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ニューヨーク 再会 Ⅱ
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聖に金を出さなかったジャンニーニの家を襲い、二人で大金をせしめた。
その金で、スラムにあったエイミーの店で散々飲み食いした。
父親が怪我をし、その手術費用が必要だと聞いて、俺がこっそり金を渡した。
その後何度かは聖と店に行ったが、もう10年以上は顔を出していなかった。
亜紀ちゃんから聞いていたが、随分と綺麗で大きな店に変わっていた。
俺が驚いて外から見ていると、若い黒人女性が店から顔を出した。
「今、中から見えたの!」
「よう! 久し振りだな!」
「トラァー!」
エイミーが駆け寄って来て、俺に抱き着いた。
泣いている。
「なんだよ、また誰か病気か?」
「トラァー! 会いたかったよ!」
笑ってエイミーを宥め、中へ入った。
開いているテーブルに座る。
奥のテーブルで、黒人たちが昼間から飲んでいた。
そこは昔ながらの光景だ。
「嬉しいよ! 本当によく来てくれて!」
「悪いな。俺もいろいろ忙しくてな。こないだ、俺の子どもたちが世話になったようだな」
「そんなこと! トラの話が聞けて良かったよ!」
俺たちはコーヒーと料理を頼もうとした。
「え、飲まないの?」
「昼間からはなー」
「いいじゃない!」
エイミーは飲んで欲しいようだった。
「じゃあ、俺だけバドを貰おうかな」
「うん!」
亜紀ちゃんも飲みたがったが止めた。
料理も、一人三人分までだと言った。
子どもたちが真剣な顔でメニューを見ている。
「このトリプルチーズバーガーは外せないよね」
「リブステーキは最大で」
「こないだ、このチキンも美味しかった!」
「ジェラードも美味しそうだよ!」
俺は笑って、ジェラードは別でいいと言った。
エイミーが爆笑していた。
子どもたちがワイワイ食べていると、日本人が珍しかったのか、奥のテーブルの黒人たちがこっちを見ていた。
「トラ! これも食べてみて!」
エイミーがTボーンステーキを持って来る。
「「「「「「トラ!」」」」」」
奥で叫ぶ声が聞こえた。
俺が振り向くと、6人の男女が俺に駆け寄って来た。
綺麗な30歳前後の女性が俺に抱き着く。
「ナンシー! ジェス! お前ら!」
亜紀ちゃんたちが呆然と見ている。
肉を咥えている。
「トラ! 会いたかったよ!」
「ああ、みんな大活躍らしいな!」
セイントーラ、昔知り合った奴らだ。
俺が奈津江を喪った後で知り合った。
聖と一緒にブレイクダンスを教わり、こいつらと聖のお陰で悲しみを乗り越えた。
エイミーも来る。
「トラ! セイントーラの人たちを知ってるの?」
「ああ、昔な」
ジェスがエイミーに俺たちの出会いを話した。
「ナンシーが攫われて、トラとセイントが助けてくれたんだ」
「え! うちと同じじゃん!」
「だから「セイント+トラ」でセイントーラなんだよ」
「ああ!」
世界中を回っているナンシーたちは、ニューヨークへ来るとこの店に通うようになったらしい。
亜紀ちゃんが大興奮で会話に入って来る。
「トラスピンってありますよね!」
ジェスが笑ってそうだと言った。
亜紀ちゃんが空いたスペースでやってみせた。
「オー!」
ジェスたちが喜んだ。
ナンシーは俺の隣に座った。
「トラ、この子たちは?」
「ああ、俺の子どもなんだ」
「結婚したの?」
俺が山中の子どもたちを引き取った話をすると、ナンシーが嬉しそうに笑った。
「そうなんだ!」
「ナンシーはどうなんだ?」
「全然! 私はトラだけだもん!」
「アハハハハハ!」
「ねぇ、いつまでいるの?」
「ちょっとロックハートの家に来たんだ」
「ロックハート!」
「ああ、明後日までな。今日は時間があったんでここに寄ったんだけどな」
「また会えない?」
「難しいな」
ナンシーが悲しそうな顔をする。
「折角会えたのに」
「また会えるさ」
「うん」
俺はナンシーに聞いた。
「お前らはいつまでいるんだ?」
「今はちょっと充電中。半年もしたら、また全世界を回るけどね」
「じゃあさ、ちょっと頼めないかな」
俺はアラスカでの公演を頼んでみた。
「アラスカって、今は「虎」の軍の施設ばかりなんでしょう?」
「そうだ。俺はそこに関わっていてさ。でも、あっちは娯楽が少なくてなー」
「へぇー、そうなんだ」
「だから、セイントーラのライブとかやったら、みんな喜ぶと思うんだよ」
「うん! トラも来てくれる?」
「もちろんだ!」
ナンシーがジェスと話し、ジェスも喜んで承諾してくれた。
「じゃあ、詳しいことはエージェントを送るよ。連絡先を教えてくれ」
ジェスが名刺をくれた。
流石に有名なエージェント会社がついていた。
「日本でもライブをやりたいよ!」
「お! いいな!」
ナンシーがジェスに言う。
「じゃあ、その時は俺たちも是非行かせてもらうよ」
「ほんとにだよ!」
「ああ」
俺たちは店を出ることにした。
ナンシーが俺に抱き着いて来る。
「トラ! また会えるよね!」
「ああ、必ずな」
「トラのことを忘れたことはないよ!」
「ああ」
俺はジェスや他のメンバーとも握手して別れた。
「タカさん、良かったですね!」
「そうだな」
亜紀ちゃんがニコニコしている。
「さー! オリビア先生を呼ぶかなぁー!」
「絶対やめろ!」
亜紀ちゃんは、俺が過去と繋がることを望んでいる。
止めてはいるが、俺自身の中でやはりそれを望んでいる部分もある。
だが、俺は過去を懐かしんでいるわけには行かない。
「あー、山中に会いたいな」
「うーん、それは大分後で」
「そうなのか?」
「そうなんです!」
亜紀ちゃんが俺を見て笑った。
俺も笑った。
その金で、スラムにあったエイミーの店で散々飲み食いした。
父親が怪我をし、その手術費用が必要だと聞いて、俺がこっそり金を渡した。
その後何度かは聖と店に行ったが、もう10年以上は顔を出していなかった。
亜紀ちゃんから聞いていたが、随分と綺麗で大きな店に変わっていた。
俺が驚いて外から見ていると、若い黒人女性が店から顔を出した。
「今、中から見えたの!」
「よう! 久し振りだな!」
「トラァー!」
エイミーが駆け寄って来て、俺に抱き着いた。
泣いている。
「なんだよ、また誰か病気か?」
「トラァー! 会いたかったよ!」
笑ってエイミーを宥め、中へ入った。
開いているテーブルに座る。
奥のテーブルで、黒人たちが昼間から飲んでいた。
そこは昔ながらの光景だ。
「嬉しいよ! 本当によく来てくれて!」
「悪いな。俺もいろいろ忙しくてな。こないだ、俺の子どもたちが世話になったようだな」
「そんなこと! トラの話が聞けて良かったよ!」
俺たちはコーヒーと料理を頼もうとした。
「え、飲まないの?」
「昼間からはなー」
「いいじゃない!」
エイミーは飲んで欲しいようだった。
「じゃあ、俺だけバドを貰おうかな」
「うん!」
亜紀ちゃんも飲みたがったが止めた。
料理も、一人三人分までだと言った。
子どもたちが真剣な顔でメニューを見ている。
「このトリプルチーズバーガーは外せないよね」
「リブステーキは最大で」
「こないだ、このチキンも美味しかった!」
「ジェラードも美味しそうだよ!」
俺は笑って、ジェラードは別でいいと言った。
エイミーが爆笑していた。
子どもたちがワイワイ食べていると、日本人が珍しかったのか、奥のテーブルの黒人たちがこっちを見ていた。
「トラ! これも食べてみて!」
エイミーがTボーンステーキを持って来る。
「「「「「「トラ!」」」」」」
奥で叫ぶ声が聞こえた。
俺が振り向くと、6人の男女が俺に駆け寄って来た。
綺麗な30歳前後の女性が俺に抱き着く。
「ナンシー! ジェス! お前ら!」
亜紀ちゃんたちが呆然と見ている。
肉を咥えている。
「トラ! 会いたかったよ!」
「ああ、みんな大活躍らしいな!」
セイントーラ、昔知り合った奴らだ。
俺が奈津江を喪った後で知り合った。
聖と一緒にブレイクダンスを教わり、こいつらと聖のお陰で悲しみを乗り越えた。
エイミーも来る。
「トラ! セイントーラの人たちを知ってるの?」
「ああ、昔な」
ジェスがエイミーに俺たちの出会いを話した。
「ナンシーが攫われて、トラとセイントが助けてくれたんだ」
「え! うちと同じじゃん!」
「だから「セイント+トラ」でセイントーラなんだよ」
「ああ!」
世界中を回っているナンシーたちは、ニューヨークへ来るとこの店に通うようになったらしい。
亜紀ちゃんが大興奮で会話に入って来る。
「トラスピンってありますよね!」
ジェスが笑ってそうだと言った。
亜紀ちゃんが空いたスペースでやってみせた。
「オー!」
ジェスたちが喜んだ。
ナンシーは俺の隣に座った。
「トラ、この子たちは?」
「ああ、俺の子どもなんだ」
「結婚したの?」
俺が山中の子どもたちを引き取った話をすると、ナンシーが嬉しそうに笑った。
「そうなんだ!」
「ナンシーはどうなんだ?」
「全然! 私はトラだけだもん!」
「アハハハハハ!」
「ねぇ、いつまでいるの?」
「ちょっとロックハートの家に来たんだ」
「ロックハート!」
「ああ、明後日までな。今日は時間があったんでここに寄ったんだけどな」
「また会えない?」
「難しいな」
ナンシーが悲しそうな顔をする。
「折角会えたのに」
「また会えるさ」
「うん」
俺はナンシーに聞いた。
「お前らはいつまでいるんだ?」
「今はちょっと充電中。半年もしたら、また全世界を回るけどね」
「じゃあさ、ちょっと頼めないかな」
俺はアラスカでの公演を頼んでみた。
「アラスカって、今は「虎」の軍の施設ばかりなんでしょう?」
「そうだ。俺はそこに関わっていてさ。でも、あっちは娯楽が少なくてなー」
「へぇー、そうなんだ」
「だから、セイントーラのライブとかやったら、みんな喜ぶと思うんだよ」
「うん! トラも来てくれる?」
「もちろんだ!」
ナンシーがジェスと話し、ジェスも喜んで承諾してくれた。
「じゃあ、詳しいことはエージェントを送るよ。連絡先を教えてくれ」
ジェスが名刺をくれた。
流石に有名なエージェント会社がついていた。
「日本でもライブをやりたいよ!」
「お! いいな!」
ナンシーがジェスに言う。
「じゃあ、その時は俺たちも是非行かせてもらうよ」
「ほんとにだよ!」
「ああ」
俺たちは店を出ることにした。
ナンシーが俺に抱き着いて来る。
「トラ! また会えるよね!」
「ああ、必ずな」
「トラのことを忘れたことはないよ!」
「ああ」
俺はジェスや他のメンバーとも握手して別れた。
「タカさん、良かったですね!」
「そうだな」
亜紀ちゃんがニコニコしている。
「さー! オリビア先生を呼ぶかなぁー!」
「絶対やめろ!」
亜紀ちゃんは、俺が過去と繋がることを望んでいる。
止めてはいるが、俺自身の中でやはりそれを望んでいる部分もある。
だが、俺は過去を懐かしんでいるわけには行かない。
「あー、山中に会いたいな」
「うーん、それは大分後で」
「そうなのか?」
「そうなんです!」
亜紀ちゃんが俺を見て笑った。
俺も笑った。
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