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江の島 ブランニューデイ

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 日曜日。
 朝食の後で麗星を東京駅まで送った。
 双子も一緒にいる。
 たまにはドライブをと思った。

 「じゃあ、麗星さん。本当にお世話になりました」
 「いいえ、こちらこそ。あの、また京都にもいらして下さいね」
 「はい、必ず。麗星さんも、また東京へ」
 「はい!」

 嬉しそうに笑った。
 双子とも抱き合って別れを惜しんだ。
 俺に向いて手を拡げている。
 笑いながら、抱き締めた。
 
 麗星は、トランクを引きながら、改札を潜って行った。
 トランクは一つだ。
 もう一つは宅急便で送った。

 「さて、じゃあどこへ行こうか」
 「タカさんの行きたい所でいいよ!」
 「じゃあ、ラブホか!」
 「「ギャハハハハハ!」」

 まだ朝の10時だ。
 昼食まで余裕がある。

 「江の島とかどうだ?」
 「「いい!」」

 決まった。

 


 首都高、湾岸線を走る。
 海が陽光を反射して輝いて見える。
 双子は海が見えると喜んだ。

 横横道路を飛ばし、朝比奈で降りて鎌倉で休憩した。

 「高徳院の大仏は見たことあるか?」
 「「ない!」」
 「見とけ!」
 「「はい!」」

 拝観料を払い、三人で入った。

 「でっかいね!」
 「いいお顔だね!」

 双子が見上げて言う。

 「俺の遠足の定番だったな」
 「そうなんだ」
 「遠足だけで5回くらい来たんじゃねぇか」
 「そんなに!」
 「小学校で3回、中学で2回か」
 
 ゆっくりと歩いて、様々な角度から眺めた。

 「小学6年の時か。外人がいたんだよ。男女の4人組だった」
 「ふーん」
 「その頃は珍しくてさ。みんなが集まってな。そのうちサインなんか貰ったりして」
 「なんで?」
 「だから珍しかったんだよ! 近所にはエロ神父しかいなかったからな。そいつは俺が追い出しちゃったし」
 「「アハハハハハハ!」」

 俺は今は売店などが並んでいる辺りを指差した。

 「あの辺に、昔は東屋みたいなのがあったんだ。そこのベンチに腰掛けててな。みんながサインをねだった。みんな写生をすることになってたから、スケッチブックとか持ってたからな」
 「そうなんだー」
 「女の子たちが「石神くんも貰ったら?」って言うからさ。俺はスケッチブックに俺の名前と虎の絵を描いて、外人に渡した」
 「「えぇー!」」

 「なんかよ、敗戦の後の「ギブ・ミー・チョコレート」みたいだったからさ、それが嫌だったんだよ」
 「「あぁー!」」
 「外人たちが驚いてさ。俺の虎の絵が気に入ってくれて。「サンキュー!」って言って抱き締めてくれた」
 「すごいね!」
 
 双子がニコニコしていた。
 
 「それで仲良くなってな。俺が4人を案内してやった。俺はベテランだからな!」
 「「アハハハハ!」」
 「もちろん、言葉なんか分からないよ。でも俺が一生懸命に手を引いて説明してやると、喜んでた」
 「タカさんだね!」

 「俺の名前が「高虎」で、「虎」というのはその絵だと言ったら、「タイガー!」って通じてな。俺のことをずっと「タイガー」って呼んでた」
 「「アハハハハ!」」

 一回りした。

 「アラスカの基地建設で、四人の人間に手を借りた。そのうちの一人が「ジャングル・マスター」だ」
 「うん」
 「あいつは若い頃から日本が好きで、何度も来てたんだよ」
 「え、まさか!」
 
 ルーが気付く。

 「そうだ。俺がここを案内してやった外人の一人が「ジャングル・マスター」だったんだ」
 「「!」」
 「それともう一人の女もな。まだお前たちには紹介してないけどな」
 「それって、凄いことだよね!」
 「ああ。俺も驚いた。最初にロックハート家から紹介されたんだ。お互いに初めて会ったのに、見覚えがあるんだよ」
 「「アハハハハハ!」」

 「ジャングル・マスターが俺の顔をじっと見て。俺もどっかで見たヘンな顔だと思って見てた」
 「あの人、凄い顔してるよね!」
 「ジャングル・マスターが最初に気付いて、「タイガーか?」って。もう一人の女が「カマクラ!」って叫んで俺も思い出した」
 「「アハハハハハ!」」

 「もう二人とも即決よな。俺も懐かしくてなぁ。後でジャングル・マスターから、額装された俺の絵を見せてもらった。ガキが描いたものなのに、大切に持っててくれたんだよ」
 「「へぇー!」」

 双子は大仏の内部を見て、「台無しだ」と嘆いた。
 まあ、そんなものだ。

 


 外に出て、近くの甘味に寄った。
 紅イモのソフトクリームを食べる。

 「俺たちはどこでもソフトクリームだな!」
 「「アハハハハハ!」」

 「もう一人の女の人って、何をする人なの?」
 「機械工学の専門家なんだ。アラスカの電動移動車は、その人が作ったんだよ」
 「「ヘェー!」」

 「他にもいろいろとな。ヘッジホッグの基幹部分は、その人の設計だ。あのバカでかいアームの配置や機動はその人がいなければ出来なかっただろう。天才だよ」
 「「ヘェー!」」

 俺たちは店を出て、江の島へ向かった。



 「お前ら、江の島は初めてか?」
 「「はい!」」
 「じゃあ、俺が案内してやろう。でも、名所はいらないよな?」
 「「うん!」」
 「よし!」

 途中で予約した海鮮料理の店に行く。
 とにかく大食いなのだと伝えた。

 「じゃあ、釜揚げしらす丼を3つと海鮮かき揚げ丼を二つ、しらすとカニの卵とじ丼を3つと……」

 メニューを見ながら俺が「最初」の注文をした。

 「あ、それとさざえのつぼ焼き3つと味噌汁三種を3つずつね!」

 注文を取りにきた店員が驚いている。
 
 「「はやくー」」
 
 双子が言い、厨房に行った。

 「釜揚げしらすとかき揚げ、海鮮丼の雰囲気をこれで掴め。あとは自由に注文していいぞ!」
 「「はい!」」

 俺は釜揚げしらす丼と海鮮かき揚げ丼を食べて、あとはゆっくりとさざえのつぼ焼きや汁物を堪能した。

 「おいしいよ!」
 「すごいよ!」

 双子は大喜びで次々に掻き込んで行く。
 店の人が驚いている。

 すぐに注文の品が無くなり、二人で次の注文を出していく。

 1時間も食べて、ようやく双子も落ち着いた。
 俺はテイクアウトでかき揚げやコロッケなどをを50枚頼み、ソフトクリームを注文した。

 店の人が大忙しで「売り切れ」の貼り紙を作っていた。




 店を出て、荷物を一旦ハマーに積んで、また近所を散策した。
 土産物などを見て回り、有名な風鈴の店に連れて行った。
 キラキラ光るガラス細工に、双子が喜んだ。
 自分たち用と土産用を楽しそうに選んで行った。
 俺が支払いをしようとすると、止められた。

 「タカさん、これは私たちが出すから!」
 「そうか?」
 「「うん!」」

 200個ほどもある。
 数千円のものだが、数十万だ。
 ブラックカードを出すと、店の人が驚いた。
 でも、審査が通って、また驚いていた。

 「タカさん! 素敵な買い物が出来たよ!」
 「タカさんって、いろんなとこ知ってるよね!」

 双子がでかい荷物を抱えながら、俺の両腕に抱き着いて来る。
 カワイイ。

 ハマーに積み込んで、帰ることにした。

 「じゃあ、折角だから海を見て行くか!」
 「「うん!」」

 ご機嫌で海へ向かった。

 「綺麗だね!」
 「そうだな」

 三人で肩を組んで海を眺めた。

 「いよいよ海もタカさんの支配下だね!」
 「ワハハハハハハハ!」
 「私たちも、新しくなっていくんだよね!」
 「そうだな!」

 双子といると気持ちいい。

 「シロピョーン!」

 ルーが叫んだ。
 三人で笑った。






 津波が来た。






 江の島の半分が浸水した。
 俺たちはハマーを担いで必死に飛んで逃げた。






 ルーの頭をハーと一緒に引っぱたいた。
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