上 下
363 / 2,859

皇紀、一泊旅行。 Ⅳ

しおりを挟む
 翌朝、みんなで寝床で遊んだ。

 「おい、たまには二人を花岡流で起こしてやれよ」
 俺は両脇の双子に言った。

 「いたいいたいいたい!」
 「やめてぇー! パンツを脱がさないでぇ!」
 ハーが栞をひょいと抱えて、俺の胸に乗せた。

 「はい、タカさん!」
 目の前に「栞」があった。

 「やめてくださいぃー!」
 亜紀ちゃんとルーが「俺」を見ていた。
 
 「あ、おっきくなったよ!」
 「う、うん」
 俺は今日も元気だった。




 朝食もホテルの人をてんてこ舞いさせ、驚きつつも喜ばれた。
 子どもたちもニコニコと味わった。
 部屋に戻り、一休みする。

 「今日の「偵察」はどうします?」
 「なんか、もうめんどくせぇなぁ」
 「散歩でもしない?」
 栞が言った。

 「そうだなぁ」
 「だって、折角来たのに全然見てないよ」
 「よし、行くか!」
 双子も運動不足だろう。
 俺は「高い高い」をしてやる。
 二十メートルほども投げ上げて、双子は回転しながら着地する。

 「……」

 栞が呆れて見ている。
 亜紀ちゃんが自分で跳ねる。
 五十メートル上がった。

 「まだ戦闘機戦は無理だなぁ」
 「そうですね」
 「……」

 俺は栞を抱き寄せた。

 「たかいたかいー」
 「や、やめてくださいー」
 栞が俺にしがみついた。

 俺たちは笑いながら、森の空気を味わって歩いた。




 俺は栞と歩きたいと言い、子どもたちを先に返した。

 「双子と何かあったか?」
 栞が驚いて俺を見る。

 「やっぱり石神くんには分かっちゃった?」
 「当たり前だろう。困ってるなら言ってくれ」
 「ううん。そういうんじゃないの。あの子たちは私を守ってくれるつもりだから」
 「そうならいいんだけど」
 まあ、想像はつく。
 双子なりに、栞の暴走を防ぐ手段を見つけたのだろう。
 あまり感心した方法じゃないようだが、栞が受け入れているなら、それでいい。

 俺は栞を抱き締めた。

 「石神くん」
 「たかいたかいー」
 「マジやめて」
 笑って俺たちはキスをする。

 「本当に困ったら言ってくださいね」
 「うん」
 「じゃあ、帰ろうか」
 栞が俺の手を引き留めた。

 「あのさ」
 「うん」
 「あっちに行こうよ」
 「?」

 栞は俺を森の中へ引っ張って行った。
 下を脱ぎ、木の幹にしがみつき、俺に突き出す。

 「恥ずかしいから早く」
 俺は笑って挿し込んだ。





 ホテルに戻ってのんびりしていると電話が来た。
 相川さんのお父さんからだ。
 皇紀を乗せる電車の連絡だった。

 「皇紀くんから、夕べいろいろお話を聞きました」
 「はい?」
 「石神先生のことをたくさん聞かせていただいて」
 「あいつ、申し訳ありませんでした。つまらない話にお付き合いさせてしまって」

 「いえいえ、大変面白くて、こちらから聞かせて欲しいとお願いしました」
 「そうですか。ちょっと世間知らずな奴ですので、遠慮を知らなくて」
 「とんでもありません。家のことを全部手伝ってくれて、今朝なんか掃除させて欲しいって。驚きました」
 まあ、ちゃんとやってたようで安心した。

 「本当にお世話になりました」
 「こちらこそ、今度、私も石神先生のお宅へ伺っても宜しいですか?」
 「いつでもお越し下さい、大したおもてなしもできませんが」
 「ではいつか必ず」
 「お待ちしてます」

 皇紀に電話した。

 「あ、タカさん! 丁度電話しようと思ってたんです」
 「おい、電車には乗るなよ。迎えに行くからな」
 「へ?」
 「30分以内に行く。のんびり待ってろ」
 「は、はい?」

 「おい! 帰るぞ」
 「「「「はーい!」」」」
 支度は出来ていた。
 チェックアウトを済ませ、俺たちはハマーで皇紀を迎えに行った。
 嬉しそうに笑っている栞を、双子が両脇で頭を撫でてやっている。
 亜紀ちゃんも助手席で楽しそうだ。

 駅の外で皇紀が立っていた。
 双子が窓から顔を出し、呼ぶ。

 「皇紀ちゃーん!」

 皇紀が気づき、手を振った。




 「どうしてここに?」
 亜紀ちゃんが事情を話した。

 「バーベキュー、美味しかった?」
 ルーが聞く。

 「なんでそれを!」
 「皇紀はお姉ちゃんの後だからね!」
 「なんの話?」
 「皇紀、夕べはお父さんと一緒で残念だったな」
 「だからなんでそれを!」
 みんなで笑った。

 「みんなお前のことが心配だったんだよ」
 「そうなんですか」
 「葵ちゃんたちとエッチなことをしないかってなぁ」
 「ああ、なんていう人たち」

 「でもなんにも無かったな」
 「え? 見てなかったんですか」
 「何!」

 「夜にトイレに起きたら葵ちゃんとばったり会って」

 「「「「「まてまてまてぇー!」」」」」
 
 「庭の椅子に座って、タカさんに教わった通りに」

 「「「「「おいおいおい!」」」」」

 「あ、最後まではしませんよ。でも葵ちゃんがぐったりしちゃって」

 「た、タカさん!」
 亜紀ちゃんが俺の腕を掴む。
 泣き顔だ。
 スゴイ力だ。

 「亜紀ちゃん、落ち着け! まだ大丈夫だ」
 「で、でもー!」
 「おい、皇紀。そういう夢を見たんだろ?」
 「いえ、ほんとのことですが?」


 「「「「「ギャァー!!!!」」」」」


 「お前! 空気読めぇー!」







 車の中は大騒ぎになった。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

甘灯の思いつき短編集

甘灯
キャラ文芸
 作者の思いつきで書き上げている短編集です。 (現在16作品を掲載しております)                              ※本編は現実世界が舞台になっていることがありますが、あくまで架空のお話です。フィクションとして楽しんでくださると幸いです。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……思わぬ方向へ進んでしまうこととなってしまったようです。

四季
恋愛
継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……。

処理中です...