1,165 / 2,840
磯良の帰宅
しおりを挟む
東京で同時多発した「太陽界」のテロ。
早乙女さんから呼ばれ、現場を幾つか回った。
自分にとって、脅威的な敵はまったくいなかった。
早乙女さんが自分をずっと気遣ってくれたが、その必要も無かった。
午後の八時には家に戻った。
まだ終息していない現場はあったが、早乙女さんの他の仲間が対応すると言われた。
「こんなに遅くまで引っ張り回して申し訳ない」
早乙女さんは、帰りに車の中で、何度もそう言った。
「いいえ、全然。まだどこでも行きますよ?」
「いや、これ以上はもういいよ。磯良が余りにも強いんで、つい頼り過ぎてしまった」
「そんな」
「もう今日はゆっくり休んでくれ」
「はい、分かりました」
早乙女さんは優しい。
俺のような化け物と一緒にいても、何も怖がったり構えたりしない。
俺のことを普通の小学生のように思ってくれている。
そのことが一番有難かった。
「磯良、おかえりー!」
胡蝶が出迎えてくれた。
「夕飯は?」
「ああ、自分で適当に作るよ」
「ダメよ! 帰蝶ちゃんに作ってもらうから」
「いいよ」
「ダメ! 呼んで来るから食堂に行って」
「ああ、分かった」
胡蝶は同い年で、この道間家で最も気安く話せる相手だ。
帰蝶さんや堂前家のご両親も俺に優しいが、やはり世話になっているという気持ちが強い。
胡蝶とは、それを抜きにして話せる。
まあ、胡蝶の明るさがそうさせてくれるのは分かっているが。
食堂に入ってしばらくすると、胡蝶と帰蝶さんと堂前さんが入って来た。
「磯良、疲れただろう」
「いえ、別に」
帰蝶さんがすぐに食事を作ってくれた。
「ごめんね、すぐに作るからね」
「すいません」
胡蝶がお茶を淹れてくれる。
「東京は大変なことになったな」
「はい。俺も幾つかの現場しか行ってませんが、大勢の人が死んだようです」
「さっき、テレビで500人以上の死者だと言っていた」
「堂前さんの関係では?」
「幸い、今の所は報告も無いな。無事だと思うよ」
「そうですか、良かった」
俺がそう言うと、堂前さんが笑った。
「うちはヤクザだよ。世間様は、うちらはどんどん死んで欲しいと思ってる」
「そんなことは。少なくとも、俺は堂前さんたちには死んで欲しくありません」
堂前さんはまた笑った。
「でも、この世界も大きく変わりそうだ」
「石神高虎ですね」
「そうだ。突然、北関東の千万組が石神の下に付いた。その後で、あの稲城会の崩壊だ」
「はい。随分と急なことでしたよね」
俺も詳しくは知らないが、胡蝶から多少のことは聞いている。
「何故千万組がと思ったんだけどな。あそこの千両弥太は昔からの侠客だ。相当気に入った男なんだろう」
「でも、組ごと下に付くなんて」
「そうだな。これはちょっと不気味な話なんだけど」
「なんですか?」
「千両の刀なんだ。「虎王」と呼ばれる古い刀なんだが、それに関連しているらしい」
「え?」
「実はな。「虎王」というのは、君の先祖が打っていた刀なんだよ」
「……」
「知らなかったか?」
「いえ、少しは父から聞いていました」
「そうか。それで、どうもな。「虎王」は他の「虎王」と呼び合うと言われている」
「え!」
「俺は磯良のお父さんの刀を一振り譲ってもらったが、もちろんそれは「虎王」ではない。でも、ここに君がいることと、俺がお父さんの刀を持っていることがな。どうも気になるんだよ」
「そうですか」
「いずれ、磯良は石神高虎と出会うのかもしれない。石神高虎も「虎王」を持っているらしい」
「そうなんですか!」
「それも、若打ちのものではなく、真「虎王」と呼ばれる完成形だ」
「……」
「磯良も聞いているかもしれないが、「虎王」は伝説の刀だ。大きな運命を持つ者しか所有出来ない。確かに石神高虎が現われて、ヤクザの世界は一新した。神戸山王会も石神の下に付いたらしい。吉住連合も、石神に逆らう気はない」
「そうですか」
「今回のことも、石神高虎に関わっているのかもしれない」
「え?」
「これは俺の勘だよ。日本が大きく変わろうとしている。俺はそんな気がしてならない。その中心にあの男がいる」
「ちょっと怖いですね」
「まあ、俺がやることは変わりがないよ。うちも一応は吉住連合の軒下にはいるけどな。でも、もうヤクザの時代じゃない。だから真面目に商売をやってる」
「そうですね」
「昔、吉原龍子に言われたんだ。身を清くしておけとな。そうすれば磯良の父親にも紹介してやると」
「そうだったんですね」
「そして、思いもよらない大きな運命をくれてやる、とな」
初めて聞いた。
「不思議な人だった。若い俺は、すぐに信じたんだ。だから他人様に恥ずかしくない商売を心掛けた。もちろん清廉潔白とは言わないけどな。これでも、自分じゃ真面目にやって来たつもりだ」
「はい」
食事が出来た。
スープパスタにほうれん草とベーコンのバター炒めだ。
「ありがとうございます。美味しそうです」
「ウフフフ」
三人に囲まれて一人だけ食事をするのは恥ずかしかった。
急いで食べた。
「早乙女さんはどうだ?」
堂前さんが聞いて来た。
「優しい人ですね。ずっと俺の心配ばかりで」
「そうか。まあ、一目で分かったよ。優しい人だってな。だから磯良を任せた。でも、物凄く優秀な人らしい。元々キャリア組だったが、最近特に評価されているようだ」
「そうなんですか」
「俺も警察には伝手もあるが、公安の人だからな。なかなか情報は出ない。でも相当出世して、奥さんも警察のトップの人間の姪らしいよ」
「へぇー」
「そういう優秀な評価の高い人間が、この化け物退治の中心にいるんだ。日本もいよいよ本格的にヤバイな」
「そうですね。これまで人外の連中は表に出なかったですからね」
俺が食べ終わると、また胡蝶がお茶を淹れてくれる。
「帰蝶さん、ご馳走様でした。美味しかったです」
「ありがとう」
俺は茶を啜った。
「磯良、君のお陰で、最もヤバイものの動向もよく分かる。本当に助かるよ」
「いいえ。これも龍子さんの導きですから」
「そうだな」
「堂前さんたちに育ててもらって。俺は龍子さんと堂前さんたちに、その恩返しがしたいだけです」
「宜しく頼むな」
堂前さんは、そういうと部屋を出て行った。
「ねえ、磯良。どんな奴らだったの?」
「ええと、あんまり話せないんだ」
「えー!」
「困ったな。多分、テレビでいろいろ報道されるから、そっちを見てよ」
「うん、見た見た! 本当に化け物だよね! 3メートルもあるような怪物が映ってた!」
「そうなんだ」
やはり、報道されていた。
遠巻きだったが、現場には結構マスコミのカメラが立っていた。
「でも、磯良なら簡単でしょ?」
「そんなことはないよ」
帰蝶さんが立ち上がって俺を抱き締めた。
胸が頭に当たる。
「磯良ちゃん、気を付けてね」
「は、はい」
「あー! わたしもー!」
胡蝶が反対側から抱き締めて来る。
胡蝶も胸が大きくなってきた。
「あの、ちょっと恥ずかしいんで」
二人は笑って離れてくれた。
「もうお風呂をいただいて、寝ますね」
「あー! 私と一緒に寝ようか!」
「胡蝶!」
俺は笑って断った。
堂前さんも、帰蝶さんも胡蝶も、俺のことを心配して来てくれた。
風呂に入りながら、もう一人、早乙女さんが散々心配してくれたことを思い出していた。
龍子さんの縁の人は、みんな優しい。
俺はもう一人、まだ会ってはいない、石神高虎という人のことを思った。
「きっと、その人も優しいんだろう」
勝手にそう思った。
5年後、俺は石神高虎と出会うことをまだ知らなかった。
本当に優しい人だった。
そして強い人だった。
早乙女さんから呼ばれ、現場を幾つか回った。
自分にとって、脅威的な敵はまったくいなかった。
早乙女さんが自分をずっと気遣ってくれたが、その必要も無かった。
午後の八時には家に戻った。
まだ終息していない現場はあったが、早乙女さんの他の仲間が対応すると言われた。
「こんなに遅くまで引っ張り回して申し訳ない」
早乙女さんは、帰りに車の中で、何度もそう言った。
「いいえ、全然。まだどこでも行きますよ?」
「いや、これ以上はもういいよ。磯良が余りにも強いんで、つい頼り過ぎてしまった」
「そんな」
「もう今日はゆっくり休んでくれ」
「はい、分かりました」
早乙女さんは優しい。
俺のような化け物と一緒にいても、何も怖がったり構えたりしない。
俺のことを普通の小学生のように思ってくれている。
そのことが一番有難かった。
「磯良、おかえりー!」
胡蝶が出迎えてくれた。
「夕飯は?」
「ああ、自分で適当に作るよ」
「ダメよ! 帰蝶ちゃんに作ってもらうから」
「いいよ」
「ダメ! 呼んで来るから食堂に行って」
「ああ、分かった」
胡蝶は同い年で、この道間家で最も気安く話せる相手だ。
帰蝶さんや堂前家のご両親も俺に優しいが、やはり世話になっているという気持ちが強い。
胡蝶とは、それを抜きにして話せる。
まあ、胡蝶の明るさがそうさせてくれるのは分かっているが。
食堂に入ってしばらくすると、胡蝶と帰蝶さんと堂前さんが入って来た。
「磯良、疲れただろう」
「いえ、別に」
帰蝶さんがすぐに食事を作ってくれた。
「ごめんね、すぐに作るからね」
「すいません」
胡蝶がお茶を淹れてくれる。
「東京は大変なことになったな」
「はい。俺も幾つかの現場しか行ってませんが、大勢の人が死んだようです」
「さっき、テレビで500人以上の死者だと言っていた」
「堂前さんの関係では?」
「幸い、今の所は報告も無いな。無事だと思うよ」
「そうですか、良かった」
俺がそう言うと、堂前さんが笑った。
「うちはヤクザだよ。世間様は、うちらはどんどん死んで欲しいと思ってる」
「そんなことは。少なくとも、俺は堂前さんたちには死んで欲しくありません」
堂前さんはまた笑った。
「でも、この世界も大きく変わりそうだ」
「石神高虎ですね」
「そうだ。突然、北関東の千万組が石神の下に付いた。その後で、あの稲城会の崩壊だ」
「はい。随分と急なことでしたよね」
俺も詳しくは知らないが、胡蝶から多少のことは聞いている。
「何故千万組がと思ったんだけどな。あそこの千両弥太は昔からの侠客だ。相当気に入った男なんだろう」
「でも、組ごと下に付くなんて」
「そうだな。これはちょっと不気味な話なんだけど」
「なんですか?」
「千両の刀なんだ。「虎王」と呼ばれる古い刀なんだが、それに関連しているらしい」
「え?」
「実はな。「虎王」というのは、君の先祖が打っていた刀なんだよ」
「……」
「知らなかったか?」
「いえ、少しは父から聞いていました」
「そうか。それで、どうもな。「虎王」は他の「虎王」と呼び合うと言われている」
「え!」
「俺は磯良のお父さんの刀を一振り譲ってもらったが、もちろんそれは「虎王」ではない。でも、ここに君がいることと、俺がお父さんの刀を持っていることがな。どうも気になるんだよ」
「そうですか」
「いずれ、磯良は石神高虎と出会うのかもしれない。石神高虎も「虎王」を持っているらしい」
「そうなんですか!」
「それも、若打ちのものではなく、真「虎王」と呼ばれる完成形だ」
「……」
「磯良も聞いているかもしれないが、「虎王」は伝説の刀だ。大きな運命を持つ者しか所有出来ない。確かに石神高虎が現われて、ヤクザの世界は一新した。神戸山王会も石神の下に付いたらしい。吉住連合も、石神に逆らう気はない」
「そうですか」
「今回のことも、石神高虎に関わっているのかもしれない」
「え?」
「これは俺の勘だよ。日本が大きく変わろうとしている。俺はそんな気がしてならない。その中心にあの男がいる」
「ちょっと怖いですね」
「まあ、俺がやることは変わりがないよ。うちも一応は吉住連合の軒下にはいるけどな。でも、もうヤクザの時代じゃない。だから真面目に商売をやってる」
「そうですね」
「昔、吉原龍子に言われたんだ。身を清くしておけとな。そうすれば磯良の父親にも紹介してやると」
「そうだったんですね」
「そして、思いもよらない大きな運命をくれてやる、とな」
初めて聞いた。
「不思議な人だった。若い俺は、すぐに信じたんだ。だから他人様に恥ずかしくない商売を心掛けた。もちろん清廉潔白とは言わないけどな。これでも、自分じゃ真面目にやって来たつもりだ」
「はい」
食事が出来た。
スープパスタにほうれん草とベーコンのバター炒めだ。
「ありがとうございます。美味しそうです」
「ウフフフ」
三人に囲まれて一人だけ食事をするのは恥ずかしかった。
急いで食べた。
「早乙女さんはどうだ?」
堂前さんが聞いて来た。
「優しい人ですね。ずっと俺の心配ばかりで」
「そうか。まあ、一目で分かったよ。優しい人だってな。だから磯良を任せた。でも、物凄く優秀な人らしい。元々キャリア組だったが、最近特に評価されているようだ」
「そうなんですか」
「俺も警察には伝手もあるが、公安の人だからな。なかなか情報は出ない。でも相当出世して、奥さんも警察のトップの人間の姪らしいよ」
「へぇー」
「そういう優秀な評価の高い人間が、この化け物退治の中心にいるんだ。日本もいよいよ本格的にヤバイな」
「そうですね。これまで人外の連中は表に出なかったですからね」
俺が食べ終わると、また胡蝶がお茶を淹れてくれる。
「帰蝶さん、ご馳走様でした。美味しかったです」
「ありがとう」
俺は茶を啜った。
「磯良、君のお陰で、最もヤバイものの動向もよく分かる。本当に助かるよ」
「いいえ。これも龍子さんの導きですから」
「そうだな」
「堂前さんたちに育ててもらって。俺は龍子さんと堂前さんたちに、その恩返しがしたいだけです」
「宜しく頼むな」
堂前さんは、そういうと部屋を出て行った。
「ねえ、磯良。どんな奴らだったの?」
「ええと、あんまり話せないんだ」
「えー!」
「困ったな。多分、テレビでいろいろ報道されるから、そっちを見てよ」
「うん、見た見た! 本当に化け物だよね! 3メートルもあるような怪物が映ってた!」
「そうなんだ」
やはり、報道されていた。
遠巻きだったが、現場には結構マスコミのカメラが立っていた。
「でも、磯良なら簡単でしょ?」
「そんなことはないよ」
帰蝶さんが立ち上がって俺を抱き締めた。
胸が頭に当たる。
「磯良ちゃん、気を付けてね」
「は、はい」
「あー! わたしもー!」
胡蝶が反対側から抱き締めて来る。
胡蝶も胸が大きくなってきた。
「あの、ちょっと恥ずかしいんで」
二人は笑って離れてくれた。
「もうお風呂をいただいて、寝ますね」
「あー! 私と一緒に寝ようか!」
「胡蝶!」
俺は笑って断った。
堂前さんも、帰蝶さんも胡蝶も、俺のことを心配して来てくれた。
風呂に入りながら、もう一人、早乙女さんが散々心配してくれたことを思い出していた。
龍子さんの縁の人は、みんな優しい。
俺はもう一人、まだ会ってはいない、石神高虎という人のことを思った。
「きっと、その人も優しいんだろう」
勝手にそう思った。
5年後、俺は石神高虎と出会うことをまだ知らなかった。
本当に優しい人だった。
そして強い人だった。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
こずえと梢
気奇一星
キャラ文芸
時は1900年代後期。まだ、全国をレディースたちが駆けていた頃。
いつもと同じ時間に起き、同じ時間に学校に行き、同じ時間に帰宅して、同じ時間に寝る。そんな日々を退屈に感じていた、高校生のこずえ。
『大阪 龍斬院』に所属して、喧嘩に明け暮れている、レディースで17歳の梢。
ある日、オートバイに乗っていた梢がこずえに衝突して、事故を起こしてしまう。
幸いにも軽傷で済んだ二人は、病院で目を覚ます。だが、妙なことに、お互いの中身が入れ替わっていた。
※レディース・・・女性の暴走族
※この物語はフィクションです。
~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました
深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる