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別荘の日々
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昼過ぎに別荘に着き、中山夫妻から鍵を預かった。
もう覚えたロボは、別荘の中に駆け込んで行く。
自分の縄張りとして、点検するのだ。
みんなで荷物を運び、掃除と布団干しを始める。
中山夫妻がやってくれてはいるが、ご高齢なので俺たちが来る時は自分たちでなるべくやると言ってある。
俺と亜紀ちゃんはすぐにハマーで出掛けた。
柳を迎えに行くのと、買い物だ。
柳は御堂家のオロチの世話をすると言っていた。
でも、本心は俺たちと別荘に来たいと思っている。
「石神家の年中行事なんだから、絶対に来い!」
「はい!」
電話で俺が言うと、喜んで承諾した。
「今回は柳さんのこと、忘れませんでしたね」
「いつもそうだぁ!」
亜紀ちゃんと二人で笑った。
響子と六花は、明日の昼頃に着く。
一緒に来る予定だったが、響子に初潮が来て体調を少し崩した。
響子の身体は繊細と言うか、虚弱だ。
ほんの少しの変化でも体調を崩す。
昨日までにほとんど戻っているが、念のために一日遅らせた。
本来は取り止めにするところだが、響子が大泣きしたので許可した。
まあ、大丈夫だろう。
ちなみに双子は毛が生えて間もなく初潮を迎えた。
朝に股間のヒモを俺に見せに来たので、三人で裸になって手を繋いで踊った。
大赤飯大会を開いた。
「鷹さんは、またアラスカですね」
「ああ。こっちも来たがったんだけどな。今年は栞と士王と一緒にいるそうだ」
「また向こうで会えますしね」
「そうだな」
別荘の後は、アラスカへ行く予定だ。
「この時間だと、先に買い物に行った方がいいな」
「そうですね」
いつものスーパーだ。
亜紀ちゃんが食材を予約している。
「そう言えば、来る時に電話が欲しいって言ってました」
「なんだよ、じゃあすぐにしろよ」
亜紀ちゃんが電話をした。
スーパーに着いて驚いた。
以前の建物の隣に、また別な建物が出来ていた。
二階と三階が連絡通路で繋がっている。
「おい」
「はい」
俺たちが駐車場に入ると、店長が手を振って駆け寄って来た。
「石神先生! お待ちしておりました!」
俺がウインドウを降ろすと店長がニコニコして言った。
「あちらが、石神先生の専用駐車場です」
「え、そうなんですか」
俺はスーパーの裏口に一番近い駐車スペースにハマーを入れた。
《石神様専用》
「なんだ、こりゃ」
「専用ですって」
俺と亜紀ちゃんが降りて驚く。
「石神先生のお陰で、スーパーの売れ行きが大変好調で! 今年の春に新館も建てまして!」
「そうなんですか」
「はい! 県外からも買い物に来てくれる方が増えたんですよ!」
「それは何よりですね」
なんでだ?
「それがですね、大勢の女性の方がバイクでいらして。「紅六花」の方々とかで。石神先生にお世話になっていて、うちのスーパーが素晴らしいとお聞きになったそうで!」
「あ、ああ」
あいつらか。
「あとは黒塗りの車で、まあちょっと怖かったんですが。でも礼儀正しい方々で、石神先生がうちに感謝してるんだと聞かれたと仰って」
千万組か。
「一度、合気道道場の生徒さんたちが来られたり」
斬?
「御堂さんという方々も、何度か」
なんで御堂?
「地域の方々も、評判を聞いてみなさん、うちを利用してくれるようになりまして」
「そうなんですか」
「もう、全部石神先生のお陰です! 年間の売り上げが常に3倍以上になっています!」
「良かったですね。でも店長さんの真面目で優しいお人柄のせいですよ。うちも、だからここに来るんですから」
「いいえ、そんな!」
「アハハハハ」
「アハハハハ」
まあ、本当にそうだ。
俺たちも、店長さんが大好きでここに来るのだ。
俺と亜紀ちゃんはカートを引いて、目についたものを入れて行った。
予約していたものは、後で一緒に届けてくれるらしい。
「花火もこちらでご用意しましょうか?」
「ああ、それは助かります」
「昨年のお買い物は控えておりますので。同じもので宜しいでしょうか」
「はい。ああ、「〇〇」というものは、あれば全部頂きたいのですが」
「かしこまりました」
響子が喜んだ、青い炎の花火だ。
買い物を終え、店長さんが俺たちをフードコートに案内した。
《石神様 専用席》
「「……」」
「こちらをご用意いたしました。ここでは全て無料とさせていただきますので」
「でも、年に一度とかしか来ないのに」
「いいえ! 石神様は常にうちのお傍にいて下さいます!」
「「……」」
もう何でもいい。
俺と亜紀ちゃんはアイスコーヒーフロートを頼んだ。
店長さんが様々な団子の詰め合わせを持って来た。
ありがたく頂いた。
「亜紀ちゃん」
「はい」
「ここでは本気の「喰い」を見せるなよ」
「はい、分かってます」
「去年よ、電動自転車なんか無いかって聞いたよな」
「聞いてましたよね」
「新館にあったな」
「ありましたね。売れ行きが凄いらしいですね」
「レストラン街とかもな」
「言ってましたね」
「新館にあったな」
「最初、あっちに誘われましたね」
「実演のピザ造りのブースとかな」
「タカさん、冗談半分でクルクルってやってましたね」
「あったよな」
「ありましたね」
新館のほとんどは、俺が面白がって言ったものだった。
他にも子どもの無料の遊び場や屋上プールなどだ。
屋上は夏場はビアガーデン、その他はお洒落なバーになるらしい。
それも、俺が冗談半分で話したことだった。
亜紀ちゃんと二人で話していた。
店長さんが飲み物のお替りと新館のピザ屋からピザを一切れずつ持って来た。
是非俺たちに食べてみて欲しいと言った。
店長さんも座り込んで、楽しく話した。
俺がまた調子に乗ってアイデアを出すと、目を輝かせて聞いていた。
「じゃあ、そろそろ帰りますね」
すっかり楽しく話し込んでしまった。
俺も亜紀ちゃんも大分ごちそうになってしまい、店長さんに感謝した。
俺たちが帰ると、丁度スーパーの配達が終わったところだった。
「お帰りなさーい!」
ハーがウッドデッキで声を掛けて来た。
買い物の荷物を運んでいる。
「おう、ただいま。手伝うぞ」
「いいですよ。あれ、柳さんは?」
「「!」」
俺と亜紀ちゃんは顔が青くなった。
慌ててハマーに乗り込むと、タクシーが到着した。
うちの別荘の前で止まる。
綺麗な柳が降りて来た。
運転手が後ろのトランクを開け、柳の荷物を降ろした。
俺は柳に駆け寄った。
「お、俺の大事なりゅー!」
「……」
亜紀ちゃんも駆け寄る。
ハーにお前も来いと手で合図している。
ハーも取り敢えず駆けて来た。
みんなで柳に抱き着く。
「あの、やっぱり帰りますね」
「なんでだよ! お前が来るのを楽しみに待ってたのに!」
「いえ、待っててくれなかったので」
「りゅー!」
亜紀ちゃんがタクシーの運転手に早く帰れと言っていた。
「ごめん! ちょっと体調が優れなくてさっきまで寝てたんだ」
「少し前に、ハマーでこっちに来るのが見えてました」
「ハマーの中で寝てたんだって!」
柳が大粒の涙を零した。
「柳! 申し訳ない!」
「柳さん、すみません!」
俺と亜紀ちゃんで必死に謝った。
ハーに柳の荷物を運ばせ、俺と亜紀ちゃんで宥め続け、柳のどこが魅力なのかを言い続けた。
一時間もそうしていると、柳も笑顔になっていった。
「今日はずっと俺の傍にいてくれ!」
「石神さん!」
「本当にお前がいなくて寂しかったんだよ! それだけは信じてくれ!」
「はい!」
夕飯のバーベキューの準備が始まったが、俺が柳に俺の隣にいろと言った。
柳は幸せそうな顔で、俺にくっついていた。
やれやれ。
まあ、柳のことは本当に好きなんだけどな。
でも、なんか忘れちゃうんだよなー。
もう覚えたロボは、別荘の中に駆け込んで行く。
自分の縄張りとして、点検するのだ。
みんなで荷物を運び、掃除と布団干しを始める。
中山夫妻がやってくれてはいるが、ご高齢なので俺たちが来る時は自分たちでなるべくやると言ってある。
俺と亜紀ちゃんはすぐにハマーで出掛けた。
柳を迎えに行くのと、買い物だ。
柳は御堂家のオロチの世話をすると言っていた。
でも、本心は俺たちと別荘に来たいと思っている。
「石神家の年中行事なんだから、絶対に来い!」
「はい!」
電話で俺が言うと、喜んで承諾した。
「今回は柳さんのこと、忘れませんでしたね」
「いつもそうだぁ!」
亜紀ちゃんと二人で笑った。
響子と六花は、明日の昼頃に着く。
一緒に来る予定だったが、響子に初潮が来て体調を少し崩した。
響子の身体は繊細と言うか、虚弱だ。
ほんの少しの変化でも体調を崩す。
昨日までにほとんど戻っているが、念のために一日遅らせた。
本来は取り止めにするところだが、響子が大泣きしたので許可した。
まあ、大丈夫だろう。
ちなみに双子は毛が生えて間もなく初潮を迎えた。
朝に股間のヒモを俺に見せに来たので、三人で裸になって手を繋いで踊った。
大赤飯大会を開いた。
「鷹さんは、またアラスカですね」
「ああ。こっちも来たがったんだけどな。今年は栞と士王と一緒にいるそうだ」
「また向こうで会えますしね」
「そうだな」
別荘の後は、アラスカへ行く予定だ。
「この時間だと、先に買い物に行った方がいいな」
「そうですね」
いつものスーパーだ。
亜紀ちゃんが食材を予約している。
「そう言えば、来る時に電話が欲しいって言ってました」
「なんだよ、じゃあすぐにしろよ」
亜紀ちゃんが電話をした。
スーパーに着いて驚いた。
以前の建物の隣に、また別な建物が出来ていた。
二階と三階が連絡通路で繋がっている。
「おい」
「はい」
俺たちが駐車場に入ると、店長が手を振って駆け寄って来た。
「石神先生! お待ちしておりました!」
俺がウインドウを降ろすと店長がニコニコして言った。
「あちらが、石神先生の専用駐車場です」
「え、そうなんですか」
俺はスーパーの裏口に一番近い駐車スペースにハマーを入れた。
《石神様専用》
「なんだ、こりゃ」
「専用ですって」
俺と亜紀ちゃんが降りて驚く。
「石神先生のお陰で、スーパーの売れ行きが大変好調で! 今年の春に新館も建てまして!」
「そうなんですか」
「はい! 県外からも買い物に来てくれる方が増えたんですよ!」
「それは何よりですね」
なんでだ?
「それがですね、大勢の女性の方がバイクでいらして。「紅六花」の方々とかで。石神先生にお世話になっていて、うちのスーパーが素晴らしいとお聞きになったそうで!」
「あ、ああ」
あいつらか。
「あとは黒塗りの車で、まあちょっと怖かったんですが。でも礼儀正しい方々で、石神先生がうちに感謝してるんだと聞かれたと仰って」
千万組か。
「一度、合気道道場の生徒さんたちが来られたり」
斬?
「御堂さんという方々も、何度か」
なんで御堂?
「地域の方々も、評判を聞いてみなさん、うちを利用してくれるようになりまして」
「そうなんですか」
「もう、全部石神先生のお陰です! 年間の売り上げが常に3倍以上になっています!」
「良かったですね。でも店長さんの真面目で優しいお人柄のせいですよ。うちも、だからここに来るんですから」
「いいえ、そんな!」
「アハハハハ」
「アハハハハ」
まあ、本当にそうだ。
俺たちも、店長さんが大好きでここに来るのだ。
俺と亜紀ちゃんはカートを引いて、目についたものを入れて行った。
予約していたものは、後で一緒に届けてくれるらしい。
「花火もこちらでご用意しましょうか?」
「ああ、それは助かります」
「昨年のお買い物は控えておりますので。同じもので宜しいでしょうか」
「はい。ああ、「〇〇」というものは、あれば全部頂きたいのですが」
「かしこまりました」
響子が喜んだ、青い炎の花火だ。
買い物を終え、店長さんが俺たちをフードコートに案内した。
《石神様 専用席》
「「……」」
「こちらをご用意いたしました。ここでは全て無料とさせていただきますので」
「でも、年に一度とかしか来ないのに」
「いいえ! 石神様は常にうちのお傍にいて下さいます!」
「「……」」
もう何でもいい。
俺と亜紀ちゃんはアイスコーヒーフロートを頼んだ。
店長さんが様々な団子の詰め合わせを持って来た。
ありがたく頂いた。
「亜紀ちゃん」
「はい」
「ここでは本気の「喰い」を見せるなよ」
「はい、分かってます」
「去年よ、電動自転車なんか無いかって聞いたよな」
「聞いてましたよね」
「新館にあったな」
「ありましたね。売れ行きが凄いらしいですね」
「レストラン街とかもな」
「言ってましたね」
「新館にあったな」
「最初、あっちに誘われましたね」
「実演のピザ造りのブースとかな」
「タカさん、冗談半分でクルクルってやってましたね」
「あったよな」
「ありましたね」
新館のほとんどは、俺が面白がって言ったものだった。
他にも子どもの無料の遊び場や屋上プールなどだ。
屋上は夏場はビアガーデン、その他はお洒落なバーになるらしい。
それも、俺が冗談半分で話したことだった。
亜紀ちゃんと二人で話していた。
店長さんが飲み物のお替りと新館のピザ屋からピザを一切れずつ持って来た。
是非俺たちに食べてみて欲しいと言った。
店長さんも座り込んで、楽しく話した。
俺がまた調子に乗ってアイデアを出すと、目を輝かせて聞いていた。
「じゃあ、そろそろ帰りますね」
すっかり楽しく話し込んでしまった。
俺も亜紀ちゃんも大分ごちそうになってしまい、店長さんに感謝した。
俺たちが帰ると、丁度スーパーの配達が終わったところだった。
「お帰りなさーい!」
ハーがウッドデッキで声を掛けて来た。
買い物の荷物を運んでいる。
「おう、ただいま。手伝うぞ」
「いいですよ。あれ、柳さんは?」
「「!」」
俺と亜紀ちゃんは顔が青くなった。
慌ててハマーに乗り込むと、タクシーが到着した。
うちの別荘の前で止まる。
綺麗な柳が降りて来た。
運転手が後ろのトランクを開け、柳の荷物を降ろした。
俺は柳に駆け寄った。
「お、俺の大事なりゅー!」
「……」
亜紀ちゃんも駆け寄る。
ハーにお前も来いと手で合図している。
ハーも取り敢えず駆けて来た。
みんなで柳に抱き着く。
「あの、やっぱり帰りますね」
「なんでだよ! お前が来るのを楽しみに待ってたのに!」
「いえ、待っててくれなかったので」
「りゅー!」
亜紀ちゃんがタクシーの運転手に早く帰れと言っていた。
「ごめん! ちょっと体調が優れなくてさっきまで寝てたんだ」
「少し前に、ハマーでこっちに来るのが見えてました」
「ハマーの中で寝てたんだって!」
柳が大粒の涙を零した。
「柳! 申し訳ない!」
「柳さん、すみません!」
俺と亜紀ちゃんで必死に謝った。
ハーに柳の荷物を運ばせ、俺と亜紀ちゃんで宥め続け、柳のどこが魅力なのかを言い続けた。
一時間もそうしていると、柳も笑顔になっていった。
「今日はずっと俺の傍にいてくれ!」
「石神さん!」
「本当にお前がいなくて寂しかったんだよ! それだけは信じてくれ!」
「はい!」
夕飯のバーベキューの準備が始まったが、俺が柳に俺の隣にいろと言った。
柳は幸せそうな顔で、俺にくっついていた。
やれやれ。
まあ、柳のことは本当に好きなんだけどな。
でも、なんか忘れちゃうんだよなー。
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