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フランス外人部隊 Ⅱ
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「ハー、まずいね。「花岡」が通じにくい」
「うん」
ハーの息が荒い。
折れた肋骨が肺を傷つけたのだろう。
敵は接近してこない。
身体に触れられれば、手の打ちようがある。
多分「螺旋花」は有効だ。
それを分かっているので、距離を取って銃撃に絞っている。
既にルーも何発かくらい、血を流している。
「問題はスナイパーだね」
「うん。あの攻撃はやばい」
最初にハーを撃ったのは、対物ライフルだろう。
アサルトライフルであれば、まだ肉に傷を負うだけで済む。
貫通はしない。
しかし、スナイパーの攻撃は強烈だ。
戦闘センスのあるハーだったからこそ、即死にならなかっただけだ。
だが、何度も喰らえば必ずやられる。
それに、アサルトライフルの連中も、このまま喰らい続ければジリ貧だ。
今はある出版社だったビルに立てこもっている。
一階で内装作業をしていた人たちは、全員死んでいる。
銃撃の集中砲火を浴びたのだ。
「ごめんなさい」
ルーは唇を噛み締めた。
通報はあったはずだが、まだ警察は来ていない。
襲撃から1分も経っていないためだろう。
しかし、このままでは数分ももたない。
轟音と共に、強烈なスナイパーの気配が消えた。
「ハー!」
ハーが頷く。
そして電光とともに急速接近して来る人影。
「「亜紀ちゃん!」」
瞬時に敵の気配が消えた。
ビルの前にハマーが停まる。
「早く乗れ!」
「「聖!」」
「呼び捨てにすんな、ブサイク共!」
ハーを後ろのシートへ押し込み、ルーも乗った。
金髪のかつらを被って顔を黒く塗った亜紀ちゃんも助手席に飛び乗る。
聖が後輪を滑らせながら急発進した。
「えーと、どこへ行けばいいのかな?」
「タカさんの病院です! 急いで下さい!」
「ああ! で、どっち?」
亜紀ちゃんが指示した。
「ハーは!」
後ろを向いて亜紀ちゃんが叫ぶ。
「大丈夫。弾は貫通してないよ。でも折れた肋骨で肺をやられてる」
「ハー、もう少し頑張って!」
ハーは頷いた。
「おい、ブサイク姉!」
「亜紀です! いい加減覚えて下さい!」
「次はどっちだ?」
「山手通りにぶつかったら右折!」
「おし! で、山手通りって?」
「もう! 私が指示しますからとにかくアクセルを踏み込んで!」
「おう!」
改造されたV8エンジンが唸る。
「これ、デカ過ぎなんだよなぁ」
「黙って運転して!」
「あ、マック! ちょっと寄っていい?」
「いい加減にして下さい!」
「キャンキャン吼えるなよ。そのチビのブサイクなら大丈夫だって」
「え?」
「ちゃんと生き延びるからな。まだ死ぬ顔じゃねぇ。ブサイクだけどな」
「聖さん」
途中でパトカーが大破していた。
銃撃ではない。
もっと大きな砲撃かミサイルだ。
「奴ら、相当キレてんな」
ハンドルを握りながら聖が呟いた。
亜紀ちゃんは獰猛な顔で笑っていた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺は皇紀を拾って家に急いだ。
皇紀のヘルメットはない。
「お前、リュックサックの振りをしろ!」
「え、はい!」
どうにかやっている。
まあ、警察を振り切る自信はあるが。
数分で家に着く。
俺は庭の花壇に走った。
「クロピョン! 来い!」
すぐに、黒い蛇が現われる。
「命令だ! 御堂の家、蓮花の研究所、風花、紅六花の街、顕さんを守れ!」
襲われる可能性の高い順だ。
クロピョンの蛇は頭を垂れて去った。
襲撃部隊の規模から、恐らく、御堂の家と蓮花の研究所までだろう。
あそこには皇紀システムがあるからだ。
その情報を掴んでいるのなら、性能を把握したいに違いない。
特に御堂の家だ。
前回の蓮華の襲撃で、謎の撃破をされた。
その理由を知りたがっている可能性が高い。
俺は鷹に連絡した。
「石神先生!」
「そっちは大丈夫か!」
「はい! 今は院長室のそばにいます」
「よろしく頼む」
「はい! お任せ下さい」
「負担が大きいが、頼むな」
「はい!」
主要な人間のいない病院は、恐らく攻撃はされないだろう。
今回の目的は俺への嫌がらせではない。
「皇紀!」
「はい!」
「全員に伝達。今回の襲撃の目的は、俺たちの防衛規模と攻撃力の観測だ!」
「はい!」
「恐らく、観測員がいる。できれば拘束せよ!」
「はい! 伝達します!」
皇紀は家の中へ入った。
本格的に「皇紀システム」を稼働する。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ミユキ」
「はい」
「先ほど、皇紀様から連絡がありました」
「はい」
「出撃の準備をなさい」
「かしこまりました」
ミユキは薄いチタン合金のコンバットスーツを装着する。
胸には、白薔薇の刻印があった。
外に出た。
H&K G3を持っている。
インカムから蓮花の声が聞こえた。
「来ましたよ。西からです」
ミユキは西の壁に走った。
既に壁を乗り越えて何人かが敷地に降りている。
G3のフルオートで撃った。
全員が回避する。
残弾があるにも関わらず、ミユキはすぐにG3を捨てた。
「私にこれはまだ扱いきれない」
ミユキは腰のククリナイフを抜いた。
刀身は50センチほどある。
襲撃者に迫った。
銃撃される。
FN-FALの銃身の短い「SA58 OSW」だ。
ミユキは余裕をもって銃弾をかわしていく。
突然、胸に衝撃を感じた。
塀の上にスナイパーがいた。
チタン合金がへこむ。
初めてミユキの顔に怒りの表情が浮かんだ。
「よくも石神様にいただいた衣服に傷を」
ミユキのトップスピードが上がった。
4人の襲撃者は連携してミユキを撃つが、ミユキのスピードは襲撃者の反応を遙かに上回った。
次々と、ククリナイフで身体を両断された。
「ミユキ、東からも来ます。武装ヘリです。建物の中へ入りなさい」
ミユキは塀を駆け上がり、スナイパーを襲っていた。
壁を横から物凄いスピードで迫るミユキに、スナイパーは恐怖した。
慌てて銃撃するが、ミユキのククリナイフで弾かれた。
更にスナイパーの目が大きく開かれた。
スナイパーは首を切り離され、塀の内側に落ちた。
ミユキは塀の上で、武装ヘリを見つめた。
敷地から電光が走った。
皇紀の設置した荷電粒子砲だった。
武装ヘリは攻撃前に四散した。
ミユキは誇らしげな笑みを浮かべた。
「皇紀様の……」
「ミユキ! 中へ入りなさい! 装甲車が着ます!」
「いいえ、蓮花様。ご安心下さい」
「何を言っているのです! 早く!」
「石神様の僕の方がいらっしゃいます」
「何を!」
装甲車が突然止まった。
装甲車が「死んだ」。
「!」
蓮花が驚いた。
ミユキは襲撃者の遺体を運び始めた。
「石神様、申し訳ございません。いただいた衣服を傷つけてしまいました」
ミユキは胸元に手を当て、深く後悔していた。
「うん」
ハーの息が荒い。
折れた肋骨が肺を傷つけたのだろう。
敵は接近してこない。
身体に触れられれば、手の打ちようがある。
多分「螺旋花」は有効だ。
それを分かっているので、距離を取って銃撃に絞っている。
既にルーも何発かくらい、血を流している。
「問題はスナイパーだね」
「うん。あの攻撃はやばい」
最初にハーを撃ったのは、対物ライフルだろう。
アサルトライフルであれば、まだ肉に傷を負うだけで済む。
貫通はしない。
しかし、スナイパーの攻撃は強烈だ。
戦闘センスのあるハーだったからこそ、即死にならなかっただけだ。
だが、何度も喰らえば必ずやられる。
それに、アサルトライフルの連中も、このまま喰らい続ければジリ貧だ。
今はある出版社だったビルに立てこもっている。
一階で内装作業をしていた人たちは、全員死んでいる。
銃撃の集中砲火を浴びたのだ。
「ごめんなさい」
ルーは唇を噛み締めた。
通報はあったはずだが、まだ警察は来ていない。
襲撃から1分も経っていないためだろう。
しかし、このままでは数分ももたない。
轟音と共に、強烈なスナイパーの気配が消えた。
「ハー!」
ハーが頷く。
そして電光とともに急速接近して来る人影。
「「亜紀ちゃん!」」
瞬時に敵の気配が消えた。
ビルの前にハマーが停まる。
「早く乗れ!」
「「聖!」」
「呼び捨てにすんな、ブサイク共!」
ハーを後ろのシートへ押し込み、ルーも乗った。
金髪のかつらを被って顔を黒く塗った亜紀ちゃんも助手席に飛び乗る。
聖が後輪を滑らせながら急発進した。
「えーと、どこへ行けばいいのかな?」
「タカさんの病院です! 急いで下さい!」
「ああ! で、どっち?」
亜紀ちゃんが指示した。
「ハーは!」
後ろを向いて亜紀ちゃんが叫ぶ。
「大丈夫。弾は貫通してないよ。でも折れた肋骨で肺をやられてる」
「ハー、もう少し頑張って!」
ハーは頷いた。
「おい、ブサイク姉!」
「亜紀です! いい加減覚えて下さい!」
「次はどっちだ?」
「山手通りにぶつかったら右折!」
「おし! で、山手通りって?」
「もう! 私が指示しますからとにかくアクセルを踏み込んで!」
「おう!」
改造されたV8エンジンが唸る。
「これ、デカ過ぎなんだよなぁ」
「黙って運転して!」
「あ、マック! ちょっと寄っていい?」
「いい加減にして下さい!」
「キャンキャン吼えるなよ。そのチビのブサイクなら大丈夫だって」
「え?」
「ちゃんと生き延びるからな。まだ死ぬ顔じゃねぇ。ブサイクだけどな」
「聖さん」
途中でパトカーが大破していた。
銃撃ではない。
もっと大きな砲撃かミサイルだ。
「奴ら、相当キレてんな」
ハンドルを握りながら聖が呟いた。
亜紀ちゃんは獰猛な顔で笑っていた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺は皇紀を拾って家に急いだ。
皇紀のヘルメットはない。
「お前、リュックサックの振りをしろ!」
「え、はい!」
どうにかやっている。
まあ、警察を振り切る自信はあるが。
数分で家に着く。
俺は庭の花壇に走った。
「クロピョン! 来い!」
すぐに、黒い蛇が現われる。
「命令だ! 御堂の家、蓮花の研究所、風花、紅六花の街、顕さんを守れ!」
襲われる可能性の高い順だ。
クロピョンの蛇は頭を垂れて去った。
襲撃部隊の規模から、恐らく、御堂の家と蓮花の研究所までだろう。
あそこには皇紀システムがあるからだ。
その情報を掴んでいるのなら、性能を把握したいに違いない。
特に御堂の家だ。
前回の蓮華の襲撃で、謎の撃破をされた。
その理由を知りたがっている可能性が高い。
俺は鷹に連絡した。
「石神先生!」
「そっちは大丈夫か!」
「はい! 今は院長室のそばにいます」
「よろしく頼む」
「はい! お任せ下さい」
「負担が大きいが、頼むな」
「はい!」
主要な人間のいない病院は、恐らく攻撃はされないだろう。
今回の目的は俺への嫌がらせではない。
「皇紀!」
「はい!」
「全員に伝達。今回の襲撃の目的は、俺たちの防衛規模と攻撃力の観測だ!」
「はい!」
「恐らく、観測員がいる。できれば拘束せよ!」
「はい! 伝達します!」
皇紀は家の中へ入った。
本格的に「皇紀システム」を稼働する。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ミユキ」
「はい」
「先ほど、皇紀様から連絡がありました」
「はい」
「出撃の準備をなさい」
「かしこまりました」
ミユキは薄いチタン合金のコンバットスーツを装着する。
胸には、白薔薇の刻印があった。
外に出た。
H&K G3を持っている。
インカムから蓮花の声が聞こえた。
「来ましたよ。西からです」
ミユキは西の壁に走った。
既に壁を乗り越えて何人かが敷地に降りている。
G3のフルオートで撃った。
全員が回避する。
残弾があるにも関わらず、ミユキはすぐにG3を捨てた。
「私にこれはまだ扱いきれない」
ミユキは腰のククリナイフを抜いた。
刀身は50センチほどある。
襲撃者に迫った。
銃撃される。
FN-FALの銃身の短い「SA58 OSW」だ。
ミユキは余裕をもって銃弾をかわしていく。
突然、胸に衝撃を感じた。
塀の上にスナイパーがいた。
チタン合金がへこむ。
初めてミユキの顔に怒りの表情が浮かんだ。
「よくも石神様にいただいた衣服に傷を」
ミユキのトップスピードが上がった。
4人の襲撃者は連携してミユキを撃つが、ミユキのスピードは襲撃者の反応を遙かに上回った。
次々と、ククリナイフで身体を両断された。
「ミユキ、東からも来ます。武装ヘリです。建物の中へ入りなさい」
ミユキは塀を駆け上がり、スナイパーを襲っていた。
壁を横から物凄いスピードで迫るミユキに、スナイパーは恐怖した。
慌てて銃撃するが、ミユキのククリナイフで弾かれた。
更にスナイパーの目が大きく開かれた。
スナイパーは首を切り離され、塀の内側に落ちた。
ミユキは塀の上で、武装ヘリを見つめた。
敷地から電光が走った。
皇紀の設置した荷電粒子砲だった。
武装ヘリは攻撃前に四散した。
ミユキは誇らしげな笑みを浮かべた。
「皇紀様の……」
「ミユキ! 中へ入りなさい! 装甲車が着ます!」
「いいえ、蓮花様。ご安心下さい」
「何を言っているのです! 早く!」
「石神様の僕の方がいらっしゃいます」
「何を!」
装甲車が突然止まった。
装甲車が「死んだ」。
「!」
蓮花が驚いた。
ミユキは襲撃者の遺体を運び始めた。
「石神様、申し訳ございません。いただいた衣服を傷つけてしまいました」
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