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ボマー(爆弾魔)

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 7月第二週の金曜日午後3時。 

 「じゃー! 「金園」に行くよ!」
 『はーい!』

 「人生研究会」の総会の後。
 ルーとハーは幹部16人を連れて、いつも通り小学校近くの中華料理屋「金園」に向かった。
 週に一度は「人生研究会」の総会を開いて、このように幹部たちを連れて食べまくる。
 小学校の時からの慣例だったが、中学校でも「人生研究会」の噂は浸透しており、教師たちは双子の入学と共に、引き続き部活動としてやって欲しいと頼んだ。
 もちろん双子もそのつもりで、すぐに上級生たちも入部希望を受け入れて、百人を超える部員数での活動を開始した。
 小学校と同様に、入学と同時に中学を支配していった。

 「金園」は二階建てのビルで、客は一階が込み合うと二階で食事をする。
 今日は予約されているので、「人生研究会」のメンバーで二階は貸切だった。
 
 「「こんにちはー!」」
 「ああ、ルーちゃんとハーちゃん! いらっしゃい! 今日も一杯食べてってね!」
 「「はーい!」」
 「もうチャーハンとか並べてるから。すぐにチャーシュー麺は持ってくから」
 「「お願いしまーす!」」
 「二人はチャーシューましましね!」
 「「アハハハハハ!」」

 店主と挨拶し、双子が先頭で階段を上がって行く。
 その脇を馬込が駆け上がった。

 「最初と最後の唐揚げは俺のもんだぁー!」
 「こら! 馬込!」
 「てめぇー! また締めっぞ!」

 笑いながら、ルーとハーは馬込を追い掛けて上がった。
 他の幹部たちは後ろで笑っている。
 「人生研究会」で、ルーとハーにタメ口を叩き、逆らうのは馬込だけだった。
 しかし、ルーとハーはそれをいつも笑っていて、咎めることはなかった。

 馬込が最初に二階のスペースに入った。
 繋げられたテーブルには、もう大量の唐揚げとチャーハンが乗っていた。

 「おお! あれ?」

 部屋の隅に、大きな旅行鞄が置いてあった。
 もちろん、いつもはそんなものは無い。

 「誰かの忘れ物か? ちょっと下に持ってくよ」
 「「!」」

 後から上がって来たルーとハーは、その鞄の異常をすぐに察知していた。
 馬込に向かって走りながら、二人が叫んだ。

 「馬込! すぐにそれを放せ!」
 「みんな! 下に降りろ! 急げ!」

 ハーが驚いて立っている馬込から旅行鞄を奪い取った。
 そのまま左手で窓を「震花」で破壊しながら、右手で旅行鞄を振り回して外に投げ出す。
 ルーは馬込の上に覆いかぶさった。

 次の瞬間、窓の外で旅行鞄が爆発し、中に仕込まれていただろう鉄球やワイヤーの破片が室内にも入って来た。
 「金園」の二階の壁の一部が破壊され、他の部分に大きな亀裂が入った。
 窓ガラスは全て砕け散った。
 ハーは「虚震花」で破片を消滅させていったが、漏らした破片が室内に飛んできて、ハーと覆いかぶさっていたルーにも突き刺さる。
 爆発の轟音で、しばらく三人は耳が聞こえなくなった。
 服はズタズタになっている。

 ハーはルーに駆け寄った。
 ルーは頷いて無事を示した。
 しかし、身体のあちこちに裂傷があった。
 馬込は気を喪っていた。
 徐々に耳が戻って来る。

 「ヤバかった! 大丈夫?」
 「うん、遠隔だよね?」
 「そうだ。私たちが上がったら爆発させるように、リモートでやったんだね」
 「馬込は?」

 ルーが馬込の様子を見て確認し、頬を叩いた。

 「ルー! ハー!」
 「もう大丈夫だ、馬込。お前、怪我はないか?」
 「バカヤロー! なんで俺なんかを!」
 「何言ってんだ?」
 「当たり前だろう?」

 「チクショー! お前ら! そんなにズタズタになりやがって!」
 
 双子が大笑いした。

 「全然平気だよ。深い疵は一つもない」
 「オッパイ、見えてんぞ!」
 「ラッキーだな!」
 「アハハハハハ!」

 ハーが下の様子を見に行った。
 幹部の連中も、店の人も客も全員無事だった。
 店主に警察を呼ぶように頼んだ。
 幹部の何人かが上がって来て、ルーとハーに上着を貸した。

 救急車と警察が来て、双子と馬込は病院に運ばれた。
 ルーとハーは治療を受けてから警察に事情を話した。
 
 「爆弾って書いてありました」
 「爆発するぞって録音が鳴ったので、窓の外に投げ出しました」

 波動で見えたとは言えない。
 警察官も困惑していたが、早乙女がすぐに来て、二人の身分を明かしてすぐに解放された。

 「二人とも、無事で本当に良かった!」
 「早乙女さん、ありがとうね」
 「石神にも連絡は行っている。すぐに来ると思うよ」
 「私たちは大丈夫だから、家に帰ってもいい?」
 「ああ! 送って行くよ」
 「大丈夫ですよ。タクシーで帰りますから」

 早乙女は気を付けて帰るように言い、警察官たちと移動して行った。

 


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 病院で、双子が襲撃されたことを聞いた。
 俺はすぐに一江に俺のオペの手配を頼み、運ばれた病院へ行こうとした。

 ルーから電話が入った。

 「タカさーん!」
 「お前ら! 無事か!」
 「もっちろーん!」

 ルーが明るく笑い、ハーの笑い声も聞こえた。

 「今病院か?」
 「うん、これから帰るとこ」
 「大丈夫なんだな?」
 「ちょっと身体が切れただけです。家で「Ω軟膏」塗りますね」
 「ああ、分かった。俺もすぐに帰るからな」

 今は4時過ぎだ。
 誰かを迎えに行かせなくても大丈夫そうだ。
 俺はすぐに家に向かった。



 俺が帰ると、双子は少し前に戻っていたようだ。
 すぐに上に上がると、リヴィングでケーキを食べていた。
 全員がいる。

 「おい、大丈夫か!」
 
 既に着替えている。
 服はズタズタに破れたそうだ。
 友達が学校から体操着を持って来てくれ、それに着替えて帰って来た。

 「もう「Ω軟膏」塗ってますから」
 「大丈夫ですよー」
 「そうか」

 俺は詳しい話を聞いた。
 いつもの通り週末の「人生研究会」の総会の後で、また「金園」で幹部たちと食べようとしていたようだった。
 二階を貸し切ってのことだったが、上がると旅行鞄が置いてあった。

 「すぐに真っ黒で真っ赤な波動が見えたの」
 「何かは分からなかったけど、とても不味いものだって分かったから」
 「すぐに窓の外に投げ捨てたのね。そうしたら爆発した」
 「リモートで爆破するタイプだね」
 「私たちを見張ってた奴がいるんだよ」
 
 「そいつのことは分からないか」
 「うーん。相当離れてたかな」
 
 「ボマー(爆弾魔)か」

 「業」の攻撃だろうか。
 しかし、それにしてはこれまでと遣り口が違う。
 俺には敵が多い。




 俺は斬と千両に電話をした。
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