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五度目の別荘 Ⅲ
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別荘に戻り、柳はすぐに着替えて食事の準備に加わった。
俺は寝ようかとも思ったが、ベッドには響子と六花が寝ている。
起こしてしまうのを恐れ、ロボと散歩に出掛けた。
疲れてはいるが、それほど眠くはない。
今晩のことで、少し神経が張っているようだ。
自分で苦笑した。
この俺が緊張など。
ロボは俺と一緒に歩けるのが嬉しそうだった。
たまに近所を歩くが、ロボは自分では外に出たがらない。
月に一度か二度のドライブが一番の楽しみなようだ。
それは、思い切り「撃てる」ためだ。
今日もそれをするつもりでいる。
前にここでぶっ放したことを覚えているのだろう。
歩いていると、既に尻尾を割っている。
「おい、まだだぞ。もうちょっと我慢しろ!」
パチパチ始める。
「まだだってぇ! それといつも言うけど、ちょっと小さいのにしろよな!」
何度も俺の足に額を押して来る。
我慢できないらしい。
「もうちょっとだ! ほら、あそこの開けた場所でな!」
ロボが道の脇の林に入った。
「おい! そっちはダメだって!」
《ぷりぷり……しゃー》
「ああ、そっちね」
ウェットティッシュで拭いてやった。
開けた場所まで二人で走る。
ロボが尻尾を大きく開いて、盛大な弧電を駆け巡らせる。
「おーい、いつも言うけどちっちゃいのなー。聞いてねぇよなー」
《ドッゴォォーーーンン》
「……今日も全力かぁ。まあ、知ってた……」
ロボが俺に駆け寄り、前足を腰に置いて上半身を預けて来る。
俺を見上げて「見た? ねえ、見た?」という目で見ている。
俺は頭を撫でてやった。
「凄かったな! まあ、お前は広域殲滅型だから、使い処は気を付けてくれな」
ロボは「にゃー」と鳴いた。
絶対分かってねぇ。
後に「Fall Together ROVO(共倒れのロボ)」と呼ばれ、味方からも恐れられるようになることは、まだ俺も知らない。
倒木の広場でロボに水筒からミルクをやり、俺もゆったりと休んだ。
ミルクを飲み終えたロボは、座った俺の膝に上半身を預けて来る。
涼しい風が吹いている。
ロボと別荘に戻ると、響子が起きていた。
バーベキューの準備も終わったらしく、庭で双子と一緒に庭で電動移動車に乗って遊んでいた。
ロボが響子に駆けて行く。
「ロボー!」
響子がしゃがんで抱き締めた。
「六花は?」
俺が聞いた。
「タカトラー! うん、まだ寝てるよ」
「そうか。一緒に起こしにいくか」
「うん!」
みんなで向かった。
六花はまだ寝ていた。
俺の枕で幸せそうに寝ている。
「ロボ、起こしてやれ」
ロボが六花の顔を前足で叩く。
眉を寄せるが、起きない。
ルーとハーが足裏マッサージをする。
ロボが不思議そうに六花の上で見ていた。
「イタイイタイイタイイタイ!」
「起きろよ、六花。もうすぐ夕飯だ」
「はい。あー、ロボ、ちょっと臭いですよ?」
ロボのお尻が六花の顔を向いていた。
六花は顔を洗い、化粧を直して降りて来た。
栞と鷹も降りて来る。
みんなでバーベキューを始めた。
俺はロボにステーキを焼きながら、響子にホタテを焼き、ウニバターソースをかけてやる。
響子が嬉しそうに食べた。
鷹は栞と並んで、栞のために鯛と蛤を焼いている。
栞が「美味しー!」と叫んでいる。
六花は子どもたちと戦争だ。
ああいう食べ方が好きらしい。
柳は戦争に加わりつつ、栞たちと魚介類を楽しんでいる。
鷹が、俺と響子のために、小さなイクラ丼を作って持って来た。
「鷹も一杯食べてくれな」
「はい、食べてますよ」
「明日は俺と鷹の出番だからなぁ! 今日は体力をつけておいてくれ」
「はい!」
鷹が嬉しそうに笑った。
栞も来た。
「石神くん! 楽しいね!」
「おう。身体は大丈夫か?」
「もーう! 心配し過ぎだよ!」
鷹と二人で笑った。
「ほうっておいたら、お前拗ねるだろう!」
「そんなことないよ!」
「まあ、本当に無理しないで楽しんでくれな」
「うん!」
響子が俺を見ている。
「タカトラ、栞さん、病気なの?」
俺は口に指を立てて、響子の耳元で囁いた。
「エェー!」
俺は響子の唇に指を当てた。
「後でみんなにも話す。響子は俺のヨメだから、特別に先に言っておくよ」
「うん! 栞、おめでとう!」
「ありがとう、響子ちゃん」
俺はナスを焼き、時々油を塗った。
響子や栞、鷹に食べさせる。
戦争はあるが、平和だ。
25キロあった肉がほとんど無くなり、陽が暮れて来た。
片づけを始め、みんなで風呂に入った。
俺は響子と六花と一緒に入る。
「六花、あのね」
俺は響子の口を押える。
「おまえー!」
「あ」
「?」
六花は不思議そうな顔をした。
風呂から上がり、俺は飲み物の準備をした。
皇紀が入っていると、双子が乱入し、早々に追い出されて来た。
女性陣はどんどん一緒に入った。
俺は皇紀と屋上に飲み物を運んだ。
ロボは響子と一緒にいる。
響子がロボの耳元で何か囁いている。
ロボは尾を揺らして、それに応えていた。
響子は誰かに話したくてしょうがないらしい。
全員が風呂から上がり、屋上へ行った。
今日は満点の星だ。
ひとしきり雰囲気をみんなで味わい、俺は話し出した。
俺は寝ようかとも思ったが、ベッドには響子と六花が寝ている。
起こしてしまうのを恐れ、ロボと散歩に出掛けた。
疲れてはいるが、それほど眠くはない。
今晩のことで、少し神経が張っているようだ。
自分で苦笑した。
この俺が緊張など。
ロボは俺と一緒に歩けるのが嬉しそうだった。
たまに近所を歩くが、ロボは自分では外に出たがらない。
月に一度か二度のドライブが一番の楽しみなようだ。
それは、思い切り「撃てる」ためだ。
今日もそれをするつもりでいる。
前にここでぶっ放したことを覚えているのだろう。
歩いていると、既に尻尾を割っている。
「おい、まだだぞ。もうちょっと我慢しろ!」
パチパチ始める。
「まだだってぇ! それといつも言うけど、ちょっと小さいのにしろよな!」
何度も俺の足に額を押して来る。
我慢できないらしい。
「もうちょっとだ! ほら、あそこの開けた場所でな!」
ロボが道の脇の林に入った。
「おい! そっちはダメだって!」
《ぷりぷり……しゃー》
「ああ、そっちね」
ウェットティッシュで拭いてやった。
開けた場所まで二人で走る。
ロボが尻尾を大きく開いて、盛大な弧電を駆け巡らせる。
「おーい、いつも言うけどちっちゃいのなー。聞いてねぇよなー」
《ドッゴォォーーーンン》
「……今日も全力かぁ。まあ、知ってた……」
ロボが俺に駆け寄り、前足を腰に置いて上半身を預けて来る。
俺を見上げて「見た? ねえ、見た?」という目で見ている。
俺は頭を撫でてやった。
「凄かったな! まあ、お前は広域殲滅型だから、使い処は気を付けてくれな」
ロボは「にゃー」と鳴いた。
絶対分かってねぇ。
後に「Fall Together ROVO(共倒れのロボ)」と呼ばれ、味方からも恐れられるようになることは、まだ俺も知らない。
倒木の広場でロボに水筒からミルクをやり、俺もゆったりと休んだ。
ミルクを飲み終えたロボは、座った俺の膝に上半身を預けて来る。
涼しい風が吹いている。
ロボと別荘に戻ると、響子が起きていた。
バーベキューの準備も終わったらしく、庭で双子と一緒に庭で電動移動車に乗って遊んでいた。
ロボが響子に駆けて行く。
「ロボー!」
響子がしゃがんで抱き締めた。
「六花は?」
俺が聞いた。
「タカトラー! うん、まだ寝てるよ」
「そうか。一緒に起こしにいくか」
「うん!」
みんなで向かった。
六花はまだ寝ていた。
俺の枕で幸せそうに寝ている。
「ロボ、起こしてやれ」
ロボが六花の顔を前足で叩く。
眉を寄せるが、起きない。
ルーとハーが足裏マッサージをする。
ロボが不思議そうに六花の上で見ていた。
「イタイイタイイタイイタイ!」
「起きろよ、六花。もうすぐ夕飯だ」
「はい。あー、ロボ、ちょっと臭いですよ?」
ロボのお尻が六花の顔を向いていた。
六花は顔を洗い、化粧を直して降りて来た。
栞と鷹も降りて来る。
みんなでバーベキューを始めた。
俺はロボにステーキを焼きながら、響子にホタテを焼き、ウニバターソースをかけてやる。
響子が嬉しそうに食べた。
鷹は栞と並んで、栞のために鯛と蛤を焼いている。
栞が「美味しー!」と叫んでいる。
六花は子どもたちと戦争だ。
ああいう食べ方が好きらしい。
柳は戦争に加わりつつ、栞たちと魚介類を楽しんでいる。
鷹が、俺と響子のために、小さなイクラ丼を作って持って来た。
「鷹も一杯食べてくれな」
「はい、食べてますよ」
「明日は俺と鷹の出番だからなぁ! 今日は体力をつけておいてくれ」
「はい!」
鷹が嬉しそうに笑った。
栞も来た。
「石神くん! 楽しいね!」
「おう。身体は大丈夫か?」
「もーう! 心配し過ぎだよ!」
鷹と二人で笑った。
「ほうっておいたら、お前拗ねるだろう!」
「そんなことないよ!」
「まあ、本当に無理しないで楽しんでくれな」
「うん!」
響子が俺を見ている。
「タカトラ、栞さん、病気なの?」
俺は口に指を立てて、響子の耳元で囁いた。
「エェー!」
俺は響子の唇に指を当てた。
「後でみんなにも話す。響子は俺のヨメだから、特別に先に言っておくよ」
「うん! 栞、おめでとう!」
「ありがとう、響子ちゃん」
俺はナスを焼き、時々油を塗った。
響子や栞、鷹に食べさせる。
戦争はあるが、平和だ。
25キロあった肉がほとんど無くなり、陽が暮れて来た。
片づけを始め、みんなで風呂に入った。
俺は響子と六花と一緒に入る。
「六花、あのね」
俺は響子の口を押える。
「おまえー!」
「あ」
「?」
六花は不思議そうな顔をした。
風呂から上がり、俺は飲み物の準備をした。
皇紀が入っていると、双子が乱入し、早々に追い出されて来た。
女性陣はどんどん一緒に入った。
俺は皇紀と屋上に飲み物を運んだ。
ロボは響子と一緒にいる。
響子がロボの耳元で何か囁いている。
ロボは尾を揺らして、それに応えていた。
響子は誰かに話したくてしょうがないらしい。
全員が風呂から上がり、屋上へ行った。
今日は満点の星だ。
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