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「虎」の軍、募集中です!
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「タカさーん、出来たよー」
遡る、8月のある土曜日の朝。
双子が俺を起こしに来て言った。
「出来たって、何だ?」
「ほら! 「虎」の軍の募集のPVだよ!」
「ああ!」
朝食後に見せろと言った。
アラスカ基地の建設は極秘裏に行なわれていた。
建築技術者は主にロックハートが手配し、また俺も千万組や元稲城会の信頼出来る人間を派遣し、更に船田さんの会社の伝手。
多くの人間が動員されたが、まだまだ足りない。
今後も続けて募集していく。
ヘッジホッグを中心とした基地本体の「マザー・キョウコ・シティ」の他に、パピヨンの設計による「幻想都市アヴァロン」は更に広大だからだ。
それとは別に、戦闘員は本当に切実な問題だった。
「業」の勢力は数で押して来ることが確実だった。
人間を洗脳して操る術を持つ「業」は、ロシアを中心として膨大な数の軍団を組織するに違いない。
対して俺たちは俺の家族と恋人たちは強力だ。
「紅六花」の連中は頼もしい。
ブランもいる。
そして千万組の人間も訓練はしている。
自衛隊と警察組織はダメだ。
別な手段で国内を守ってはもらうが。
マリーンは心強い。
彼らの一部は既に「花岡」を習得している。
元々軍人であったために、その習得は早い。
それに聖の会社の傭兵たち。
聖が選んで精鋭が育ちつつある。
しかし、それだけだ。
「紅六花」は全員だが、千万組もマリーンも組織としては協力してくれるが、「戦士」としては一部だけだ。
米軍から幾らか希望者は出ているが、まだまだ足りない。
「デュール・ゲリエ」や「武神」といったものを増産したのも、その問題のためだ。
俺はもっと大きな規模で、戦闘員を募集することを考えていた。
子どもたちに相談したところ、こいつらがやっていたプロモーションビデオを利用してはどうかという案を出して来た。
「今はさ、街中にポスターって時代じゃないよ! インターネットで募集する時代だよね!」
ルーが言った。
俺はネットのことはよく分からないが、なるほどと思った。
「人気の動画サイトで話題になると、テレビのニュースでも取り上げられるよね?」
「そうそう! 実際にそうやって人材を募集してるとこもあるじゃん!」
「「募集」って言わなくても、自然に接触してくるよ。要は興味を引けばいいんだし」
「「業」の悪さとか脅威って、世界中に広まりつつあるじゃん」
「そうだよね。今なら「立ち上がろう!」って人も募集出来るよ!」
子どもたちが盛り上がっている。
「誰にでも分かりやすいPVを作ってさ」
「戦う方法を優しく指導します、みたいな?」
「斬のとこの募集みたいだなぁ」
「タカさんは分かってない!」
「そうですよ! 私たちは実際に物凄いPV数を稼いでたんですから!」
俺のCDも結構売れているんだが。
「そうか、すまん」
「ちょっとさ、私たちが簡単に物凄い破壊力、みたいな?」
「そうだよ! 亜紀ちゃん、第七艦隊やっちゃう?」
「やめとけ!」
「これまでの戦闘記録をちょっと材料に使うかー」
「「業」に情報が渡ってしまうものはダメだぞ」
「じゃー、いっそフェイクで「ディス・インフォメーション」もやりますか!」
「おお、いいな、皇紀!」
「まずはさ、作ってみようよ! タカさんもそうすれば具体的なイメージが出るかもだよね?」
「そうだな! じゃあ、アイデアを出し合ってお前らで作ってみてくれよ」
「「「「「はい!」」」」」
俺は子どもたちの「常識外」をすっかり忘れていた。
それから双子が「出来た」と言う度に、プロモーションビデオを見せられた。
第1作。
双子がマイクロビキニで楽しそうに踊っている。
「なんだ、こりゃ?」
どこかへ走り出す。
どんどん走る。
時々ビキニがズレて、モザイクがかかる。
時々、ビキニが無くなって全裸になる。
カメラが寄るので、全体がモザイクだらけになる。
「おい!」
「タカさんにはモザイク無しのもあげるね」
「そういう意味じゃねぇ!」
広い道路に出た。
「首都高じゃねぇか!」
走りながらどんどん車を追い越す。
時々、車の後部に蹴りを入れる。
「煽ってんのかよ!」
前に回り、急に止まったりする。
運転手が慌ててハンドルを切るのを、双子が「ギャハハハハ」と笑っている。
「……」
物凄いスピードで追い越していく。
恐らく、マッハ1。
ソニックブームで転倒しかけたバイクを、瞬時に戻って立て直したりする。
タイトル文字。
《駆け抜けよう! 「虎」の軍!!》
「……」
双子の頭を引っぱたいた。
第2作。
「今日はまともなんだろうなぁ」
「「うん!」」
皇紀が広い場所で立っている。
「あ! 富士の演習場か!」
屈強な迷彩服を着た男たちの激しい攻撃を皇紀が軽快な動きで防いでいく。
「おお、なかなかいいじゃないか」
アサルトライフルに囲まれる。
フルオートの銃弾をかわし、弾き、掴んで弾丸を見せたりする。
「これはやり過ぎじゃねぇのか?」
スティンガー・ミサイルが撃ち込まれる。
皇紀は動かずに、恐らくは「大闇月花」を使っている。
物凄い爆発の後で、皇紀が全裸で立っている。
チンコのアップ。
「おい……」
場面が変わり、どこかのバーのカウンター。
白いスーツを着た皇紀がグラスを傾けている。
後から美しい女が入って来て、カウンターに座る。
「風花じゃんか!」
皇紀がバーテンに何か言い、風花の前にカクテルが置かれる。
「どうして世の中に男と女がいるのか知っていますか?」
風花が皇紀の言葉に振り返る。
「いいえ」
「僕と君が出会うためですよ」
「まあ」
「……」
突然、黒服の武装した男たちが乱入。
皇紀は風花の前に立ちはだかり、激しい銃撃を防いでいく。
「おい! バーテンに流れ弾が当たったぞ!」
「大丈夫、すぐに病院に運んだから」
「……」
襲撃した男たちが全て倒された。
風花が皇紀に抱き着く。
盛り上がった皇紀の股間のアップ。
タイトル文字。
《愛する者を守り抜け! 「虎」の軍募集!!》
双子の頭を引っぱたき、皇紀も呼んで引っぱたいた。
第3作。
「もういいよ」
「今度は絶対だから!」
電車の中。
駅名表示を見ると、中央線のようだ。
柳がセーラー服を着ている。
「あいつ、似合うな」
「「ね!」」
少し混んでいる車内。
中年の男が柳に近づいて、尻を撫でた。
男が吹っ飛ぶ。
「あれはエキストラの人なの」
「本物の痴漢じゃねぇか!」
何度かに渡って撮影されている。
柳が襲われる度に、逆襲している。
何度目かで、柳の前で男が下半身を出した。
柳が叫び、男に「槍雷」を浴びせた。
周辺の乗客と共に昏倒する。
柳が窓を開けて飛び出して逃げた。
「……」
「大丈夫だよ、次の駅で救急車呼んだから」
柳がセーラー服のままで、どこかの繁華街を歩いている。
路地裏でたむろしている、見ただけで分かる不良たちが、柳の美しさに見惚れる。
柳が近づいて行く。
画面が変わって、どこかのマンション。
8人の不良たちと柳。
早くも脱いで肩や胸のタトゥーを見せている奴もいる。
柳に迫る男たち。
次の瞬間、男たちが絶叫しながら壊されて行く。
タイトル文字。
《悪を許すな! 正義の「虎」の軍!!》
「おい、一人首がヘンな向きに曲がってたぞ」
「人形だよ」
「……」
取り敢えず柳も呼んで引っぱたいた。
「えーん! 言われた通りにやっただけなのにー」
第4作。
「もういいよ。今度は亜紀ちゃんだろ?」
「どうして分かったの!」
「タカさん、スゴイよ!」
「いや、それはな……」
キャプション「中米ホンジュラス」。
「おい、海外ロケかよ!」
「うん!」
「飛行」で不法入国だろう。
テグシガルパ郊外。
武装した男たちが門前にいる屋敷。
「さー! 今日も悪人狩りだぁー!」
右腕を上に上げて亜紀ちゃんが叫ぶ。
「もういいよ。大体分かったぜ」
「えー! ここからが本番だよ!」
「編集に結構凝ったんだよ!」
俺は仕方なく画面を見た。
つづく。
遡る、8月のある土曜日の朝。
双子が俺を起こしに来て言った。
「出来たって、何だ?」
「ほら! 「虎」の軍の募集のPVだよ!」
「ああ!」
朝食後に見せろと言った。
アラスカ基地の建設は極秘裏に行なわれていた。
建築技術者は主にロックハートが手配し、また俺も千万組や元稲城会の信頼出来る人間を派遣し、更に船田さんの会社の伝手。
多くの人間が動員されたが、まだまだ足りない。
今後も続けて募集していく。
ヘッジホッグを中心とした基地本体の「マザー・キョウコ・シティ」の他に、パピヨンの設計による「幻想都市アヴァロン」は更に広大だからだ。
それとは別に、戦闘員は本当に切実な問題だった。
「業」の勢力は数で押して来ることが確実だった。
人間を洗脳して操る術を持つ「業」は、ロシアを中心として膨大な数の軍団を組織するに違いない。
対して俺たちは俺の家族と恋人たちは強力だ。
「紅六花」の連中は頼もしい。
ブランもいる。
そして千万組の人間も訓練はしている。
自衛隊と警察組織はダメだ。
別な手段で国内を守ってはもらうが。
マリーンは心強い。
彼らの一部は既に「花岡」を習得している。
元々軍人であったために、その習得は早い。
それに聖の会社の傭兵たち。
聖が選んで精鋭が育ちつつある。
しかし、それだけだ。
「紅六花」は全員だが、千万組もマリーンも組織としては協力してくれるが、「戦士」としては一部だけだ。
米軍から幾らか希望者は出ているが、まだまだ足りない。
「デュール・ゲリエ」や「武神」といったものを増産したのも、その問題のためだ。
俺はもっと大きな規模で、戦闘員を募集することを考えていた。
子どもたちに相談したところ、こいつらがやっていたプロモーションビデオを利用してはどうかという案を出して来た。
「今はさ、街中にポスターって時代じゃないよ! インターネットで募集する時代だよね!」
ルーが言った。
俺はネットのことはよく分からないが、なるほどと思った。
「人気の動画サイトで話題になると、テレビのニュースでも取り上げられるよね?」
「そうそう! 実際にそうやって人材を募集してるとこもあるじゃん!」
「「募集」って言わなくても、自然に接触してくるよ。要は興味を引けばいいんだし」
「「業」の悪さとか脅威って、世界中に広まりつつあるじゃん」
「そうだよね。今なら「立ち上がろう!」って人も募集出来るよ!」
子どもたちが盛り上がっている。
「誰にでも分かりやすいPVを作ってさ」
「戦う方法を優しく指導します、みたいな?」
「斬のとこの募集みたいだなぁ」
「タカさんは分かってない!」
「そうですよ! 私たちは実際に物凄いPV数を稼いでたんですから!」
俺のCDも結構売れているんだが。
「そうか、すまん」
「ちょっとさ、私たちが簡単に物凄い破壊力、みたいな?」
「そうだよ! 亜紀ちゃん、第七艦隊やっちゃう?」
「やめとけ!」
「これまでの戦闘記録をちょっと材料に使うかー」
「「業」に情報が渡ってしまうものはダメだぞ」
「じゃー、いっそフェイクで「ディス・インフォメーション」もやりますか!」
「おお、いいな、皇紀!」
「まずはさ、作ってみようよ! タカさんもそうすれば具体的なイメージが出るかもだよね?」
「そうだな! じゃあ、アイデアを出し合ってお前らで作ってみてくれよ」
「「「「「はい!」」」」」
俺は子どもたちの「常識外」をすっかり忘れていた。
それから双子が「出来た」と言う度に、プロモーションビデオを見せられた。
第1作。
双子がマイクロビキニで楽しそうに踊っている。
「なんだ、こりゃ?」
どこかへ走り出す。
どんどん走る。
時々ビキニがズレて、モザイクがかかる。
時々、ビキニが無くなって全裸になる。
カメラが寄るので、全体がモザイクだらけになる。
「おい!」
「タカさんにはモザイク無しのもあげるね」
「そういう意味じゃねぇ!」
広い道路に出た。
「首都高じゃねぇか!」
走りながらどんどん車を追い越す。
時々、車の後部に蹴りを入れる。
「煽ってんのかよ!」
前に回り、急に止まったりする。
運転手が慌ててハンドルを切るのを、双子が「ギャハハハハ」と笑っている。
「……」
物凄いスピードで追い越していく。
恐らく、マッハ1。
ソニックブームで転倒しかけたバイクを、瞬時に戻って立て直したりする。
タイトル文字。
《駆け抜けよう! 「虎」の軍!!》
「……」
双子の頭を引っぱたいた。
第2作。
「今日はまともなんだろうなぁ」
「「うん!」」
皇紀が広い場所で立っている。
「あ! 富士の演習場か!」
屈強な迷彩服を着た男たちの激しい攻撃を皇紀が軽快な動きで防いでいく。
「おお、なかなかいいじゃないか」
アサルトライフルに囲まれる。
フルオートの銃弾をかわし、弾き、掴んで弾丸を見せたりする。
「これはやり過ぎじゃねぇのか?」
スティンガー・ミサイルが撃ち込まれる。
皇紀は動かずに、恐らくは「大闇月花」を使っている。
物凄い爆発の後で、皇紀が全裸で立っている。
チンコのアップ。
「おい……」
場面が変わり、どこかのバーのカウンター。
白いスーツを着た皇紀がグラスを傾けている。
後から美しい女が入って来て、カウンターに座る。
「風花じゃんか!」
皇紀がバーテンに何か言い、風花の前にカクテルが置かれる。
「どうして世の中に男と女がいるのか知っていますか?」
風花が皇紀の言葉に振り返る。
「いいえ」
「僕と君が出会うためですよ」
「まあ」
「……」
突然、黒服の武装した男たちが乱入。
皇紀は風花の前に立ちはだかり、激しい銃撃を防いでいく。
「おい! バーテンに流れ弾が当たったぞ!」
「大丈夫、すぐに病院に運んだから」
「……」
襲撃した男たちが全て倒された。
風花が皇紀に抱き着く。
盛り上がった皇紀の股間のアップ。
タイトル文字。
《愛する者を守り抜け! 「虎」の軍募集!!》
双子の頭を引っぱたき、皇紀も呼んで引っぱたいた。
第3作。
「もういいよ」
「今度は絶対だから!」
電車の中。
駅名表示を見ると、中央線のようだ。
柳がセーラー服を着ている。
「あいつ、似合うな」
「「ね!」」
少し混んでいる車内。
中年の男が柳に近づいて、尻を撫でた。
男が吹っ飛ぶ。
「あれはエキストラの人なの」
「本物の痴漢じゃねぇか!」
何度かに渡って撮影されている。
柳が襲われる度に、逆襲している。
何度目かで、柳の前で男が下半身を出した。
柳が叫び、男に「槍雷」を浴びせた。
周辺の乗客と共に昏倒する。
柳が窓を開けて飛び出して逃げた。
「……」
「大丈夫だよ、次の駅で救急車呼んだから」
柳がセーラー服のままで、どこかの繁華街を歩いている。
路地裏でたむろしている、見ただけで分かる不良たちが、柳の美しさに見惚れる。
柳が近づいて行く。
画面が変わって、どこかのマンション。
8人の不良たちと柳。
早くも脱いで肩や胸のタトゥーを見せている奴もいる。
柳に迫る男たち。
次の瞬間、男たちが絶叫しながら壊されて行く。
タイトル文字。
《悪を許すな! 正義の「虎」の軍!!》
「おい、一人首がヘンな向きに曲がってたぞ」
「人形だよ」
「……」
取り敢えず柳も呼んで引っぱたいた。
「えーん! 言われた通りにやっただけなのにー」
第4作。
「もういいよ。今度は亜紀ちゃんだろ?」
「どうして分かったの!」
「タカさん、スゴイよ!」
「いや、それはな……」
キャプション「中米ホンジュラス」。
「おい、海外ロケかよ!」
「うん!」
「飛行」で不法入国だろう。
テグシガルパ郊外。
武装した男たちが門前にいる屋敷。
「さー! 今日も悪人狩りだぁー!」
右腕を上に上げて亜紀ちゃんが叫ぶ。
「もういいよ。大体分かったぜ」
「えー! ここからが本番だよ!」
「編集に結構凝ったんだよ!」
俺は仕方なく画面を見た。
つづく。
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