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御堂家 防衛戦 Ⅲ

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 池袋・サンシャイン通り。
 亜紀が現着すると、路上にはまだ倒れている人間が何人もいた。
 救急車は危険を避けて現場には入れない。
 警官が一人ずつ、安全な場所まで抱えて移動していた。

 路上に、異常なモノが立っている。
 体長5メートルを超え、筋骨逞しい肉体に、鬼の頭が乗っている。
 50センチの角を額の両側から生やし、口は耳元まで裂け牙が覗いている。
 4体いた。

 上空をマスコミのヘリが飛んでいた。
 
 「戦場カメラマンはいないのかー」

 亜紀は呟いた。

 亜紀の姿を見て、現場の指揮官らしい警官が近寄って来た。

 「早乙女部隊の方ですね!」
 「ええ、そうです」
 「アレですが、やれますか?」
 「簡単ですよー!」

 亜紀は歩いて近付いて行った。
 怪物が亜紀に気付く。

 瞬間、ブレた。
 亜紀の横を何かがすり抜けようとした。
 亜紀は動かないように見えた。

 亜紀の後ろ、50m先で、鬼がバラバラになって吹っ飛んで行った。

 「羅刹の方が速いぞー」

 残る3体が同時に亜紀に向かった。
 亜紀が踊るような動作をし、前方に右腕を向けた。

 「震花」

 鬼が、一瞬で崩れて無くなった。

 「じゃー、次の現場へ!」
 「は、はい!」

 現場指揮官が慌てて車両を回し、亜紀を後部座席に乗せた。

 「走った方が速いけどなー」
 「はい?」

 亜紀の呟きを、運転する警官が聞き損ねた。

 「なんでもありません。急いで下さい」
 「はい!」

 亜紀は次の現場へ向かった。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「竹下通りって、何気にはじめてだー」

 ハーは軒を並べた服飾の店を眺めて言った。
 
 「ちゃんと直ったら、ルーと来ようかな」

 今は夥しい遺体が転がる、地獄のような惨状だった。
 普段から通り抜けるのが困難なほど、賑わっている。
 そのせいで、怪物が暴れまわったことで、路上も店内も血に染まっている。

 警官隊は通りの両側で待機していた。
 機動隊が出動しているが、恐らく彼らの武器では通用しない。

 「こんにちはー」

 ハーは警官隊の後ろで声を掛けた。
 何人かが驚いて振り向く。
 気配が無かった。

 「早乙女さんに言われて来ましたー」
 「あなたが?」
 「はい」
 
 顔を黒く塗っているので分かりにくいが、まだ少女のようだ。

 「あの、失礼ですが、あなたがアレに対応されるのですか?」
 「そーですよー」
 
 面倒なので、ハーは後ろの地面に向けて拳を振るった。
 アスファルトが大きく抉れる。

 「敵は何体?」
 「に、二体です!」
 「分かったー!」

 ハーは竹下通りに入った。
 地面が血と臓物、人間の身体の一部で埋まっている。
 切り裂かれている。

 「そういう攻撃ね」

 ハーは地獄の惨状でも動揺は無い。

 「あそこかー」

 前方の両側の店からどす黒い光が出ていた。
 ハーは左側の店に向かって「虚震花」を放った。
 店が一瞬で消滅する。
 すると右側の店から何かが出て来た。
 身長2メートル半。
 全身を薄い赤の鱗に覆われ、4本の腕。
 腕の先は鋭い刃物のようになっていた。

 「きも」

 ハーが右手を振ろうとすると、怪物が跳躍した。

 「きも」

 ハーの頭の上に、渦巻きのようなものが現われた。
 そこから真直ぐに何かが伸びる。
 怪物の胸に当たり、怪物の身体が爆散した。

 「きも」

 ハーは警官隊の所へ戻った。

 「終わったよー! すぐに次に案内して!」
 「は、はい!」

 機動隊の車両に乗せられ、渋谷に向かった。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「都庁かー」

 ルーは地上で集まっている警官隊の中にいた。

 「早乙女部隊の方ですね」
 
 初老の警察官に声を掛けられた。
 最初に会った警官が連れて来た。

 「そうです。どこにいるんですか?」
 「展望室です。今、警官隊が出入り口を封鎖し、下の階で待機しています」
 「エレベーターは?」
 「今は止めています」
 「じゃー、階段で上がるのー!」
 「すみません。エレベーターを起動すると、化け物が移動する可能性があるので」
 「もう!」
 
 ルーは展望室のフロアを見上げた。

 「しょーがないなー。じゃあ、外から行くね」
 「はい?」

 ルーが跳躍した。

 「え!」

 見る見るルーの身体が小さくなる。
 地上200mの高さまで上がった。

 ルーは窓から、怪物の姿を捉えた。
 
 「虚震花」

 窓が粉砕され、室内の怪物ごと消し去った。
 そのまま地上に降りる。
 コンクリートの地面が凹んだ。

 「やったよー」
 「あの、5体ごと!」
 「え?」
 「凄いですね!」
 「あの、もう一度様子を見て来るね!」

 再び跳躍し、残る四体を視認して「虚震花」で粉砕した。

 「もう大丈夫だよー」
 「……」

 次の現場に向かった。
 次は、ちゃんと数を聞いておこうとルーは思った。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 早乙女から、次々と連絡が来た。
 子どもたちは、ちゃんとこなしているようだ。
 危急だったサンシャイン通りと竹下通りは最初に鎮圧し、他の現場もどんどん終息している。
 テレビの報道は、どこも今回のテロ騒ぎを扱い、怪物たちの異常な姿や力も既に報道されている。
 余りにも異常な事件に、マスコミも混乱している。
 そのうちに、警察から正式な発表があるだろう。
 そのシナリオで、日本は変わる。

 そしてこれから山梨で起きる、大規模な戦闘は、決定打となる。





 俺はソファに座り、テレビの報道を見ていた。





 戦いのゴングを待っていた。  
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