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生肉人形
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あれは、亜紀ちゃんからみんなで「ドミノ」を一生懸命に作っていたと聞いた後だった。
裏の衣裳部屋に行き、倒れた沢山のドミノを見た。
「あー、私も一緒にやりたかったなー」
楽しかったに違いない。
今度、亜紀ちゃんにもう一度やろうと話してみようと思った。
部屋を出て、戻ろうとすると廊下の奥に何かが置いてあるのを見つけた。
「アレ?」
一番奥の部屋は、石神さんから絶対に入るなと言われている。
吉原龍子さんの遺品が仕舞ってあるそうだ。
「相当ヤバいものも多い。だから絶対に入るな」
そう、石神さんが言った。
その部屋の扉の前に、人形が置いてあった。
小さな、黒人の子どものものだ。
チョコレート色の顔で、野球のユニフォームを着ている。
頭にはどこの球団のものかは知らないが、キャップを被っていた。
目がクリっとしていて非常に愛らしい。
口元が優しい笑顔になっている。
「カワイイ!」
手に取った瞬間、辺りが暗くなった。
「え!」
真っ暗だ。
何が起きたのか分からずに怖かったが、必死で周囲を手探りした。
壁があった。
もっと探るとドアノブが見つかった。
回しても鍵が掛かっている。
でも、ドアノブにつまみがあり、捻ると鍵が開いた。
ゆっくりとドアを開ける。
明るい廊下、さっきまで自分が立っていた廊下だった。
「なにこれ!」
怖くなってすぐに廊下に出てドアを閉めた。
石神さんが言っていた、「絶対に入るな」という部屋だった。
私はすぐに離れ、自分の部屋へ戻った。
誰にも会わなかった。
人形を抱いていた。
自分の部屋に入り、ドアを閉めると少し落ち着いて来た。
人形をデスクに乗せる。
「カワイイね」
人形の頭を撫でた。
人形が微笑んだような気がした。
「これ、どうしよう」
これは、あの廊下で確かに拾ったものだ。
部屋の中ではない。
そういう言い訳が浮かんで来た。
「カワイイよ」
石神さんの家のものなのだから、ちゃんと話さなければならない。
でも、自分との「運命」で出会ったような気がしてならなかった。
そういう思いがどんどん強まり、石神さんに話すのを先延ばしにした。
「ちょっと借りるだけ! 何日か経ったら、ちゃんと話そう」
私は人形に夢中になった。
大学でちゃんと勉強し、家事をやり、石神さんから任されている顕さんの家の掃除もちゃんとやる。
そして、今自分に求められている「対妖魔技」の研究。
これを毎日必死でやった。
あの人形を自分の部屋に置いたことで、石神さんのためにやることを、一層必死にやった。
亜紀ちゃんやルーちゃん、ハーちゃんからはしょっちゅうやり過ぎだと言われた。
家の手伝いはいいからとも言われる。
でも私は尚のこと、やらせてもらった。
そうすることで、あの人形のことを黙っている言い訳にしていた。
食事をしてお風呂に入って部屋に戻る。
あの人形がいつも待っていてくれる。
「終わったよー!」
人形はベッドの枕元に置くようになった。
それを抱き上げてキスをする。
「今日もカワイイね!」
人形に話し掛け、一緒に眠る。
それが毎日の楽しみになっていた。
そのうちに夢を見るようになった。
「対妖魔技」の練習の夢だ。
夢の中で人形が出て来て、一緒に動く。
私がその動きをなぞってみる。
「あ!」
自分の驚く声で目が覚めた。
すぐにベッドを出て、夢の中の動きを真似てみる。
「これは!」
今まで闇雲にやっていたことから、何かが見えた気がした。
その後も何度も、夢の中で人形が教えてくれた。
ある日、三時のお茶に遅れ、一人でお茶を飲んだ。
「もう、柳さん! 三時のお茶はみんなで飲みましょうよ!」
「うん、ごめんね」
「練習に夢中になり過ぎです! 休みながらやらないと、効率も下がりますよ?」
「ごめん。気を付けるから」
「ほんとですよ!」
亜紀ちゃんに怒られた。
私はお茶を飲んで、おやつのクッキーを自分の部屋に持って帰った。
人形をデスクに座らせる。
「いつも夢でいろいろ教えてくれてありがとう。お礼に一枚どう?」
人形の前にティッシュを敷いて一枚置いた。
そのままベッドに横になり、ウトウトした。
ルーちゃんに、夕飯だと呼ばれた。
「あ、ごめんね! 手伝わなかった!」
「いいって。亜紀ちゃんが寝かせてあげようって言ってたよ」
「え!」
「柳ちゃん、さっきも亜紀ちゃんが言ってたけど、無理はダメだって。タカさんも心配してるんだよ?」
「石神さんが!」
「当たり前じゃん! 柳ちゃんのことが大事なんだから」
「そ、そうか!」
超絶、嬉しかった。
部屋を出ようとして、何気なく机を見た。
「あ!」
「なーに?」
「あ、なんでもない」
「ふーん」
人形の前に置いたクッキーが消えていた。
それから時々食べ物を置くようになった。
おやつの残りや食事の残り。
目の前では動かないが、私が眠ったり、他の方を見ている間に消えている。
不思議だった。
そして、食べ物を置くようになってから、夢も頻繁に見るようになった。
私は夢で確かな手応えを感じ、だから食事を置く頻度も量も増えた。
食事は亜紀ちゃんが管理している。
自由に食べてもいいのだが、亜紀ちゃんに必ず断らなければならない。
「亜紀ちゃん、お肉をちょっともらってもいいかな」
「はい! どうぞどうぞ!」
「じゃあ、ちょっとだけ」
私は生肉をちょっと貰った。
「え? それだけですか?」
「うん」
小皿に入れて部屋へ持ち帰った。
何となく、人形が生肉を欲しがっているように感じた。
デスクに人形を置き、小皿の生肉を前に置いた。
私は見ないようにベッドに横たわり、目を閉じた。
5分後。
デスクを見ると、生肉が消えていた。
「やった!」
とても嬉しかった。
人形が欲しがっていたものをあげられたと思った。
夢の中でも本当に喜んでいて、もっと食べたいと仕草で示した。
私も嬉しくなり、毎日生肉を持って行ってあげた。
その週末に、石神さんに呼ばれた。
亜紀ちゃんとハーちゃんもいる。
「柳、最近生肉を欲しがっているそうだな?」
「はい」
「調理をしないで、部屋に持ち込んでるそうじゃないか」
「えーと……」
亜紀ちゃんから聞いたのだろう。
私は返答に困った。
「生で食べてるのか?」
「いえ、そういうわけじゃ」
「タカさん!」
ハーちゃんが叫んだ。
「見えたよ! これは不味いよ!」
石神さんがハーちゃんを見ている。
「柳ちゃん! 正直に言って! 大変なことになってるよ!」
「え?」
「柳! 言え! 生肉を何に使ってる!」
「あの、人形に」
「見えた! ヤバいよ!」
「え?」
石神さんに腕を掴まれた。
そのまま私の部屋へ連れて行かれる。
ハーちゃんが一緒に来る。
ルーちゃんも呼ばれた。
亜紀ちゃんは、リヴィングにいるように、石神さんに言われた。
私は混乱していた。
ドアを開け、石神さんが一人で入る。
「あれか!」
ベッドの人形を見つけた。
「そうだよ! タカさん、気を付けて!」
「なんだ、これは!」
石神さんは一度人形をベッドに置き、自分の部屋へ一旦入った。
すぐに「虎王」を持って戻って来た。
「柳! 何だこれは!」
「はい! すみません!」
石神さんが、「虎王」で人形を両断した。
「石神さん!」
私はあまりのことに叫んだ。
「私の」カワイイ人形が無残に壊された。
しかし、床に落ちた人形を見て、息を呑んだ。
「お前、これをどこから拾ってきた!」
「え、あの……」
「「柳ちゃん!」」
気を喪って倒れた私を、ルーちゃんとハーちゃんが支えてくれた。
目が覚めると、石神さんのベッドの上だった。
「あれ……」
「起きたか、柳」
石神さんが、ベッド脇で椅子に座って私を見ていた。
「大丈夫か?」
「石神さん……」
私は落ち着いて、あの人形のことを話した。
石神さんは黙って聞いていた。
「あの部屋に入ったのか」
「いえ! 確かに廊下で拾ったんです! でも気が付いたら、あの部屋の中で……」
石神さんが、ルーちゃんとハーちゃんを呼んだ。
私を観させる。
「どうだ?」
「もう大丈夫っぽい」
「柳ちゃん、危なかったんだよ!」
私もゾッとしていた。
あれほどカワイらしい人形が、石神さんに斬られて床に落ちた時、鋭い歯をびっしりと生やした猿の人形に変わっていた。
「でも! 夢の中でいろいろ教えてくれたんです! あの「対妖魔技」に凄い進展があったんですよ!」
石神さんは「見せてみろ」と言い、庭に連れ出した。
ルーちゃんとハーちゃん、それに今度は亜紀ちゃんも来る。
亜紀ちゃんが心配そうな顔で私を見ていた。
私は人形に教わった「型」を見せた。
「柳ちゃん、それって違うよ」
「うん。妖魔に自分の生命をあげる技だよ」
「え!」
「あのね、あの人形は生命を吸い取るものだったの」
「そのうちに、柳ちゃんの血とか肉とか欲しがったはずだよ」
「そうなったら、柳ちゃんは多分乗っ取られてた」
「もちろん、死んでたよ」
「そんな!」
石神さんが私を抱き締めてくれた。
「柳、申し訳ない! 俺の責任だ!」
「そ、そんな、石神さん!」
「お前をそんなに危険な目に遭わせてしまった! 本当に済まない!」
「いえ、私が勝手に!」
何故、鍵の掛かっていたはずの部屋に私が入っていたのかは分からない。
石神さんはその後、道間麗星さんを呼んであの部屋について相談された。
麗星さんがドアと部屋に御札を置いたり、色々なことをされた。
詳しくは教えてもらえなかったが、危険なものもあるが、有用に使えるものも多いそうだ。
石神さんは廃棄を口にしていたが、麗星さんから止められた。
廊下にもう一つ頑丈な扉が作られた。
そこにも霊的な結界が設けられている。
特別な監視装置も設置され、近づくと警報が鳴るようになった。
もちろん、私は絶対にもう近づかない。
裏の衣裳部屋に行き、倒れた沢山のドミノを見た。
「あー、私も一緒にやりたかったなー」
楽しかったに違いない。
今度、亜紀ちゃんにもう一度やろうと話してみようと思った。
部屋を出て、戻ろうとすると廊下の奥に何かが置いてあるのを見つけた。
「アレ?」
一番奥の部屋は、石神さんから絶対に入るなと言われている。
吉原龍子さんの遺品が仕舞ってあるそうだ。
「相当ヤバいものも多い。だから絶対に入るな」
そう、石神さんが言った。
その部屋の扉の前に、人形が置いてあった。
小さな、黒人の子どものものだ。
チョコレート色の顔で、野球のユニフォームを着ている。
頭にはどこの球団のものかは知らないが、キャップを被っていた。
目がクリっとしていて非常に愛らしい。
口元が優しい笑顔になっている。
「カワイイ!」
手に取った瞬間、辺りが暗くなった。
「え!」
真っ暗だ。
何が起きたのか分からずに怖かったが、必死で周囲を手探りした。
壁があった。
もっと探るとドアノブが見つかった。
回しても鍵が掛かっている。
でも、ドアノブにつまみがあり、捻ると鍵が開いた。
ゆっくりとドアを開ける。
明るい廊下、さっきまで自分が立っていた廊下だった。
「なにこれ!」
怖くなってすぐに廊下に出てドアを閉めた。
石神さんが言っていた、「絶対に入るな」という部屋だった。
私はすぐに離れ、自分の部屋へ戻った。
誰にも会わなかった。
人形を抱いていた。
自分の部屋に入り、ドアを閉めると少し落ち着いて来た。
人形をデスクに乗せる。
「カワイイね」
人形の頭を撫でた。
人形が微笑んだような気がした。
「これ、どうしよう」
これは、あの廊下で確かに拾ったものだ。
部屋の中ではない。
そういう言い訳が浮かんで来た。
「カワイイよ」
石神さんの家のものなのだから、ちゃんと話さなければならない。
でも、自分との「運命」で出会ったような気がしてならなかった。
そういう思いがどんどん強まり、石神さんに話すのを先延ばしにした。
「ちょっと借りるだけ! 何日か経ったら、ちゃんと話そう」
私は人形に夢中になった。
大学でちゃんと勉強し、家事をやり、石神さんから任されている顕さんの家の掃除もちゃんとやる。
そして、今自分に求められている「対妖魔技」の研究。
これを毎日必死でやった。
あの人形を自分の部屋に置いたことで、石神さんのためにやることを、一層必死にやった。
亜紀ちゃんやルーちゃん、ハーちゃんからはしょっちゅうやり過ぎだと言われた。
家の手伝いはいいからとも言われる。
でも私は尚のこと、やらせてもらった。
そうすることで、あの人形のことを黙っている言い訳にしていた。
食事をしてお風呂に入って部屋に戻る。
あの人形がいつも待っていてくれる。
「終わったよー!」
人形はベッドの枕元に置くようになった。
それを抱き上げてキスをする。
「今日もカワイイね!」
人形に話し掛け、一緒に眠る。
それが毎日の楽しみになっていた。
そのうちに夢を見るようになった。
「対妖魔技」の練習の夢だ。
夢の中で人形が出て来て、一緒に動く。
私がその動きをなぞってみる。
「あ!」
自分の驚く声で目が覚めた。
すぐにベッドを出て、夢の中の動きを真似てみる。
「これは!」
今まで闇雲にやっていたことから、何かが見えた気がした。
その後も何度も、夢の中で人形が教えてくれた。
ある日、三時のお茶に遅れ、一人でお茶を飲んだ。
「もう、柳さん! 三時のお茶はみんなで飲みましょうよ!」
「うん、ごめんね」
「練習に夢中になり過ぎです! 休みながらやらないと、効率も下がりますよ?」
「ごめん。気を付けるから」
「ほんとですよ!」
亜紀ちゃんに怒られた。
私はお茶を飲んで、おやつのクッキーを自分の部屋に持って帰った。
人形をデスクに座らせる。
「いつも夢でいろいろ教えてくれてありがとう。お礼に一枚どう?」
人形の前にティッシュを敷いて一枚置いた。
そのままベッドに横になり、ウトウトした。
ルーちゃんに、夕飯だと呼ばれた。
「あ、ごめんね! 手伝わなかった!」
「いいって。亜紀ちゃんが寝かせてあげようって言ってたよ」
「え!」
「柳ちゃん、さっきも亜紀ちゃんが言ってたけど、無理はダメだって。タカさんも心配してるんだよ?」
「石神さんが!」
「当たり前じゃん! 柳ちゃんのことが大事なんだから」
「そ、そうか!」
超絶、嬉しかった。
部屋を出ようとして、何気なく机を見た。
「あ!」
「なーに?」
「あ、なんでもない」
「ふーん」
人形の前に置いたクッキーが消えていた。
それから時々食べ物を置くようになった。
おやつの残りや食事の残り。
目の前では動かないが、私が眠ったり、他の方を見ている間に消えている。
不思議だった。
そして、食べ物を置くようになってから、夢も頻繁に見るようになった。
私は夢で確かな手応えを感じ、だから食事を置く頻度も量も増えた。
食事は亜紀ちゃんが管理している。
自由に食べてもいいのだが、亜紀ちゃんに必ず断らなければならない。
「亜紀ちゃん、お肉をちょっともらってもいいかな」
「はい! どうぞどうぞ!」
「じゃあ、ちょっとだけ」
私は生肉をちょっと貰った。
「え? それだけですか?」
「うん」
小皿に入れて部屋へ持ち帰った。
何となく、人形が生肉を欲しがっているように感じた。
デスクに人形を置き、小皿の生肉を前に置いた。
私は見ないようにベッドに横たわり、目を閉じた。
5分後。
デスクを見ると、生肉が消えていた。
「やった!」
とても嬉しかった。
人形が欲しがっていたものをあげられたと思った。
夢の中でも本当に喜んでいて、もっと食べたいと仕草で示した。
私も嬉しくなり、毎日生肉を持って行ってあげた。
その週末に、石神さんに呼ばれた。
亜紀ちゃんとハーちゃんもいる。
「柳、最近生肉を欲しがっているそうだな?」
「はい」
「調理をしないで、部屋に持ち込んでるそうじゃないか」
「えーと……」
亜紀ちゃんから聞いたのだろう。
私は返答に困った。
「生で食べてるのか?」
「いえ、そういうわけじゃ」
「タカさん!」
ハーちゃんが叫んだ。
「見えたよ! これは不味いよ!」
石神さんがハーちゃんを見ている。
「柳ちゃん! 正直に言って! 大変なことになってるよ!」
「え?」
「柳! 言え! 生肉を何に使ってる!」
「あの、人形に」
「見えた! ヤバいよ!」
「え?」
石神さんに腕を掴まれた。
そのまま私の部屋へ連れて行かれる。
ハーちゃんが一緒に来る。
ルーちゃんも呼ばれた。
亜紀ちゃんは、リヴィングにいるように、石神さんに言われた。
私は混乱していた。
ドアを開け、石神さんが一人で入る。
「あれか!」
ベッドの人形を見つけた。
「そうだよ! タカさん、気を付けて!」
「なんだ、これは!」
石神さんは一度人形をベッドに置き、自分の部屋へ一旦入った。
すぐに「虎王」を持って戻って来た。
「柳! 何だこれは!」
「はい! すみません!」
石神さんが、「虎王」で人形を両断した。
「石神さん!」
私はあまりのことに叫んだ。
「私の」カワイイ人形が無残に壊された。
しかし、床に落ちた人形を見て、息を呑んだ。
「お前、これをどこから拾ってきた!」
「え、あの……」
「「柳ちゃん!」」
気を喪って倒れた私を、ルーちゃんとハーちゃんが支えてくれた。
目が覚めると、石神さんのベッドの上だった。
「あれ……」
「起きたか、柳」
石神さんが、ベッド脇で椅子に座って私を見ていた。
「大丈夫か?」
「石神さん……」
私は落ち着いて、あの人形のことを話した。
石神さんは黙って聞いていた。
「あの部屋に入ったのか」
「いえ! 確かに廊下で拾ったんです! でも気が付いたら、あの部屋の中で……」
石神さんが、ルーちゃんとハーちゃんを呼んだ。
私を観させる。
「どうだ?」
「もう大丈夫っぽい」
「柳ちゃん、危なかったんだよ!」
私もゾッとしていた。
あれほどカワイらしい人形が、石神さんに斬られて床に落ちた時、鋭い歯をびっしりと生やした猿の人形に変わっていた。
「でも! 夢の中でいろいろ教えてくれたんです! あの「対妖魔技」に凄い進展があったんですよ!」
石神さんは「見せてみろ」と言い、庭に連れ出した。
ルーちゃんとハーちゃん、それに今度は亜紀ちゃんも来る。
亜紀ちゃんが心配そうな顔で私を見ていた。
私は人形に教わった「型」を見せた。
「柳ちゃん、それって違うよ」
「うん。妖魔に自分の生命をあげる技だよ」
「え!」
「あのね、あの人形は生命を吸い取るものだったの」
「そのうちに、柳ちゃんの血とか肉とか欲しがったはずだよ」
「そうなったら、柳ちゃんは多分乗っ取られてた」
「もちろん、死んでたよ」
「そんな!」
石神さんが私を抱き締めてくれた。
「柳、申し訳ない! 俺の責任だ!」
「そ、そんな、石神さん!」
「お前をそんなに危険な目に遭わせてしまった! 本当に済まない!」
「いえ、私が勝手に!」
何故、鍵の掛かっていたはずの部屋に私が入っていたのかは分からない。
石神さんはその後、道間麗星さんを呼んであの部屋について相談された。
麗星さんがドアと部屋に御札を置いたり、色々なことをされた。
詳しくは教えてもらえなかったが、危険なものもあるが、有用に使えるものも多いそうだ。
石神さんは廃棄を口にしていたが、麗星さんから止められた。
廊下にもう一つ頑丈な扉が作られた。
そこにも霊的な結界が設けられている。
特別な監視装置も設置され、近づくと警報が鳴るようになった。
もちろん、私は絶対にもう近づかない。
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