1,451 / 2,859
御堂、衆院選 小島将軍
しおりを挟む
翌朝の日曜日。
俺は7時に起きてリヴィングへ行った。
もう子どもたちが朝食の支度をしている。
御堂と正巳さんも降りて来た。
「やあ、今日も美味そうだ」
正巳さんが嬉しそうな顔をする。
タラのムニエル、アサツキのみじん切り乗せ。
出汁巻き卵。
ニラと鶏の炒め物。
豆腐サラダ。
タケノコの味噌汁。
他に子どもたちはウインナー(大量)。
「今日は京王プラザホテルだな」
「ああ。取材も幾つか入るけど、主に自由党や各省の事務次官、それに大手企業との会談だね」
「昨日ほど神経は使わないだろうよ」
「そうもいかないよ」
御堂が苦笑する。
「わしも初めてのことだからね。あまりいいアドバイスもないよ」
正巳さんが言う。
「そんなことは。政治のことは大先輩なんですから。それに一緒にいて下さるだけでも、御堂は心強いですよ」
「ああ、なるべく頑張るよ」
今日は正巳さんは幾分気が楽だろう。
自由党との会談では大いに役に立ってくれると思う。
「もう既に決まっていることの確認が多いしな。必要があれば俺も出る」
「頼むよ」
一部の相手には俺のことも話してあるし、何人かは会ってもいる。
「取材はCNNとネットのBABooだよな」
「ああ、そうだ」
「CNNは俺も同席するから」
「うん」
食べながら簡単な打ち合わせをしていく。
正巳さんの食欲が旺盛なのを見て安心した。
流石は歴戦の政治家だ。
重要な場面で委縮せずに、燃える魂を持っている。
それに、胃腸が頑健なのは人間として強いことを示している。
「何しろ、今日はあの「小島将軍」がいらっしゃるからな」
俺が言うと、御堂と正巳さんが流石に緊張の表情を見せた。
「俺も同席する。あの人には全て話しておくつもりだ」
「分かった。宜しく頼む」
「ある程度の情報は掴んでいるようだった」
「うん、寮歌祭で話したんだよね?」
「そうだ。今後の俺たちの活動に重大な影響がある人だ」
俺は緊張を解くために言った。
「寮歌祭でよ、こいつらが「ヒモダンス」をやりやがってな」
「え!」
「小島将軍が「最高だな」って言ってた」
「アハハハハ!」
御堂が笑った。
正巳さんも笑っている。
「怖いものを知らない奴らだからなぁ。冷や汗が出たぜ」
「最高だね」
「冗談じゃねぇ!」
「タカさん、みんなで行きましょうか?」
「絶対に来るな!」
みんなが笑った。
またリムジンで移動する。
今日も双子が一緒だ。
俺はダンヒルのくすんだ白のフランネルのスーツを着た。
「石神のお陰で、いいスーツを選べたよ」
俺は御堂と正巳さんに、ブリオーニとダンヒルで沢山のスーツを作らせた。
全てスミズーラなので、スーツだけで一億以上になった。
シャツもブリオーニのギザ(海島綿)やボレッリで作り、ネクタイもドミニクフランスやタイ・ユア・タイ、バルベラなどで数百本買った。
靴は、ガットで10足、シルバノ・ラッタンジーで8足、これらはビスポークなのでまだ出来ていない。
ベルルッティで20足、その他エンツォ・ボナフェやフェラガモなどで見繕った。
靴だけで100足近くなるはずだ。
時計、アクセサリーなども揃えて、総額100億以上になった。
すべて俺が出している。
御堂は遠慮せずに受け取ってくれた。
必要なことだと分かっている。
京王プラザホテルに着き、俺たちはエレベーターで最上階のスイートルームに移動した。
俺と双子は向かいの部屋で待機する。
「おし! 好きなものを頼んでいいぞ!」
「「わーい!」」
双子はご機嫌だ。
周囲の警戒は怠らず、ニコニコして飲み食いしている。
俺も警戒している。
御堂と正巳さんがいない方がいいと考える人間は大勢いる。
昨日もそうだが、二人が飲食するものは全てうちで用意したものだ。
サンドイッチなどで申し訳ないが、食べている時間も少ない。
「エビフライ、美味しいね!」
「ハヤシライス! また注文するね!」
俺は久兵衛でマグロの握りを20貫を取り、オニオングラタンスープとフルーツの盛り合わせを昼に頼んだ。
双子が九兵衛に気付く。
「美味しそうだね!」
「好きなだけ頼め」
スイートルームで、しかも特別な客なのでルームサービスもいろいろ頼めた。
午前中のスケジュールが無事に終わり、いよいよ小島将軍が来る時間になった。
「タカさん、ちょっと!」
「なんか雰囲気が全然違うよ!」
双子が気付いた。
寮歌祭でも会っているはずだが、あの時とは別人だ。
今日は「日本のフィクサー」として来ている。
「じゃあ、俺も行って来るよ」
「「はい!」」
俺は廊下へ出て小島将軍を出迎えた。
また4人の護衛を連れている。
ホルスターでガンを吊っているのだろうが、その他に大きな楽器ケースのようなものを3人が持っている。
恐らくマシンガンとアサルトライフルだ。
「お待ちしておりました」
「……」
俺を一瞥しただけで、何も話さない。
俺はドアを開けて、小島将軍たちを中へ入れた。
護衛の一人がずっと向かいの部屋を見ていた。
双子がいることを気配で察しているのだろう。
一流の人間だ。
部屋の中で、御堂と正巳さんが立って待っていた。
ソファに案内し、小島将軍を座らせる。
護衛の4人は当然立ったままだ。
向かいに御堂と正巳さんが腰かけ、俺は脇のソファに座った。
ダフニスとクロエは、御堂たちの後ろに立つ。
「それがお前が作ったアンドロイドか」
「はい」
「武器は持っていないようだが」
「「花岡」が使えます」
「「虚震花」も使えるか?」
「はい。それ以上のものも」
小島将軍がニヤリと笑った。
「花岡」の奥義を知っているとは思わなかったが、やはり只者ではない。
護衛の一人がショートホープを差し出した。
小島将軍が一本抜き、護衛がデュポンの《ルイ13世 フルール・ド・パルム》で火を点ける。
小島将軍が愛煙家なのを知っているので、うちからベネツィア硝子のアンティークの灰皿を持って来ていた。
紫煙を燻らせながら、小島将軍が口を開いた。
「お前たちがやろうとしていることを話せ」
全員が巨大な威圧を感じた。
御堂がまっすぐに小島将軍を見て言った。
「《エクソダス》です。人類の未曽有の危機に際して、人類の歴史を背負い、次の時代を担う人間たちを生かします」
御堂が言った。
俺は7時に起きてリヴィングへ行った。
もう子どもたちが朝食の支度をしている。
御堂と正巳さんも降りて来た。
「やあ、今日も美味そうだ」
正巳さんが嬉しそうな顔をする。
タラのムニエル、アサツキのみじん切り乗せ。
出汁巻き卵。
ニラと鶏の炒め物。
豆腐サラダ。
タケノコの味噌汁。
他に子どもたちはウインナー(大量)。
「今日は京王プラザホテルだな」
「ああ。取材も幾つか入るけど、主に自由党や各省の事務次官、それに大手企業との会談だね」
「昨日ほど神経は使わないだろうよ」
「そうもいかないよ」
御堂が苦笑する。
「わしも初めてのことだからね。あまりいいアドバイスもないよ」
正巳さんが言う。
「そんなことは。政治のことは大先輩なんですから。それに一緒にいて下さるだけでも、御堂は心強いですよ」
「ああ、なるべく頑張るよ」
今日は正巳さんは幾分気が楽だろう。
自由党との会談では大いに役に立ってくれると思う。
「もう既に決まっていることの確認が多いしな。必要があれば俺も出る」
「頼むよ」
一部の相手には俺のことも話してあるし、何人かは会ってもいる。
「取材はCNNとネットのBABooだよな」
「ああ、そうだ」
「CNNは俺も同席するから」
「うん」
食べながら簡単な打ち合わせをしていく。
正巳さんの食欲が旺盛なのを見て安心した。
流石は歴戦の政治家だ。
重要な場面で委縮せずに、燃える魂を持っている。
それに、胃腸が頑健なのは人間として強いことを示している。
「何しろ、今日はあの「小島将軍」がいらっしゃるからな」
俺が言うと、御堂と正巳さんが流石に緊張の表情を見せた。
「俺も同席する。あの人には全て話しておくつもりだ」
「分かった。宜しく頼む」
「ある程度の情報は掴んでいるようだった」
「うん、寮歌祭で話したんだよね?」
「そうだ。今後の俺たちの活動に重大な影響がある人だ」
俺は緊張を解くために言った。
「寮歌祭でよ、こいつらが「ヒモダンス」をやりやがってな」
「え!」
「小島将軍が「最高だな」って言ってた」
「アハハハハ!」
御堂が笑った。
正巳さんも笑っている。
「怖いものを知らない奴らだからなぁ。冷や汗が出たぜ」
「最高だね」
「冗談じゃねぇ!」
「タカさん、みんなで行きましょうか?」
「絶対に来るな!」
みんなが笑った。
またリムジンで移動する。
今日も双子が一緒だ。
俺はダンヒルのくすんだ白のフランネルのスーツを着た。
「石神のお陰で、いいスーツを選べたよ」
俺は御堂と正巳さんに、ブリオーニとダンヒルで沢山のスーツを作らせた。
全てスミズーラなので、スーツだけで一億以上になった。
シャツもブリオーニのギザ(海島綿)やボレッリで作り、ネクタイもドミニクフランスやタイ・ユア・タイ、バルベラなどで数百本買った。
靴は、ガットで10足、シルバノ・ラッタンジーで8足、これらはビスポークなのでまだ出来ていない。
ベルルッティで20足、その他エンツォ・ボナフェやフェラガモなどで見繕った。
靴だけで100足近くなるはずだ。
時計、アクセサリーなども揃えて、総額100億以上になった。
すべて俺が出している。
御堂は遠慮せずに受け取ってくれた。
必要なことだと分かっている。
京王プラザホテルに着き、俺たちはエレベーターで最上階のスイートルームに移動した。
俺と双子は向かいの部屋で待機する。
「おし! 好きなものを頼んでいいぞ!」
「「わーい!」」
双子はご機嫌だ。
周囲の警戒は怠らず、ニコニコして飲み食いしている。
俺も警戒している。
御堂と正巳さんがいない方がいいと考える人間は大勢いる。
昨日もそうだが、二人が飲食するものは全てうちで用意したものだ。
サンドイッチなどで申し訳ないが、食べている時間も少ない。
「エビフライ、美味しいね!」
「ハヤシライス! また注文するね!」
俺は久兵衛でマグロの握りを20貫を取り、オニオングラタンスープとフルーツの盛り合わせを昼に頼んだ。
双子が九兵衛に気付く。
「美味しそうだね!」
「好きなだけ頼め」
スイートルームで、しかも特別な客なのでルームサービスもいろいろ頼めた。
午前中のスケジュールが無事に終わり、いよいよ小島将軍が来る時間になった。
「タカさん、ちょっと!」
「なんか雰囲気が全然違うよ!」
双子が気付いた。
寮歌祭でも会っているはずだが、あの時とは別人だ。
今日は「日本のフィクサー」として来ている。
「じゃあ、俺も行って来るよ」
「「はい!」」
俺は廊下へ出て小島将軍を出迎えた。
また4人の護衛を連れている。
ホルスターでガンを吊っているのだろうが、その他に大きな楽器ケースのようなものを3人が持っている。
恐らくマシンガンとアサルトライフルだ。
「お待ちしておりました」
「……」
俺を一瞥しただけで、何も話さない。
俺はドアを開けて、小島将軍たちを中へ入れた。
護衛の一人がずっと向かいの部屋を見ていた。
双子がいることを気配で察しているのだろう。
一流の人間だ。
部屋の中で、御堂と正巳さんが立って待っていた。
ソファに案内し、小島将軍を座らせる。
護衛の4人は当然立ったままだ。
向かいに御堂と正巳さんが腰かけ、俺は脇のソファに座った。
ダフニスとクロエは、御堂たちの後ろに立つ。
「それがお前が作ったアンドロイドか」
「はい」
「武器は持っていないようだが」
「「花岡」が使えます」
「「虚震花」も使えるか?」
「はい。それ以上のものも」
小島将軍がニヤリと笑った。
「花岡」の奥義を知っているとは思わなかったが、やはり只者ではない。
護衛の一人がショートホープを差し出した。
小島将軍が一本抜き、護衛がデュポンの《ルイ13世 フルール・ド・パルム》で火を点ける。
小島将軍が愛煙家なのを知っているので、うちからベネツィア硝子のアンティークの灰皿を持って来ていた。
紫煙を燻らせながら、小島将軍が口を開いた。
「お前たちがやろうとしていることを話せ」
全員が巨大な威圧を感じた。
御堂がまっすぐに小島将軍を見て言った。
「《エクソダス》です。人類の未曽有の危機に際して、人類の歴史を背負い、次の時代を担う人間たちを生かします」
御堂が言った。
1
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
紹嘉後宮百花譚 鬼神と天女の花の庭
響 蒼華
キャラ文芸
始まりの皇帝が四人の天仙の助力を得て開いたとされる、その威光は遍く大陸を照らすと言われる紹嘉帝国。
当代の皇帝は血も涙もない、冷酷非情な『鬼神』と畏怖されていた。
ある時、辺境の小国である瑞の王女が後宮に妃嬪として迎えられた。
しかし、麗しき天女と称される王女に突きつけられたのは、寵愛は期待するなという拒絶の言葉。
人々が騒めく中、王女は心の中でこう思っていた――ああ、よかった、と……。
鬼神と恐れられた皇帝と、天女と讃えられた妃嬪が、花の庭で紡ぐ物語。
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる