上 下
597 / 2,859

御堂 Ⅳ

しおりを挟む
 響子と六花を病院に送り、栞は俺の家から帰った。
 ロボにみやげの刺身をやる。
 あまりの美味さに唸りながら食べた。
 今度大将にネコも唸ったと教えてやろう。
 俺たちは風呂に入り、地下へ集合した。

 俺はShow-Yaの『限界Lovers』をギターで弾き、熱唱した。
 子どもたちは乗って来る。
 続いて『戒厳令の街』『私は嵐』で盛り上げる。
 双子がノリノリで踊った。
 亜紀ちゃんの『飾りじゃないのよ涙は』を伴奏し、歌わせる。
 
 「こういう楽しみもあるんだね、この家は」
 御堂が楽しそうに言った。

 「完全防音の部屋だからな。どんなに騒いでもご近所に迷惑はかけない」
 まあ、たまに銃撃戦とかあるが。
 亜紀ちゃんのリクエストで『アルハンブラの思い出』を弾いて解散した。




 リヴィングで御堂と亜紀ちゃんとで酒を飲む。
 腹いっぱい食べたので、あっさりとしたつまみを作る。
 亜紀ちゃんがカプレーゼを作るが、チーズが厚いと俺に怒られる。
 俺はシソ巻き豆腐を用意した。
 一口サイズに切り揃える。
 ロボにミルクを少し温めて出した。

 バランタインを出した。
 御堂が好きな酒だ。
 亜紀ちゃんがロックで飲む。

 「随分飲めるんだね」
 「エヘヘヘ」
 「エヘヘじゃねぇ! こいつこないだ二日酔いするまで飲みやがって」
 「アハハハハ!」

 「だけど、山中の夢が一つ叶ったね」
 「そうだよな」
 「え? 何のお話ですか?」

 「山中が言っていたんだ。夢があるんだってな」
 「なんですか! 教えて下さい!」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 俺と御堂と山中で飲んでいた。
 久しぶりに御堂が東京に来たので、三人で集まった。
 山中夫婦に双子が生まれて間もなくだった。

 「なんだよ山中。ちょっと気持ち悪いぞ」
 山中がずっとニヤニヤしている。

 「いや、石神には分かんないよ」
 「なんだよ、それは」
 「御堂なら分かるかな」
 「おい、だからなんだって」

 「俺さー、夢があるんだよ」
 「あ? 研究で発見とか?」
 「そんなものじゃないよ」
 「そんなものって、お前」
 御堂はニコニコして俺たちを見ていた。

 「俺の夢はさ、亜紀、皇紀、それと瑠璃と玻璃。みんなが大きくなったら一緒に酒を飲むんだ」
 「ああ」
 「なるほどね」
 「な、御堂は分かるよな!」
 「うん。僕も同じだな。子どもたちと一緒に酒を飲みたいかな」

 「おい、俺だって分かるぞ!」

 「石神は無理だよ。だって子どもがいないじゃないか」
 「それは!」
 「子どもっていいぞー! どんどん大きくなってな。それでな」
 山中がますますニヤニヤする。

 「な、御堂!」
 「うん、そうだよね」
 「そういう毎日を一緒に過ごして。そしていつか一緒に酒を飲むんだ」
 「へー」
 俺は面白くなかった。

 「石神、お前も結婚しろよ。いいもんだぞ」
 「お前らを見れば分かるけどな」
 「エヘヘヘ、最初は亜紀ちゃんかー!」
 山中のコップに唐揚げを突っ込んでやった。

 「あ、何すんだよ!」
 「うるせぇ、気持ち悪いんだよ、お前は!」
 御堂が大笑いした。

 「亜紀ちゃんの「オトシャン」は俺だからな。俺が最初に飲むよ」
 「絶対に許さん!」
 山中が立ち上がった。
 御堂がなだめて座らせる。

 「石神は羨ましいんだよ」
 「そうか! やっとお前の前に立てたな! ガッハッハ!」
 「このやろう」
 俺は冷酒のお代わりを注文した。

 「最初は亜紀ちゃんと何を飲むんだ?」
 「まあビールかな。でも大丈夫かな?」
 「あ? ビールなんかで酔う奴はいないだろう」
 「それはお前だけだ! 亜紀ちゃんは俺の娘なんだから繊細なんだぞ」
 山中は唐揚げの入ったままのグラスを飲み干した。
 そのまま唐揚げを食べる。

 「随分と繊細だな!」
 「ああ!」
 御堂が笑った。

 「僕は柳か。確かに楽しみだね」
 「柳も亜紀ちゃんも俺にべったりじゃねぇか」
 「なんだ、石神。やっぱり羨ましいのか?」
 「このやろう」
 俺も笑った。
 確かにちょっと羨ましい。

 「そうだな。羨ましいな」
 「認めたかぁー!」

 三人で笑った。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「まあ、山中じゃなくてゴメンな」
 俺が言うと、亜紀ちゃんが抱き着いて来る。

 「あの山中の夢って聞いてなければな。女子高生に酒なんか飲ませなかったんだが」
 「タカさーん!」
 「亜紀ちゃんは甘えん坊だな」
 俺たちは笑った。

 「御堂、ちょっと肉を焼いてやってくれ」
 「いりませんよ!」
 「アハハハハ!」
 俺はカプレーゼを亜紀ちゃんに食べさせた。
 亜紀ちゃんはチーズを薄くして良かったと言った。

 「お前たちは、何よりも元気に育ってくれてるからな。それだけで満足だ」
 「はい」

 「御堂、こないだクロピョンにやられて死に掛けたじゃない」
 「ああ、驚いたよ」
 「あの時、亜紀ちゃんが俺の面倒を見てくれたんだけどな」
 「そうか」
 「優しい子なんで一生懸命だったんだ。一晩中起きてて俺の体温を測っててなぁ」
 「そうか」
 亜紀ちゃんは照れている。

 「でもな。こいつら病気しないじゃない。だから病人食も知らないし、看病ってことも分かってねぇ」
 「アハハハ!」
 「やめてください、タカさん」
 「だけど、本当に一生懸命でなぁ。それがありがたかったんだ」
 「良かったね」

 「まったくな。俺もこいつら、そういえば風邪一つひいたことがなかったって。あの時に初めて気付いたんだよ」
 「アハハハハ!」
 「昨日紹介した鷹な。あいつに来てもらって、やっと喰えるものを作ってもらった」
 「タカさーん!」
 「なんだ、お肉か?」
 「もーう!」

 栞の怒りの登場やその後の芝居などを話し、御堂を爆笑させた。

 「大変だったよなー!」
 「はい! うちがどこまで壊されちゃうかって」
 「アハハハハ!」
 「タカさんがとにかく凄かったんですよ。怒りマックスの栞さんが、涙流して帰ってったんですから!」
 「そうなのかい?」
 「騙してるって知ってる私でさえ泣いちゃいました」
 「アハハハハ!」

 「亜紀ちゃん」
 「なんですか?」
 「俺は御堂の娘の柳をもらう」
 「はい!」
 
 「だから御堂、亜紀ちゃんを自由にしていいぞ?」
 「やめてください!」
 「アハハハハ!」
 
 


 俺たちは遅くまで楽しく話した。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

甘灯の思いつき短編集

甘灯
キャラ文芸
 作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)                              ※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……思わぬ方向へ進んでしまうこととなってしまったようです。

四季
恋愛
継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...