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二年参り

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 今日は大晦日なので、みんなで二年参りをすることになっていた。
 俺もそういうことは久しぶりなので、楽しみだ。
 時間が余っていたので、ヒマで来ている「紅六花」の連中と、オセロ大会をすることにした。
 六花の提案だ。
 何人かが家から持って来て、30人のトーナメント形式にした。

 「お前、大丈夫か?」
 「石神先生! 私は毎日響子に鍛えられているのですよ!」
 「おお、そうだったな!」
 響子はオセロがべらぼうに強い。
 俺もたまに負ける。

 「フフン! 私が総長であることを見せつけてやりますよ」
 「おお、頑張れよ」
 「そして決勝で石神先生にも勝つのです」
 「負けるわけには行かないな!」
 「フフフ」

 六花は一回戦でキッチに負けた。

 「……」

 「総長、すみません!」

 「……」
 
 「キッチ、お前空気読めよな」
 幹部たちに叱られる。

 「いえ! 私負けるつもりで打ってたんです!」
 
 「……!……」

 俺は六花に唐揚げを作ってやった。
 六花はニコニコして、唐揚げを頬張った。




 小鉄が意外に強かった。
 タケが脅しながら対戦したが、簡単に勝ってしまった。
 
 「小鉄、てめぇ! そこは絶対置くな!」
 「何言ってんだよ、姉ちゃん!」
 俺、小鉄、キッチ、そしてアケミという女の四人が残った。
 一度休憩し、コーヒーとケーキを食べる。
 今日は朝まで起きている予定なので、夕飯は遅くなってからにしている。

 「キッチ! お前はあたしに勝ったんだから、絶対に優勝しろよ!」
 「は、はい!」
 六花が脅した。
 サイコロを振り、対戦を決めた。
 俺と小鉄、キッチとアケミが対戦する。
 俺は小鉄に勝ち、キッチはアケミに勝った。

 「キッチ! お前はあたしが強いんだって証明しろ!」
 「は、はい!」

 俺が簡単にキッチに勝った。
 優勝賞品は、六花のキスだった。

 タケに聞いた。
 「六花が優勝したらどうするつもりだったんだ?」
 「いえ、それは絶対無いので」

 「……」

 六花が俺にキスをしてくれた。
 いつもよりも、多少雑だった。



 俺たちは「虎チャーハン改」と「リッカチャンハン改」で夕食を摂った。
 大好評だった。
 酒は飲まなかった。
 神様に挨拶するのだから、酒は控える。

 徐々に「紅六花」のメンバーが集まって来る。
 俺と六花はみんなに頼まれて、写真を撮られた。
 俺と六花は動きやすいように、ジーパンと黒のタートルネックのセーターにボンバージャケットに着替えた。
 お揃いだ。
 ロボは留守番だ。
 食事を多めに置いて部屋にいさせる。


 9時過ぎに、みんなで出掛けた。
 1時間くらい歩くらしい。
 混雑するので、車は停める場所がないとのことだった。

 「すいません、お二人だけでも車で」
 「やだよ、みんなで歩こうぜ」

 タケは笑った。
 80人以上で歩くのは壮観だった。
 途中で時々「紅六花!」と声を掛けられた。
 町で人気があるらしい。
 
 ぞろぞろと、ゆっくり歩いた。

 1時間も歩くと、神社の下に着いた。
 階段を上ると神社があるが、その下の道に露店が並んでいる。
 車両通行止めだ。
 付近の駐車場も、今日は使用禁止になっている。
 タケたちは、離れた駐車場をキープしようとしてくれたが、俺が断ったので全員が揃って歩いた。

 六花が露店を見て嬉しそうな顔になる。

 「じゃあ、11時半に階段あたりに集合な!」
 タケがメンバーに言った。
 俺と六花、タケとよしこが一緒に歩く。
 露店は随分と多い。
 地元の人間が相当来るのだろう。

 向かいに大きな蕎麦屋がある。
 さぞ、今日は賑わうだろうっと思った。

 「石神さん、予約してますんで」
 「そうなのか!」
 俺たちは蕎麦屋に入って、四人席に座った。

 「今日は予約しないと、とてもじゃないですが入れませんから」
 「ありがとうな」
 「タケ、ありがとう」
 「いいえ」
 四人で天ぷら蕎麦を食べた。
 結構美味い。

 「美味いな、タケ」
 「ありがとうございます」
 六花も美味しそうに食べている。
 込み合っているので、俺たちは早めに出た。
 屋台を見て回り、六花が焼きイカとたこ焼きを買った。
 よく食べる。

 よしこがフリーのテーブルをとり、俺と六花は座らされた。
 よしこが焼きそばやじゃがバターなどを買って来て、タケは甘酒を買って来た。
 四人で時間まで話しながら食べた。

 「やっぱり寒いですね」
 タケが甘酒のコップを両手で持って言った。

 「ボンバージャケットは温かいんだよ」
 「そうなんですか!」
 「本来は爆撃機の乗員が使っていたんだ。上空は恐ろしい程寒いからな」
 「へぇー!」
 「今はファッションで薄手の物も多いけどな。俺たちが来ているような、ラムレザーで内側にムートンをたっぷり使ったものは、下はTシャツでも大丈夫だよ」
 「いいですね」

 俺はタケとよしこに着せてやった。
 
 「うわっ! 本当に温かいですね!」
 「そうだろ? 上野のアメ横なんかでは、随分と安いぞ。数万円だ」
 「「行きます!」」

 また遊びに来た時に案内すると約束した。





 そろそろ時間になり、集合場所へ向かった。
 全員が既に揃っており、整列して大声で俺たちに挨拶する。
 周囲の人間が驚いて見るが、「紅六花」だと分かって微笑んで去って行った。
 俺たちは長い階段を登った。
 六花は俺と並んで歩き、時々俺の顔を見て微笑んでいた。
 後ろでタケとよしこたちが笑って見ていた。

 手水舎で手を清め、本殿へ行く。
 周囲に大勢の参拝客がいる。
 ゆっくりと進んで、俺たちの番になった。
 俺と六花が最初で、二人で賽銭を入れて手を合わせた。
 タケたちが次々に参拝する。

 「虎と総長が良い年でありますように」

 全員がそう言って参拝した。
 他の参拝客が驚き、そして拍手をした。
 照れ臭かった。

 「タケ、なんだよあれは」
 「あたしたちの唯一つのお願いです」
 「やめてくれよ」
 「いいえ、やめられません!」

 俺と六花は笑うしかなかった。
 一旦下に降りて、また分れて露店を回った。
 30分ほどでまた集合なので、俺たちはまた空いたテーブルで甘酒を飲んだ。

 再度、階段を上がり、参拝した。
 賽銭を入れ、俺と六花は声を揃えて言った。

 「「紅六花」のみんなが幸せになりますように!」

 後ろでみんなが笑った。
 連中はさっきを同じことを言って、俺たちは帰った。





 「途中に温泉があるんですよ」
 「そうなのか」
 「露天風呂を貸し切ってます」
 「おい」
 「あたしらと一緒じゃ嫌ですか?」
 「石神先生! 入りましょうよ!」
 「おし!」

 小鉄はダメだと先に帰された。

 「おい、一緒に入ろうぜ」
 「いえ! まだ死にたくないんで!」
 毎年のことのようだった。

 俺の身体を見て、全員が驚いていた。
 そういえば、昨日はオチンチンだけだった。
 いつもは全裸になるんだが。
 みんなが俺の身体を洗いたがった。
 オチンチンは六花が自分だけのものだと言った。

 80人が入れる広さの露天風呂だった。
 まあ、多少きついが。

 俺はいいものを見せてやると言って、湯船を出た。
 何をするのかと、全員が注目する。

 「虚チン花!」

 六花の前の湯がポチョンとした。

 「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 全員が爆笑した。




 タケのビルに戻り、またみんなで酒を飲んだ。
 ロボも連れて来て、俺の椅子の後ろに毛布を敷き、寝かせた。
 昨日のような賑わう宴会ではない。
 みんなテーブルに座って、楽しく話しながら飲んだ。
 徐々に家に帰って行く。
 俺たちも、3時頃には解散し、寝た。




 「六花、楽しかったな」
 「はい、いい正月です」
 俺たちは愛し合って、広いベッドに身を寄せ合って寝た。


 「このベッドは回りませんね」
 「よくそんなこと知ってるな」
 「はい、元カレと」
 「お前、そんなのがいたのか!」
 「冗談ですよ」
 六花が笑って言った。

 「なんだよ」
 「ウフフフ。石神先生、私初めてだったでしょ?」
 「そういえば、そうだったな」
 「でも、彼氏はいましたよ?」
 「マジか!」
 「冗談です」
 
 「まあ、どうでもいいけどな」



 
 六花がオチンチンをつねった。
 オチンチン攻撃はやめろと言うと、優しく撫でた。
 俺たちは長いキスをした。     
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