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タマ
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日曜日の朝。
鷹の部屋へ行き、傷の経過を見た。
「おい、もう完全に治ってるぞ」
「本当ですか」
「もう、刃物での自殺はできねぇぞ?」
「もういたしません。欲しいものはすべて手に入りましたから」
「そうか」
検査をするまでもない。
俺の経験で分かる。
鷹は完全に復活した。
まあ、それでも検査は受けさせるが。
蓮花の連絡があり、俺たちは食堂へ移った。
歩くと言う鷹を、無理矢理車いすに乗せた。
「お前が元気に歩いたら、俺がいる意味がねぇだろう」
「ウフフフ」
食事の間、鷹は蓮花と味付けや料理の話をしていた。
食事の後、俺はミユキや前鬼、後鬼と組み手をした。
後鬼の動きが著しく変わった。
戦闘プログラムが発動したのだ。
俺が褒めると、後鬼は喜んだ。
午後はミユキに運転させ、外に出た。
ミユキは運転免許を取得した。
千万組が用意した戸籍だ。
運転は問題ない。
今後、大型や特殊免許を取得させる予定だが、問題なく手にするだろう。
俺は斬の家まで運転させた。
トヨタの白のプリウスだ。
音がしないので、何とも味気ない。
しかし、目立たない。
「おーい! 斬ちゃーん!」
インターホンを押して呼んだ。
ほどなくして、斬がくぐり戸から出てくる。
「遊びに来たぞ!」
「連絡くらい寄越せ!」
「なんだ、オナニーの最中か?」
「ばかもの!」
道場に案内された。
桜や千万組の30人程が練習していた。
「石神さん!」
桜の号令で、全員が整列する。
「悪いな、練習中に」
「いいえ、石神さんにお会い出来て光栄です!」
斬が俺に相手をしてやってくれと言う。
仕上がりを見せたいのだろう。
着替えるかと聞かれたが、俺は着物のままでやった。
全員を同時に相手した。
10秒ともたなかった。
全員が道場の端に吹っ飛んでいる。
加減しているので、怪我人はいないはずだ。
「まあ、なかなか強いんじゃないか?」
「……」
全員が引っ繰り返ったままで「オス!」と言った。
ミユキに相手をさせた。
3人同時にやらせる。
5秒で床にへたばった。
ミユキに、誰も攻撃できなかった。
俺とミユキ、そして俺と斬の組み手を見せた。
ミユキは30秒俺の攻撃を凌ぎ、斬は3分もった。
床に叩きつけられた斬は「手加減しているな」と言った。
「こいつらに見せるためにやってんだ。お前の楽しみじゃない」
「ふん」
斬は床に正座し、俺に頭を下げた。
「じゃあ、邪魔したな!」
帰ろうとする俺を、桜が引き留めた。
「石神さん! 是非千両にも会ってやって下さい」
「なんでだよ?」
「いえ、千両も会いたがっているかと」
「俺はヤクザなんて嫌いなんだ。関わりたくねぇな」
「いえ、でも石神さんは千万組連合の会長ですよ?」
「そうなの!」
「いや、だって、先日盃事で」
「あれって、そういうことなのかよ!」
「はい。え、御存知かと」
「ばかやろー!」
全員が笑う。
まあ、知ってるけど。
「じゃあ、帰りにでも寄るよ」
「はい! お待ちしております!」
ミユキと帰った。
ミユキに車を仕舞わせ、俺は「ブラン」の建物へ向かった。
ガラス越しにブランたちを眺める。
俺を見ても、誰も反応しない。
「それでよー、お前は何なのよ?」
俺は誰もいない床に向かって言った。
「まさか俺が気付いてないとでも?」
しばらくは何の変化もなかった。
「おい、クロピョン呼ぶぞ!」
白い床に、黒い煙のようなものが浮いて来た。
徐々に、小さなイタチに似た形になる。
「驚いたな。俺が分かるのか」
「たりめぇだ! おい、ヘンな真似したらぶっ殺すぞ!」
「ハハハ」
「ここで何してやがる」
「遊んでいるだけだ。クロピョンが楽しそうなんでな」
「お前はクロピョンの眷属か?」
「まあ、そんなものだ」
「ふざけた野郎だ。もうここへは来るな。クロピョンに言っておく」
「そう言うな。俺は役に立つぞ」
「全然いらねー。お前が弱っちいのは分かるからな」
「俺はクロピョンよりも、精神操作が上手い」
「御呼びじゃねぇよ。お前は無能だ」
イタチが笑った。
大笑いだった。
「お前たちは、どこで俺たちとの関り方を知ったんだ。あいつも俺の力はいらないと言った」
「あいつって、皇紀か!」
イタチが震えた。
俺の怒気を感じたのだ。
こいつは皇紀を殺そうとしやがった。
俺はイタチを掴んだ。
「待て! あの子どもをどうこうするつもりは無かった! だから遊んでいると言っただろう!」
「お前を殺す」
「やめろ! お前にはその力があるんだ、だからやめてくれ!」
「ならば言え! お前の目的はなんだ」
「俺の「心臓」を取り戻したいだけだ!」
「「心臓」ってなんだ」
「「業」が持ち出した。偶然だ。あいつには途轍もない悪魔と怨霊が取り憑いている。そいつらが俺の「心臓」に感応しやがった!」
俺はイタチを放した。
「「心臓」を取り戻したらどうなる?」
「俺の本来の力が甦る。クロピョンには劣るが、役に立つぞ」
「「心臓」は今どこにある?」
「分からない。多分、まだ「業」が持っている」
「お前の名は?」
「ない。お前が付けろ。それで俺はお前の下に付ける」
「役立たずはなぁ」
「「心臓」を取り戻せば役に立つ!」
「「業」が心臓を返すと言ったら?」
「お前との契約がある限り、お前を裏切ることはない」
「「業」がお前の「心臓」を破壊したら?」
「そこまでだ。俺は力を取り戻すのに、恐ろしく長い年月が必要だろう」
「分かった。お前の名は「タマ」だ」
「……」
「なんだ、嫌なのか?」
「いや、もうそれで繋がった。それでいい」
「皇紀に何かしたか!」
「俺と会った記憶を消した」
「戻せるか」
「また会えれば」
「戻せ。あいつはまた来る。皇紀の指示に従え」
「分かった」
イタチは平伏した。
「ところでよ、お前はどうして俺たちと話せるんだ?」
「俺はクロピョンと違って、人間の傍にずっといたからな」
「何をしているんだ」
「人間の欲望を糧としている」
「ふん、やっぱりろくでもないな」
「じゃあ、もう行け。呼んだら来いよ?」
「分かっている。それでは、その時まで」
タマは消えた。
「タマ、来い」
「なんだ。早速何か思いついたか?」
「いや、ただ呼んでみただけ」
「……」
タマは消えた。
「タマ」
「なんだ!」
「そういえば、お前って何ができんのよ?」
「今の俺でも記憶を読むくらいは出来る。そういうことがあれば呼べ」
「早速あるぜぇ!」
「そうか」
俺は本館の地下6階に行った。
タマを呼び、探らせた。
面白いことが分かった。
鷹の部屋へ行き、傷の経過を見た。
「おい、もう完全に治ってるぞ」
「本当ですか」
「もう、刃物での自殺はできねぇぞ?」
「もういたしません。欲しいものはすべて手に入りましたから」
「そうか」
検査をするまでもない。
俺の経験で分かる。
鷹は完全に復活した。
まあ、それでも検査は受けさせるが。
蓮花の連絡があり、俺たちは食堂へ移った。
歩くと言う鷹を、無理矢理車いすに乗せた。
「お前が元気に歩いたら、俺がいる意味がねぇだろう」
「ウフフフ」
食事の間、鷹は蓮花と味付けや料理の話をしていた。
食事の後、俺はミユキや前鬼、後鬼と組み手をした。
後鬼の動きが著しく変わった。
戦闘プログラムが発動したのだ。
俺が褒めると、後鬼は喜んだ。
午後はミユキに運転させ、外に出た。
ミユキは運転免許を取得した。
千万組が用意した戸籍だ。
運転は問題ない。
今後、大型や特殊免許を取得させる予定だが、問題なく手にするだろう。
俺は斬の家まで運転させた。
トヨタの白のプリウスだ。
音がしないので、何とも味気ない。
しかし、目立たない。
「おーい! 斬ちゃーん!」
インターホンを押して呼んだ。
ほどなくして、斬がくぐり戸から出てくる。
「遊びに来たぞ!」
「連絡くらい寄越せ!」
「なんだ、オナニーの最中か?」
「ばかもの!」
道場に案内された。
桜や千万組の30人程が練習していた。
「石神さん!」
桜の号令で、全員が整列する。
「悪いな、練習中に」
「いいえ、石神さんにお会い出来て光栄です!」
斬が俺に相手をしてやってくれと言う。
仕上がりを見せたいのだろう。
着替えるかと聞かれたが、俺は着物のままでやった。
全員を同時に相手した。
10秒ともたなかった。
全員が道場の端に吹っ飛んでいる。
加減しているので、怪我人はいないはずだ。
「まあ、なかなか強いんじゃないか?」
「……」
全員が引っ繰り返ったままで「オス!」と言った。
ミユキに相手をさせた。
3人同時にやらせる。
5秒で床にへたばった。
ミユキに、誰も攻撃できなかった。
俺とミユキ、そして俺と斬の組み手を見せた。
ミユキは30秒俺の攻撃を凌ぎ、斬は3分もった。
床に叩きつけられた斬は「手加減しているな」と言った。
「こいつらに見せるためにやってんだ。お前の楽しみじゃない」
「ふん」
斬は床に正座し、俺に頭を下げた。
「じゃあ、邪魔したな!」
帰ろうとする俺を、桜が引き留めた。
「石神さん! 是非千両にも会ってやって下さい」
「なんでだよ?」
「いえ、千両も会いたがっているかと」
「俺はヤクザなんて嫌いなんだ。関わりたくねぇな」
「いえ、でも石神さんは千万組連合の会長ですよ?」
「そうなの!」
「いや、だって、先日盃事で」
「あれって、そういうことなのかよ!」
「はい。え、御存知かと」
「ばかやろー!」
全員が笑う。
まあ、知ってるけど。
「じゃあ、帰りにでも寄るよ」
「はい! お待ちしております!」
ミユキと帰った。
ミユキに車を仕舞わせ、俺は「ブラン」の建物へ向かった。
ガラス越しにブランたちを眺める。
俺を見ても、誰も反応しない。
「それでよー、お前は何なのよ?」
俺は誰もいない床に向かって言った。
「まさか俺が気付いてないとでも?」
しばらくは何の変化もなかった。
「おい、クロピョン呼ぶぞ!」
白い床に、黒い煙のようなものが浮いて来た。
徐々に、小さなイタチに似た形になる。
「驚いたな。俺が分かるのか」
「たりめぇだ! おい、ヘンな真似したらぶっ殺すぞ!」
「ハハハ」
「ここで何してやがる」
「遊んでいるだけだ。クロピョンが楽しそうなんでな」
「お前はクロピョンの眷属か?」
「まあ、そんなものだ」
「ふざけた野郎だ。もうここへは来るな。クロピョンに言っておく」
「そう言うな。俺は役に立つぞ」
「全然いらねー。お前が弱っちいのは分かるからな」
「俺はクロピョンよりも、精神操作が上手い」
「御呼びじゃねぇよ。お前は無能だ」
イタチが笑った。
大笑いだった。
「お前たちは、どこで俺たちとの関り方を知ったんだ。あいつも俺の力はいらないと言った」
「あいつって、皇紀か!」
イタチが震えた。
俺の怒気を感じたのだ。
こいつは皇紀を殺そうとしやがった。
俺はイタチを掴んだ。
「待て! あの子どもをどうこうするつもりは無かった! だから遊んでいると言っただろう!」
「お前を殺す」
「やめろ! お前にはその力があるんだ、だからやめてくれ!」
「ならば言え! お前の目的はなんだ」
「俺の「心臓」を取り戻したいだけだ!」
「「心臓」ってなんだ」
「「業」が持ち出した。偶然だ。あいつには途轍もない悪魔と怨霊が取り憑いている。そいつらが俺の「心臓」に感応しやがった!」
俺はイタチを放した。
「「心臓」を取り戻したらどうなる?」
「俺の本来の力が甦る。クロピョンには劣るが、役に立つぞ」
「「心臓」は今どこにある?」
「分からない。多分、まだ「業」が持っている」
「お前の名は?」
「ない。お前が付けろ。それで俺はお前の下に付ける」
「役立たずはなぁ」
「「心臓」を取り戻せば役に立つ!」
「「業」が心臓を返すと言ったら?」
「お前との契約がある限り、お前を裏切ることはない」
「「業」がお前の「心臓」を破壊したら?」
「そこまでだ。俺は力を取り戻すのに、恐ろしく長い年月が必要だろう」
「分かった。お前の名は「タマ」だ」
「……」
「なんだ、嫌なのか?」
「いや、もうそれで繋がった。それでいい」
「皇紀に何かしたか!」
「俺と会った記憶を消した」
「戻せるか」
「また会えれば」
「戻せ。あいつはまた来る。皇紀の指示に従え」
「分かった」
イタチは平伏した。
「ところでよ、お前はどうして俺たちと話せるんだ?」
「俺はクロピョンと違って、人間の傍にずっといたからな」
「何をしているんだ」
「人間の欲望を糧としている」
「ふん、やっぱりろくでもないな」
「じゃあ、もう行け。呼んだら来いよ?」
「分かっている。それでは、その時まで」
タマは消えた。
「タマ、来い」
「なんだ。早速何か思いついたか?」
「いや、ただ呼んでみただけ」
「……」
タマは消えた。
「タマ」
「なんだ!」
「そういえば、お前って何ができんのよ?」
「今の俺でも記憶を読むくらいは出来る。そういうことがあれば呼べ」
「早速あるぜぇ!」
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