上 下
539 / 2,840

双子の漂流記 Ⅱ

しおりを挟む
 「お腹空いたね」
 「うん。どーしようか?」
 砂浜に寝そべりながら話した。

 「ここはアレだね!」
 「オペレーション・ハー発動だぁ!」
 ハーが海に腰まで入り、「轟雷」を放つ。
 前方50メートルに渡り、魚が浮いた。
 二人で素手で必死に掴んで、次々に砂浜に投げた。

 「結構獲れたよ!」
 「うん!」

 80匹ほどの魚がいた。
 サメも何匹かいる。
 それほど大型ではない。
 ロレンチーニ器官が電撃にやられたのだろう。

 「生じゃなぁ」
 「ルー、電子レンジだよ!」
 「ああ!」
 ハーが「轟雷」を改良し、マイクロ波を放出した。
 魚が炙られていく。

 「やったぁー!」

 二人で次々に炙っては平らげた。
 美味くはないが、取り敢えず腹は満ちた。
 サメはアンモニア臭かったが、我慢して食べた。

 「フカヒレって美味しいんだよね?」
 「タカさんが言ってた」
 「ゲキマズじゃん!」
 「そうだねー」
 一応、喰っといた。




 二人で島の探検に出た。
 それほど広くはない。
 ヤシの木があった。
 二人は実をジャンプしてもぎ、水分を補給した。
 指でズボッと穴を空けた。
 以前は人が住んでいた痕跡もあった。
 二人で捜し歩き、使えそうなものを集めた。
 何も無かった。
 
 「まず服を作らなきゃね」
 「まっぱだもんね」

 二人はサメの革に目を付けた。
 「花岡」の技で自在にカットしていく。
 スカートが出来た。
 幾つか指で穴を空け、ヤシの実の繊維で縛った。
 上着も作る。
 貫頭衣のようなものが出来たが、革が足りずにヘソが出る。

 「ゴワゴワするね」
 「気合だよー!」
 「おー!」

 取り敢えず、また「オペレーション・ハー」をやった。
 ヤシガニもいたので、そいつらも獲物にした。
 ヤシガニは結構美味しかった。
 ヤシの実ジュースをまた飲んだ。

 「あ、そうだ!」
 「なになに?」
 「タカさんが前に言ってたじゃん、アラスカのコート」
 「あ!」
 石神が狼の頭がついた毛皮がカッチョイイと言っていた。
 あの時は笑ったが、石神のダンディズムはよく知っている。
 きっと、肩に顔があるのがいいのだ。

 二人はそれぞれサメの頭と、こっちも良いと、反対側にウツボの頭を取り付けた。
 石神が、狼の尻尾も良かったと言っていたのを思い出した。
 ウツボの革を剥ぎ、背中に取りつけた。

 「あ、なんかいいかも!」
 「ウツボがいい仕事してるよね!」
 二人で喜んだ。
 二人は次に、陸へ帰る方法を話し合った。

 「筏は作れるけど、現実的じゃないね」
 「火曜日までに帰らなきゃだよね」
 「「うーん」」



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 俺は亜紀ちゃんと二人きりだった。
 亜紀ちゃんの機嫌が最高に良い。
 用もないのに、俺にべったりしている。
 ロボも俺たちの間に入りにくい。

 「二人っきりですね、エヘヘヘ」
 朝から何十回も言う。

 「オッパイ触っちゃダメですよー」
 「ちょっとでもダメですよー」
 「ほらほら」
 「ほんのちょっとならいいかもですよー」
 「……」
 ウザイ。

 「亜紀ちゃんもどっか出掛けて来いよ」
 「嫌です」
 「俺も久しぶりにドゥカティでも乗るかな」
 「ダメです!」

 「……」

 困った。

 「あー、テンガでも使うかな!」
 「私がお手伝いします!」
 「バカヤロー! あれは孤独な仕事なんだぁ!」
 「じゃあ、そっと見てます」

 「……」



 「散歩してくるわ」
 「あ、一緒に!」
  「一人で歩きたい」
 亜紀ちゃんが泣きそうな顔をする。
 泣き真似に決まっている。

 「私と一緒は嫌ですか?」
 「一人がいいんだよ」
 「そんなに嫌なんですかー!
 「わかったよ! 一緒に行こう!」
 「うん!」
 亜紀ちゃんが俺の腕に絡めてくる。
 玄関でもそのままなので、靴が履きにくい。



 皇紀、双子、早く帰ってくれ。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「じゃあさ、近距離で「虚震花」を撃って、横滑りで推進するってことで!」
 「うん! 最初は私が下になるね!」
 二人は海へ入り、ハーが横に浮かんだ。
 バランスを取りながら、ルーが上に乗り、「虚震花」を撃つ。
 足元に爆発が生まれ、物凄い勢いで二人は前に進んだ。

 「成功、成功!」
 「スゴイよ、これ!」

 方向は、ある程度把握している。
 途中でハーがハワイ島を見ていた。
 だからここは中米か南米の近くだ。
 だから、東に進めば、どこかの大陸にぶつかる。
 幸い、北米から南米までは連なっている。
 いずれどこかに到達すると、二人は読んでいた。

 「ハー、大丈夫?」
 「うん。サメの服が丈夫で良かった!」
 衝撃は、ハーも「花岡」を駆使して減衰させていた。
 そうでなければ、二人の服はとっくに吹っ飛んでいる。
 次々と海面を爆破しながら、物凄いスピードで陸を目指した。


 五時間後、ルーとハーはメキシコに到達した。


 真っ白い砂浜が美しいメキシコ・ビーチでは、30分前から謎の海面爆発で大騒ぎだった。
 警官隊が呼ばれ、ビーチの人々を避難させた。

 「海底火山の爆発か!」
 「いいえ、この辺りにはそのようなものは」
 「どこかの国の攻撃なのか!」
 「分かりません! しかし爆発物の可能性が大きいです!」
 軍隊の出動が要請された。

 ビーチから離れた場所で、双眼鏡を覗いていた警官の一人が言った。

 「怪物です!」
 ワカメのようなものを頭部らしきものから大量に垂らし(ワカメだった)、脇にサメのような顔(サメ)と、ヘビのようなもの(ウツボ)。
 
 上司が双眼鏡の警官に問いただす。

 「未知の生物です! 二本足で立っています。サメの顔が横に!」
 「なんだと!」
 全員が拳銃を構える。

 

 「「はろー!」」



 二体の恐ろしい怪物が叫んだ。
 肩から触手を伸ばし、警官隊に振っていた。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました

深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。

こずえと梢

気奇一星
キャラ文芸
時は1900年代後期。まだ、全国をレディースたちが駆けていた頃。 いつもと同じ時間に起き、同じ時間に学校に行き、同じ時間に帰宅して、同じ時間に寝る。そんな日々を退屈に感じていた、高校生のこずえ。 『大阪 龍斬院』に所属して、喧嘩に明け暮れている、レディースで17歳の梢。 ある日、オートバイに乗っていた梢がこずえに衝突して、事故を起こしてしまう。 幸いにも軽傷で済んだ二人は、病院で目を覚ます。だが、妙なことに、お互いの中身が入れ替わっていた。 ※レディース・・・女性の暴走族 ※この物語はフィクションです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...