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ハイドラの男
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「やっぱり来たか!」
「来たかって、隊長。奴ら3000近いですぜ?」
「俺の勘はよく当たるよなぁ」
「まったく、人の話を聞かねぇ人だ」
「HYDRA(ハイドラ=背虎)」は、主力部隊の背面を守る部隊として設立された。
不意の攻撃に備え、本隊を守るために死力を尽くして背後を守る。
部隊員100名は、「不死の百頭」である怪物ハイドラに因んでいる。
2個小隊規模だが、高度な訓練を経た精鋭の部隊だった。
特に隊長の馬込真二は、最高幹部ルイン・ツインズに長年鍛え上げられた不屈の闘志を持つ男と言われている。
「猛猫馬込」と呼ばれ、数々の困難な戦況を覆して来た。
「隊長、ここは本隊に連絡して増援を頼むべきですぜ」
「バカを言うな! 今本隊はブリュッセルの広域で分散して作戦行動中だ。こっちに人員を割けば、作戦そのものが崩れる可能性が高い」
「でも、あっしらだけでは無理ですぜ」
「俺たちは「背虎」だ! 何が何でも本隊を守るんだぜ!」
「まったく、分かりましたよ!」
「いつも通りだ。俺がぶっ込む」
「宜しくお願いします」
「お前らは逃げて来た奴らを頼むな」
「了解です!」
馬込はカサンドラの高出力タイプ「レーヴァテイン」を両手に持った。
部隊員も同様に「レーヴァテイン」を握る。
「「虎の穴」から入電! 応援が来ます!」
通信兵が叫んだ。
「誰だ!」
「コード「サイレント・タイガー(静かなる虎)」!」
「竹流か!」
全員が喜ぶ。
心強い味方だった。
「あと2分で現着! 作戦行動を一時待てとのことです!」
「もちろんだぁ! よし、堺!」
馬込は作戦立案の副官を呼んだ。
「俺と竹流でぶっ込む! その作戦を立てろ! 30秒だ!」
「作戦も何も。お二人で左翼右翼から挟撃して下さい!」
「よし!」
「お二人が遅いと、俺ら死んじゃいますからね!」
「ワハハハハハ!」
部隊の後方に、竹流が降り立った。
「竹流!」
「馬込さん! お久しぶりです!」
「よく来てくれたな! 助かったぜ」
「そんな。ルーさんは必要ないって言ってたんですけど」
「あいつ!」
「神様が念のために行けって」
「石神さんはいつも優しいよなぁ!」
馬込は竹流と握手を交わし、作戦を説明した。
「観測員から入電! ジェヴォーダン・タイプA40体、タイプF4体が急速接近! バイオノイドの大隊に合流するようです!」
「お替りもあるってよ!」
全員が笑った。
数々の修羅場を潜った、勇猛な戦士たちだった。
「竹流! やることは同じだ! 殲滅すっぞ!」
「分かりました!」
馬込はレーヴァテインを背に装着し、右翼に飛んだ。
「ブリューナク」を目につくバイオノイドとジェヴォーダンに撃ち込んで行く。
敵の中央が直進していくのを見て、笑顔を浮かべた。
反対側の左翼で、大きな爆発音と共に巨大な炎の壁が上がって行く。
竹流の秘奥義「マルミアドワーズ」だった。
螺旋状に突き進む高エネルギー粒子が、その周辺に10億度の超高熱を発生させていく。
およそ、それに耐える物質は存在しない。
「あー、俺も必殺技とか欲しかったなー」
馬込は愚痴を零す間にも、次々とバイオノイドを屠って行く。
竹流が回り込んで後方のジェヴォーダンを殲滅していくのを見た。
ネームドの実力を思い知った。
「俺だって、あんだけルーとハーに鍛えられたのによ!」
馬込は笑いながら、レーヴァテインを抜き、敵陣に突っ込んで行った。
馬込の走り抜ける前方と両脇100メートルでバイオノイドが次々と粉砕されていく。
馬込は左側の、敵前方を見た。
突如崩れた巨大な穴に、1000体程のバイオノイドが落下していく。
「ギャハハハハハハ!」
馬込たちが事前に掘っていた落とし穴だった。
縦500メートル、幅1キロ、深さ100メートルの大穴だった。
支柱の爆破で作動する仕組みになっていた。
「間抜けがぁ! ざまぁ!」
部隊員が一斉に、落下したバイオノイドにレーヴァテインを浴びせている。
瞬時に2億度に達した穴の底で、バイオノイドは死滅した。
「凄いですね、馬込さん!」
竹流から通信が入った。
「おうよ!」
馬込は残ったバイオノイドを狩り、部隊員も前面に出て来て掃討戦になる。
戦闘開始から約1時間後。
バイオノイドとジェヴォーダンは全滅した。
「生体反応、ありません!」
「よし! じゃあ本隊に連絡! 思う存分にやってくれ、とな!」
「了解!」
竹流が戻って来た。
もちろん無傷であり、また「ハイドラ」のメンバーにも軽傷者すらいなかった。
「見事な作戦でした!」
竹流が満面の笑みで言った。
「いや、竹流が後方から追いやってくれたお陰だ。ジェヴォーダンも蹴散らしてくれたしな」
「でも爽快でしたよ! まさかあんな作戦が」
「あの罠はジェヴォーダンには通用しなかったけどな」
「でも、馬込さんなら何とかしたでしょ?」
「まあな。あと13の罠を仕掛けてる」
竹流は馬込から残りの罠を教えてもらい、大笑いした。
「俺たちは竹流みたいに強くないからよ。こすっからいことをして、何とかやってるんだ」
「そんな! 最高ですよ、馬込さん!」
「そうか?」
「そうですって!」
「ワハハハハハハ!」
部隊員がバイオノイドの死骸を落とし穴に放り投げ、またジェヴォーダンを引きずって来た。
「何をするんです?」
「ジェヴォーダンは硬いからな。いい防壁になるんだよ」
「なるほど!」
「これで第二波が来ても、もうちょっと楽に戦える」
「凄いですね!」
「弱いからだよ。だからいろいろ工夫もすんだ」
「「ハイドラ」の皆さんがどんな戦場でも勝利して生き延びてきたのが分かりましたよ」
「そうかぁ?」
またみんなで笑った。
「「虎の穴」から入電!」
「なんだ?」
「最高幹部ルイン・ツインズからです! 「作戦遂行おめでとう! 特別ボーナスを支給する!」
「おお! 気前がいいな!」
「全員に極秘画像を送信! 各自の端末を確認して存分に楽しめ!」
「なんだ?」
馬込たちが自分の個人端末を操作し、送られた画像を見た。
ルーとハーのマイクロビキニ姿だった。
「なんだこりゃ!」
竹流も見て驚いた。
「あいつらの小学生の時の奴じゃねぇか! せめて今のを寄越せ!」
「でも隊長! 嬉しそうですよ?」
「当たり前だぁー!」
みんなで爆笑した。
「良かったですね!」
竹流が馬込に言った。
「まあな。こん時からずっと、あいつらにベタ惚れだったからな。俺に振り向いて欲しかったんだ」
「そうだったんですか」
「ハワイで俺を認めてくれたんだ。だからよ、あいつらのために、俺は必死で戦うぜ」
「はい!」
「どんな任務だって、絶対にこなしてやる! あいつらにそう約束したんだ」
「そうですか!」
馬込は少し恥ずかしそうに笑った。
竹流は、そんな馬込を心底から尊敬した。
「じゃあ、小休止だ! 交代で半分ずつ休め!」
竹流は馬込に食事に誘われた。
「ルーさんとハーさんに会いたくなりませんか?」
「そりゃな。でもいいんだ。あいつらさ、今でも俺のことを大事にしてくれるんだよ」
「そうですか」
「俺たちの出動命令は、必ずルーとハーから直接来るんだ。他の経路で来たことは一度もねぇ」
「へぇー!」
「俺が二人を必ず守るんだって言ったからな。今でもそうしてくれんだよ」
「いいですね」
「まあな。あいつら最高幹部じゃない。だから本当は呼び捨てなんてダメなんだけどな。でも、あいつらは俺にだけ許してくれてる」
「はい」
「俺はだから、ちょっとだけ特別なんだ」
「アハハハハ」
「俺はそれだけでいい。もう十分だ」
「そうですか」
竹流はそろそろ「虎の穴」に戻ると言った。
「これだけ助けてくれたのに、何も出来ないで済まないな」
「いいえ! 素晴らしいものを頂きましたよ!」
「そうか?」
「では、またどこかの戦場で!」
「ああ! また面白いもんを見せてやるよ!」
「楽しみです!」
竹流は上昇し、光の帯を描いて去って行った。
「ああ、「サイレント・タイガー」かぁ。俺も虎ネームが欲しかったなぁ」
馬込は見送りながら、呟いた。
「まあ、無理か。あんなに強くねぇもんな」
馬込は右肩を左手で押さえた。
そこには「猫」のタトゥーがあった。
双子から二つ名「猛猫」を貰った時に、あまりの嬉しさで彫ったものだった。
「まあ、ロボさんは最強だからな!」
部隊員が戦勝で大騒ぎになっている。
馬込はそれを優しく微笑んで眺めていた。
「来たかって、隊長。奴ら3000近いですぜ?」
「俺の勘はよく当たるよなぁ」
「まったく、人の話を聞かねぇ人だ」
「HYDRA(ハイドラ=背虎)」は、主力部隊の背面を守る部隊として設立された。
不意の攻撃に備え、本隊を守るために死力を尽くして背後を守る。
部隊員100名は、「不死の百頭」である怪物ハイドラに因んでいる。
2個小隊規模だが、高度な訓練を経た精鋭の部隊だった。
特に隊長の馬込真二は、最高幹部ルイン・ツインズに長年鍛え上げられた不屈の闘志を持つ男と言われている。
「猛猫馬込」と呼ばれ、数々の困難な戦況を覆して来た。
「隊長、ここは本隊に連絡して増援を頼むべきですぜ」
「バカを言うな! 今本隊はブリュッセルの広域で分散して作戦行動中だ。こっちに人員を割けば、作戦そのものが崩れる可能性が高い」
「でも、あっしらだけでは無理ですぜ」
「俺たちは「背虎」だ! 何が何でも本隊を守るんだぜ!」
「まったく、分かりましたよ!」
「いつも通りだ。俺がぶっ込む」
「宜しくお願いします」
「お前らは逃げて来た奴らを頼むな」
「了解です!」
馬込はカサンドラの高出力タイプ「レーヴァテイン」を両手に持った。
部隊員も同様に「レーヴァテイン」を握る。
「「虎の穴」から入電! 応援が来ます!」
通信兵が叫んだ。
「誰だ!」
「コード「サイレント・タイガー(静かなる虎)」!」
「竹流か!」
全員が喜ぶ。
心強い味方だった。
「あと2分で現着! 作戦行動を一時待てとのことです!」
「もちろんだぁ! よし、堺!」
馬込は作戦立案の副官を呼んだ。
「俺と竹流でぶっ込む! その作戦を立てろ! 30秒だ!」
「作戦も何も。お二人で左翼右翼から挟撃して下さい!」
「よし!」
「お二人が遅いと、俺ら死んじゃいますからね!」
「ワハハハハハ!」
部隊の後方に、竹流が降り立った。
「竹流!」
「馬込さん! お久しぶりです!」
「よく来てくれたな! 助かったぜ」
「そんな。ルーさんは必要ないって言ってたんですけど」
「あいつ!」
「神様が念のために行けって」
「石神さんはいつも優しいよなぁ!」
馬込は竹流と握手を交わし、作戦を説明した。
「観測員から入電! ジェヴォーダン・タイプA40体、タイプF4体が急速接近! バイオノイドの大隊に合流するようです!」
「お替りもあるってよ!」
全員が笑った。
数々の修羅場を潜った、勇猛な戦士たちだった。
「竹流! やることは同じだ! 殲滅すっぞ!」
「分かりました!」
馬込はレーヴァテインを背に装着し、右翼に飛んだ。
「ブリューナク」を目につくバイオノイドとジェヴォーダンに撃ち込んで行く。
敵の中央が直進していくのを見て、笑顔を浮かべた。
反対側の左翼で、大きな爆発音と共に巨大な炎の壁が上がって行く。
竹流の秘奥義「マルミアドワーズ」だった。
螺旋状に突き進む高エネルギー粒子が、その周辺に10億度の超高熱を発生させていく。
およそ、それに耐える物質は存在しない。
「あー、俺も必殺技とか欲しかったなー」
馬込は愚痴を零す間にも、次々とバイオノイドを屠って行く。
竹流が回り込んで後方のジェヴォーダンを殲滅していくのを見た。
ネームドの実力を思い知った。
「俺だって、あんだけルーとハーに鍛えられたのによ!」
馬込は笑いながら、レーヴァテインを抜き、敵陣に突っ込んで行った。
馬込の走り抜ける前方と両脇100メートルでバイオノイドが次々と粉砕されていく。
馬込は左側の、敵前方を見た。
突如崩れた巨大な穴に、1000体程のバイオノイドが落下していく。
「ギャハハハハハハ!」
馬込たちが事前に掘っていた落とし穴だった。
縦500メートル、幅1キロ、深さ100メートルの大穴だった。
支柱の爆破で作動する仕組みになっていた。
「間抜けがぁ! ざまぁ!」
部隊員が一斉に、落下したバイオノイドにレーヴァテインを浴びせている。
瞬時に2億度に達した穴の底で、バイオノイドは死滅した。
「凄いですね、馬込さん!」
竹流から通信が入った。
「おうよ!」
馬込は残ったバイオノイドを狩り、部隊員も前面に出て来て掃討戦になる。
戦闘開始から約1時間後。
バイオノイドとジェヴォーダンは全滅した。
「生体反応、ありません!」
「よし! じゃあ本隊に連絡! 思う存分にやってくれ、とな!」
「了解!」
竹流が戻って来た。
もちろん無傷であり、また「ハイドラ」のメンバーにも軽傷者すらいなかった。
「見事な作戦でした!」
竹流が満面の笑みで言った。
「いや、竹流が後方から追いやってくれたお陰だ。ジェヴォーダンも蹴散らしてくれたしな」
「でも爽快でしたよ! まさかあんな作戦が」
「あの罠はジェヴォーダンには通用しなかったけどな」
「でも、馬込さんなら何とかしたでしょ?」
「まあな。あと13の罠を仕掛けてる」
竹流は馬込から残りの罠を教えてもらい、大笑いした。
「俺たちは竹流みたいに強くないからよ。こすっからいことをして、何とかやってるんだ」
「そんな! 最高ですよ、馬込さん!」
「そうか?」
「そうですって!」
「ワハハハハハハ!」
部隊員がバイオノイドの死骸を落とし穴に放り投げ、またジェヴォーダンを引きずって来た。
「何をするんです?」
「ジェヴォーダンは硬いからな。いい防壁になるんだよ」
「なるほど!」
「これで第二波が来ても、もうちょっと楽に戦える」
「凄いですね!」
「弱いからだよ。だからいろいろ工夫もすんだ」
「「ハイドラ」の皆さんがどんな戦場でも勝利して生き延びてきたのが分かりましたよ」
「そうかぁ?」
またみんなで笑った。
「「虎の穴」から入電!」
「なんだ?」
「最高幹部ルイン・ツインズからです! 「作戦遂行おめでとう! 特別ボーナスを支給する!」
「おお! 気前がいいな!」
「全員に極秘画像を送信! 各自の端末を確認して存分に楽しめ!」
「なんだ?」
馬込たちが自分の個人端末を操作し、送られた画像を見た。
ルーとハーのマイクロビキニ姿だった。
「なんだこりゃ!」
竹流も見て驚いた。
「あいつらの小学生の時の奴じゃねぇか! せめて今のを寄越せ!」
「でも隊長! 嬉しそうですよ?」
「当たり前だぁー!」
みんなで爆笑した。
「良かったですね!」
竹流が馬込に言った。
「まあな。こん時からずっと、あいつらにベタ惚れだったからな。俺に振り向いて欲しかったんだ」
「そうだったんですか」
「ハワイで俺を認めてくれたんだ。だからよ、あいつらのために、俺は必死で戦うぜ」
「はい!」
「どんな任務だって、絶対にこなしてやる! あいつらにそう約束したんだ」
「そうですか!」
馬込は少し恥ずかしそうに笑った。
竹流は、そんな馬込を心底から尊敬した。
「じゃあ、小休止だ! 交代で半分ずつ休め!」
竹流は馬込に食事に誘われた。
「ルーさんとハーさんに会いたくなりませんか?」
「そりゃな。でもいいんだ。あいつらさ、今でも俺のことを大事にしてくれるんだよ」
「そうですか」
「俺たちの出動命令は、必ずルーとハーから直接来るんだ。他の経路で来たことは一度もねぇ」
「へぇー!」
「俺が二人を必ず守るんだって言ったからな。今でもそうしてくれんだよ」
「いいですね」
「まあな。あいつら最高幹部じゃない。だから本当は呼び捨てなんてダメなんだけどな。でも、あいつらは俺にだけ許してくれてる」
「はい」
「俺はだから、ちょっとだけ特別なんだ」
「アハハハハ」
「俺はそれだけでいい。もう十分だ」
「そうですか」
竹流はそろそろ「虎の穴」に戻ると言った。
「これだけ助けてくれたのに、何も出来ないで済まないな」
「いいえ! 素晴らしいものを頂きましたよ!」
「そうか?」
「では、またどこかの戦場で!」
「ああ! また面白いもんを見せてやるよ!」
「楽しみです!」
竹流は上昇し、光の帯を描いて去って行った。
「ああ、「サイレント・タイガー」かぁ。俺も虎ネームが欲しかったなぁ」
馬込は見送りながら、呟いた。
「まあ、無理か。あんなに強くねぇもんな」
馬込は右肩を左手で押さえた。
そこには「猫」のタトゥーがあった。
双子から二つ名「猛猫」を貰った時に、あまりの嬉しさで彫ったものだった。
「まあ、ロボさんは最強だからな!」
部隊員が戦勝で大騒ぎになっている。
馬込はそれを優しく微笑んで眺めていた。
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