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柳とデート
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10月第三週の土曜日。
朝食後、柳が顕さんの家に行くと言った。
「おう、俺も行くぞ!」
「はい!」
柳が喜んだ。
俺は混シルクのボーダーのパンツにシルクのシャツ、それにダンヒルのレザーのジャケットを羽織った。
柳は白の綿のパンツにブルーのセーターだ。
柳は用意していた花を持つ。
俺はシボレー・コルベットを出した。
柳がちょっと退いた。
「あんだよ!」
「これですか?」
「そうだよ!」
「はい」
「あんだよ!」
「いいえ」
嬉しいらしい。
遠慮深い奴なのだ。
俺は上機嫌でスーパーチャージャーを回す。
ブィィィーーン
「どうだよ、カッチョイイだろう!」
「……」
遠慮深い奴なので、黙っている。
カワイイ。
俺はレッド・ツェッペリンの『Black Dog』を歌った。
『Ⅳシンボルズ』の最初のイカした曲だ。
♪ Hey, hey, mama, said the way you move Gonna make you sweat, gonna make you groove. ♪
エアーのギター・ソロをやる。
「石神さん! ハンドル!」
「大丈夫だ。AIロボがちゃんと運転してる」
「……」
まあ、ハンドルを握った。
「今日はご機嫌ですね」
「ああ! ロボが「ヒモダンス」を覚えたし、顕さんが彼女を作るしなぁ!」
「アハハハハ」
「柳も最近は「ヒモダンス」にビビらなくなったじゃない」
「そうですね。吹っ切れました」
「なんだよ、そりゃ」
二人で笑った。
「顕さんの電話の後で、奈津江の墓に行ったんだ」
「そうだったんですか!」
「いつも綺麗にしてくれて、ありがとう」
「いえ! 自分の仕事ですし、私も奈津江さんのお墓は大事にしたいです」
「そうか!」
山手通りから中山道をまっすぐで、非常に単純なコースだ。
俺はハンドルを回しながらぶっ飛ばしていく。
追い抜かれる車が、みんな俺たちを驚いて見ている。
「おお、見てるな」
「はい!」
柳も乗って来た。
20分で着いた。
「スゴイですね!」
「まーなー!」
この車でなければ出来ない。
時速500キロを出す怪物エンジンと、大使館ナンバーが必要だ。
今日は風入れだけで、掃除はしない。
最初に柳は仏壇の花を替え、手を合わせた。
そして掃除をしない日だが雑巾を片手に、窓を開けながらちょくちょく拭いている。
きっと、いつもそうやって手を入れてくれているのだろう。
俺はキッチンでコーヒーを淹れた。
20分ほどで柳が来る。
「異常ありません!」
「おう!」
柳を座らせて、二人でコーヒーを飲んだ。
「今日は奈津江のパンツでも見るかな!」
突然、上の方でバシンという音がした。
「やめとこー」
柳が笑った。
「ここって、本当に奈津江さんがいるみたいですよ」
「ああ、そうだな」
「素敵ですね」
「怖くないのか?」
「平気ですよ! 奈津江さん、ぜったいいい人ですもん!」
「そうか」
俺は笑った。
二人で座るテーブルを見た。
多分昭和のもので、長年使っているのが伺えた。
「ここでさ、顕さんはずっと一人で食事をしてたんだな」
「そうですね」
「辛かったろうな」
「はい」
日本家屋なので、相当窓から光を入れないと薄暗い。
今は柳がカーテンを全て開けているので、明るい。
「今はよ、フィリピンの明るい場所にいる」
「はい」
「明るい女が傍にいる」
「一緒に住んでるんですかね?」
「きっとそうだ!」
「アハハハハハ!」
二人で笑った。
「まあ、でも顕さんのことだ。一緒じゃないかもな」
「聞いてみればいいじゃないですか」
「あ? そんなの、恥ずかしがって大変だぞ」
「アハハハハハ」
ゆっくりコーヒーを飲みながら、風が部屋を通り過ぎるのを感じた。
「そろそろ、お墓に行くか」
「はい!」
柳が戸締りをしに行く。
俺はカップを洗った。
仏壇に行き、線香を炊いた。
いつの間にか柳が横に来て、一緒に手を合わせた。
「ここも綺麗にしてくれてるな」
「はい」
俺たちは顕さんの家を出た。
寺は近くだ。
狭い道もあるので、柳は普段は歩いて行っている。
今日は俺が車で行った。
寺の門前の駐車場に車を入れ、本堂に向かった。
石段の上にある本堂に賽銭を入れて手を合わせる。
「ここって、立派な御寺ですよね」
「ああ。何度か住職に誘われて中に入ったけど、菊池契月とか掛けてあったぞ」
「へぇー!」
「儲かってんだな」
「あはははは」
まあ、そういう寺に奈津江の墓があって嬉しい。
寂れた寺では可哀そうだ。
柳が掃除用具を一式持っている。
雑巾やブラシ、歯ブラシもある。
「あ! お墓が喜んでますよ!」
「え?」
「分かりますよ! よく来てるんですから!」
「そうか」
柳が嬉しそうにしている。
本当にそう感じているのだろう。
「やっぱり石神さんが来たからですね!」
「そうか」
俺も笑った。
柳がすぐに水を汲んで来て掃除を始めた。
本当に手慣れている。
絶対に墓石を傷つけないようにやっている。
「お前が来たから喜んでるんじゃないのか?」
「そんなことないですよ」
柳は手早く終えて、乾拭きをした。
俺が供えた花は、寺の人が片付けてくれたようだ。
柳が水を替え、新しい花を供える。
俺は線香を炊いて、柳と一緒に『般若心経』を唱えた。
「奈津江、今日は柳と来た。こいつはよくやってくれてるだろ?」
「え!」
「柳に任せて本当に良かった。最高だ」
「石神さん……」
俺たちは手を合わせて、墓地を出た。
「よし、横浜で中華を食べよう」
「ほんとですか!」
「ああ。柳と食べるつもりだったんだ」
「嬉しい!」
陳さんの店に向かった。
朝食後、柳が顕さんの家に行くと言った。
「おう、俺も行くぞ!」
「はい!」
柳が喜んだ。
俺は混シルクのボーダーのパンツにシルクのシャツ、それにダンヒルのレザーのジャケットを羽織った。
柳は白の綿のパンツにブルーのセーターだ。
柳は用意していた花を持つ。
俺はシボレー・コルベットを出した。
柳がちょっと退いた。
「あんだよ!」
「これですか?」
「そうだよ!」
「はい」
「あんだよ!」
「いいえ」
嬉しいらしい。
遠慮深い奴なのだ。
俺は上機嫌でスーパーチャージャーを回す。
ブィィィーーン
「どうだよ、カッチョイイだろう!」
「……」
遠慮深い奴なので、黙っている。
カワイイ。
俺はレッド・ツェッペリンの『Black Dog』を歌った。
『Ⅳシンボルズ』の最初のイカした曲だ。
♪ Hey, hey, mama, said the way you move Gonna make you sweat, gonna make you groove. ♪
エアーのギター・ソロをやる。
「石神さん! ハンドル!」
「大丈夫だ。AIロボがちゃんと運転してる」
「……」
まあ、ハンドルを握った。
「今日はご機嫌ですね」
「ああ! ロボが「ヒモダンス」を覚えたし、顕さんが彼女を作るしなぁ!」
「アハハハハ」
「柳も最近は「ヒモダンス」にビビらなくなったじゃない」
「そうですね。吹っ切れました」
「なんだよ、そりゃ」
二人で笑った。
「顕さんの電話の後で、奈津江の墓に行ったんだ」
「そうだったんですか!」
「いつも綺麗にしてくれて、ありがとう」
「いえ! 自分の仕事ですし、私も奈津江さんのお墓は大事にしたいです」
「そうか!」
山手通りから中山道をまっすぐで、非常に単純なコースだ。
俺はハンドルを回しながらぶっ飛ばしていく。
追い抜かれる車が、みんな俺たちを驚いて見ている。
「おお、見てるな」
「はい!」
柳も乗って来た。
20分で着いた。
「スゴイですね!」
「まーなー!」
この車でなければ出来ない。
時速500キロを出す怪物エンジンと、大使館ナンバーが必要だ。
今日は風入れだけで、掃除はしない。
最初に柳は仏壇の花を替え、手を合わせた。
そして掃除をしない日だが雑巾を片手に、窓を開けながらちょくちょく拭いている。
きっと、いつもそうやって手を入れてくれているのだろう。
俺はキッチンでコーヒーを淹れた。
20分ほどで柳が来る。
「異常ありません!」
「おう!」
柳を座らせて、二人でコーヒーを飲んだ。
「今日は奈津江のパンツでも見るかな!」
突然、上の方でバシンという音がした。
「やめとこー」
柳が笑った。
「ここって、本当に奈津江さんがいるみたいですよ」
「ああ、そうだな」
「素敵ですね」
「怖くないのか?」
「平気ですよ! 奈津江さん、ぜったいいい人ですもん!」
「そうか」
俺は笑った。
二人で座るテーブルを見た。
多分昭和のもので、長年使っているのが伺えた。
「ここでさ、顕さんはずっと一人で食事をしてたんだな」
「そうですね」
「辛かったろうな」
「はい」
日本家屋なので、相当窓から光を入れないと薄暗い。
今は柳がカーテンを全て開けているので、明るい。
「今はよ、フィリピンの明るい場所にいる」
「はい」
「明るい女が傍にいる」
「一緒に住んでるんですかね?」
「きっとそうだ!」
「アハハハハハ!」
二人で笑った。
「まあ、でも顕さんのことだ。一緒じゃないかもな」
「聞いてみればいいじゃないですか」
「あ? そんなの、恥ずかしがって大変だぞ」
「アハハハハハ」
ゆっくりコーヒーを飲みながら、風が部屋を通り過ぎるのを感じた。
「そろそろ、お墓に行くか」
「はい!」
柳が戸締りをしに行く。
俺はカップを洗った。
仏壇に行き、線香を炊いた。
いつの間にか柳が横に来て、一緒に手を合わせた。
「ここも綺麗にしてくれてるな」
「はい」
俺たちは顕さんの家を出た。
寺は近くだ。
狭い道もあるので、柳は普段は歩いて行っている。
今日は俺が車で行った。
寺の門前の駐車場に車を入れ、本堂に向かった。
石段の上にある本堂に賽銭を入れて手を合わせる。
「ここって、立派な御寺ですよね」
「ああ。何度か住職に誘われて中に入ったけど、菊池契月とか掛けてあったぞ」
「へぇー!」
「儲かってんだな」
「あはははは」
まあ、そういう寺に奈津江の墓があって嬉しい。
寂れた寺では可哀そうだ。
柳が掃除用具を一式持っている。
雑巾やブラシ、歯ブラシもある。
「あ! お墓が喜んでますよ!」
「え?」
「分かりますよ! よく来てるんですから!」
「そうか」
柳が嬉しそうにしている。
本当にそう感じているのだろう。
「やっぱり石神さんが来たからですね!」
「そうか」
俺も笑った。
柳がすぐに水を汲んで来て掃除を始めた。
本当に手慣れている。
絶対に墓石を傷つけないようにやっている。
「お前が来たから喜んでるんじゃないのか?」
「そんなことないですよ」
柳は手早く終えて、乾拭きをした。
俺が供えた花は、寺の人が片付けてくれたようだ。
柳が水を替え、新しい花を供える。
俺は線香を炊いて、柳と一緒に『般若心経』を唱えた。
「奈津江、今日は柳と来た。こいつはよくやってくれてるだろ?」
「え!」
「柳に任せて本当に良かった。最高だ」
「石神さん……」
俺たちは手を合わせて、墓地を出た。
「よし、横浜で中華を食べよう」
「ほんとですか!」
「ああ。柳と食べるつもりだったんだ」
「嬉しい!」
陳さんの店に向かった。
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