1,015 / 2,840
真冬の別荘 Ⅳ: ニューヨーク恋物語
しおりを挟む
俺が今の病院に移り、数年が経った頃。
やっと蓼科部長から夏に長期休暇をもらった。
「お前なんかが休暇で何するんだ?」
「久しぶりにニューヨークの友達に会いたいと思います!」
「お前の友達?」
「はい!」
「どうせ人殺しかなんかだろう」
「はい! その通りです」
その通りだ。
すっげぇー人殺しだ、あいつは。
聖が珍しく空港まで迎えに来てくれた。
早速ガシガシと喧嘩をし、警備員が来たので慌てて逃げた。
「トラ、なんかジャンニーニがお前に会いたいってさ」
「え? なんだろう」
「またぶん殴って欲しいんじゃねぇの」
「あいつも変わってんなぁ」
取り敢えず聖のアパートメントへ行き、一息付いた。
電話が掛かって来て、聖が受けた。
「ああそうだよ。今着いたとこだ」
俺のことらしい。
「トラには話したよ! なんだようるせぇな!」
「おい、代ろうか?」
聖が受話器を寄越す。
「トラ! お前今ニューヨークにいるんだよな?」
「なんだジャンニーニか。何だよ、俺に用って?」
「とにかくうちに来てくれないか?」
「あー、めんどくせぇ」
「お前ら! いつも呼んでもいねぇのに突っ込んでくるくせに!」
「アハハハハハハ!」
俺は聖に行こうと言った。
まあ、ジャンニーニにも久しぶりに会いたい。
二人で出掛ける。
聖が買ったばかりのロールスロイス「シルヴァー・セラフ(銀の熾天使)」を運転する。
俺が聖に車の相談を受け、これを勧めた。
もちろん「シルヴァー・セラフ」という名前が聖にピッタリだったからだ。
こいつは天使だ。
無邪気で危険な天使。
俺の大親友だ。
聖も俺が選んでくれたと喜んでいた。
三日間寝ないで悩んだと言ったら「すぐに寝てくれ」と泣きそうな声で言った。
起きたばかりで眠くも無かったが、俺は取り敢えず寝た。
聖の車を見て、門番がすぐに門を開ける。
俺は手を振って挨拶した。
でかい屋敷の玄関前に停めて降りる。
すぐにジャンニーニの執務室へ案内された。
「トラ!」
ジャンニーニが寄って来て握手をした。
ハグしようとしたので腹に拳を入れた。
豪華なソファに座らされ、紅茶が置かれた。
俺たちは口を付けない。
「トラが来るってセイントに聞いたんでな」
「なんなんだよ、ジャンニーニ。戦争か?」
「そうじゃねぇ。実はな」
「おう」
「セイントには全然関係ねぇんだが」
「そうかよ」
「それでな」
「ああ」
「トラは元気か?」
「テメェ! とっとと用件を話せぇ!」
俺はイラついて怒鳴った。
ジャンニーニはハンカチで額の汗を拭いた。
「トラは女によくモテるだろ?」
「まーな」
「俺に女の扱いを教えてくれ!」
ジャンニーニが叫んだ。
部下たちは無表情だ。
下手に反応すればどうなるか分からない。
ジャンニーニは恐ろしい裏社会の実力者なのだ。
「まず背中から手を回して乳首をゆっくり回してやる。耳も甘噛みしろ。股間はその後だぞ? それも出来るだけ最初はソフトにな! 焦って指なんか入れんじゃねぇぞ」
「い、いや、トラ。そういう扱いじゃなくてだな」
「あ?」
違うらしい。
ジャンニーニが汗を拭きながら俺たちに話した。
「最初はニューヨーク市長がうちに来た時なんだ」
「あ、そう」
その秘書に一目惚れしたということらしい。
ソフィア・ミラー、身長179センチ、金髪のロングストレート、瞳はエメラルドグリーン、顔はBB(ブリジット・バルドー)に似ているらしい。
B98 W65 H99。
イェール・ロー・スクールを首席で卒業した現在32歳のインテリ女性だ。
「へー」
「頼む、トラ! 何とかお前の力を貸してくれ!」
「攫って来ようか?」
「そうじゃねぇ!」
もちろん冗談だ。
俺に興味が無いだけだ。
「無理だろうよ。お前、何の稼業やってんだよ」
「分かってる! それでも忘れられないんだ!」
「へー」
「トラ!」
まったくろくでもねぇ話だった。
「トラ、ちょっと力を貸してやれよ」
聖が言った。
意外な言葉に俺が驚いた。
「ジャンニーニさ、本気で苦しそうじゃん。トラなら何とか出来んじゃないのか?」
聖は天使だった。
忘れていた。
こいつは本気で苦しんでいる人間を放っておけないのだ。
まあ、自分が気に入っている奴限定だが。
「聖、お前なぁ」
「なぁ、何とかしてやれよ。可哀そうじゃん」
「セイント!」
ジャンニーニが目を潤ませて聖を見ていた。
まったく、しょうがねぇ。
「分かったよ! 聖に言われちゃしょうがねぇ。こいつにはでっかい借りがあるからな!」
「トラ、ありがとう」
聖が微笑んで言った。
「だけどよ、ジャンニーニ。お前が無理筋を通そうとしてるのは分かってるよな?」
「ああ、もちろんだ」
「俺も協力してやるけど、どうなるかは分からねぇ」
「ああ!」
「まずは相手に会ってみないとな」
「そうか!」
「その段取りを組んでくれ」
「ああ、無理だ」
「あ?」
何の接点も持っていないらしい。
「お前なぁ。やけに詳しい資料を持ってるじゃねぇか」
「それは金と人で集めた」
「あー」
幾ら何でも、俺がニューヨーク市長の秘書と会うのは難しい。
俺はあれこれと考えていた。
「トラ、俺がなんとか出来るかも」
聖が言った。
「お前が?」
「ああ。今「セイントPMC」の新社屋の土地を探してんだ」
「ああ」
俺が設立させた「セイントPMC」は順調すぎる成長をしていた。
チャップの所にはまだ及ばないが、業界では急成長だ。
「それで、土地の買収を市長と協議しながらやってんだ」
「ほんとか!」
「ああ、何度か会ってるし、明日もまたアポが取ってある」
「じゃあ、ソフィアとも会ってるのか!」
「多分な」
「なんだよ、頼りねぇな」
「だって、俺ロリコンじゃねぇから」
なるほどね。
50超えてないもんね。
「じゃあ、トラも同席してくれよ」
「ああ、分かった。ジャンニーニ、それでいいな!」
「もちろんだぁー!」
ジャンニーニが立ち上がって両手を上に拡げた。
聖に抱き着き、腹に強烈なパンチを喰らった。
笑っていた。
まあ、こいつにもちょっとは世話になった。
何とかしてみるか。
俺もジャンニーニは嫌いじゃないしな。
やっと蓼科部長から夏に長期休暇をもらった。
「お前なんかが休暇で何するんだ?」
「久しぶりにニューヨークの友達に会いたいと思います!」
「お前の友達?」
「はい!」
「どうせ人殺しかなんかだろう」
「はい! その通りです」
その通りだ。
すっげぇー人殺しだ、あいつは。
聖が珍しく空港まで迎えに来てくれた。
早速ガシガシと喧嘩をし、警備員が来たので慌てて逃げた。
「トラ、なんかジャンニーニがお前に会いたいってさ」
「え? なんだろう」
「またぶん殴って欲しいんじゃねぇの」
「あいつも変わってんなぁ」
取り敢えず聖のアパートメントへ行き、一息付いた。
電話が掛かって来て、聖が受けた。
「ああそうだよ。今着いたとこだ」
俺のことらしい。
「トラには話したよ! なんだようるせぇな!」
「おい、代ろうか?」
聖が受話器を寄越す。
「トラ! お前今ニューヨークにいるんだよな?」
「なんだジャンニーニか。何だよ、俺に用って?」
「とにかくうちに来てくれないか?」
「あー、めんどくせぇ」
「お前ら! いつも呼んでもいねぇのに突っ込んでくるくせに!」
「アハハハハハハ!」
俺は聖に行こうと言った。
まあ、ジャンニーニにも久しぶりに会いたい。
二人で出掛ける。
聖が買ったばかりのロールスロイス「シルヴァー・セラフ(銀の熾天使)」を運転する。
俺が聖に車の相談を受け、これを勧めた。
もちろん「シルヴァー・セラフ」という名前が聖にピッタリだったからだ。
こいつは天使だ。
無邪気で危険な天使。
俺の大親友だ。
聖も俺が選んでくれたと喜んでいた。
三日間寝ないで悩んだと言ったら「すぐに寝てくれ」と泣きそうな声で言った。
起きたばかりで眠くも無かったが、俺は取り敢えず寝た。
聖の車を見て、門番がすぐに門を開ける。
俺は手を振って挨拶した。
でかい屋敷の玄関前に停めて降りる。
すぐにジャンニーニの執務室へ案内された。
「トラ!」
ジャンニーニが寄って来て握手をした。
ハグしようとしたので腹に拳を入れた。
豪華なソファに座らされ、紅茶が置かれた。
俺たちは口を付けない。
「トラが来るってセイントに聞いたんでな」
「なんなんだよ、ジャンニーニ。戦争か?」
「そうじゃねぇ。実はな」
「おう」
「セイントには全然関係ねぇんだが」
「そうかよ」
「それでな」
「ああ」
「トラは元気か?」
「テメェ! とっとと用件を話せぇ!」
俺はイラついて怒鳴った。
ジャンニーニはハンカチで額の汗を拭いた。
「トラは女によくモテるだろ?」
「まーな」
「俺に女の扱いを教えてくれ!」
ジャンニーニが叫んだ。
部下たちは無表情だ。
下手に反応すればどうなるか分からない。
ジャンニーニは恐ろしい裏社会の実力者なのだ。
「まず背中から手を回して乳首をゆっくり回してやる。耳も甘噛みしろ。股間はその後だぞ? それも出来るだけ最初はソフトにな! 焦って指なんか入れんじゃねぇぞ」
「い、いや、トラ。そういう扱いじゃなくてだな」
「あ?」
違うらしい。
ジャンニーニが汗を拭きながら俺たちに話した。
「最初はニューヨーク市長がうちに来た時なんだ」
「あ、そう」
その秘書に一目惚れしたということらしい。
ソフィア・ミラー、身長179センチ、金髪のロングストレート、瞳はエメラルドグリーン、顔はBB(ブリジット・バルドー)に似ているらしい。
B98 W65 H99。
イェール・ロー・スクールを首席で卒業した現在32歳のインテリ女性だ。
「へー」
「頼む、トラ! 何とかお前の力を貸してくれ!」
「攫って来ようか?」
「そうじゃねぇ!」
もちろん冗談だ。
俺に興味が無いだけだ。
「無理だろうよ。お前、何の稼業やってんだよ」
「分かってる! それでも忘れられないんだ!」
「へー」
「トラ!」
まったくろくでもねぇ話だった。
「トラ、ちょっと力を貸してやれよ」
聖が言った。
意外な言葉に俺が驚いた。
「ジャンニーニさ、本気で苦しそうじゃん。トラなら何とか出来んじゃないのか?」
聖は天使だった。
忘れていた。
こいつは本気で苦しんでいる人間を放っておけないのだ。
まあ、自分が気に入っている奴限定だが。
「聖、お前なぁ」
「なぁ、何とかしてやれよ。可哀そうじゃん」
「セイント!」
ジャンニーニが目を潤ませて聖を見ていた。
まったく、しょうがねぇ。
「分かったよ! 聖に言われちゃしょうがねぇ。こいつにはでっかい借りがあるからな!」
「トラ、ありがとう」
聖が微笑んで言った。
「だけどよ、ジャンニーニ。お前が無理筋を通そうとしてるのは分かってるよな?」
「ああ、もちろんだ」
「俺も協力してやるけど、どうなるかは分からねぇ」
「ああ!」
「まずは相手に会ってみないとな」
「そうか!」
「その段取りを組んでくれ」
「ああ、無理だ」
「あ?」
何の接点も持っていないらしい。
「お前なぁ。やけに詳しい資料を持ってるじゃねぇか」
「それは金と人で集めた」
「あー」
幾ら何でも、俺がニューヨーク市長の秘書と会うのは難しい。
俺はあれこれと考えていた。
「トラ、俺がなんとか出来るかも」
聖が言った。
「お前が?」
「ああ。今「セイントPMC」の新社屋の土地を探してんだ」
「ああ」
俺が設立させた「セイントPMC」は順調すぎる成長をしていた。
チャップの所にはまだ及ばないが、業界では急成長だ。
「それで、土地の買収を市長と協議しながらやってんだ」
「ほんとか!」
「ああ、何度か会ってるし、明日もまたアポが取ってある」
「じゃあ、ソフィアとも会ってるのか!」
「多分な」
「なんだよ、頼りねぇな」
「だって、俺ロリコンじゃねぇから」
なるほどね。
50超えてないもんね。
「じゃあ、トラも同席してくれよ」
「ああ、分かった。ジャンニーニ、それでいいな!」
「もちろんだぁー!」
ジャンニーニが立ち上がって両手を上に拡げた。
聖に抱き着き、腹に強烈なパンチを喰らった。
笑っていた。
まあ、こいつにもちょっとは世話になった。
何とかしてみるか。
俺もジャンニーニは嫌いじゃないしな。
2
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
こずえと梢
気奇一星
キャラ文芸
時は1900年代後期。まだ、全国をレディースたちが駆けていた頃。
いつもと同じ時間に起き、同じ時間に学校に行き、同じ時間に帰宅して、同じ時間に寝る。そんな日々を退屈に感じていた、高校生のこずえ。
『大阪 龍斬院』に所属して、喧嘩に明け暮れている、レディースで17歳の梢。
ある日、オートバイに乗っていた梢がこずえに衝突して、事故を起こしてしまう。
幸いにも軽傷で済んだ二人は、病院で目を覚ます。だが、妙なことに、お互いの中身が入れ替わっていた。
※レディース・・・女性の暴走族
※この物語はフィクションです。
~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました
深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる