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花岡斬
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翌朝の8時。
俺が起きて着替えて食堂へ行くと、斬は既に起きていた。
「やっぱり早いな」
「ふん! お前、たるんでいるぞ」
「そうかよ」
俺は笑ってテーブルに付いた。
「あなた、おはよう」
「ああ、おはよう。士王もおはような!」
栞が士王を抱いて来る。
桜花たちに挨拶しながら、俺は士王を抱いた。
桜花が俺の食事を運んで来た。
「おい、斬。士王を抱いてくれ」
斬に士王を渡した。
斬は意外と手慣れた動作で士王を抱く。
顔が綻んでいるが、言うと機嫌を損ないそうなので黙っていた。
「いい顔だな」
斬がそう言った。
栞も微笑んでいる。
「お前が赤ん坊を抱くなんて、まあ、似合わねぇなぁ!」
俺はからかった。
「そうか。ああ、そうだな」
斬が微笑みながら、そう言い、俺に士王を返そうとする。
「俺は食事をするから、しばらく抱いていてくれ」
「ああ、分かった」
士王は初めての人間なので、じっと見ている。
斬が士王の頭を撫でると、士王がその指を掴もうとする。
斬は、笑顔で人差し指を渡した。
俺はプレーン・オムレツを食べながら、それを見ていた。
「おい、お前、酒が飲めないのなら最初から言えよ」
「ふん! 酒など幾らでも飲めるわ」
「何言ってんだ! 1杯でグーグー寝てたくせに!」
「風邪をこじらせていたのを忘れておったわい」
「風邪なら士王を抱くな!」
士王が泣き出した。
斬が慌ててあやす。
栞と二人で笑った。
「折角、お前といろいろ話そうと思っていたのに」
「そうなのか?」
「お前とはゆっくり話す機会も無かったからな。残念だ」
「そうか」
斬は意外と素直に受け取っていた。
士王が泣き止み、また斬の指を掴もうとする。
斬は士王の頬を指先で優しく突いた。
士王が笑った。
「笑ったぞ」
「見りゃ分かる」
「わしを見て笑っている」
「そうかよ」
俺は朝食を食べ終え、コーヒーを頼んだ。
「ひいおじいちゃんでちゅよー、って言え!」
「ふん!」
士王がまた泣きそうな顔になる。
「おい、早く言え!」
「ひ、ひいおじいちゃんでちゅよー」
栞と大笑いした。
「お前、本当に斬かよ?」
「……」
斬は返事をしなかった。
士王を見詰めて笑っていた。
俺は斬から士王を受け取り、抱きながら部屋を歩いた。
士王が大喜びで笑い、身体を動かす。
「やはりお前がいいのか」
「どうだ、いいだろう!」
「まあ、そうだな。お前は誰からも愛される」
「おい」
斬が立ち上がった。
「栞に子どもを生ませてくれ、礼を言う。ありがとう」
斬が頭を下げた。
「なんだよ、おい!」
「わしの悲願じゃった。花岡最強の使い手をこの目で見ることが出来た」
「お前、死ぬのか?」
「何を! これから士王がどれほどの使い手になるのかを見なければならん。わしも鍛えるしな」
「そうか、宜しくな」
俺がそう言うと、斬が目を丸くして俺を見た。
「なんだよ、ほんとに!」
「お前は士王をわしに鍛えさせてくれるのか?」
「当たり前だろう! お前が最高の使い手であり、教育者だろう。お前に預けるのが一番いいに決まっている」
「じゃが、士王は戦いには入れないと」
「それと「花岡」の使い手になることはまったく関係ねぇ。士王はそういう宿命を背負ってるんだから、俺も全力で応援するさ」
「お前……」
「ほんとに今日は気持ち悪いな」
「すまん」
「おい!」
調子が狂う。
俺は用事があると言って出掛けた。
久しぶりに栞とも話したいだろう。
俺は適当にターナー少将や月岡、そして先月から入った東雲や諸見たちに会いに行った。
諸見がまた「自分なんかのところまで」と大げさに泣きやがった。
面白かったので、一度出てからありったけのハムやソーセージを抱えて渡してやった。
また泣きやがった。
月岡と東雲は、資源が潤沢に手に入ったので、作業が予想以上に進んでいると言った。
様々な資源の加工や高炉やその他の金属加工のプラントの建設もじきに終わると言った。
石油の精製もプラントが出来つつある。
そちらはアラスカの基地ではほとんど必要ないので、基地外の住民に分ける他、ロックハート財閥に渡して行く予定だ。
昼前に栞の居住区に戻る。
桜花たちが昼食の準備をしていた。
俺は士王を抱きながら、栞とゆっくりとしていた。
斬は、トレーニング・ルームに行っていた。
「あいつは、ゆったり過ごすことが苦手なんだろうよ」
「うん。でも、いろいろ話せたよ。ありがとう」
「いや。また機会を見つけて連れて来るし、いずれは栞も斬の屋敷に行ってくれ」
「うん。楽しみだよ」
「しかし、驚いたな。まるで普通のジジィに見えたぞ」
「言い過ぎだよ!」
栞も笑いながら言った。
「結構家族とは喋るんだよ」
「ああ、そう言えば初めて栞の家に行った時も、家の歴史とかずっと話してたよな」
「そう。怖い部分もあるけど、優しんだ、おじいちゃんは」
「そうか」
とてもそうは思えないが、栞が言うのだから家族にはそうなのだろう。
昼食を食べ、俺たちは帰る準備をした。
また「Ωスーツ」を着る。
斬の支度を栞が手伝った。
「じゃあ、また来るな」
「うん、待ってる」
斬が黙っている。
「何か言えよ!」
「また来てもいいか?」
「待ってますよ!」
斬が微笑んだ。
士王の頭を撫でる。
士王が泣き出した。
「いつものことだから。この人が帰るのが分かるみたいなの」
「そうか」
栞と桜花たちに見送られ、俺たちは飛んだ。
帰りは斬の調子が良かったので、ハワイ島には寄らずにノンストップで飛行した。
月曜の朝8時頃に斬の屋敷に着いた。
俺は着替えて帰ろうとした。
「じゃあな。また連れて行くからな」
「おい、飯でも食っていけ」
「さっき食べたばかりだろう」
「いいから上がって行け」
珍しく、斬が俺を誘いたがった。
俺は屋敷に上がった。
斬の身の回りの世話をしている女性が、茶を運んで来る。
羊羹も出た。
「食事はいらないか?」
「ああ。お前が食べたいのなら少しは付き合うけどな」
「そうか」
斬が女性に何かを話した。
しばらく待っていると、茶漬けと鮎の焼き物が出て来た。
「お前は鮎が好きなのだろう?」
「まあな。よく知ってたな」
「お前のことならな」
斬と二人でしばらく黙って食べた。
「夕べは付き合えなくて悪かったな」
「あ? ああ! なんだ気にしてたのか」
「わしもお前とゆっくり話したいと思った。不甲斐なく済まなかった」
「おいおい」
俺は笑って食事をした。
「そう言えば、お前の奥さんはどうしたんだ?」
栞からも聞いたことは無かった。
「若くして死んだ。雅が12の時だ。ガンじゃった」
「そうか。それから後妻は貰わなかったのか?」
「ああ、外に子どもは作ったが、わしの妻はあいつだけだ」
「惚れてたのか」
「ああ」
「!」
率直に認めるとは思わなかった。
「あいつだけだ、わしが惚れた女は」
「へぇ」
「優しい女だった。わしはこんな男だが、あいつが生んだ子だから、雅にも随分と甘くなってしまった。雅もあいつに似て、優しい男になった」
「そうか」
斬は、俺が聞かずとも、死んだ妻の話をした。
俺は時々相槌を打ちながら、それを聞いた。
何百人も無惨に殺して来た男が、一人の純粋な愛を語っていた。
斬は、懐かしそうに笑みを浮かべながら話した。
自分でその顔に気付いていたかは分からない。
「雅は千両の娘に一目惚れした。わしも千両も何の反対もない。すぐに二人は夫婦になり、そして栞が生まれた」
「ああ」
「わしが最も幸せだった時期だ。今から思えばな」
「そうか」
「栞が成長し、「花岡」を覚え始めて、わしは驚いた。栞は「螺旋」の女だった」
「どういうものだ?」
「「花岡」の最強の使い手を生むという意味じゃ。そしてお前の血を受け継いだ士王が生まれた」
「そうだな」
「栞の子であるだけでも、その上にお前の血が引かれた。わしは是非見てみたい。「花岡」が、一体どれほどの花を咲かせるのかをな」
「見ろよ。お前はまだまだ死なないだろう」
「当たり前じゃ!」
俺たちは随分と話し込んだ。
途中で昼飯を食い、またずっと話し続けた。
斬と、これほどに楽しく話すとは思ってもみなかった。
俺が帰らなくてはならないと言って、夕方に話を終えた。
「もう帰るのか。夕飯も喰って行け」
「いいよ。斬、楽しかった。また話そう」
「ああ、必ずな」
夕べ、自分が酔いつぶれたことを気にしてくれたのか、それとも本当に俺と話がしたかったのか。
俺には分からない。
だが、俺も斬も心底から楽しく語り合った。
お互いに思い出の話をし、今は亡き人を懐かしんだ。
《君看よや 双眼の色 語らざれば 憂い無きに似たり》(白隠禅師)
斬は恐ろしい男だ。
誰もがそう思っている。
しかし、それだけではない人間が確かにいる。
栞はそれを知り、侠客・千両も斬を親友と呼ぶ。
そして俺も、知った。
俺はハマーを飛ばしながら、斬との楽しい時間を思い出していた。
家に帰り、その美しい気分を壊した双子をぶっ飛ばし、俺の引出しを漁ったという亜紀ちゃんと柳には軽く拳骨を落とした。
双子は二日間学校を休んだ。
当然だ。
俺が起きて着替えて食堂へ行くと、斬は既に起きていた。
「やっぱり早いな」
「ふん! お前、たるんでいるぞ」
「そうかよ」
俺は笑ってテーブルに付いた。
「あなた、おはよう」
「ああ、おはよう。士王もおはような!」
栞が士王を抱いて来る。
桜花たちに挨拶しながら、俺は士王を抱いた。
桜花が俺の食事を運んで来た。
「おい、斬。士王を抱いてくれ」
斬に士王を渡した。
斬は意外と手慣れた動作で士王を抱く。
顔が綻んでいるが、言うと機嫌を損ないそうなので黙っていた。
「いい顔だな」
斬がそう言った。
栞も微笑んでいる。
「お前が赤ん坊を抱くなんて、まあ、似合わねぇなぁ!」
俺はからかった。
「そうか。ああ、そうだな」
斬が微笑みながら、そう言い、俺に士王を返そうとする。
「俺は食事をするから、しばらく抱いていてくれ」
「ああ、分かった」
士王は初めての人間なので、じっと見ている。
斬が士王の頭を撫でると、士王がその指を掴もうとする。
斬は、笑顔で人差し指を渡した。
俺はプレーン・オムレツを食べながら、それを見ていた。
「おい、お前、酒が飲めないのなら最初から言えよ」
「ふん! 酒など幾らでも飲めるわ」
「何言ってんだ! 1杯でグーグー寝てたくせに!」
「風邪をこじらせていたのを忘れておったわい」
「風邪なら士王を抱くな!」
士王が泣き出した。
斬が慌ててあやす。
栞と二人で笑った。
「折角、お前といろいろ話そうと思っていたのに」
「そうなのか?」
「お前とはゆっくり話す機会も無かったからな。残念だ」
「そうか」
斬は意外と素直に受け取っていた。
士王が泣き止み、また斬の指を掴もうとする。
斬は士王の頬を指先で優しく突いた。
士王が笑った。
「笑ったぞ」
「見りゃ分かる」
「わしを見て笑っている」
「そうかよ」
俺は朝食を食べ終え、コーヒーを頼んだ。
「ひいおじいちゃんでちゅよー、って言え!」
「ふん!」
士王がまた泣きそうな顔になる。
「おい、早く言え!」
「ひ、ひいおじいちゃんでちゅよー」
栞と大笑いした。
「お前、本当に斬かよ?」
「……」
斬は返事をしなかった。
士王を見詰めて笑っていた。
俺は斬から士王を受け取り、抱きながら部屋を歩いた。
士王が大喜びで笑い、身体を動かす。
「やはりお前がいいのか」
「どうだ、いいだろう!」
「まあ、そうだな。お前は誰からも愛される」
「おい」
斬が立ち上がった。
「栞に子どもを生ませてくれ、礼を言う。ありがとう」
斬が頭を下げた。
「なんだよ、おい!」
「わしの悲願じゃった。花岡最強の使い手をこの目で見ることが出来た」
「お前、死ぬのか?」
「何を! これから士王がどれほどの使い手になるのかを見なければならん。わしも鍛えるしな」
「そうか、宜しくな」
俺がそう言うと、斬が目を丸くして俺を見た。
「なんだよ、ほんとに!」
「お前は士王をわしに鍛えさせてくれるのか?」
「当たり前だろう! お前が最高の使い手であり、教育者だろう。お前に預けるのが一番いいに決まっている」
「じゃが、士王は戦いには入れないと」
「それと「花岡」の使い手になることはまったく関係ねぇ。士王はそういう宿命を背負ってるんだから、俺も全力で応援するさ」
「お前……」
「ほんとに今日は気持ち悪いな」
「すまん」
「おい!」
調子が狂う。
俺は用事があると言って出掛けた。
久しぶりに栞とも話したいだろう。
俺は適当にターナー少将や月岡、そして先月から入った東雲や諸見たちに会いに行った。
諸見がまた「自分なんかのところまで」と大げさに泣きやがった。
面白かったので、一度出てからありったけのハムやソーセージを抱えて渡してやった。
また泣きやがった。
月岡と東雲は、資源が潤沢に手に入ったので、作業が予想以上に進んでいると言った。
様々な資源の加工や高炉やその他の金属加工のプラントの建設もじきに終わると言った。
石油の精製もプラントが出来つつある。
そちらはアラスカの基地ではほとんど必要ないので、基地外の住民に分ける他、ロックハート財閥に渡して行く予定だ。
昼前に栞の居住区に戻る。
桜花たちが昼食の準備をしていた。
俺は士王を抱きながら、栞とゆっくりとしていた。
斬は、トレーニング・ルームに行っていた。
「あいつは、ゆったり過ごすことが苦手なんだろうよ」
「うん。でも、いろいろ話せたよ。ありがとう」
「いや。また機会を見つけて連れて来るし、いずれは栞も斬の屋敷に行ってくれ」
「うん。楽しみだよ」
「しかし、驚いたな。まるで普通のジジィに見えたぞ」
「言い過ぎだよ!」
栞も笑いながら言った。
「結構家族とは喋るんだよ」
「ああ、そう言えば初めて栞の家に行った時も、家の歴史とかずっと話してたよな」
「そう。怖い部分もあるけど、優しんだ、おじいちゃんは」
「そうか」
とてもそうは思えないが、栞が言うのだから家族にはそうなのだろう。
昼食を食べ、俺たちは帰る準備をした。
また「Ωスーツ」を着る。
斬の支度を栞が手伝った。
「じゃあ、また来るな」
「うん、待ってる」
斬が黙っている。
「何か言えよ!」
「また来てもいいか?」
「待ってますよ!」
斬が微笑んだ。
士王の頭を撫でる。
士王が泣き出した。
「いつものことだから。この人が帰るのが分かるみたいなの」
「そうか」
栞と桜花たちに見送られ、俺たちは飛んだ。
帰りは斬の調子が良かったので、ハワイ島には寄らずにノンストップで飛行した。
月曜の朝8時頃に斬の屋敷に着いた。
俺は着替えて帰ろうとした。
「じゃあな。また連れて行くからな」
「おい、飯でも食っていけ」
「さっき食べたばかりだろう」
「いいから上がって行け」
珍しく、斬が俺を誘いたがった。
俺は屋敷に上がった。
斬の身の回りの世話をしている女性が、茶を運んで来る。
羊羹も出た。
「食事はいらないか?」
「ああ。お前が食べたいのなら少しは付き合うけどな」
「そうか」
斬が女性に何かを話した。
しばらく待っていると、茶漬けと鮎の焼き物が出て来た。
「お前は鮎が好きなのだろう?」
「まあな。よく知ってたな」
「お前のことならな」
斬と二人でしばらく黙って食べた。
「夕べは付き合えなくて悪かったな」
「あ? ああ! なんだ気にしてたのか」
「わしもお前とゆっくり話したいと思った。不甲斐なく済まなかった」
「おいおい」
俺は笑って食事をした。
「そう言えば、お前の奥さんはどうしたんだ?」
栞からも聞いたことは無かった。
「若くして死んだ。雅が12の時だ。ガンじゃった」
「そうか。それから後妻は貰わなかったのか?」
「ああ、外に子どもは作ったが、わしの妻はあいつだけだ」
「惚れてたのか」
「ああ」
「!」
率直に認めるとは思わなかった。
「あいつだけだ、わしが惚れた女は」
「へぇ」
「優しい女だった。わしはこんな男だが、あいつが生んだ子だから、雅にも随分と甘くなってしまった。雅もあいつに似て、優しい男になった」
「そうか」
斬は、俺が聞かずとも、死んだ妻の話をした。
俺は時々相槌を打ちながら、それを聞いた。
何百人も無惨に殺して来た男が、一人の純粋な愛を語っていた。
斬は、懐かしそうに笑みを浮かべながら話した。
自分でその顔に気付いていたかは分からない。
「雅は千両の娘に一目惚れした。わしも千両も何の反対もない。すぐに二人は夫婦になり、そして栞が生まれた」
「ああ」
「わしが最も幸せだった時期だ。今から思えばな」
「そうか」
「栞が成長し、「花岡」を覚え始めて、わしは驚いた。栞は「螺旋」の女だった」
「どういうものだ?」
「「花岡」の最強の使い手を生むという意味じゃ。そしてお前の血を受け継いだ士王が生まれた」
「そうだな」
「栞の子であるだけでも、その上にお前の血が引かれた。わしは是非見てみたい。「花岡」が、一体どれほどの花を咲かせるのかをな」
「見ろよ。お前はまだまだ死なないだろう」
「当たり前じゃ!」
俺たちは随分と話し込んだ。
途中で昼飯を食い、またずっと話し続けた。
斬と、これほどに楽しく話すとは思ってもみなかった。
俺が帰らなくてはならないと言って、夕方に話を終えた。
「もう帰るのか。夕飯も喰って行け」
「いいよ。斬、楽しかった。また話そう」
「ああ、必ずな」
夕べ、自分が酔いつぶれたことを気にしてくれたのか、それとも本当に俺と話がしたかったのか。
俺には分からない。
だが、俺も斬も心底から楽しく語り合った。
お互いに思い出の話をし、今は亡き人を懐かしんだ。
《君看よや 双眼の色 語らざれば 憂い無きに似たり》(白隠禅師)
斬は恐ろしい男だ。
誰もがそう思っている。
しかし、それだけではない人間が確かにいる。
栞はそれを知り、侠客・千両も斬を親友と呼ぶ。
そして俺も、知った。
俺はハマーを飛ばしながら、斬との楽しい時間を思い出していた。
家に帰り、その美しい気分を壊した双子をぶっ飛ばし、俺の引出しを漁ったという亜紀ちゃんと柳には軽く拳骨を落とした。
双子は二日間学校を休んだ。
当然だ。
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