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柱史
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早乙女家から(逃げ)帰って来た。
亜紀ちゃんと一緒に風呂に入った。
「あー、カレー美味しかったなー」
「そうじゃないでしょう!」
「あれ? 美味しくなかった?」
「おいしかったですけど!」
「亜紀ちゃん、ちょっとカレー臭いぞ?」
「タカさんもですよ!」
二人で歯を磨いた。
湯船に入る。
「どうすんですか、あれ!」
亜紀ちゃんが怒っている。
「どうすんだって聞かれてもなぁ」
「どんな奴かもわからないんですよ」
「お前、一緒に捨てに行ったじゃん」
「それはタカさんが」
「あ! 俺だけ悪いことにすんのかぁー!」
「だって!」
二人で掴み合った。
虚しいのでやめた。
「早乙女さん、大丈夫ですかね」
「大丈夫だよ。あいつら、なんかヘンな連中にすぐ慣れるじゃん」
「そうですけど」
「流石は「アドヴェロス」だよなー」
「もう!」
二人でゆったりとする。
「「小柱」に、『ゴルゴ13』の目を描いてやるかなー」
「ギャハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが爆笑した。
「タカさん! 庭にヘンなのがいるー!」
ルーが風呂場に駈け込んで来た。
「ロボに始末させとけ!」
「はーい!」
ルーがロボを呼びながら駆けて行った。
「ロボー! 庭の手足の無い釣り鐘女をぶっ殺して―!」
「「!」」
俺と亜紀ちゃんはバスローブを羽織って庭に行った。
庭に出ようとするロボを必死で止めた。
俺はウッドデッキから庭に出た。
「おい、どうした!」
《はい、霊素観測のデータをお持ちしました》
「早ぇな!」
グランマザーの分体が、USBを手渡して来た。
「USBかよ」
《はい、地球の文明は把握しておりますので》
俺は亜紀ちゃんに渡そうとした。
亜紀ちゃんが硬直している。
「おい、これを……」
「た、タカさん!」
「あんだよ」
「今、手渡しされましたよね!」
「だからどうしたんだよ!」
亜紀ちゃんがグランマザーの分体を指差している。
「手、無いじゃないですかぁー!」
「あぁ!」
《ああ、この中にも「神」が入っているのですよ》
「どういうことか分かんねぇよ!」
《この宇宙の中には結構あるのです。この星系にも幾つかございますよ?》
グランマザーの分体は、知的生命体の発展に用意されたものらしいと言った。
《神性については、わたくしたちよりも高位の次元の存在なので、詳しいことは分かり兼ねます。ですが、知的生命体を発展させることについてであれば、このように利用できるのであります》
「お前、神を利用って……」
《「神」と言っても、あくまでも高位存在というだけで、地球人の「神」とは別なものです。まあ、無茶を承知で言えば、地球の「神」の僕である「天使」とでも言えましょうか。超絶的な力を持ってはいますが、満足する条件を提示すればこちらの用意した器に宿ってくれますし、また宿った器に気に入った姿を与えれば喜びます》
「ちょっと待て。段々理解出来なくなってきた」
《例えば、お渡しした「棒」を大事に磨き上げるとか》
「ああ、なるほど。そうすれば喜ぶわけだな」
《はい。以前の実例では綺麗に彩色したり、顔を描いた例もございました》
「なんだと!」
《顔は喜ばれたようですね! まあ、万一気に入らなければ、どうなっていたのかは分かりませんが》
「タカさん!」
亜紀ちゃんが俺の背中から両肩を掴んだ。
「分かった! ゴルゴは描かねぇ!」
「そうじゃなくて、その前に!」
「うるせぇ!」
グランマザーの分体が俺を見ていた。
俺は面倒になって、早乙女にやった「柱」のこと、それにグランマザーの分体からさっき貰った「小柱」も早乙女の家の庭に投げ込んで来たことを正直に話した。
「ちょっと気味が悪いんだよ!」
《石神様は既にアレをお持ちになっていたのですね! そのように懐かれる事例は聞いたことがございません。わたくしが知らないということは、恐らくこれまで無かったことかと》
「そうなのかよ」
《それと、ご安心下さいませ。アレは神聖なものではございますが、元々は他者に与えるためのものでした。与えられた者が大切にすれば、アレは大いなる幸福をもたらすものです》
「投げちゃっても?」
《はい。地球人には奇妙に聞こえるかもしれませんが、「投げ与える」という行為は実は最も良い与え方なのです》
「そうなのかよ!」
俺と亜紀ちゃんは驚いた。
《はい。恐らくは、アレの出現にまつわることかと思いますが、アレは高次元からこの宇宙に投げ出されて来るようなのです。そして知的生命体のいる星に降る。ですので、投げ与えられることで、そこの知的生命体を幸福に導くようなのです》
「そ、そうか!」
《最初の御疑問にお答えしますと、そこの知的生命体に役立つために、手足などが出現するようなのです》
「あ、ああ!」
《わたくしのこの身体も、マザーシップから投げ出される形で参りました》
「だから空から降って来るみたいに来たのか!」
《はい。この身体は石神様のために。そして手土産は、石神様がお好きなようにと思い、持ってまいりました》
「何となく、そう思ってたぜ!」
亜紀ちゃんが目を細めて俺を見ていた。
《ご説明しようとも思っていたのですが、流石は石神様!》
「まーなー!」
《手土産の蘊蓄をあれこれ語るのは礼儀に外れたことと思いまして。何か分からないことがあればわたくしにお聞きになるだろうと。その時にご説明しようと思っておりました》
「奥ゆかしいな!」
《アハハハハ》
「ワハハハハハハ!」
俺は取り敢えず笑っておいた。
「手足については分かったよ。ところで、羽が生えるのはどういうことなんだ?」
《はい?》
「羽だよ。天使には羽がついているだろう」
《はい? 聞いたこともございませんが?》
「「……」」
《羽が生えたのですか?》
「そ、そうなんだけど……」
「そういえば、手が生えたのって、タカさんが触ってからですよね!」
「おい!」
「最初はピンク色になって。もう一回触ったら紫色になって」
「ちょ、ちょっと!」
「その後で手が生えてて」
グランマザーの分体は、手は疑似的に出現するのだと言った。
一時的に量子を操って手を形成し、その後消えるのだと言う。
《よくは分かりませんが、手も羽もアレが必要だと判断したのでしょう。どういう必要だったかは分かり兼ねますが》
「手は「ヒモダンス」を踊るために……」
俺は亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
「とにかく、大体のことは分かった。ただ、「アレ」っていうのはどうなんだ? ちゃんとした名称もあるんだろう?」
《はい、ございます。ですが地球人の発音ではどうも理解し難いようですので》
「なるほど。意味が近いものがあるか?」
《はい、「イエス・キリスト」が最も近いかと》
「「!」」
《三位一体の教義がアレには当てはまります。そして知的生命体を次のステージへ進める時に……》
「もういい! それは俺たちが知るべきことではないだろう」
《かしこまりました。仰る通りかと思います。ただ、石神様が大いなる使命をお持ちの方だということは》
「俺はそんなことは知らないよ。俺は大事なものを守りたいだけだ」
《さようでございましたね》
グランマザーの分体は帰った。
何にしてもだ。
「柱」たちを早乙女に押し付けたのは、何ら間違いではなかったということだ。
「小柱」の羽は気になるが、まあ良いことなのだろう。
それにしても、やっぱり不気味な連中だと思った。
亜紀ちゃんと一緒に風呂に入った。
「あー、カレー美味しかったなー」
「そうじゃないでしょう!」
「あれ? 美味しくなかった?」
「おいしかったですけど!」
「亜紀ちゃん、ちょっとカレー臭いぞ?」
「タカさんもですよ!」
二人で歯を磨いた。
湯船に入る。
「どうすんですか、あれ!」
亜紀ちゃんが怒っている。
「どうすんだって聞かれてもなぁ」
「どんな奴かもわからないんですよ」
「お前、一緒に捨てに行ったじゃん」
「それはタカさんが」
「あ! 俺だけ悪いことにすんのかぁー!」
「だって!」
二人で掴み合った。
虚しいのでやめた。
「早乙女さん、大丈夫ですかね」
「大丈夫だよ。あいつら、なんかヘンな連中にすぐ慣れるじゃん」
「そうですけど」
「流石は「アドヴェロス」だよなー」
「もう!」
二人でゆったりとする。
「「小柱」に、『ゴルゴ13』の目を描いてやるかなー」
「ギャハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが爆笑した。
「タカさん! 庭にヘンなのがいるー!」
ルーが風呂場に駈け込んで来た。
「ロボに始末させとけ!」
「はーい!」
ルーがロボを呼びながら駆けて行った。
「ロボー! 庭の手足の無い釣り鐘女をぶっ殺して―!」
「「!」」
俺と亜紀ちゃんはバスローブを羽織って庭に行った。
庭に出ようとするロボを必死で止めた。
俺はウッドデッキから庭に出た。
「おい、どうした!」
《はい、霊素観測のデータをお持ちしました》
「早ぇな!」
グランマザーの分体が、USBを手渡して来た。
「USBかよ」
《はい、地球の文明は把握しておりますので》
俺は亜紀ちゃんに渡そうとした。
亜紀ちゃんが硬直している。
「おい、これを……」
「た、タカさん!」
「あんだよ」
「今、手渡しされましたよね!」
「だからどうしたんだよ!」
亜紀ちゃんがグランマザーの分体を指差している。
「手、無いじゃないですかぁー!」
「あぁ!」
《ああ、この中にも「神」が入っているのですよ》
「どういうことか分かんねぇよ!」
《この宇宙の中には結構あるのです。この星系にも幾つかございますよ?》
グランマザーの分体は、知的生命体の発展に用意されたものらしいと言った。
《神性については、わたくしたちよりも高位の次元の存在なので、詳しいことは分かり兼ねます。ですが、知的生命体を発展させることについてであれば、このように利用できるのであります》
「お前、神を利用って……」
《「神」と言っても、あくまでも高位存在というだけで、地球人の「神」とは別なものです。まあ、無茶を承知で言えば、地球の「神」の僕である「天使」とでも言えましょうか。超絶的な力を持ってはいますが、満足する条件を提示すればこちらの用意した器に宿ってくれますし、また宿った器に気に入った姿を与えれば喜びます》
「ちょっと待て。段々理解出来なくなってきた」
《例えば、お渡しした「棒」を大事に磨き上げるとか》
「ああ、なるほど。そうすれば喜ぶわけだな」
《はい。以前の実例では綺麗に彩色したり、顔を描いた例もございました》
「なんだと!」
《顔は喜ばれたようですね! まあ、万一気に入らなければ、どうなっていたのかは分かりませんが》
「タカさん!」
亜紀ちゃんが俺の背中から両肩を掴んだ。
「分かった! ゴルゴは描かねぇ!」
「そうじゃなくて、その前に!」
「うるせぇ!」
グランマザーの分体が俺を見ていた。
俺は面倒になって、早乙女にやった「柱」のこと、それにグランマザーの分体からさっき貰った「小柱」も早乙女の家の庭に投げ込んで来たことを正直に話した。
「ちょっと気味が悪いんだよ!」
《石神様は既にアレをお持ちになっていたのですね! そのように懐かれる事例は聞いたことがございません。わたくしが知らないということは、恐らくこれまで無かったことかと》
「そうなのかよ」
《それと、ご安心下さいませ。アレは神聖なものではございますが、元々は他者に与えるためのものでした。与えられた者が大切にすれば、アレは大いなる幸福をもたらすものです》
「投げちゃっても?」
《はい。地球人には奇妙に聞こえるかもしれませんが、「投げ与える」という行為は実は最も良い与え方なのです》
「そうなのかよ!」
俺と亜紀ちゃんは驚いた。
《はい。恐らくは、アレの出現にまつわることかと思いますが、アレは高次元からこの宇宙に投げ出されて来るようなのです。そして知的生命体のいる星に降る。ですので、投げ与えられることで、そこの知的生命体を幸福に導くようなのです》
「そ、そうか!」
《最初の御疑問にお答えしますと、そこの知的生命体に役立つために、手足などが出現するようなのです》
「あ、ああ!」
《わたくしのこの身体も、マザーシップから投げ出される形で参りました》
「だから空から降って来るみたいに来たのか!」
《はい。この身体は石神様のために。そして手土産は、石神様がお好きなようにと思い、持ってまいりました》
「何となく、そう思ってたぜ!」
亜紀ちゃんが目を細めて俺を見ていた。
《ご説明しようとも思っていたのですが、流石は石神様!》
「まーなー!」
《手土産の蘊蓄をあれこれ語るのは礼儀に外れたことと思いまして。何か分からないことがあればわたくしにお聞きになるだろうと。その時にご説明しようと思っておりました》
「奥ゆかしいな!」
《アハハハハ》
「ワハハハハハハ!」
俺は取り敢えず笑っておいた。
「手足については分かったよ。ところで、羽が生えるのはどういうことなんだ?」
《はい?》
「羽だよ。天使には羽がついているだろう」
《はい? 聞いたこともございませんが?》
「「……」」
《羽が生えたのですか?》
「そ、そうなんだけど……」
「そういえば、手が生えたのって、タカさんが触ってからですよね!」
「おい!」
「最初はピンク色になって。もう一回触ったら紫色になって」
「ちょ、ちょっと!」
「その後で手が生えてて」
グランマザーの分体は、手は疑似的に出現するのだと言った。
一時的に量子を操って手を形成し、その後消えるのだと言う。
《よくは分かりませんが、手も羽もアレが必要だと判断したのでしょう。どういう必要だったかは分かり兼ねますが》
「手は「ヒモダンス」を踊るために……」
俺は亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
「とにかく、大体のことは分かった。ただ、「アレ」っていうのはどうなんだ? ちゃんとした名称もあるんだろう?」
《はい、ございます。ですが地球人の発音ではどうも理解し難いようですので》
「なるほど。意味が近いものがあるか?」
《はい、「イエス・キリスト」が最も近いかと》
「「!」」
《三位一体の教義がアレには当てはまります。そして知的生命体を次のステージへ進める時に……》
「もういい! それは俺たちが知るべきことではないだろう」
《かしこまりました。仰る通りかと思います。ただ、石神様が大いなる使命をお持ちの方だということは》
「俺はそんなことは知らないよ。俺は大事なものを守りたいだけだ」
《さようでございましたね》
グランマザーの分体は帰った。
何にしてもだ。
「柱」たちを早乙女に押し付けたのは、何ら間違いではなかったということだ。
「小柱」の羽は気になるが、まあ良いことなのだろう。
それにしても、やっぱり不気味な連中だと思った。
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