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別荘の日々 XⅥ: ハチのムサシは……
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翌朝。
今日は月曜日だ。
朝食の後で、亜紀ちゃんが食材の相談に来た。
「どうだ?」
「はい、もうちょっとお肉が欲しいですかね」
「今晩はフレンチの予定だろ?」
「そうは言っても、結局みんなお肉を焼きますし」
「まあ、いいけどなぁ」
「店長さんに相談してみますね」
「そうだなぁ」
双子が来て、何か獲って来ようかというので、絶対やめろと言った。
まあ、子どもたちに我慢はさせたくない。
亜紀ちゃんに電話させようとすると、俺のスマホに電話が来た。
スーパーの店長さんだった。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます。何かありましたか?」
「実はご相談が」
話を聞くと、ある客から山形牛を頼まれて仕入れたのだが、急にキャンセルされてしまったとのことだった。
「もしも石神先生のお宅で御入用ならと思いまして」
「そうなんですか! 丁度娘と追加の肉を頼もうと相談していた所なんですよ」
「本当でございますか!」
「30キロくらいなんですが」
「ございます! 本当に助かりました」
「こちらこそ」
「もちろん、御値引させていただきますので」
「ありがとうございます」
亜紀ちゃんに話すと、大喜びだった。
肉はすぐに届けてくれると言っていた。
「他の食材は大丈夫だよな?」
「はい!」
「柳!」
「はい!」
「昨日のダンスは幸運を呼ぶようだぞ!」
「……」
柳が泣きそうな顔をしていた。
俺はロボを連れて散歩に行った。
「ばーん」をやらせるためだ。
ロボは嬉しがって、俺の前を走って行く。
少し先で立ち止まり、振り向いて俺を待っている。
カワイイ。
何度か繰り返し、ロボも疲れたのか一緒にゆっくりと歩く。
陽が高くなってきたが、木々に遮られ、道は涼しい。
前に来た、少し開けた場所に出る。
「おい、ちっちゃいのだぞー。無駄だろうけどなー」
ロボは尾を割り、激しい放電を始めた。
「でかいぞー」
目を輝かせ、口の前に光球を生み出す。
「それ、でっかいぞー」
光球が上に吹っ飛んで行く。
ドッグァァァァーーーーン!
巨大な閃光と共に、光の帯が無数に拡がって行った。
「やっぱ、今日も全力かよ」
ロボが俺に駆け寄り、足に身体をこすりつける。
俺はロボを抱き上げ、少し先の林で休んだ。
レジャーシートを敷き、ロボにミルクを皿に注いでやった。
ドサ。
「ん? なんだ?」
何か落ちて来た。
ロボも見ている。
一緒に近づくと、ミツバチだった。
体長50センチだったが。
「なんだ、こいつ?」
身体が痙攣している。
また、あっち系か。
「「ばーん」にやられたか?」
「にゃ」
ロボが近付いて匂いを嗅いだ。
「どうだ、何か分かったか?」
「にゃ」
分からん。
ミツバチがこっちを向いた。
痙攣しながら、下顎を左右に動かしている。
空を見上げたが、仲間らしいものはいない。
「あ! 「みなしごハッチ」だ!」
「……」
虫の表情は分からないが、心なし呆気に取られたような気がする。
「仕方ねぇ。これをやるから勘弁してくれ。うちのロボが悪かったな」
俺はポケットからピルケースを出し、「Ω」の粉末とオロチの抜け殻を練り込んだ丸薬を取り出した。
俺たちは万一の事態のために、全員が常に携行している。
一粒を下顎に入れた。
「あー、呑み込めないかー」
ロボが爪を出した。
スボッ。
丸薬を押し込んだ。
「おし! これで貸し借りなしな!」
なんだか分からんが、そういうことにした。
俺たちはシートを畳んで帰った。
帰りはロボがフヨフヨと空中に浮くので、俺がお尻を軽く押しながら歩いた。
ぽふ……スゥー……ぽふ……スゥー……
ロボが喜んだ。
昼食は、子どもたちが大量のおにぎりと総菜を作っていた。
ピクニックだ。
俺と響子とロボが荷台に乗り、子どもたちに轢かせる。
皇紀にサスペンションを工夫させ、去年のような振動はもう無い。
「響子、乗り心地が良くなったろう?」
「うん!」
響子はニコニコして荷台のベンチシートに座っている。
ロボは響子の膝に上半身を乗せて気持ちよさそうだ。
みんなで倒木の広場まで行き、子どもたちがレジャーシートを敷いて食事の準備をする。
ウメ、オカカ、鮭、コンブ、肉みそ、シーチキン、様々な具のおにぎりと、俺が大好きな稲荷。
それに大量の唐揚げやだし巻き卵、ハムなど。
シンプルだが、外で食べるのはこういうものがいい。
亜紀ちゃんがお茶を配り、みんなでゆったりと食べる。
食べ終わると横になって寝たり、みんなで遊ぶ。
柳は真面目に、対妖魔用の技を磨いている。
六花が響子に「股間のヒモ」ダンスを教えていた。
楽しそうだ。
柳が辛そうな顔をする。
「あ!」
ハーが叫んだ。
でかいハチが飛んで来た。
「てきしゅうー!」
「六花さん! 響子ちゃんを守って!」
ハーが叫び、亜紀ちゃんが構えて言った。
《さきほどは助けていただい……》
「おい、待て!」
俺は叫んだが遅かった。
柳が未完成の技を撃った。
ハチに命中した。
ドサ。
「……」
「にゃー……」
「柳さん、やったぁー!」
「エヘヘヘヘ」
俺とロボが近付いても、ハチは動かなかった。
俺はハチの身体を持ち上げた。
「捨ててくるな」
「「「「「はーい!」」」」」
ポケットから丸薬を取り出し、ロボがまた口の中に押し込んだ。
「悪いな」
小声で呟き、ハチを林の中に横たえた。
帰りの荷台で、俺は歌った。
♪ ハチーのムサシは死んだのさー はたーけのひだまりつちのうえー ♪
今日は月曜日だ。
朝食の後で、亜紀ちゃんが食材の相談に来た。
「どうだ?」
「はい、もうちょっとお肉が欲しいですかね」
「今晩はフレンチの予定だろ?」
「そうは言っても、結局みんなお肉を焼きますし」
「まあ、いいけどなぁ」
「店長さんに相談してみますね」
「そうだなぁ」
双子が来て、何か獲って来ようかというので、絶対やめろと言った。
まあ、子どもたちに我慢はさせたくない。
亜紀ちゃんに電話させようとすると、俺のスマホに電話が来た。
スーパーの店長さんだった。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます。何かありましたか?」
「実はご相談が」
話を聞くと、ある客から山形牛を頼まれて仕入れたのだが、急にキャンセルされてしまったとのことだった。
「もしも石神先生のお宅で御入用ならと思いまして」
「そうなんですか! 丁度娘と追加の肉を頼もうと相談していた所なんですよ」
「本当でございますか!」
「30キロくらいなんですが」
「ございます! 本当に助かりました」
「こちらこそ」
「もちろん、御値引させていただきますので」
「ありがとうございます」
亜紀ちゃんに話すと、大喜びだった。
肉はすぐに届けてくれると言っていた。
「他の食材は大丈夫だよな?」
「はい!」
「柳!」
「はい!」
「昨日のダンスは幸運を呼ぶようだぞ!」
「……」
柳が泣きそうな顔をしていた。
俺はロボを連れて散歩に行った。
「ばーん」をやらせるためだ。
ロボは嬉しがって、俺の前を走って行く。
少し先で立ち止まり、振り向いて俺を待っている。
カワイイ。
何度か繰り返し、ロボも疲れたのか一緒にゆっくりと歩く。
陽が高くなってきたが、木々に遮られ、道は涼しい。
前に来た、少し開けた場所に出る。
「おい、ちっちゃいのだぞー。無駄だろうけどなー」
ロボは尾を割り、激しい放電を始めた。
「でかいぞー」
目を輝かせ、口の前に光球を生み出す。
「それ、でっかいぞー」
光球が上に吹っ飛んで行く。
ドッグァァァァーーーーン!
巨大な閃光と共に、光の帯が無数に拡がって行った。
「やっぱ、今日も全力かよ」
ロボが俺に駆け寄り、足に身体をこすりつける。
俺はロボを抱き上げ、少し先の林で休んだ。
レジャーシートを敷き、ロボにミルクを皿に注いでやった。
ドサ。
「ん? なんだ?」
何か落ちて来た。
ロボも見ている。
一緒に近づくと、ミツバチだった。
体長50センチだったが。
「なんだ、こいつ?」
身体が痙攣している。
また、あっち系か。
「「ばーん」にやられたか?」
「にゃ」
ロボが近付いて匂いを嗅いだ。
「どうだ、何か分かったか?」
「にゃ」
分からん。
ミツバチがこっちを向いた。
痙攣しながら、下顎を左右に動かしている。
空を見上げたが、仲間らしいものはいない。
「あ! 「みなしごハッチ」だ!」
「……」
虫の表情は分からないが、心なし呆気に取られたような気がする。
「仕方ねぇ。これをやるから勘弁してくれ。うちのロボが悪かったな」
俺はポケットからピルケースを出し、「Ω」の粉末とオロチの抜け殻を練り込んだ丸薬を取り出した。
俺たちは万一の事態のために、全員が常に携行している。
一粒を下顎に入れた。
「あー、呑み込めないかー」
ロボが爪を出した。
スボッ。
丸薬を押し込んだ。
「おし! これで貸し借りなしな!」
なんだか分からんが、そういうことにした。
俺たちはシートを畳んで帰った。
帰りはロボがフヨフヨと空中に浮くので、俺がお尻を軽く押しながら歩いた。
ぽふ……スゥー……ぽふ……スゥー……
ロボが喜んだ。
昼食は、子どもたちが大量のおにぎりと総菜を作っていた。
ピクニックだ。
俺と響子とロボが荷台に乗り、子どもたちに轢かせる。
皇紀にサスペンションを工夫させ、去年のような振動はもう無い。
「響子、乗り心地が良くなったろう?」
「うん!」
響子はニコニコして荷台のベンチシートに座っている。
ロボは響子の膝に上半身を乗せて気持ちよさそうだ。
みんなで倒木の広場まで行き、子どもたちがレジャーシートを敷いて食事の準備をする。
ウメ、オカカ、鮭、コンブ、肉みそ、シーチキン、様々な具のおにぎりと、俺が大好きな稲荷。
それに大量の唐揚げやだし巻き卵、ハムなど。
シンプルだが、外で食べるのはこういうものがいい。
亜紀ちゃんがお茶を配り、みんなでゆったりと食べる。
食べ終わると横になって寝たり、みんなで遊ぶ。
柳は真面目に、対妖魔用の技を磨いている。
六花が響子に「股間のヒモ」ダンスを教えていた。
楽しそうだ。
柳が辛そうな顔をする。
「あ!」
ハーが叫んだ。
でかいハチが飛んで来た。
「てきしゅうー!」
「六花さん! 響子ちゃんを守って!」
ハーが叫び、亜紀ちゃんが構えて言った。
《さきほどは助けていただい……》
「おい、待て!」
俺は叫んだが遅かった。
柳が未完成の技を撃った。
ハチに命中した。
ドサ。
「……」
「にゃー……」
「柳さん、やったぁー!」
「エヘヘヘヘ」
俺とロボが近付いても、ハチは動かなかった。
俺はハチの身体を持ち上げた。
「捨ててくるな」
「「「「「はーい!」」」」」
ポケットから丸薬を取り出し、ロボがまた口の中に押し込んだ。
「悪いな」
小声で呟き、ハチを林の中に横たえた。
帰りの荷台で、俺は歌った。
♪ ハチーのムサシは死んだのさー はたーけのひだまりつちのうえー ♪
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