ! 時々頼まれて行ってんだよ」
「そうなんですか?」
虎白さんはめんどくさそうに説明した。
「堕乱我(ダランガ)」という、コウモリ型の妖魔らしい。
「外来種なんだよ。何しろ増えるのが早くてなぁ。時々間引きしねぇと大変なんだ」
「そうなんですか」
「前に修験者が大勢襲われたんだ。それからうちに討伐依頼が来んだよ」
「へぇー」
「お前も当主なんだから顔を出せってこった」
「困りますよ!」
「ああ、「虎王」はダメだぞ」
「なんでです?」
「獲物が一遍に無くなるだろう! 楽しめねぇじゃんか!」
「なるほど」
「じゃあ、伝えたからな!」
「おい!」
「あんだぁ!」
「すみませんでした!」
「絶対来いよ! 来なきゃお前の家を討伐すっからな!」
「分かりました! 当主の高虎、電話を切ります」
行くしかなさそうだ。
俺は全員に話した。
「タカさん、私たちもいこっか?」
「うん、頼むよ」
双子が気を遣ってくれた。
まあ、前回のようなリンチは無いだろうが。
子どもたちはもう夏休みだ。
俺もいろいろ予定はあったが、仕方がない。
暗鬱な気分で、一週間を過ごした。
金曜日の夜。
俺はハマー出掛けた。
斬からもらった虎徹、それに「流星剣」と「黒笛」を積んでいる。
朝方に熊野の待ち合わせ場所近くに着き、俺たちは車の中で眠った。
遅刻は出来ないから、そういうスケジュールで動いた。
昼前に、虎白さんたちが近付いて来るのを感じた。
双子を起こす。
車を降りて待った。
「おう! ちゃんと来たな」
「はい! 当主の高虎、参りました!」
「また嬢ちゃんたちも一緒か!」
「はい! 石神家のことを見せようと思って連れて来ました!」
「おう! じゃあ後ろから付いて来るといい。面白ぇからな!」
「はい! ありがとうございます!」
俺たちはコンバットスーツを着ている。
靴はいつものようにビブラムソールの鹿革の頑丈なものだ。
腰に「流星剣」を差し、背中に「黒笛」を背負った。
虎徹は予備としてハマーに残した。
双子は「Ω」と「オロチ」の粉末だけだ。
怪我人が出るかもしれない。
虎白さんがまた簡単に俺に説明してくれた。
「元々はロシアの妖魔だったらしんだがな。こっちの「野衾」(コウモリの妖魔)と融合したら、とんでもない繁殖をしがやった」
「そうなんですか」
「まあ、実を言うとよ。俺らも定期的に暴れられっから! だからいつもちょっと残してる」
「ワハハハハハ!」
なんちゅう連中だ。
「依頼って言ってましたけど、どこから頼まれてるんですか?」
「ああ、表向きは金山寺だけどな。まあ、いろいろあるんだよ」
「そうですか」
虎白さんは、吉野の有名な寺の名を挙げた。
修験道者が多く集まる寺でもある。
「毎回千匹以上狩ることが条件でな。それで10億ほど入る」
「そんなにいるんですか!」
「なーに、一日で終わるよ」
「そうですかー」
今回は「剣士」15人と、もうちょっと若い連中も10人程いる。
腕は全員確かだろう。
みんな2本の日本刀を腰に差している。
「あいつら受肉してっからよ。だから簡単に刀で斬れる。楽勝だよ」
「はぁ」
修験道者しか通らない道が山にはある。
それは普通の人間には道には見えない。
日本の山にはそういう「道」があって、そこを通れば恐ろしい速さで遠方に移動できるそうだ。
「堕乱我」はそこにいるらしい。
修行を積んだ修験者の生気を喰うということだ。
出発前に、食事にすると聞いた。
俺たちも腹が減っていた。
みんな車からでかい鍋や釜を降ろす。
食材も積まれていて、俺たちもご馳走になった。
「虎白さん! 何か狩って来ていい?」
双子が聞いた。
「おう! 頼むぜ!」
「「はーい!」」
暫くして、双子は二頭のシカを狩って来た。
「嬢ちゃんたち! いいな!」
「「エヘヘヘヘヘ!」」
虎白さんたちがすぐに解体し、みんなで肉を焼いて食べる。
もちろん双子も旺盛に食べた。
二頭の鹿が全員の胃袋に消えた。
「おし! じゃあ、そろそろ行くかぁ!」
虎白さんが号令し、全員が雄叫びを上げる。
「あの、それ俺が言うんじゃ?」
「あ?」
「なんでもありません! 当主の高虎でした!」
「おう。じゃあ行くぞ」
俺、ほんといらねぇじゃん。
どうせこの人たちで十分やっつけるんだろ?
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もちろん、口には出さなかった。
それに、石神の血なのか、俺も楽しくなって来た。
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