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五度目の別荘 XⅠ

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 みんなでワイワイと食べ、遊んだ。
 鷹が飛んで見せて欲しいとみんなに言われ、上空へ上がった。
 まだ、「飛行」は俺と亜紀ちゃんしか上手く出来ない。
 皇紀と双子は、鷹に抱えられて感覚を掴もうとした。
 
 「ロボもやってみたら?」

 ルーが言った。
 鷹はロボを抱いて飛んだ。
 ロボは暴れることもなく、興味深そうに景色を眺めた。
 地上に降りると、鷹の顔を舐めた。
 響子は俺が抱えて飛んだ。

 俺たちはまた他愛ない話をした。

 六花がロボと遊んでいる。
 「おにごっこ」をしていた。
 本気で走り回り、ロボから逃げていた。
 なんとなくみんなで見ていた。

 「あ!」

 ハーが叫んだ。
 ロボが「飛んだ」。

 六花も驚き、立ち尽くしたところにロボが腹に突っ込んだ。
 六花が吹っ飛ばされる。
 ロボはそのまま空中に逃げた。

 「このやろうー! 待ちやがれー!」

 六花が叫んで空中に「飛んだ」。

 「「「「「「「……」」」」」」」」

 「タカさん」
 「なんだ亜紀ちゃん」
 「出来ちゃいましたね」
 「そうだな」

 ルーとハーがロボの動きを解析し、全員が「飛行」を習得した。





 夕飯はカレーだ。
 全員で準備をする。
 俺は響子と昼寝だ。
 六花も準備に加わっている。
 ロボは六花をからかっていたようだが、あまり相手してもらえないので一緒に寝に来た。

 カレーは難しくは無いが、何しろ量が多い。
 一升炊きのお釜が二つあるが、足りない。
 亜紀ちゃんが6合炊きの人間用の釜とうどんも用意している。
 うどんは、米が尽きそうになってからだ。

 みんなで食材のカットをし、亜紀ちゃんが味の監修をする。
 石神家の味にするためだ。
 鷹は、その味を覚えようとしていた。

 俺は響子とロボを寝かせたまま、下に降りた。
 二時間ほど寝たか。
 もう煮込みに入っている。
 亜紀ちゃんが味見をして欲しいと言った。
 俺が少し調整した。
 塩コショウ程度だ。
 全ての寸胴で調整を終わり、みんなで一休みした。

 子どもたちが紅茶を淹れる。

 「もう味を覚えましたよ!」

 鷹が嬉しそうに言った。

 「流石だな。今日はシンプルにビーフカレーだけどな。何種類か作っても良かったんだが、面倒だからなぁ」
 「え! 他にもあるんですか!」
 「当然だよ。普通にポークもチキンも作るし、シーフードだってなぁ。キーマもやるし、エスニックもいろいろやるよな」
 「グリーンカレーも絶品ですよね!」

 亜紀ちゃんが言う。

 「ああ、なんだか喰いたくなったなー」
 「作りましょうか!」
 「そうだな!」

 俺と亜紀ちゃんで手早く作る。
 青唐辛子は結構あった。
 ナスを大目に入れ、鶏肉を酒と牛乳で臭みを消してから入れた。
 亜紀ちゃんは、スパイスの分量を把握している。
 自分が好きだからだ。
 
 鷹が真剣に見ていた。

 「おい、和食以外は作らないんじゃなかったのか?」
 「石神先生の好物は別です」

 亜紀ちゃんと二人で笑った。

 皇紀と双子が何かの研究の打ち合わせを始め、六花は栞のお腹に耳を宛てていた。
 二人で笑って何かを話している。
 俺は響子を起こしに行き、みんなで夕食を食べた。
 子どもたちと六花が猛烈な勢いでカレーを食べ、柳もいつも以上に食べた。
 俺は響子、栞、鷹とのんびりと食べた。
 グリーンカレーには手を付けるなと命じた。

 「『戦争と平和』のロシア版の映画でさ」
 「うん」
 「ナポレオンが食事中に敵の砲弾が転がって来るんだよ」
 「へー」
 「不発弾だったのな。それを足で蹴って、また食事をするっていうシーンがあった」
 「へー」
 「なんか、思い出したなぁ」
 「「「アハハハハ!」」」

 他人よりも多く喰おうと、必死で食べている。
 時折、他の奴の邪魔をする。

 響子もお替りをした。
 
 「グリーンカレーもちょっと食べてみるか?」
 「うん!」

 小さな皿に盛った。
 辛いけど美味しいと響子が言った。
 栞と鷹もグリーンカレーを食べ、美味しいと言った。
 俺はグリーンカレーを解禁し、亜紀ちゃんが超大盛のご飯に大量に掛けた。

 「ワハハハハハ!」

 他の連中にたちまち喰われ、激しい争いになった。

 「あさましいなぁ」
 「コワイね」

 響子が言った。




 子どもたちに片づけを任せ、俺は響子、六花、栞、鷹と風呂に入る。
 みんなで響子を泡だらけにして遊ぶ。
 俺はみんなを湯船に入らせ、灯を消した。

 「チーンハンマー!」

 綺麗な虹が出来た。

 「「「「アハハハハハハ!」」」」

 子どもたちも交代で風呂に入った。
 俺は鷹とタピオカココナッツを作る。
 氷で冷やして、でかいタンブラーに入れる。
 響子のものだけ常温だ。
 みんなで屋上に上がった。
 亜紀ちゃんがギターを持って来た。
 俺は何曲か、静かな曲を弾いた。

 「タカさんはギター以外の楽器はやらなかったんですか?」

 亜紀ちゃんが聞いて来た。

 「まあ、幾つかはな。ピアノも数曲は弾けるしな。門土に教わった。あとはトランペットもちょっとやったなぁ」
 「聞きたいです!」
 「人に聞かせるようなものじゃないよ」
 「私も聞きたいなー」

 栞が言った。

 「なぜトランペットを?」

 鷹も聞いて来る。

 「ああ、中学の時に、学校の代表で県の音楽祭に参加したんだ。本多先生のお陰で、中学の音楽の先生とも仲が良くてな。それで俺もその楽団に加わることになった」
 「へぇー」

 亜紀ちゃんが目を輝かせている。
 
 「なんだよ?」
 「はい。聞かせろ」

 亜紀ちゃんの頭を叩く。
 みんなが笑った。

 俺は語り出した。
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