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再び、六花と風花

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 木曜日。
 六花に昼食を誘われた。

 「今日は私がご馳走しますよ?」
 「いや、遠慮しとくよ」
 「どーしてですか!」
 「だって、お前の愚痴を聞きたくねぇもん」
 「ハウッ!」
 明日は風花が来る。
 どうせそのことで、俺に助けてくれと言うんだろう。

 「明日は風花が来ます」
 「どうせそのことで、俺に助けてくれと言うんだろ?」
 「はい」
 「……」
 100%過ぎる。
 まあ、仕事に障ってもいけない。

 「今日は木曜日だ。「平五郎」のカレーを俺の分で二つ買って来い。ああ、エビフライだったら三つな!」
 「分かりました!」
 毎週木曜日が「平五郎」のカレーの日だ。
 毎週具材が変わる。
 どれも美味いが、エビフライが絶品だ。
 一番小さな会議室を予約する。
 そこで六花と一緒にカレーを食べた。
 エビフライだった!

 「美味いな、やっぱ!」
 「そうですね!」
 六花が満面の笑みでカレーを頬張る。
 こいつも三つ買って来たようだ。
 六花の幸せそうな笑顔は最高だ。

 「あ、「平五郎」の奥さんが、石神先生に宜しくって言ってました」
 「俺だと分かったのか」
 「こんなにカレーを召し上がるのは、きっと石神先生だろうって」
 「そうだな!」

 「それでですね」
 「あんだよ」

 「どうすればいいんでしょうか?」
 丸投げだった。
 前回もそうだった気がする。

 「お前、何か考えてねぇのか?」
 「はい」
 六花の頭にチョップを入れる。

 「ただ一緒にいればいいだろうよ」
 「そうなんですが」
 「なあ、俺はお前たちのことはいつだって考えてるんだぞ?」
 「はい、申し訳ありません」
 二人で最後のカレーを開けた。
 口に放り込み、幸せになる。

 「六花、お前、以前と比べて格段に化粧が上手くなったな」
 「ありがとうございます!」
 「……」
 「?」

 「そうだ、今度のツーリングはどこへ行こうか!」
 「そうですね! じゃあ、また響子を連れて麻布のハンバーガー屋でもどうですか?
 「……」
 「?」

 「今、風花のことがすっかり抜けただろう?」
 「あ!」
 「あのなぁ。俺は風花に化粧を教えてやれと言ってるんだ」
 「なるほど!」
 「風花はまだ化粧をする機会もないだろう。お前がちゃんとやってやって、それでうちに連れて来いよ。俺が目いっぱい綺麗だって言ってやるから」
 「!」

 「それとなぁ。お前は折角バイクを買ったんだ。乗せてやれよ」
 「ああ!」
 「一緒に麻布に連れてってやればいいだろう。亜紀ちゃんのライダースーツを貸してやる。風花も同じ背格好だろうからな」
 「!」
 カレーを喰い終わった。
 六花が立ち上がった。
 ストッキングとパンツを降ろす。

 「お前! 何やってんだぁ!」
 「いえ、お礼を是非」
 「脱ぐな脱ぐな!」
 容器を片付けさせ、コーヒーを淹れて来いと言った。
 危なかった。

 二人でコーヒーを啜る。
 会議室用のインスタントだ。
 美味くねぇ。

 「大体分かったか?」
 「はい! 午前中にバイクで麻布に連れてって、帰ったら着替えて化粧をしてやって、石神先生のお宅へ伺います!」
 「よし、大丈夫そうだな!」
 「はい! あとは金曜日に一緒に迎えに行って下されば」
 俺は六花の頭にチョップを入れた。

 「そのくらいは自分でやれ! 去年は俺が危なかっただろう!」
 てんぱった六花に、あやうく喰われそうになった。

 「だって……」
 六花が涙ぐんでいる。

 「迎えに行って、タクシーで帰って。一緒に風呂に入って寝ろ!」
 「姉妹丼は?」
 「そんなものはねぇ!」
 何を考えてやがる。

 「何を話せばよいのか」
 「そんなもの! 響子の話だって幾らでもあるし、こないだのうちの別荘の話だって幾らでもあるだろう」
 「ああ!」
 まったくこいつは俺や響子とはちゃんと話せるのに、それ以外は妹でさえダメだ。
 ああ、タケたちは別か。

 「なんとかなりそうです」
 六花が、ようやくニコニコ顔になった。
 めんどくせぇ。

 

 「ところでよ」
 「はい?」
 「お前の寝室は片付けたんだろうな!」
 「はい、大丈夫ですよ?」
 「あのよ」
 「はい?」
 「俺はお前の部屋のポスターの話をしてるんだが。ちゃんと剥がしてるんだろうなぁ」
 「いえ、増えてますけど?」
 俺は六花の頭にチョップを入れた。

 「ばかやろー! あれだけ剥がせと言っただろう!」
 「絶対に嫌です!」
 この点だけは強情に俺の言うことを聞かない。
 
 「まさかと思うけどよ」
 「はい?」
 「俺の裸なんてねぇよな?」
 「え? ありますけど?」
 俺は六花の頭にチョップを入れた。

 「なんで俺のヌードがあるんだ!」
 「私が撮ったからに決まってるじゃないですかぁ」
 なに言ってんの、みたいな顔をする。

 「あたりまえでしょ、みたいに言うなぁ!」
 「オチンチン係ですから!」
 それが六花の正義らしい。



 一緒に迎えに行くことにした。
 こいつが風呂に入っている間に全部剥がそう。
 本当は今晩にでも行きたいが、アリジゴクに嵌るに決まっている。

 「ああ、ハマーはでかくて停めにくいんだよなぁ」
 「タクシーで行きましょうよ」
 「お前のマンションから逃げるには、自分の車が必要だ」
 タクシーを捕まえてる間に、ひどいことになる。
 こいつはきっと、裸で追いかけてくる。

 「大変ですね」
 「お前のせいだぁー!」








 やれやれだぜ。
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