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地下闘技場
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食事を終え、屋敷の中へ案内された。
広い洋間で、コーヒーを出された。
「先ほどは失礼いたしました」
麗星が頭を下げて来た。
栞が不思議そうな顔をしている。
「麗星さんはな、俺たちを楽しませようとしてくれたんだ」
「え? ああ、楽しかったよね」
「あのまま楽しんでいれば、笑って俺たちは帰った」
「うん」
「何の話もしないままでな」
「え?」
「語り合うに値しないボンクラだと見做されて、だ」
「あ!」
俺は双子に土産を持って来るように言った。
廊下で控えていた人間が、俺たちの部屋へ双子を案内する。
間もなく戻って来た双子が、俺に土産を渡した。
村上開進堂のクッキー10箱と、空也最中を10箱だ。
それと
「こちらは、1枚だけですが」
俺は袱紗を解き、麗星に見せた。
「!」
「我々の最大の秘密の一つです」
「Ω」の翅だった。
「これは?」
「「花岡」の攻撃を無効化します。銃火器もある程度は。もちろんすべてではありませんが」
「このようなものをわたくしに?」
「はい。麗星さんとは今後も長くお付き合いしたいと」
麗星は笑った。
「一体どのような金属なのでしょうか?」
「ゴキブリの翅ですよ」
「!」
流石に驚いていた。
手に持っていたソレを、落としそうになる。
「一応洗って、ちゃんと消毒してあります」
麗星は声を挙げて笑った。
「石神様、本当に失礼いたしました。それではお風呂へご案内する前に、お見せしたいものがございます」
「そうですか」
麗星は俺たちを連れ、外の建物へ案内した。
小さい。
鉄筋コンクリートだが、8畳ほどの広さだろう。
ドアを開けると、地下への階段が続いていた。
随分と長く歩かされる。
「エレベーターを付けられないのです」
麗星が言った。
「万一破壊されると、地上へ戻れなくなりますので」
俺たちは黙って歩いた。
10分も降ったと思う。
途中で何度かドアを潜った。
その度に、麗星は鍵を開けた。
広い空間に出た。
150メートル四方か。
周囲は観客席のようなものがある。
中央に、コンクリート製の台がある。
40メートル四方で、高さが70センチほど。
天井の高さは20メートルある。
「こちらで、御着替え下さい」
更衣室へ案内された。
俺たちのサイズに合った、コンバットスーツがあった。
着替えて出ると、台の上に誰かがいる。
「お二人のどちらか、どうぞ」
麗星が言った。
ルーが出た。
180センチの筋骨が発達した男だった。
台に上がったルーを見る。
吼えて駆け寄った。
ルーは冷静だ。
何の説明も無かった。
麗星は俺たちをコンバットスーツに着替えさせた。
それは、「戦え」ということを意味している。
ルーは初手から「螺旋花」を使った。
突っ込んでくる頭に見舞うつもりだったが、男の肩から何かが伸びた。
「「「「!」」」」
俺たちは全員が驚いた。
紐のようなものの先に、尖ったものが見える。
ルーは「龍刀」でそれを払った。
ひも状のものが切断されて落ちた。
ルーはそのまま男の下を滑り、足を払う。
男は床に突っ伏して滑って行った。
「そこまで!」
麗星が宣言する。
男の身体の下から、血の輪が広がって行った。
すれ違いざまに、ルーが「龍刀」で斬り裂いたのだ。
「石神くん!」
「栞、気を付けろよ」
「何言ってんの!」
「次はお前の番だ」
「え!」
「黙って言う通りにしてくれ」
男が数人に運ばれた。
通路から別な人間が出て来る。
160センチの女だ。
ただし、体重は120キロはある。
「栞、やって来い!」
「分かった!」
栞が台に上がると、女の全身から金属のような針が飛び出した。
それぞれの長さは80センチはある。
人間を串刺しに出来る長さだ。
「舐めるなぁー!」
栞が突っ込んで行く。
女は高速回転を始めた。
栞は両手から「槍雷」を次々に撃ち込んだ。
回転が鈍って行く。
接近し、女を蹴り上げた。
「龍脚」
女は天井に跳ね返って落ちて来た。
装甲のように覆われていた針の体表が何か所も潰れ、針は半分が折れ飛んでいた。
「お見事!」
麗星が叫んだ。
再び女が運ばれ、台の上が一度掃除された。
俺は栞に大丈夫かと聞いた。
栞は笑って頷き、自分の腹を撫でた。
「ハー!」
「はい!」
今度は痩せた男が出て来た。
「ハー! ぶちかませ!」
ハーは「虚震花」を撃った。
男は前面に黒い霧のようなものを展開させ、ハーの攻撃を霧散させた。
ハーは獰猛に笑った。
ハーの前に、8つの渦が生じる。
「待て待て待てぇー!」
「そこまで!」
男と麗星が叫んだ。
「えぇー!」
ハーが俺を振り向く。
「仕方ねぇ! 降りて来い!」
「はーい!」
不満そうだった。
俺の番だった。
台に上がると、通路ではない巨大なドアが開いた。
身長4メートルの巨大な何かが上がって来る。
頭には大きな牛のような角がある。
顔はゴリラに近い。
横幅も凄まじく、上腕の直径は1メートル以上ある。
巨体にも関わらず、凄いスピードで動いた。
俺はそれに合わせて動き、怪物の正面に立った。
右手を拡げ、怪物の胸に当てる。
「龍牙!」
怪物の背中から、五本の血しぶきが上がり、床に倒れた。
麗星が拍手していた。
「流石は石神様! その者は「地下闘技場」のチャンピオンです!」
「なんだって?」
「「道間」の術を施した者たちを戦わせる場所です」
「お前! 術をやったのは3人だって言ったじゃねぇか!」
「はい! でもそれは先代がやったことで。それ以前から「道間」は術を磨いて参りましたから」
俺は台を降りて麗星に近づいた。
「ちなみに、そのチャンピオンは、私が術を施しました」
「……」
俺たちは麗星を睨んでいた。
「さあ、お風呂にご案内いたしますね」
「おい、もう終わりだろうな」
「はい! もう十分でございます」
麗星は嬉しそうに笑い、鼻歌を歌いながら出口へ向かった。
「おい! 俺たちの服は!」
「後で運ばせますからー」
「なんてこった」
疲れた。
広い洋間で、コーヒーを出された。
「先ほどは失礼いたしました」
麗星が頭を下げて来た。
栞が不思議そうな顔をしている。
「麗星さんはな、俺たちを楽しませようとしてくれたんだ」
「え? ああ、楽しかったよね」
「あのまま楽しんでいれば、笑って俺たちは帰った」
「うん」
「何の話もしないままでな」
「え?」
「語り合うに値しないボンクラだと見做されて、だ」
「あ!」
俺は双子に土産を持って来るように言った。
廊下で控えていた人間が、俺たちの部屋へ双子を案内する。
間もなく戻って来た双子が、俺に土産を渡した。
村上開進堂のクッキー10箱と、空也最中を10箱だ。
それと
「こちらは、1枚だけですが」
俺は袱紗を解き、麗星に見せた。
「!」
「我々の最大の秘密の一つです」
「Ω」の翅だった。
「これは?」
「「花岡」の攻撃を無効化します。銃火器もある程度は。もちろんすべてではありませんが」
「このようなものをわたくしに?」
「はい。麗星さんとは今後も長くお付き合いしたいと」
麗星は笑った。
「一体どのような金属なのでしょうか?」
「ゴキブリの翅ですよ」
「!」
流石に驚いていた。
手に持っていたソレを、落としそうになる。
「一応洗って、ちゃんと消毒してあります」
麗星は声を挙げて笑った。
「石神様、本当に失礼いたしました。それではお風呂へご案内する前に、お見せしたいものがございます」
「そうですか」
麗星は俺たちを連れ、外の建物へ案内した。
小さい。
鉄筋コンクリートだが、8畳ほどの広さだろう。
ドアを開けると、地下への階段が続いていた。
随分と長く歩かされる。
「エレベーターを付けられないのです」
麗星が言った。
「万一破壊されると、地上へ戻れなくなりますので」
俺たちは黙って歩いた。
10分も降ったと思う。
途中で何度かドアを潜った。
その度に、麗星は鍵を開けた。
広い空間に出た。
150メートル四方か。
周囲は観客席のようなものがある。
中央に、コンクリート製の台がある。
40メートル四方で、高さが70センチほど。
天井の高さは20メートルある。
「こちらで、御着替え下さい」
更衣室へ案内された。
俺たちのサイズに合った、コンバットスーツがあった。
着替えて出ると、台の上に誰かがいる。
「お二人のどちらか、どうぞ」
麗星が言った。
ルーが出た。
180センチの筋骨が発達した男だった。
台に上がったルーを見る。
吼えて駆け寄った。
ルーは冷静だ。
何の説明も無かった。
麗星は俺たちをコンバットスーツに着替えさせた。
それは、「戦え」ということを意味している。
ルーは初手から「螺旋花」を使った。
突っ込んでくる頭に見舞うつもりだったが、男の肩から何かが伸びた。
「「「「!」」」」
俺たちは全員が驚いた。
紐のようなものの先に、尖ったものが見える。
ルーは「龍刀」でそれを払った。
ひも状のものが切断されて落ちた。
ルーはそのまま男の下を滑り、足を払う。
男は床に突っ伏して滑って行った。
「そこまで!」
麗星が宣言する。
男の身体の下から、血の輪が広がって行った。
すれ違いざまに、ルーが「龍刀」で斬り裂いたのだ。
「石神くん!」
「栞、気を付けろよ」
「何言ってんの!」
「次はお前の番だ」
「え!」
「黙って言う通りにしてくれ」
男が数人に運ばれた。
通路から別な人間が出て来る。
160センチの女だ。
ただし、体重は120キロはある。
「栞、やって来い!」
「分かった!」
栞が台に上がると、女の全身から金属のような針が飛び出した。
それぞれの長さは80センチはある。
人間を串刺しに出来る長さだ。
「舐めるなぁー!」
栞が突っ込んで行く。
女は高速回転を始めた。
栞は両手から「槍雷」を次々に撃ち込んだ。
回転が鈍って行く。
接近し、女を蹴り上げた。
「龍脚」
女は天井に跳ね返って落ちて来た。
装甲のように覆われていた針の体表が何か所も潰れ、針は半分が折れ飛んでいた。
「お見事!」
麗星が叫んだ。
再び女が運ばれ、台の上が一度掃除された。
俺は栞に大丈夫かと聞いた。
栞は笑って頷き、自分の腹を撫でた。
「ハー!」
「はい!」
今度は痩せた男が出て来た。
「ハー! ぶちかませ!」
ハーは「虚震花」を撃った。
男は前面に黒い霧のようなものを展開させ、ハーの攻撃を霧散させた。
ハーは獰猛に笑った。
ハーの前に、8つの渦が生じる。
「待て待て待てぇー!」
「そこまで!」
男と麗星が叫んだ。
「えぇー!」
ハーが俺を振り向く。
「仕方ねぇ! 降りて来い!」
「はーい!」
不満そうだった。
俺の番だった。
台に上がると、通路ではない巨大なドアが開いた。
身長4メートルの巨大な何かが上がって来る。
頭には大きな牛のような角がある。
顔はゴリラに近い。
横幅も凄まじく、上腕の直径は1メートル以上ある。
巨体にも関わらず、凄いスピードで動いた。
俺はそれに合わせて動き、怪物の正面に立った。
右手を拡げ、怪物の胸に当てる。
「龍牙!」
怪物の背中から、五本の血しぶきが上がり、床に倒れた。
麗星が拍手していた。
「流石は石神様! その者は「地下闘技場」のチャンピオンです!」
「なんだって?」
「「道間」の術を施した者たちを戦わせる場所です」
「お前! 術をやったのは3人だって言ったじゃねぇか!」
「はい! でもそれは先代がやったことで。それ以前から「道間」は術を磨いて参りましたから」
俺は台を降りて麗星に近づいた。
「ちなみに、そのチャンピオンは、私が術を施しました」
「……」
俺たちは麗星を睨んでいた。
「さあ、お風呂にご案内いたしますね」
「おい、もう終わりだろうな」
「はい! もう十分でございます」
麗星は嬉しそうに笑い、鼻歌を歌いながら出口へ向かった。
「おい! 俺たちの服は!」
「後で運ばせますからー」
「なんてこった」
疲れた。
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