富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
上 下
741 / 2,920

トラ&亜紀:異世界転生 Ⅳ

しおりを挟む
 アイザックの広大な屋敷に入り、広い部屋で待たされた。
 コーヒーが出て驚いた。
 間もなく、当主が来た。

 「アイザック・アベサダモフです」
 「ヘンなの混じったな」

 俺はコーヒーのことを聞いた。
 以前は無かったはずだ。

 「王都でメシア様が話されていたものを、多くの人間が必死に探しました。豆を焙煎し、粉末にすることで苦みのある飲み物になるのだと」
 「ほう」
 「800年前についに完成し、メシア様を称える貴族たちの間で大流行いたしました」
 「俺ら、結構なことをやらかしたと思うけど」

 「はぁ。まあ、人口の三分の一は死にましたが」
 「ごめんなさい!」

 「まあ、戦争はいつの時代にもありますから! それにあれほどの試練を経ていなければ、我々はとっくに強大化した魔獣に蹂躙されていました」
 「そう思ってくれる?」
 「はい! 最初の数百年は恨む者も多かったですが」
 「だからごめんってぇ!」
 「その後は、あれが大いなる試練だったのだと解釈されています」

 「お、おう! その通りじゃ! よくぞ気付いたぁ!」
 
 「はい!」

 「タカさーん……」




 俺はアイザック家の繁栄の話を聞いた。

 「何しろメシア様の血筋は優秀でして。当時の当主はメシア様の子というだけで箔がつくと考えていたようですが。でも、実際にはその才能が目覚ましく」
 「へぇ」

 「特に軍事的な才能が突出しております。数多くの英雄がアイザック家から輩出されております」
 「さすが、ひじりー」
 「政治面でも優秀な文官が。今の王都で宰相や財務大臣を始め重要な役職の多くはアイザック家の人間、つまりメシア様の子孫です」
 「ほう、聖はそんな才能もあったかぁ」

 「また芸術面でも。ギターラという弦楽器は多くのアイザック家の人間の得意な楽器で」
 「タカさん!」
 「王立音楽院のトップは常にアイザック家の人間です」
 「決まりですよね!」
 「また戯曲の才を発揮した者も。『アイザックの花の女』は、王都で最も人気の高い舞台……」
 「もう決定だぁ!」

 亜紀ちゃんが立ち上がって叫んだ。

 「待て待て待て! 聖の家は音楽家なんだ!」
 「またそんな嘘を!」
 「本当だって! ヒジーリ・ライトって有名なギタリストは、聖の叔父さんだぁ!」
 「信じません」
 「だったら、戻ってからレコードを聴かせてやる!」
 「約束ですよ!」
 「ああ! あ、それと叔母さんは有名な『聖言葉』って小説で角川文芸大賞を取ったんだぞ?」
 「じゃあ、それも読ませて下さい!」
 「お、おう!」

 聖って苗字じゃねぇんだが。
 それに帰ったらどうせ記憶はねぇ。




 俺は話題を変えて、魔王の情報を聞いた。

 「いえ、それは初耳です! 急いで王都のアイザック一族にも知らせます!」
 「そうしてくれ。だけど、ここ数十年で魔獣が強大化しているってことだよな」
 「はい。原因は調査中ですが、被害が結構出ています」
 「そうか。それも恐らくは魔王の存在に繋がっているな」
 「なるほど!」




 俺と亜紀ちゃんは冒険者ギルドへ向かった。
 俺のギルドカードを見せると、受付の人間が引っ繰り返った。
 別な人間が引き継ぐ。

 「1000年前だぁ!」
 ギルドの人間が集まって来た。

 「おい、レベル9999だぞ!」
 「本当にいたんだ」
 「ニセモノじゃないのか?」
 「いや、記録に残っている。確かに当時いたんだ」
 「もう一度測定しろ! 千年前の測定器なんて信用できない!」

 俺は水晶のボールに手を当てた。

 「おい! 本当に9999だぞ!」
 「いや、待て! 隣の「+E」ってなんだ?」
 「マニュアルを調べろ!」
 「それと、他のステータスも異常に高いぞ!」
 「なんだよ、この魔法の膨大な数は!」
 「それより称号だ! カイザードラゴンの天敵の前! 「魔王瞬殺者」だぁ!」

 「「「「「なんだってぇ!」」」」」

 「「ワハハハハハハ!!」」

 俺と亜紀ちゃんは笑った。
 亜紀ちゃんのギルドカードを作る時にも驚かれたが、俺への驚きで感性が鈍っていた。

 「私の先にして欲しかったなー」
 「まあいいじゃんか」

 


 アイザック家で独自調査するとのことで、俺たちは待つことにした。
 町のでかい屋敷を買い、メイドを30人雇った。
 金は前回の転移で莫大に溜め込んでいた。
 メイドの中の二人が、こっそり俺に打ち明けた。

 「私たちは御先祖様の子孫です」

 ペネロペ・クルス似の女と、ニコール・キッドマン似の女だった。

 「よろしければ、また濃い血を分けていただきたく」

 亜紀ちゃんに絶対バレるなと言った。



 
 俺と亜紀ちゃんは、調査を待つ間に周辺の魔獣を狩っていった。
 亜紀ちゃんのレベルがガンガン上がって行く。
 確かに、以前よりも強大化凶暴化している。
 しかし、一ヶ月もたつと、ほとんど見なくなった。
 魔獣は毎回ギルドに持って行き、報奨金を受け取り、アイザック家から別途褒賞をもらった。
 肉はほとんど亜紀ちゃんが食べた。

 アイザック家から調査報告が出来たと知らせが来た。

 「申し訳ありません。確かなことは判明しませんでした」
 「そうか」
 「ですが、記録を精査しまして、魔王復活の際に魔獣が強大化することが分かりました」
 「ならな」
 「はい! 私は魔王の存在は間違いないかと」
 「うむ」

 「王都にも知らせています。あちらにはもっと大きな研究機関も調査機関もございます」
 「じゃあ、そっちに行くよ」
 「は! お気を付けて!」

 俺たちはレストランに行き、亜紀ちゃんに王都へ出発する旨を伝えた。

 「最後に肉をたくさん食べておけよ」
 「はい!」
 「俺は屋敷の整理をするから、ゆっくりとな。後で戻って来るから」
 「はーい!」

 ペネロペとニコールと散々やり修めをした。




 「さあ、王都へ行くかぁ!」
 「タカさん、何かスッキリしてますね!」
 「亜紀ちゃんも満足そうだな!」
 「はい!」

 俺たちは笑いながらクライスラー王国の王都へ向かった。
 亜紀ちゃんはシエルの上で、俺の背中に抱き着いていた。

 くんくんと匂いを嗅ぐので冷や汗をかいた。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...