717 / 2,859
柳が来た。
しおりを挟む
3月最後の日曜日。
双子が俺を起こしに来た。
「おい」
「「なーに?」」
「まだ毛が生えてないか確認してやる」
「「やー!」」
ルーとハーが俺にベッドに引き込まれた。
必死に抵抗する。
ツルツルだった。
「よし! 安心したぞ!」
「「ヘンタイ!」」
まったくいいお父さんになったものだ。
山中も喜んでいることだろう。
仏壇で線香を焚くと、一気に燃え尽きた。
朝食の後、双子と散歩に出た。
「タカさん」
亜紀ちゃんが何か言おうとしていた。
「なんだ?」
「あの」
「なんだよ」
「い、いいえ」
「おう!」
出掛けた。
いつもの公園でまったりする。
まったく、双子といると気持ちがいい。
「タカさん、もう春ですねー」
「そうですねー」
俺たちはベンチでポカポカになっていた。
「桜は来週かなー」
「そうかなー」
気持ちいい。
「お前たちも五年生かぁ」
「「うん!」」
「早いなぁ」
「そうだね」
「ん?」
俺は違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「ア、アァーーー!」
「タカさん?」
「急いで戻るぞ!」
「「え?」」
「今日はあいつが来る!」
「誰?」
「柳だぁ!」
「「あぁー!」」
俺たちはダッシュで戻った。
亜紀ちゃんが待っていた。
「もしかして、また忘れてました?」
「教えてくれよ!」
「なんか、前にもありましたよね」
「あいつは、そういう運命の女なんだろう」
俺は急いでハマーを出した。
双子を乗っけた。
意味はねぇ。
待ち合わせの銀の鈴に、ちょっと遅れた。
「石神さーん!」
「悪い、ちょっとハーが死んじゃってさ」
「死んでないもん!」
「また忘れたのかと思っちゃいました」
「アハハハハハ! 柳ちゃん、面白いことを言う!」
「アハハハハ、まさかねぇ」
双子が柳の荷物を持った。
宅急便で、午後にまた別途届く予定だ。
もう昼食の時間なので、どこにも寄らずに帰った。
柳は車の中でウキウキしていた。
「やっと石神さんの家で暮らせます!」
「おう!」
もう、部屋の準備は出来ている。
まあ、だから忘れてしまっていたのだが。
「みんなと会うのが楽しみ!」
「そうか」
「石神さん?」
「なんだ?」
「なんか今日はノリが悪いですね」
「そ、そんなことはないぞ!」
「そーですか?」
「お、おう!」
家に戻り、亜紀ちゃんがバラした。
「し、信じられない!」
「柳、悪かった」
「私、必死で頑張ったんですよ!」
「いや、分かってる。申し訳ない」
「私、石神さんの家に来たくて頑張ったのにー!」
柳を抱き締めた。
「悪かった。でも、俺は本当に柳が来てくれて嬉しいんだ」
「ならどうして」
「いろいろあって忙しかった。いや、それは言い訳だな。でも俺も柳を迎えるためにいろいろ頑張ったんだ」
「石神さーん!」
「よく来てくれた、柳。これからはずっと一緒だ」
「はい!」
皇紀がメモを取っていた。
昼食後、俺は柳をドライブに誘った。
「疲れてないか?」
「いえ!」
「新しい車を買ったから、お前を乗せてやりたくて」
「嬉しいです、石神さん!」
俺は大改造シボレー・コルベットに柳を案内した。
「アニコレ?」
「シボレー・コルベットC7ZR1を改造した特注車だ」
「前に飛び出してる機械は?」
「おう! スーパーチャージャーだな」
「上にネコが乗ってますけど」
「ロボだな!」
「虎の絵って」
「レイだよ!」
「……」
出発した。
六本木を回って羽田空港に向かう。
みんなが見ている。
信号待ちで、大勢がスマホで撮影する。
「石神さん、目立ってますね」
「ああ、いつも通りだな!」
俺はビルの崩壊現場を指さした。
「こないだ亜紀ちゃんが壊した」
「ゲェッーーー!!」
近況報告でもないが、「稲城会」との抗争(いじめ)を話した。
「石神さん、大丈夫なんですか?」
「あー、全然平気! あいつら守るので必死だしな。まあ、俺たちに手を出したら、マジで全殺しだし」
「あのー」
「心配すんな! 俺に任せろ」
「任せると、いつもとんでもないじゃないですか」
「そんなことはないだろう」
「あの、うちに軍隊消しちゃうものすごい兵器が満載なんですけど!」
「アハハハハハハ!」
羽田空港に着いた。
展望デッキに上る前に、ホットドッグを買いに寄る。
「今日は詫びとお祝いだ。10本まで買っていいぞ?」
「そんなに食べないですよ!」
「そうなの?」
一つずつ買い、コーヒーを三つもらってデッキに上がった。
「あー、なんか実感が湧いてきました」
「そうかよ」
まだ陽があるので、ロマンティシズムな雰囲気は薄い。
でも、広い空港の離発着の便を二人で眺めた。
「石神さん、今日から宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しく」
二人で笑った。
「お前は言ったことを実行する人間だな」
「え?」
「お前はあの日、俺のことを好きだと言い、いつか俺と一緒になるんだと言っていた」
「それって、子どもの頃の話ですか?」
「お前は俺の傷を見て驚き、それでも俺を好きだと言ってくれた」
「はい」
柳は外を見つめた。
「お前は俺を追いかけて、ついにここまで来た」
「はい」
「もう、俺がお前を離さないぞ」
「お願いします」
「なんちゃって」
「エェッーーーー!」
「アハハハハハ!」
「石神さん!」
「冗談だよ、柳。お前が好きだ」
「今更そんなこと言われても!」
「本当だ柳。お前のことは御堂に「もらうぞ」と言ってあるからな」
「ほんとに?」
「よく来た、柳」
「ほんとに……」
俺は柳を抱き締めた。
「悪いな。お前のことは最初から見ているからな。親友御堂の大事な娘で、最初からお前は俺の大事な人間だった」
「そうですね」
「だからもっと大事になるってことが、どうにも恥ずかしくてな」
「そこはお願いします」
「ああ」
俺たちはまた空港を眺めた。
「お前には、これからいろいろ苦労をかけるし、驚かせてしまうことも多い」
「覚悟してます」
「広域暴力団とかゾンビ軍団やサイボーグ兵士とか100メートルの怪獣とか1000人殺した地縛霊とか山よりでかい大妖怪とか」
「どれか一つになりませんか?」
「そう思うよなぁ」
「どうか」
「まあ、退屈はねぇぞ!」
「あははは」
柳に話すことはたくさんある。
でも、先は長い。
ゆっくり話して行こう。
双子が俺を起こしに来た。
「おい」
「「なーに?」」
「まだ毛が生えてないか確認してやる」
「「やー!」」
ルーとハーが俺にベッドに引き込まれた。
必死に抵抗する。
ツルツルだった。
「よし! 安心したぞ!」
「「ヘンタイ!」」
まったくいいお父さんになったものだ。
山中も喜んでいることだろう。
仏壇で線香を焚くと、一気に燃え尽きた。
朝食の後、双子と散歩に出た。
「タカさん」
亜紀ちゃんが何か言おうとしていた。
「なんだ?」
「あの」
「なんだよ」
「い、いいえ」
「おう!」
出掛けた。
いつもの公園でまったりする。
まったく、双子といると気持ちがいい。
「タカさん、もう春ですねー」
「そうですねー」
俺たちはベンチでポカポカになっていた。
「桜は来週かなー」
「そうかなー」
気持ちいい。
「お前たちも五年生かぁ」
「「うん!」」
「早いなぁ」
「そうだね」
「ん?」
俺は違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「ア、アァーーー!」
「タカさん?」
「急いで戻るぞ!」
「「え?」」
「今日はあいつが来る!」
「誰?」
「柳だぁ!」
「「あぁー!」」
俺たちはダッシュで戻った。
亜紀ちゃんが待っていた。
「もしかして、また忘れてました?」
「教えてくれよ!」
「なんか、前にもありましたよね」
「あいつは、そういう運命の女なんだろう」
俺は急いでハマーを出した。
双子を乗っけた。
意味はねぇ。
待ち合わせの銀の鈴に、ちょっと遅れた。
「石神さーん!」
「悪い、ちょっとハーが死んじゃってさ」
「死んでないもん!」
「また忘れたのかと思っちゃいました」
「アハハハハハ! 柳ちゃん、面白いことを言う!」
「アハハハハ、まさかねぇ」
双子が柳の荷物を持った。
宅急便で、午後にまた別途届く予定だ。
もう昼食の時間なので、どこにも寄らずに帰った。
柳は車の中でウキウキしていた。
「やっと石神さんの家で暮らせます!」
「おう!」
もう、部屋の準備は出来ている。
まあ、だから忘れてしまっていたのだが。
「みんなと会うのが楽しみ!」
「そうか」
「石神さん?」
「なんだ?」
「なんか今日はノリが悪いですね」
「そ、そんなことはないぞ!」
「そーですか?」
「お、おう!」
家に戻り、亜紀ちゃんがバラした。
「し、信じられない!」
「柳、悪かった」
「私、必死で頑張ったんですよ!」
「いや、分かってる。申し訳ない」
「私、石神さんの家に来たくて頑張ったのにー!」
柳を抱き締めた。
「悪かった。でも、俺は本当に柳が来てくれて嬉しいんだ」
「ならどうして」
「いろいろあって忙しかった。いや、それは言い訳だな。でも俺も柳を迎えるためにいろいろ頑張ったんだ」
「石神さーん!」
「よく来てくれた、柳。これからはずっと一緒だ」
「はい!」
皇紀がメモを取っていた。
昼食後、俺は柳をドライブに誘った。
「疲れてないか?」
「いえ!」
「新しい車を買ったから、お前を乗せてやりたくて」
「嬉しいです、石神さん!」
俺は大改造シボレー・コルベットに柳を案内した。
「アニコレ?」
「シボレー・コルベットC7ZR1を改造した特注車だ」
「前に飛び出してる機械は?」
「おう! スーパーチャージャーだな」
「上にネコが乗ってますけど」
「ロボだな!」
「虎の絵って」
「レイだよ!」
「……」
出発した。
六本木を回って羽田空港に向かう。
みんなが見ている。
信号待ちで、大勢がスマホで撮影する。
「石神さん、目立ってますね」
「ああ、いつも通りだな!」
俺はビルの崩壊現場を指さした。
「こないだ亜紀ちゃんが壊した」
「ゲェッーーー!!」
近況報告でもないが、「稲城会」との抗争(いじめ)を話した。
「石神さん、大丈夫なんですか?」
「あー、全然平気! あいつら守るので必死だしな。まあ、俺たちに手を出したら、マジで全殺しだし」
「あのー」
「心配すんな! 俺に任せろ」
「任せると、いつもとんでもないじゃないですか」
「そんなことはないだろう」
「あの、うちに軍隊消しちゃうものすごい兵器が満載なんですけど!」
「アハハハハハハ!」
羽田空港に着いた。
展望デッキに上る前に、ホットドッグを買いに寄る。
「今日は詫びとお祝いだ。10本まで買っていいぞ?」
「そんなに食べないですよ!」
「そうなの?」
一つずつ買い、コーヒーを三つもらってデッキに上がった。
「あー、なんか実感が湧いてきました」
「そうかよ」
まだ陽があるので、ロマンティシズムな雰囲気は薄い。
でも、広い空港の離発着の便を二人で眺めた。
「石神さん、今日から宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しく」
二人で笑った。
「お前は言ったことを実行する人間だな」
「え?」
「お前はあの日、俺のことを好きだと言い、いつか俺と一緒になるんだと言っていた」
「それって、子どもの頃の話ですか?」
「お前は俺の傷を見て驚き、それでも俺を好きだと言ってくれた」
「はい」
柳は外を見つめた。
「お前は俺を追いかけて、ついにここまで来た」
「はい」
「もう、俺がお前を離さないぞ」
「お願いします」
「なんちゃって」
「エェッーーーー!」
「アハハハハハ!」
「石神さん!」
「冗談だよ、柳。お前が好きだ」
「今更そんなこと言われても!」
「本当だ柳。お前のことは御堂に「もらうぞ」と言ってあるからな」
「ほんとに?」
「よく来た、柳」
「ほんとに……」
俺は柳を抱き締めた。
「悪いな。お前のことは最初から見ているからな。親友御堂の大事な娘で、最初からお前は俺の大事な人間だった」
「そうですね」
「だからもっと大事になるってことが、どうにも恥ずかしくてな」
「そこはお願いします」
「ああ」
俺たちはまた空港を眺めた。
「お前には、これからいろいろ苦労をかけるし、驚かせてしまうことも多い」
「覚悟してます」
「広域暴力団とかゾンビ軍団やサイボーグ兵士とか100メートルの怪獣とか1000人殺した地縛霊とか山よりでかい大妖怪とか」
「どれか一つになりませんか?」
「そう思うよなぁ」
「どうか」
「まあ、退屈はねぇぞ!」
「あははは」
柳に話すことはたくさんある。
でも、先は長い。
ゆっくり話して行こう。
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
甘灯の思いつき短編集
甘灯
キャラ文芸
作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)
※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる