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佐野さんと城戸さん
しおりを挟む 亜紀ちゃんが俺に跨り、手錠をした腕を俺の背中に回した。
俺の顔の横に自分の顔を持って来る。
「うぜぇ!」
「タカさーん!」
俺は笑って左手で亜紀ちゃんの背中を撫で、右手でグラスを持って酒を飲んだ。
「その後でな、佐野さんが佳苗さんと一緒に城戸さんの店に来たんだ」
「佳苗さんは知ってたんですね?」
「ああ。俺のファンクラブだったからな」
「えぇー!」
俺は笑った。
「流石に「関係」はないよ。ただ、俺のことを可愛がってくれる人だったってことだ。警察官が不良の代名刺みたいな俺と付き合うわけにはいかないしな」
「そうだったんですか」
「それに、まあ俺の情報収集みたいな意味もあったんだろう。ああ、別に俺を捕まえるためじゃなくてな。単純に俺に興味があっただけだ」
「分かります」
亜紀ちゃんを抱えて、また椅子に座らせた。
「佐野さんは何も聞かされずに来たようだった。俺の顔を見てギョッとしてたよ」
「アハハハハハ!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「おい、お前」
「いらっしゃいませー!」
「何やってんだ?」
「ご注文はー?」
佳苗さんが佐野さんの脇を突っついていた。
「まったく! ああ、バーテンさんによく似たクソガキを知ってるんだ」
「そーなんですか」
「とんでもねぇ奴でな」
「はぁ」
「それにしても良く似た顔だな!」
「弟かも!」
「へぇ」
「僕は石神ウサギです! よろしく!」
「ばかやろう!」
二人はテーブルに着き、城戸さんが誰だと聞いた。
「あ、刑事さん」
「なんだと!」
「アハハハハ」
「大丈夫かよ」
城戸さんはハラハラしていた。
俺は注文のビールと最初に出す皮付ピーナッツを持って行った。
「ありがとう!」
佳苗さんが笑って言った。
「ごゆっくりどうぞ」
佐野さんは俺をずっと見ていた。
俺はいつも通りに働き、接客した。
城戸さんに断り、ラザニアを作って持って行った。
「どうぞ、店からのサービスです」
「頼んでねぇぞ」
「弟がお世話になってるようですので」
「フン!」
その後で、佐野さんの「美味ぇな!」という声が聞こえた。
城戸さんの娘ルミちゃんが入って来た。
「トラちゃーん!」
「ウサギちゃんだよ!」
ルミちゃんがなんでなんでと聞くので、昨日改名したと言った。
いつものオムライスを作る。
城戸さんが、二人で喰えと言った。
客が混んでいたので、二人でカウンターの隅で立って食べる。
佳苗さんが来て、テーブルで食べなさいと言った。
ルミちゃんの皿を持って佐野さんたちのテーブルへ行った。
「マスターの娘さんなんです。ルミちゃん」
「お邪魔しまーす」
ルミちゃんは人気者だ。
時々、客に呼ばれて可愛がられている。
「トラちゃん、美味しいね!」
「ウサギちゃんだよ!」
「おい、もういい!」
俺たちは笑った。
「トラ、お前はどこに行っても女にモテるなぁ」
「エヘヘヘ」
「うちの佳苗だって、このザマだ。まったくなぁ」
「エヘヘヘ」
佳苗さんはニコニコしていた。
「まったく、俺に見せたいものがあるって言うんで来てみれば」
「ごめんね、トラちゃん。後で佐野さんが知るよりはと思ったから」
「ありがとうございます!」
「何がウサギだよ」
渋い顔で言った佐野さんが、少しして噴き出した。
「プッ、ハハ、ワハハハハハ!」
「わはははは」
ルミちゃんも笑った。
「えーと、ルミちゃんか。トラは真面目に働いてるのかな?」
「うん! トラちゃんのお陰で一杯お客さんが来るんだって! お父さんが言ってた」
「そうか」
「でも時々怒られてるよね」
「そうなのか?」
「こないだ、私にオチンチン見せた時には、本気で殴られてたよね?」
「トラ、お前を逮捕する」
「ちょっ! 佐野さん!」
城戸さんが呼びに来た。
「すいません、お邪魔しました」
城戸さんが佐野さんたちに言った。
「こいつには迷惑を掛けられっぱなしなんだ。でもたまに助けられてる。宜しくお願いします」
佐野さんが立ち上がって頭を下げた。
「いえいえ! 私も同じです。バカな奴ですが、一本気なんで気に入ってます」
「まったくだ」
「はい」
「アハハハハハ!」
笑った俺は城戸さんに頭を引っぱたかれ、佐野さんに尻を蹴られた。
「「早く戻れ!」」
しばらく飲んでから、佐野さんと佳苗さんは帰った。
「おい、さっき作ってくれたやつ、美味かったぞ」
「ありがとうございます!」
「流石に俺はもう来れねぇけどな。真面目に働けよ」
「はい!」
「おい、ここじゃ暴れてないだろうな?」
「それがこないだ……」
「ありがとうございました!」
城戸さんが何か言いかけたので、俺は慌てて外へ送り出した。
「トラ、てめぇ!」
「アハハハハハハ!」
佳苗さんも笑っていた。
佐野さんも微笑んでいた。
「まあ、トラの家が貧乏なのは知ってるしな。お袋さんを大事にしてやれ」
「はい!」
中へ戻ると、城戸さんがウイスキーを煽っていた。
「トラ、お前ひやひやしたぞ」
「アハハハハ」
「勘弁しろ」
「すませんでしたー!」
城戸さんは笑って言った。
「まあ、お前はどこにいようとお前だしな。どこにいようと、お前を大事にしてくれる人はいるだろうよ」
「そうですね!」
「あたし、トラちゃんと結婚したら大事にするね!」
ルミちゃんが言った瞬間、城戸さんに殴られた。
「こいつだけはやめとけ」
「アハハハハハ!」
俺の顔の横に自分の顔を持って来る。
「うぜぇ!」
「タカさーん!」
俺は笑って左手で亜紀ちゃんの背中を撫で、右手でグラスを持って酒を飲んだ。
「その後でな、佐野さんが佳苗さんと一緒に城戸さんの店に来たんだ」
「佳苗さんは知ってたんですね?」
「ああ。俺のファンクラブだったからな」
「えぇー!」
俺は笑った。
「流石に「関係」はないよ。ただ、俺のことを可愛がってくれる人だったってことだ。警察官が不良の代名刺みたいな俺と付き合うわけにはいかないしな」
「そうだったんですか」
「それに、まあ俺の情報収集みたいな意味もあったんだろう。ああ、別に俺を捕まえるためじゃなくてな。単純に俺に興味があっただけだ」
「分かります」
亜紀ちゃんを抱えて、また椅子に座らせた。
「佐野さんは何も聞かされずに来たようだった。俺の顔を見てギョッとしてたよ」
「アハハハハハ!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「おい、お前」
「いらっしゃいませー!」
「何やってんだ?」
「ご注文はー?」
佳苗さんが佐野さんの脇を突っついていた。
「まったく! ああ、バーテンさんによく似たクソガキを知ってるんだ」
「そーなんですか」
「とんでもねぇ奴でな」
「はぁ」
「それにしても良く似た顔だな!」
「弟かも!」
「へぇ」
「僕は石神ウサギです! よろしく!」
「ばかやろう!」
二人はテーブルに着き、城戸さんが誰だと聞いた。
「あ、刑事さん」
「なんだと!」
「アハハハハ」
「大丈夫かよ」
城戸さんはハラハラしていた。
俺は注文のビールと最初に出す皮付ピーナッツを持って行った。
「ありがとう!」
佳苗さんが笑って言った。
「ごゆっくりどうぞ」
佐野さんは俺をずっと見ていた。
俺はいつも通りに働き、接客した。
城戸さんに断り、ラザニアを作って持って行った。
「どうぞ、店からのサービスです」
「頼んでねぇぞ」
「弟がお世話になってるようですので」
「フン!」
その後で、佐野さんの「美味ぇな!」という声が聞こえた。
城戸さんの娘ルミちゃんが入って来た。
「トラちゃーん!」
「ウサギちゃんだよ!」
ルミちゃんがなんでなんでと聞くので、昨日改名したと言った。
いつものオムライスを作る。
城戸さんが、二人で喰えと言った。
客が混んでいたので、二人でカウンターの隅で立って食べる。
佳苗さんが来て、テーブルで食べなさいと言った。
ルミちゃんの皿を持って佐野さんたちのテーブルへ行った。
「マスターの娘さんなんです。ルミちゃん」
「お邪魔しまーす」
ルミちゃんは人気者だ。
時々、客に呼ばれて可愛がられている。
「トラちゃん、美味しいね!」
「ウサギちゃんだよ!」
「おい、もういい!」
俺たちは笑った。
「トラ、お前はどこに行っても女にモテるなぁ」
「エヘヘヘ」
「うちの佳苗だって、このザマだ。まったくなぁ」
「エヘヘヘ」
佳苗さんはニコニコしていた。
「まったく、俺に見せたいものがあるって言うんで来てみれば」
「ごめんね、トラちゃん。後で佐野さんが知るよりはと思ったから」
「ありがとうございます!」
「何がウサギだよ」
渋い顔で言った佐野さんが、少しして噴き出した。
「プッ、ハハ、ワハハハハハ!」
「わはははは」
ルミちゃんも笑った。
「えーと、ルミちゃんか。トラは真面目に働いてるのかな?」
「うん! トラちゃんのお陰で一杯お客さんが来るんだって! お父さんが言ってた」
「そうか」
「でも時々怒られてるよね」
「そうなのか?」
「こないだ、私にオチンチン見せた時には、本気で殴られてたよね?」
「トラ、お前を逮捕する」
「ちょっ! 佐野さん!」
城戸さんが呼びに来た。
「すいません、お邪魔しました」
城戸さんが佐野さんたちに言った。
「こいつには迷惑を掛けられっぱなしなんだ。でもたまに助けられてる。宜しくお願いします」
佐野さんが立ち上がって頭を下げた。
「いえいえ! 私も同じです。バカな奴ですが、一本気なんで気に入ってます」
「まったくだ」
「はい」
「アハハハハハ!」
笑った俺は城戸さんに頭を引っぱたかれ、佐野さんに尻を蹴られた。
「「早く戻れ!」」
しばらく飲んでから、佐野さんと佳苗さんは帰った。
「おい、さっき作ってくれたやつ、美味かったぞ」
「ありがとうございます!」
「流石に俺はもう来れねぇけどな。真面目に働けよ」
「はい!」
「おい、ここじゃ暴れてないだろうな?」
「それがこないだ……」
「ありがとうございました!」
城戸さんが何か言いかけたので、俺は慌てて外へ送り出した。
「トラ、てめぇ!」
「アハハハハハハ!」
佳苗さんも笑っていた。
佐野さんも微笑んでいた。
「まあ、トラの家が貧乏なのは知ってるしな。お袋さんを大事にしてやれ」
「はい!」
中へ戻ると、城戸さんがウイスキーを煽っていた。
「トラ、お前ひやひやしたぞ」
「アハハハハ」
「勘弁しろ」
「すませんでしたー!」
城戸さんは笑って言った。
「まあ、お前はどこにいようとお前だしな。どこにいようと、お前を大事にしてくれる人はいるだろうよ」
「そうですね!」
「あたし、トラちゃんと結婚したら大事にするね!」
ルミちゃんが言った瞬間、城戸さんに殴られた。
「こいつだけはやめとけ」
「アハハハハハ!」
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