富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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五度目の別荘 Ⅸ

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 話し終わると、みんな笑っていた。

 「タカさん、いつもと何か違いますね!」

 亜紀ちゃんが笑いながら言った。

 「何がだよ?」
 「だって、いつもなら現場の人全員倒しちゃうじゃないですか」
 「バカ言うな! 俺はそんな無茶苦茶な人間じゃねぇ!」

 みんなが爆笑した。

 「あのなー。店に来た四人は悪さをしたわけだけど、他の方々は関係ねぇ。喧嘩するのは筋違いだ」
 「なるほどー」
 「それにな。真面目に仕事を始めようって時に邪魔したのは、明らかに俺が悪い。まあ、だからってやられるわけには行かないからなぁ」
 「アハハハハハ!」

 「本当にな、あの現場監督さんがいい人で助かったんだよ。俺がカチコミかけられてもおかしくねぇんだからな。それを笑って許してくれた」
 「いい人ですね!」
 「ああ。まあ、一週間くらい、学校が終わった後で現場を手伝ったけどな」
 「へぇー、そんなことしたんですか!」
 「うん。あの田辺たちとも仲良くなった」

 俺がそう言うと、柳が驚いた。

 「え! 病院送りじゃなかったんですか!」
 「おい! お前ら俺を何だと思ってるんだ!」
 「己の性を知れぇー!」

 ルーが叫び、みんなが笑った。

 「お前らなぁ。まあ、ぶちのめしたけど、仕事に障りがあっちゃまずいだろう。だから骨とかは折らなかったし、しばらく不味いなんてことにはならないようにしたよ。そういうこともあって、みんな許してくれたんだろうけどな」
 「ほんとにいつもと違う!」
 「おい、柳!」

 みんな笑った。

 「他の族みたいに敵じゃねぇし、敦子さんをちょっと傷つけたけど、それも偶然って言えばそうだ。あのままビール瓶で殴ってりゃ別だけどな。でも、俺は流石にそんなこともしなかったと思うぞ。それは後で仲良くなってからも分かることだったしな」
 「酔っぱらってってことですか?」
 「そうだな。それと引っ込みがつかなくなったと言うかな」

 「じゃあ、敦子さんへのお金って」
 「そうだよ。その四人が出した。城戸さんへの酒代もな」
 「タカさんは、みんなに恨まれてたんじゃ」
 「それは最初は頭に来てただろうよ。そりゃ当然だ。仕事仲間をいきなりぶちのめしたんだからなぁ。あそこで俺をぶちのめそうとしない奴は男じゃないよ」
 「そうですね」

 亜紀ちゃんがニコニコして言った。


 「皇紀! もしも俺が誰かにやられたら、お前はちゃんと復讐に行ってくれるだろ?」
 「はい! もちろんですけど、その前にお姉ちゃんたちが片付けちゃうと」
 「確かになー!」

 みんなで笑った。




 「石神先生、敦子さんとは」
 「六花! 俺の娘たちはまだ小学生なんだぞ!」
 「いえ、まだ何も言ってませんが」
 「お前が言うことはみんなもう知ってるんだ!」

 みんなが笑う。

 「敦子さんは、本当に優しい人だったんだ。遅番の敦子さんと時々駅で会ったりしてな。真冬でも俺がコートを着てないんで、どうしてかって聞いて来たんだよ」
 「ああ」

 亜紀ちゃんは、俺が制服と特攻服しか持って無かったことをよく知っている。

 「参考書とか問題集が欲しいんで、持ってないと言ったんだよな。まあ、俺もまだガキだったから、思わず言ってしまった。そうしたら敦子さんがいきなり泣き出してなぁ。これから一緒に買いに行こうって言うんだよ。まいった」
 「優しいですね」
 「ああ。学校があるしってヘンな言い訳をしたら、今度の休みに買いに行こうって。断るのが大変だった」
 「タカさんは、いろんな女の人にそういうのは買って貰わなかったんですか?」
 「当たり前だ。俺には必要ないものだからな。勉強道具とちょっと食い物だけな。それだって随分と遠慮したんだ」
 「バイト代は結構稼いでたはずですよね」
 「そうだ。それで本当は十分だった。貰っていたのは、ある意味付き合い的なものもあったんだ」

 柳が言った。

 「今は大変なオシャレですよね」
 「まあな。でもそれも、奈津江が死んでからだ。俺は全然興味無かったからな。ああ、もちろん今は大好きだよ」
 「なんでいきなりオシャレになったんですか?」

 柳は不思議がっている。

 「俺は奈津江が死んでから、誰とも付き合わなかった。でもな、そうすると物で俺の気を引こうって連中が後を絶たなくなってな。それで、俺は自前でちゃんとした格好が出来るんだって示す必要があった。そこから楽しくなって、今に至る、という感じだな」
 
 響子がそろそろ眠そうになる。

 「俺はジャージとかでいいんだけどな。なぁ、六花!」
 「はい! 便利ですよね!」
 「「ギャハハハハハ!」」

 双子が大笑いした。
 俺は六花に響子を寝かせるように言った。
 響子の頬にキスをしてやる。

 「じゃあ、一旦解散な! 飲みたい奴は片付けてから好きにしろ!」
 「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」






 子どもたちは片付けに入り、栞は先に寝ると言った。
 響子が栞と話したいというので、一緒に寝かせた。
 俺と六花、鷹の三人で飲む。
 六花はハイネケンを下から持って来た。
 亜紀ちゃんがソーセージを焼いて上に上がって来る。
 四人で飲んだ。
 ロボも俺の後ろにいる。

 「響子ちゃん、珍しいですね」

 鷹が言った。

 「ああ。栞を大事にしたいんだろう。あいつなりにな」
 「はい」
 「響子ちゃん、カワイーですよね!」
 「そうだよな。ああ、寝てる時になー。耳元で「コショコショ」って言うと笑うんだよ」
 「「へー!」」
 「なあ、六花」
 「はい! カワイイですよねー!」

 「それと、時々ヘンな夢を見てるよな?」
 「はい。ちょっと理解できないんですけど」
 「どんな夢なんです?」

 亜紀ちゃんが聞く。

 「こないだはなんだっけ? ロボが出て来たらしいよな」
 「カワイーじゃないですか!」
 「それがなぁ。東雲も出て来たんだ」
 「へー」
 「亜紀ちゃん、響子は東雲と会ってないんだよ」
 「へ!」
 「偶然にしちゃ、どうにもな。東雲なんてそうある名前でもねぇ。まあ、響子もよくは覚えてないんだけどな」
 
 みんなが黙り込んだ。

 「その前は、ジェヴォーダンだ。響子には当然話してねぇ」
 「それって……」
 「分からねぇ。でも、内陸での攻撃だったらしいからな。海の怪物じゃないんだ」
 「まさか、予言ですか!」
 「何ともな。でも静江さんの血が入っているわけだからなぁ」

 亜紀ちゃんが泣いていると言ったこともある。
 それは話さない。

 「一度、百家に行かなければならないかもな」
 「私、一緒に行きますよ!」

 亜紀ちゃんが言う。

 「いや、多分俺と響子の二人か、あとはなぁ」

 亜紀ちゃんと六花、鷹までも手を挙げる。

 「お前らなぁ」
 「「「はい!」」」

 俺は笑った。

 「石神先生! 私は響子の専属看護師です!」
 「まあ、そうだけど」

 「タカさん! 私はタカさんの専属娘です」
 「なんだ、そりゃ」
 
 「石神先生! たまには私も御連れ下さい!」
 「まあ、楽しいんだけど」

 俺は考えておくと言った。

 「本当は麗星とかがいるといいんだけどな」
 「あの人だけはやめてください。またトラブルを起こしますよ!」

 亜紀ちゃんが言う。
 確かにその通りだ。
 六花と鷹は麗星をよく知らないので、亜紀ちゃんと二人で説明する。

 「御堂さんの家で酔っぱらって大妖怪を呼んじゃって。皇紀システムが稼働して大変だったんですよ!」
 「オロチもロボも追い払おうとぶっ放すしなぁ」
 「そうそう! それに翌日は「霊破」でしたよね」
 「あれは亜紀ちゃんも飲んだろう!」
 「私は不可抗力ですよ!」
 「いや、絶対にあの匂いで気付いてたはずだ!」
 「バレました?」
 「このやろう!」

 遅くまで楽しく話した。
 亜紀ちゃんが片付けてくれた。

 六花と鷹と一緒に、栞のベッドを覗く。
 俺が響子の耳元で「コショコショ」と小さく呟いた。

 「エヘヘヘヘヘ」

 三人で口を押えて部屋を出た。
 亜紀ちゃんが上がって来て、四人で寝た。
 俺の両脇に亜紀ちゃんと鷹が寝て、六花はロボに割り込まれた。




 ロボと六花は裸だった。 
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