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アストラル界と栗ご飯

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 栞がタクシーに乗り込むまで、子どもたちは待っていた。
 見えなくなるまで手を振る。


 
 帰った。



 亜紀ちゃんが鷹を呼びに行き、みんなでリヴィングに集まった。
 みんなでホットミルクを飲む。
 栞には悪いが、みんな満面の笑みだ。

 「やばかったな」
 「「「はい!」」」
 「「うん!」」

 「栞が異常に素直な性格で助かったよ」
 「あれはチョロイって言うんじゃ」
 皇紀が言う。

 「俺の恋人を悪く言うな! それにな、栞の感情的になる性格も、すぐに機嫌を直してくれるのも、あれは「母性愛」なんだよ」
 「そうなんですか?」
 「ああ、自分の大事な存在を徹底的に守ろうとする、な」
 「タカさんが子どもってことですか?」
 「もちろんそうじゃない。でもな、「母性愛」というのは、別に子どもに限らないんだよ。自分の大事な存在すべてに強烈に向く。特に、相手が弱ったりしていたらさらに余計に働く。母親が代表格だってことで「母性」ってなってるんだよ」

 「じゃあ、今回のタカさんが弱っちゃったことは」
 亜紀ちゃんが言った。

 「その通りだ。栞の特大の母性愛が爆発したんだよな」
 俺はダメ男を好きになってしまう女性の例を話してやった。

 ホットミルクを一口飲む。
 何かを食べたり飲んだりするたびに、俺の身体が戻っていくのを感じる。
 やはり、コーヒーではないものをしばらく飲もうと思った。

 「でもな、鷹だって亜紀ちゃんだって、大泣きしてくれたじゃないか。それは「母性愛」だよ、ああ、ルーとハーもな。ありがとうな」
 「皇紀だって母性愛って言うとちょっと気持ち悪いけどな。でも誰かを大事に思う心は男女もねぇ。栞は逆に特大過ぎるってだけでな」
 「タカさんは、栞さんにはいつ話そうと思ってたんですか?」
 皇紀が尋ねる。

 「ああ。ベストは鷹が帰って、俺が今よりも元気になってからだよな。できるだけ心配させたくなかったからな。だから土日かと思っていたけど、考えていた以上に悪かったからなぁ」
 「あぁ」
 「まあ、爆発させないのがベストだったけど、何とか収まって、これで良かったんじゃねぇか?」
 「そうですねぇ」

 「あ! 栞が言ってたことは、絶対に口に出すなよな!」
 「「「「はい!」」」」」
 双子が握っていた秘密をみんなが知ってしまった。
 俺は驚いたが、別にどうということもない。

 「それと亜紀ちゃん」
 「はい!」
 「悪いけど明日も学校は休んでくれるか?」
 「はい、そのつもりでしたし」
 「ないだろうけど、万一栞が来たら、鷹を連れて逃げてくれ」
 「わかりましたー」
 亜紀ちゃんは笑って言ってくれた。




 俺は、夕飯まで少し寝ることにした。
 亜紀ちゃんに、夕飯が出来たら起こしてくれと言った。
 もう、あまり寝ると夜に眠れなくなりそうだ。
 ロボが隣に来る。

 「栞は怖かったなー」
 俺が頭を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らす。

 「お前、飛びかかろうとしてたけど、やめろよな。あいつは恐ろしい力があるんだから」

 「それにな。栞は優しい女なんだ。俺なんかのために、あんなに怒ってくれるのも、優しいからなんだぞ?」

 「まあ、ほんのちょっとだけめんどくせぇけどな!」

 「でも、愛した女のことだ。面倒なんてなんでもねぇよ」

 ロボは俺の顔を舐めた。

 「分かってくれるかー。じゃあ、ちょっと寝よう」





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 「相変わらず、私の「彼」は無茶苦茶ね、レイ?」
 美少女は笑いながら、隣の巨大な虎の頭を撫でた。

 「でも今回も助かってよかったー。「大黒丸」に頼みごとをするなんて、本当に無茶するんだから」
 虎は美少女に頭を摺り寄せた。

 「あんなことすれば、代価で食べられるか、「試練」を与えられて当たり前なのにね。最初から代価を言ってたから「試練」になって良かったけどね。でも本当にバカなんだから」

 「え? だから素敵なんだって? そりゃそうなんだけどね。エヘヘ」

 「でもさ、「大黒丸」をまさか従えちゃうなんてね! あれは笑ったわ。あの人、昔から悪知恵がすごいのよ!」
 虎も大きく咆哮する。

 「だよね。流石よねぇ。レイも初めて出会った時は、全然弱いのに向かって来たんでしょ?」

 「そうそう。あいつはそういう人間だから。大事だって思ったら自分なんかないのよね。バカなんだから」
 虎が小さく鳴く。

 「まだまだあの人にはいろいろあるけど、なんとかしちゃうよ、きっと!」
 虎がまた咆哮する。

 「うん。あんまり手出しは出来ないけどね。でも、やれることはやろう」
 美少女は虎を連れて歩き出した。

 「山中さんたちはまだここに来れないから、後で下に行って話してあげましょう。また喜んでくれるわ」

 美しい青い光に満たされた地を、美少女と虎は歩いて行った。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 鷹が起こしに来てくれた。
 優しくキスをする。

 「召し上がれますか?」
 「もちろんだ」
 「肩に捕まって下さい」
 「大丈夫だ。本当にどんどん戻っているよ」
 「いえ、私が触れて欲しいんです」
 「そうか!」
 俺は鷹の肩に腕を回した。

 「あー、早くオチンチン解禁日にならねぇかなぁ!」
 「ウフフフ」





 鷹の栗ご飯は最高に上手かった。
 俺は5杯もお替りして、みんなを喜ばせた。
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