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青森 ねぶた祭
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道間家からの帰り道、折角だからと風花の所へ顔を出そうと思った。
大阪の街の大きな薬局の前で止まり、亜紀ちゃんに買い物をさせる。
レジ袋を持って戻って来た亜紀ちゃんを乗せ、風花のマンションに向かった。
皇紀に風花へ連絡させている。
俺たちはみんなでエレベーターに分乗し、風花の部屋のチャイムを押す。
「こんにちは! わぁーこんな大勢で!」
「ああ、すぐに帰るからな」
「どうぞ中へ」
玄関が俺たちの靴で一杯になった。
重ねて並べる。
リヴィングでも全員は座れない。
紅茶を淹れる風花を、皇紀が手伝った。
ロボはミルクをもらう。
「元気そうだな!」
「はい、お陰様で。みなさんでどちらへ?」
「ああ、京都の道間家にな。今その帰りなんだ」
「そうなんですか」
簡単に近況を聞き、俺たちはすぐに帰ることにした。
「じゃあな! 何かあったら絶対に言うんだぞ!」
「はい! でも、もうお帰りなんですか?」
「綺麗な風花の顔を見たからな。ああ、荷物を一つ置いて行くぞ」
「はい?」
亜紀ちゃんがのほほんとしている皇紀の顎に、強烈なアッパーを喰らわせた。
「ゲフッ!」
一瞬で脳震盪を起こし、皇紀が気絶した。
「亜紀さん!」
「じゃあ、これ」
「へ?」
亜紀ちゃんが薬局で買ったレジ袋を風花に渡した。
風花が中を見る。
「何ですか、これ!」
「じゃあ、後は宜しく」
「ちょ、ちょっと、亜紀さん! 石神さん!」
俺たちは笑って次々に外へ出た。
「ちょっと待って下さい! 皇紀さんは!」
「悪いが、一晩泊めてやってくれ。明日はゆっくりでいいって伝えてくれよ」
「石神さん、困ります!」
「困らないだろ?」
俺がそう言うと、双子が「ギャハハハハハハ!」と笑った。
「ああ、カメラを持ってたよな! 動画を送ってくれ!」
「何言ってんですか、石神さん!」
「一応死んでないとは思うけど、確認してくれよ」
「え! ちょっと! え!」
風花が慌てて中へ入った。
みんなで笑いながら帰った。
途中、静岡で鰻を食べた。
みんな初めてだったので、その美味さに驚いた。
「麗星さんの所でも頂きましたけど、これは次元が違いますね!」
「麗星さんのが最高だと思ってましたけど、ここが最高なんですね」
亜紀ちゃんと柳が口々に言う。
双子が涙を流しながら食べていた。
「タカさん、おいしーよー!」
「もう他の鰻が食べられないよー!」
絶対に喰う。
一江と大森は前に連れて来たこともあるが、やはり感動していた。
「部長」
「あんだよ」
「ありがとうございました」
一江が俺に言った。
「何言ってんだ。お前の顔面を借りてありがたいのは俺の方だろう」
「部長、私、必要無かったじゃないですか」
「必要だよ。一江がいたから京都で体調を崩さないで済んだんだ」
「いいえ、部長はもう大丈夫でしょ?」
「なに?」
「もう奈津江さんとのことは乗り越えてるじゃないですか」
「おい、一江よ」
一江が笑っていた。
「分かりますよ。結構長い付き合いですからね。こないだはちょっと必要だったかもしれませんが、あの時だって部長は私の学会のために来てくれたんでしょう」
「そんなことはねぇよ」
「今回はもっとそうだった。妖子のことがあったんで、私を連れて来てくれたんですよね?」
「違ぇよ」
「ウフフフフ」
「アハハハハ!」
俺も笑った。
「まあ、今後もなるべくお前を連れて行くからな。大森、悪いが付き合ってくれ」
「はい!」
「部長、私はもういいですよ。十分です」
「そんなことを言うな。頼むからさ」
「分かりました」
子どもたちがお替りを頼もうとしていたので、慌てて止めた。
「ここは一杯だけだ! 時間を掛けて丁寧に作るんだからな。これ以上迷惑は掛けられねぇ」
文句を言い掛けたが、これだけ美味しいのならばと諦めた。
食べたばかりなのに、亜紀ちゃんが家の食材を話し、子どもたちと何を作ろうか相談している。
俺と一江、大森で大笑いした。
一江と大森を送り、8時頃に家に着いた。
荷物班と料理班に分かれ、素早く行動していた。
ロボは車の中で白焼きを食べ、俺も腹は減っていない。
ロボと俺の部屋へ行き、俺は用意された風呂に入った。
風呂から上がり、リヴィングへ行くと子どもたちは豚の生姜焼きを食べていた。
ちゃんとご飯も炊き、味噌汁も作っている。
うちは雑な食事をしない。
「あ、タカさん! 何かおつまみを作りますね!」
亜紀ちゃんが生姜焼きを大量に丼に乗せ、掻き込んでからキッチンに立つ。
柳がワイルドターキーとロックのセットを持って来る。
「おう、ありがとうな!」
双子は最後に残った生姜焼きをたいらげ、洗物に入った。
俺がロックを作っている間に、亜紀ちゃんが豆腐を切って持って来た。
すぐに戻って、ハモンセラーノや生ハムを何種類か皿に乗せる。
同じ皿にマスカットの粒を乗せた。
柳もししゃもを焼いた。
「ゆっくり飲んでて下さいね! すぐにお風呂に入って来ますから!」
俺は笑って、急がないでいいと言った。
明日は祝日で休みだ。
今日はゆっくりと飲むつもりだった。
ししゃもの匂いを嗅いだか、ロボも降りて来た。
俺はササミを一本焼いてやる。
日本酒も皿に注いでやり、一緒にゆっくりと飲んだ。
亜紀ちゃんと柳が一緒に上がって来て、亜紀ちゃんはビールを、柳は梅酒を用意した。
テーブルに付く。
「「「かんぱーい!」」」
「にゃー」
亜紀ちゃんと柳がしゃがんでロボの皿にグラスを当てた。
「あー! 疲れましたね!」
「お前ら、本当に喰ってただけだろう!」
「「アハハハハハ!」」
まあ、別にいいのだが。
「タカさん、体調は大丈夫ですか?」
「ああ、一江がいたからな」
「でも、一江さんは自分は必要無かったって」
「そんなことはねぇよ。一江の顔面をバカにするな!」
「してませんよ!」
俺は笑った。
「まあ、でもな。本当に俺の中で、京都は大分楽になったんだよ」
「そうですかー」
「いろいろあったしなぁ。道間家とは今後も付き合って行くしな」
「前回は本当にダメだったですよね。あれを見て、若い頃のタカさんがどれほど苦しんでいたかと、改めて思いましたよ」
「俺は今でも若ぇ!」
「あ、すみません」
柳が笑った。
「奈津江が死んだ一年くらいは確かにな。俺も生きているのが嫌になる程だったよ」
「そうですか」
俺は思い出していた。
大阪の街の大きな薬局の前で止まり、亜紀ちゃんに買い物をさせる。
レジ袋を持って戻って来た亜紀ちゃんを乗せ、風花のマンションに向かった。
皇紀に風花へ連絡させている。
俺たちはみんなでエレベーターに分乗し、風花の部屋のチャイムを押す。
「こんにちは! わぁーこんな大勢で!」
「ああ、すぐに帰るからな」
「どうぞ中へ」
玄関が俺たちの靴で一杯になった。
重ねて並べる。
リヴィングでも全員は座れない。
紅茶を淹れる風花を、皇紀が手伝った。
ロボはミルクをもらう。
「元気そうだな!」
「はい、お陰様で。みなさんでどちらへ?」
「ああ、京都の道間家にな。今その帰りなんだ」
「そうなんですか」
簡単に近況を聞き、俺たちはすぐに帰ることにした。
「じゃあな! 何かあったら絶対に言うんだぞ!」
「はい! でも、もうお帰りなんですか?」
「綺麗な風花の顔を見たからな。ああ、荷物を一つ置いて行くぞ」
「はい?」
亜紀ちゃんがのほほんとしている皇紀の顎に、強烈なアッパーを喰らわせた。
「ゲフッ!」
一瞬で脳震盪を起こし、皇紀が気絶した。
「亜紀さん!」
「じゃあ、これ」
「へ?」
亜紀ちゃんが薬局で買ったレジ袋を風花に渡した。
風花が中を見る。
「何ですか、これ!」
「じゃあ、後は宜しく」
「ちょ、ちょっと、亜紀さん! 石神さん!」
俺たちは笑って次々に外へ出た。
「ちょっと待って下さい! 皇紀さんは!」
「悪いが、一晩泊めてやってくれ。明日はゆっくりでいいって伝えてくれよ」
「石神さん、困ります!」
「困らないだろ?」
俺がそう言うと、双子が「ギャハハハハハハ!」と笑った。
「ああ、カメラを持ってたよな! 動画を送ってくれ!」
「何言ってんですか、石神さん!」
「一応死んでないとは思うけど、確認してくれよ」
「え! ちょっと! え!」
風花が慌てて中へ入った。
みんなで笑いながら帰った。
途中、静岡で鰻を食べた。
みんな初めてだったので、その美味さに驚いた。
「麗星さんの所でも頂きましたけど、これは次元が違いますね!」
「麗星さんのが最高だと思ってましたけど、ここが最高なんですね」
亜紀ちゃんと柳が口々に言う。
双子が涙を流しながら食べていた。
「タカさん、おいしーよー!」
「もう他の鰻が食べられないよー!」
絶対に喰う。
一江と大森は前に連れて来たこともあるが、やはり感動していた。
「部長」
「あんだよ」
「ありがとうございました」
一江が俺に言った。
「何言ってんだ。お前の顔面を借りてありがたいのは俺の方だろう」
「部長、私、必要無かったじゃないですか」
「必要だよ。一江がいたから京都で体調を崩さないで済んだんだ」
「いいえ、部長はもう大丈夫でしょ?」
「なに?」
「もう奈津江さんとのことは乗り越えてるじゃないですか」
「おい、一江よ」
一江が笑っていた。
「分かりますよ。結構長い付き合いですからね。こないだはちょっと必要だったかもしれませんが、あの時だって部長は私の学会のために来てくれたんでしょう」
「そんなことはねぇよ」
「今回はもっとそうだった。妖子のことがあったんで、私を連れて来てくれたんですよね?」
「違ぇよ」
「ウフフフフ」
「アハハハハ!」
俺も笑った。
「まあ、今後もなるべくお前を連れて行くからな。大森、悪いが付き合ってくれ」
「はい!」
「部長、私はもういいですよ。十分です」
「そんなことを言うな。頼むからさ」
「分かりました」
子どもたちがお替りを頼もうとしていたので、慌てて止めた。
「ここは一杯だけだ! 時間を掛けて丁寧に作るんだからな。これ以上迷惑は掛けられねぇ」
文句を言い掛けたが、これだけ美味しいのならばと諦めた。
食べたばかりなのに、亜紀ちゃんが家の食材を話し、子どもたちと何を作ろうか相談している。
俺と一江、大森で大笑いした。
一江と大森を送り、8時頃に家に着いた。
荷物班と料理班に分かれ、素早く行動していた。
ロボは車の中で白焼きを食べ、俺も腹は減っていない。
ロボと俺の部屋へ行き、俺は用意された風呂に入った。
風呂から上がり、リヴィングへ行くと子どもたちは豚の生姜焼きを食べていた。
ちゃんとご飯も炊き、味噌汁も作っている。
うちは雑な食事をしない。
「あ、タカさん! 何かおつまみを作りますね!」
亜紀ちゃんが生姜焼きを大量に丼に乗せ、掻き込んでからキッチンに立つ。
柳がワイルドターキーとロックのセットを持って来る。
「おう、ありがとうな!」
双子は最後に残った生姜焼きをたいらげ、洗物に入った。
俺がロックを作っている間に、亜紀ちゃんが豆腐を切って持って来た。
すぐに戻って、ハモンセラーノや生ハムを何種類か皿に乗せる。
同じ皿にマスカットの粒を乗せた。
柳もししゃもを焼いた。
「ゆっくり飲んでて下さいね! すぐにお風呂に入って来ますから!」
俺は笑って、急がないでいいと言った。
明日は祝日で休みだ。
今日はゆっくりと飲むつもりだった。
ししゃもの匂いを嗅いだか、ロボも降りて来た。
俺はササミを一本焼いてやる。
日本酒も皿に注いでやり、一緒にゆっくりと飲んだ。
亜紀ちゃんと柳が一緒に上がって来て、亜紀ちゃんはビールを、柳は梅酒を用意した。
テーブルに付く。
「「「かんぱーい!」」」
「にゃー」
亜紀ちゃんと柳がしゃがんでロボの皿にグラスを当てた。
「あー! 疲れましたね!」
「お前ら、本当に喰ってただけだろう!」
「「アハハハハハ!」」
まあ、別にいいのだが。
「タカさん、体調は大丈夫ですか?」
「ああ、一江がいたからな」
「でも、一江さんは自分は必要無かったって」
「そんなことはねぇよ。一江の顔面をバカにするな!」
「してませんよ!」
俺は笑った。
「まあ、でもな。本当に俺の中で、京都は大分楽になったんだよ」
「そうですかー」
「いろいろあったしなぁ。道間家とは今後も付き合って行くしな」
「前回は本当にダメだったですよね。あれを見て、若い頃のタカさんがどれほど苦しんでいたかと、改めて思いましたよ」
「俺は今でも若ぇ!」
「あ、すみません」
柳が笑った。
「奈津江が死んだ一年くらいは確かにな。俺も生きているのが嫌になる程だったよ」
「そうですか」
俺は思い出していた。
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