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昔の思い出
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ドライブから帰って、柳は楽し気な顔をしている。
夕飯は亜紀ちゃんが万事うまく用意してくれた。
鶏鍋だ。
肉団子と鶏肉の両方が入っている。
牛肉と違って、それほどの戦争は起きない。
楽しく笑いながら食べた。
レイは仕事でいないので、後日紹介する。
レイは不定期に仕事が入り、家に戻らないことも多い。
忙しい女だ。
ゲームをして遊び、柳を歓迎した。
亜紀ちゃんと三人で風呂に入る。
「タカさんの最近の趣味なんですよ!」
「え、なになに?」
俺が響子のアヒルで、オチンチンけん玉を見せる。
「「ギャハハハハハ!」」
風呂を出て、三人で飲んだ。
俺と亜紀ちゃんで、俺たちの戦いの記録をPCで見せる。
国道246、蓮華の襲撃、フランス外人部隊、防衛システム輸送の洋上戦。
柳は言葉を喪っていた。
「お前のマンションを別に用意してやるぞ?」
「いえ、私はここにいます」
「だったら、お前も強くなれ」
「はい」
亜紀ちゃんが雰囲気を変えるために、稲城会の連中の尻にモップを突っ込んだ話をした。
柳が吐きそうになった。
翌朝、俺が出勤しようとすると、柳が一緒に行きたいと言った。
「響子ちゃんに会いたいんですが」
俺は笑って柳をベンツに乗せた。
先の俺の部下たちに挨拶し、一緒に響子の病室へ行った。
「響子ちゃん!」
「リュウー!」
響子が喜んで柳に抱き着いた。
「昨日から石神さんの家に住むことになったの。よろしくね」
「うん、リュウが来てくれて嬉しい」
「時々ここも来るから」
「うん!」
「六花さんも、宜しくお願いします」
「はい。ところで曜日係としてお話があります」
「は、はい」
「先日、緑子さんのご結婚が決まりまして」
「そ、そうなんですか」
「はい。柳さんは水曜日とのご希望でしたが、今でしたら木曜日への変更も……グッフゥー!」
「いい加減にしろ」
不安は残るが、俺は柳を置いて部屋へ戻った。
柳には好きな時に帰るように言っている。
一江から報告を受ける。
「部長」
「あんだよ」
「柳さんがついに来ましたね」
「ああ、来たな」
「大変ですね、いろいろ」
「別に何の世話もねぇよ。大体子どもたちで家事はほとんどやるしな」
「いえ、部長の下半身が」
「なんだと?」
「レイさんに加え、一つ屋根の下で」
「レイとも何もねぇぞ!」
「そうなんですか!」
「なんで驚くんだよ」
「淫獣が手を出してない……」
「お前、俺のことをなんだと……」
「部長! またご病気ですか!」
一江の頭にチョップ。
「ばかやろう! 俺は肉体関係なんかなくても女を愛するんだ!」
「これまでのことで、その言葉は虚しく響きます」
「何言ってんだ、この野郎!」
「知子ちゃん、今どうしてると思います?」
「なんだと?」
思わず驚いた。
一江は満面の笑みでリストを俺に見せた。
「なんだ、これは?」
「石神高虎 遍歴リスト」
「おい!」
「ご安心を。会員制のサイトで、外から侵入はできません」
「そういう話じゃねぇ!」
「あちこちで、石神高虎を知っている人間を集めました。全員私との一対一の遣り取りですから、情報が漏れたり拡散することもありません。ああ、一応私も「女」の一人となっていますが」
「てめぇ」
単純に気持ち悪い。
「部長、これは部長を守るために始めたんですよ」
「何言ってんだ」
「部長を知っている人間は非常に多いです。宇留間のような人間を浮かび上がらせるために始めました」
「じゃあ、どうして女ばっかりなんだよ」
「ちゃんと男性バージョンもありますよ」
「これは女のリストじゃねぇか」
「それはちょっとした趣味で」
「このやろう」
一江は笑って男性のリストも見せた。
確かに、やばそうな人間が何人か確認できた。
そいつらには、髑髏のマークがついている。
「遣り取りの中で、結構今でも部長を恨んでますねぇ」
「ヘッ!」
「今、「セラフィム」を通してカウンセリングみたいなことをしてます」
「セラフィム」は、一江の量子コンピューターだ。
「今後行動を起こしそうになったらすぐに分かりますから」
「そうかよ」
「居場所も全員分かってますし、もう宇留間のようなことはありませんよ」
「分かったよ」
今更ながらに、俺のいい加減さにうんざりする。
一体どれほど恨みを買ったことか。
「女性の方は、ほぼ全員が部長を今も慕ってます」
「そうか」
「男性は半分ですかねぇ」
「え?」
「ほら、髑髏のついてない人は、全員部長が好きな方々ですよ」
俺はもう一度リストを観た。
懐かしい名前が幾つもあった。
「お会いしたかったら、いつでもおっしゃって下さい」
「うるせぇ」
「アハハハハ」
一江はリストを置いて行こうとしたが、俺が断った。
幾らでも会いたい人間がいた。
しかし、会えば俺の抱えるものが増えすぎる。
その人たちに何かあれば、優秀で優しいこいつが教えてくれるだろう。
昔のことは、昔のことでいい。
俺は響子の部屋へ行った。
食事を終える頃だ。
柳がまだいた。
響子と顕さんのゲームをやっていた。
「なんだ、まだいたのか」
「はい! このCG凄いですね!」
「ああ。顕さんが響子のために作ってくれたんだ」
「タカトラ、顕さんどこにいるのかなー」
「ダメだ。自分で見つけるって言っただろ?」
「うん」
響子は顕さんをまだ見つけられない。
そろそろヒントをやっても、と考えていた。
「顕さんて、奈津江さんのお兄さんですよね」
「ああ」
「あ、今度私も奈津江さんのお墓にお参りしていいですか?」
「そうか。じゃあ一緒に行こう」
「はい!」
「私も行きたい!」
響子が言った。
「そうだな。じゃあ今度行こうな」
「うん!」
「響子ちゃん、石神さんの家の仏壇は知ってる?」
「うん! お参りしてる!」
「そう、偉いね!」
「!」
響子がCGを動かした。
仏間に行く。
仏壇の前に自分を座らせた。
いろいろいじってみる。
線香に手を伸ばすと、そこに火が灯った。
仏間のドアが開き、顕さんが現われた。
「顕さんだ!」
《響子ちゃん、元気かな?》
CGの中の顕さんが話しかけて来た。
「顕さーん!」
響子が泣き出した。
奈津江の位牌と線香を触ることで、顕さんが現われるようになっていた。
CGの響子が顕さんの傍に行くと、顕さんが抱き締めてくれる。
《ずっと、響子ちゃんが大好きだよ》
顕さんがそう言っていた。
響子が大泣きした。
六花まで泣いている。
「響子、良かったな」
「うん、柳のお陰」
「そうだな」
俺は響子を寝かせ、柳と「ざくろ」へ行った。
すき焼きを食べる。
「美味しいですね」
「そうだな」
「すき焼きって、こういうのですね」
「そうだよな」
二人で笑った。
すき焼きも、昔のことだ。
俺は今の石神家のすき焼きでいい。
夕飯は亜紀ちゃんが万事うまく用意してくれた。
鶏鍋だ。
肉団子と鶏肉の両方が入っている。
牛肉と違って、それほどの戦争は起きない。
楽しく笑いながら食べた。
レイは仕事でいないので、後日紹介する。
レイは不定期に仕事が入り、家に戻らないことも多い。
忙しい女だ。
ゲームをして遊び、柳を歓迎した。
亜紀ちゃんと三人で風呂に入る。
「タカさんの最近の趣味なんですよ!」
「え、なになに?」
俺が響子のアヒルで、オチンチンけん玉を見せる。
「「ギャハハハハハ!」」
風呂を出て、三人で飲んだ。
俺と亜紀ちゃんで、俺たちの戦いの記録をPCで見せる。
国道246、蓮華の襲撃、フランス外人部隊、防衛システム輸送の洋上戦。
柳は言葉を喪っていた。
「お前のマンションを別に用意してやるぞ?」
「いえ、私はここにいます」
「だったら、お前も強くなれ」
「はい」
亜紀ちゃんが雰囲気を変えるために、稲城会の連中の尻にモップを突っ込んだ話をした。
柳が吐きそうになった。
翌朝、俺が出勤しようとすると、柳が一緒に行きたいと言った。
「響子ちゃんに会いたいんですが」
俺は笑って柳をベンツに乗せた。
先の俺の部下たちに挨拶し、一緒に響子の病室へ行った。
「響子ちゃん!」
「リュウー!」
響子が喜んで柳に抱き着いた。
「昨日から石神さんの家に住むことになったの。よろしくね」
「うん、リュウが来てくれて嬉しい」
「時々ここも来るから」
「うん!」
「六花さんも、宜しくお願いします」
「はい。ところで曜日係としてお話があります」
「は、はい」
「先日、緑子さんのご結婚が決まりまして」
「そ、そうなんですか」
「はい。柳さんは水曜日とのご希望でしたが、今でしたら木曜日への変更も……グッフゥー!」
「いい加減にしろ」
不安は残るが、俺は柳を置いて部屋へ戻った。
柳には好きな時に帰るように言っている。
一江から報告を受ける。
「部長」
「あんだよ」
「柳さんがついに来ましたね」
「ああ、来たな」
「大変ですね、いろいろ」
「別に何の世話もねぇよ。大体子どもたちで家事はほとんどやるしな」
「いえ、部長の下半身が」
「なんだと?」
「レイさんに加え、一つ屋根の下で」
「レイとも何もねぇぞ!」
「そうなんですか!」
「なんで驚くんだよ」
「淫獣が手を出してない……」
「お前、俺のことをなんだと……」
「部長! またご病気ですか!」
一江の頭にチョップ。
「ばかやろう! 俺は肉体関係なんかなくても女を愛するんだ!」
「これまでのことで、その言葉は虚しく響きます」
「何言ってんだ、この野郎!」
「知子ちゃん、今どうしてると思います?」
「なんだと?」
思わず驚いた。
一江は満面の笑みでリストを俺に見せた。
「なんだ、これは?」
「石神高虎 遍歴リスト」
「おい!」
「ご安心を。会員制のサイトで、外から侵入はできません」
「そういう話じゃねぇ!」
「あちこちで、石神高虎を知っている人間を集めました。全員私との一対一の遣り取りですから、情報が漏れたり拡散することもありません。ああ、一応私も「女」の一人となっていますが」
「てめぇ」
単純に気持ち悪い。
「部長、これは部長を守るために始めたんですよ」
「何言ってんだ」
「部長を知っている人間は非常に多いです。宇留間のような人間を浮かび上がらせるために始めました」
「じゃあ、どうして女ばっかりなんだよ」
「ちゃんと男性バージョンもありますよ」
「これは女のリストじゃねぇか」
「それはちょっとした趣味で」
「このやろう」
一江は笑って男性のリストも見せた。
確かに、やばそうな人間が何人か確認できた。
そいつらには、髑髏のマークがついている。
「遣り取りの中で、結構今でも部長を恨んでますねぇ」
「ヘッ!」
「今、「セラフィム」を通してカウンセリングみたいなことをしてます」
「セラフィム」は、一江の量子コンピューターだ。
「今後行動を起こしそうになったらすぐに分かりますから」
「そうかよ」
「居場所も全員分かってますし、もう宇留間のようなことはありませんよ」
「分かったよ」
今更ながらに、俺のいい加減さにうんざりする。
一体どれほど恨みを買ったことか。
「女性の方は、ほぼ全員が部長を今も慕ってます」
「そうか」
「男性は半分ですかねぇ」
「え?」
「ほら、髑髏のついてない人は、全員部長が好きな方々ですよ」
俺はもう一度リストを観た。
懐かしい名前が幾つもあった。
「お会いしたかったら、いつでもおっしゃって下さい」
「うるせぇ」
「アハハハハ」
一江はリストを置いて行こうとしたが、俺が断った。
幾らでも会いたい人間がいた。
しかし、会えば俺の抱えるものが増えすぎる。
その人たちに何かあれば、優秀で優しいこいつが教えてくれるだろう。
昔のことは、昔のことでいい。
俺は響子の部屋へ行った。
食事を終える頃だ。
柳がまだいた。
響子と顕さんのゲームをやっていた。
「なんだ、まだいたのか」
「はい! このCG凄いですね!」
「ああ。顕さんが響子のために作ってくれたんだ」
「タカトラ、顕さんどこにいるのかなー」
「ダメだ。自分で見つけるって言っただろ?」
「うん」
響子は顕さんをまだ見つけられない。
そろそろヒントをやっても、と考えていた。
「顕さんて、奈津江さんのお兄さんですよね」
「ああ」
「あ、今度私も奈津江さんのお墓にお参りしていいですか?」
「そうか。じゃあ一緒に行こう」
「はい!」
「私も行きたい!」
響子が言った。
「そうだな。じゃあ今度行こうな」
「うん!」
「響子ちゃん、石神さんの家の仏壇は知ってる?」
「うん! お参りしてる!」
「そう、偉いね!」
「!」
響子がCGを動かした。
仏間に行く。
仏壇の前に自分を座らせた。
いろいろいじってみる。
線香に手を伸ばすと、そこに火が灯った。
仏間のドアが開き、顕さんが現われた。
「顕さんだ!」
《響子ちゃん、元気かな?》
CGの中の顕さんが話しかけて来た。
「顕さーん!」
響子が泣き出した。
奈津江の位牌と線香を触ることで、顕さんが現われるようになっていた。
CGの響子が顕さんの傍に行くと、顕さんが抱き締めてくれる。
《ずっと、響子ちゃんが大好きだよ》
顕さんがそう言っていた。
響子が大泣きした。
六花まで泣いている。
「響子、良かったな」
「うん、柳のお陰」
「そうだな」
俺は響子を寝かせ、柳と「ざくろ」へ行った。
すき焼きを食べる。
「美味しいですね」
「そうだな」
「すき焼きって、こういうのですね」
「そうだよな」
二人で笑った。
すき焼きも、昔のことだ。
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