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絶対ガーディアン Ⅱ

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 「あ、アリだ!」

 皇紀が見つけた。
 テーブルの上に乗っている。

 「なんだよ、すぐに外に出せ」
 「皇紀! 食事のテーブルに来るなんて! ぶっ殺せ!」

 亜紀ちゃんが言う。

 《殺さないでー》

 「「「「「「「!」」」」」」」

 全員が立ち上がった。
 子どもたちが身構える。

 「タカさん!」
 「待て!」

 俺が止めた。

 「でも! テレパシー使いましたよ!」
 「味方も敵も使う!」
 「でも、突然ここに!」
 
 《モハメドですよー》

 「ああ!」

 モハメドのアリだ。

 「大丈夫だ! こないだ西池袋で仲間にした奴だ!」

 全員が安心して椅子に腰かける。
 亜紀ちゃんが、まだちょっとコワイ顔をしている。

 「お前、どうして突然来た?」
 《あのー、いつまで待ってもお呼びが掛からないのでー》
 「ああ。あんまし出番がなー」
 《そんなー。楽しみにしてますのにー》
 「そうなの?」

 双子が全員に経緯を話している。

 「でも、お前ちっちゃいじゃん」
 《お役に立ちますよー》
 「そうは言ってもなー。なんかお前って見えないから、知らないうちに踏んじゃいそうで怖いんだよ」
 《大丈夫ですよー。思い切り踏まれても平気ですー》

 バシン。

 ルーがスリッパで思い切り叩いた。
 平気だった。

 「お前、見栄張ってたらどうすんだよ!」
 「エヘヘヘヘ」

 容赦ねぇ。
 まあ、頑丈なのはよく分かった。

 「悪かった。うちのツッコミはきついんだよ。でもなぁ、弱ったな」
 《そんなことおっしゃらずにー》

 「取り敢えずよ、これから飯なんだ。少し待っててくれ。あ、お前もなんか食べる?」
 《いただきますー》
 「今日は魚の刺身ばっかなんだけど?」
 《大好物ですー》

 取り敢えず、刺身を5ミリ角に切って皿に乗せた。

 《いただきますー》

 俺たちは気にせずに食事をすることにした。
 雪野さんが面白がっていた。
 俺の近くに来て、モハメドを良く見た。

 「こういうあやかしもいるんですね」
 「まあ、俺も専門家じゃありませんが」

 モハメドがマグロを食べ終わったのを見て、雪野さんが鯛を切って来た。

 「今度は鯛ですよ」
 《ありがとうございますー》

 礼儀正しい。
 そういうのは好きだ。

 子どもたちが面白がって、同じように切り身を持って来た。
 モハメドもどんどん食べた。
 早乙女も雪野さんに言われ、おどおどしながらホタテを切って来た。
 ロボがカリカリを一粒やった。
 ロボはノリだ。

 亜紀ちゃんは黙々と喰いに専念していた。
 「海鮮乗せステーキ」を食べていた。
 みんなが亜紀ちゃんを見た。
 涙目で、ステーキをほんのちょっと切って皿に入れた。

 《ありがとうございますー》
 「おう」

 また喰いに戻った。

 



 「そう言えばよ、モハメドの能力ってなんだっけ?」
 《死を司ってますー》
 「なんか、こないだと喋り方変わってない?」
 《結構「死」を吸いましたからー》
 「なんで?」
 《主様のためだと思ってー》

 早乙女と目が合った。

 「テロのことか?」
 《そうですー》
 「お前が関わったのか?」
 《はいー。主様の敵は分かってましたからー。数百くらいやっときましたー》
 「どこだ!」

 モハメドが、月島のある倉庫の場所を伝えた。
 早乙女がすぐに電話する。

 40分後、倉庫の中で大量の遺体が発見された。

 「別働隊だったようだ」
 
 全員武装していた。
 近くに大型バスが何台も停まっており、どこかを襲撃する計画だったらしい。
 早乙女の顔が青かった。
 警察がまったく掴んでいない連中だった。
 あの人数で襲撃されれば、更に被害者は増えただろう。

 「お前が全部やったのか?」
 《はいー》
 
 「早乙女、モハメドを連れ歩け」
 「え?」
 「アドヴェロスの管轄だろう!」
 「いや! ちょっと待ってくれ!」

 「モハメド。早乙女を護衛してくれ」
 《はいー》
 「こいつを狙う殺気の奴は分かるか?」
 《はいー。もちろん分かりますよー》
 「じゃあ、早乙女を守れ。頼むぞ」
 《はいー》

 早乙女が焦っている。

 「待ってくれ! 俺は世話の仕方も分からんぞ!」
 「別にいらねぇよ」
 「あなた、お刺身は切らしませんから」

 雪野さんが言った。

 「いや、別に食事はいらんだろ?」
 《はいー。お付き合いで食べれますがー》
 「だよな」
 《ウンコも見せましょうかー?》
 「絶対やめろ!」

 双子が「ギャハハハハ」と笑った。

 「お前、妖怪も殺せるな?」
 《はいー。大体はー》

 「早乙女、お前にピッタリな仲間だ」
 「いしがみぃー」




 後で、早乙女が虫全般が苦手なことを知った。
 なさけねー。

 その後、何度も早乙女は様々な敵に狙われたが、一度として傷を負ったことは無かった。
 雪野さんがいつもモハメドに感謝し、刺身を食べさせた。
 早乙女も徐々に慣れて行き、心強い相棒となっていった。
 早乙女自身も、強大な能力者と周囲の人間から認識された。

 時々独りで喋っているので、変人と思われた。

 一度麗星が早乙女に会った時、「ぷぷぷぷぷ」と言った。
 それ以来、あまり早乙女にたからなくなった。 

 良いことづくめだった。
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