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別荘の日々 XⅤ: ヒモ! ヒモ!

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 話し終えると、子どもたちが俺をじっと見ている。

 「なんだよ?」
 「階段落ち……」
 「あ?」

 「なんか、タカさんのお父さんって、タカさんにそっくりだよね」

 ルーが言った。

 「どうして?」
 「だってすぐ殴るし」
 「酷いことした相手には「階段から落ちたことにしろ」って言ったり」
 
 ルーとハーが次々に言う。
 まあ、言われてみれば。

 「お前らも、散々なイタズラをしてくれたよなぁ」
 「「アハハハハハ!」」

 「借りたフェラーリ、ぶっ壊したよな」
 「「アハハハハハ!」」

 「子どもの頃のタカさんにそっくりですよね」

 亜紀ちゃんが言う。
 まあ、言われてみれば。

 「俺は親父の教育法しか知らないからな。もう、しょうがねぇと思ってくれ」
 「え、でもお母さんは優しかったんですよね」
 「お父さんしかいねぇだろう!」

 「「「「ワハハハハハハ!」」」」

 まあ、そういうことだ。

 「まあ、家庭の役割分担なんだけどな。父親は厳しく、母親は優しくというな。愛情というのは、両面があるんだ。それを両親が分担して、思い切り子どもに与えてやる。俺は独身だから、申し訳ないな」
 「そんなことないです!」
 
 皇紀が言った。

 「こういう場合は、お姉ちゃんが優しくすればいいんだけどよ」

 三人が亜紀ちゃんを見る。

 「優しいよな!」
 「「「アハハハハハ!」」」
 「なによ!」

 「響子には、俺と六花がいるけどな」
 「エヘヘヘヘ」

 響子が嬉しそうに笑う。

 「まあ、響子には二人とも甘々だけどなぁ」
 「うん!」

 アルも静江さんも、そうだっただろう。

 「御堂もそんな感じだよな」
 「そうですね。父にはあまり叱られたことはありません。母の方が多少は」
 「御堂は優しいからな!」
 「アハハハハ!」

 「俺もあいつが怒ったのを見たことが無い。まあ、唯一知ってるのは「マンモスの牙隊」か」

 みんなが爆笑した。
 響子も知っている。

 「俺なんかはどうでもいいんだけどな。でも、御堂には絶対に許せないらしいな」
 「石神さんは、平気なんですか?」
 「平気というか、もちろん一緒にはいたくないよ」
 「最初に見た時には、必死で逃げましたもんね!」
 「亜紀ちゃんも同じだろう! 「もっとアクセル踏んで下さい!」って言ってたじゃん」
 「アハハハハ!」

 「双子のキャンプで、獣の皮を着てた時もなぁ」
 「追いかけたよ!」
 「必死だったよ!」

 みんなで笑った。

 「でも、怒ることは無かったよな」
 
 今も双子はあんな恰好で夜に走りに行く。
 別に好きにやらせている。

 「今日は話が大分長くなったからな。一旦解散するぞ。飲みたい奴は片付けてからまたな」

 子どもたちが片付け始める。
 俺は響子を部屋まで連れて行って寝かせた。
 ロボが一緒に寝る。

 「じゃあ、響子。ぐっすり眠れ」
 「うん! 今日のお話も面白かった」
 「そうか」

 俺と六花で頭を撫でてやる。
 響子は隣のロボを抱いて眠った。

 



 「タカさん、何飲みます?」

 亜紀ちゃんが聞きに来た。

 「うーん、どうしようかな」
 「石神先生! 夜の「訓練」を!」

 六花の頭を引っぱたく。

 「もう一度、風呂に入ろうかな。暗い中で湯船に浸かってみたいな」
 「いいですね!」

 亜紀ちゃんがみんなに知らせに行く。
 別に俺一人でいいのだが。
 六花が俺の腕を掴んで風呂場に連れて行った。

 亜紀ちゃん、柳、双子も来た。
 亜紀ちゃんがクーラーボックスにペットボトルを入れて持って来た。
 好きなものをみんなで手に取って湯船に浸かる。

 洗い場だけ、ダウンライトで照らし、他の照明を消した。
 ちょっといい雰囲気になった。

 俺は気分が良くなって、井上陽水の『いっそセレナーデ』を歌った。
 みんな黙って聞いていた。

 双子が洗い場に出た。

 「なにすんだ?」
 「タカさんと踊った『股間にヒモ』ダンスをします!」
 「おお!」

 双子に初潮が来た時に、双子がヒモを見せに来た。
 俺の部屋で三人で裸で踊った。
 俺も洗い場に出て、一緒に踊った。


 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 両手を左にバンザイ、右にバンザイ、右手を股間、左手を股間、左手を放す、右手を放す……。

 六花と亜紀ちゃんが大笑いし、出て来て一緒に踊り出す。
 
 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 柳が呆然と見ている。

 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 柳が苦しそうな顔をしている。

 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 みんなノリノリだ。

 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 柳が腰を浮かせて、また湯船に座った。

 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 いつまでも続いている。

 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪

 柳が決心した。
 出て来て一緒に踊る。

 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪
 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪
 ♪ ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! ヒモ! ヒモ! たんぽんぽぽぽん! …… ♪




 俺は絶対に他の家の人間の前でやるなと言い、解散した。
 柳が、泣きそうな顔をしていた。
 がんばれ。
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