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地獄VS悪魔
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土曜日の夜。
いつものように、亜紀ちゃんと梅酒会をした。
響子と六花は、昼過ぎに帰っていた。
「亜紀ちゃん、お疲れ」
「タカさんもお疲れ様でした」
梅酒のグラスを乾杯した。
「しかし、何事もなく終わって良かったな」
「そうですね。響子ちゃんも思ったよりも落ち込んでないようで」
両親と久しぶりに会えた。
その反動で、響子が別れを一層悲しむだろうと考えていた。
「響子は強くなったな。甘えているようで、あいつはちゃんと自分の強さを養っていた」
「本当に」
響子は毎日独りの夜を過ごしている。
周りに人はいるが、家族ではない。
響子に優しくとも、家族のそれではない。
「響子ちゃんをうちに引き取ることはできませんか?」
亜紀ちゃんが言った。
「難しいな。いつもの体調ならば問題はないけど、何かあった時に対応できない。ここにMRIを置いたりICUを作るわけにはいかないからな」
「そうですか」
「まあ、しばらくすれば、響子ももう少し体力がつく。成長と共にな。でも、それは数年以上先だ。そうなっても、ある程度の対処が可能な設備はいるな」
「カワイソウに」
「そう言うな。前にも言ったけど、これは響子の運命だ。自分の運命を受け入れてやっていくしかないさ」
「そうですね!」
俺は話題を変えた。
「ちょっと亜紀ちゃんに相談があるんだけど」
「はい、なんですか?」
切り出したはいいが、ちょっと言いよどむ。
「それがなー。亜紀ちゃんもあの地獄の宴会を知ってるじゃない」
「ああ、一江さんとかの」
「うん。4月にもやったそうなんだけど、花見でヤクザ相手に喧嘩したらしいんだよ」
「まあ、通常運転と言いますか」
俺たちはちょっと笑った。
「そうだな。本当にどうなってんのか、まともに終われねぇというなぁ。一江のブサイクは置いといて、問題は花岡さんだ」
「はい」
栞大好きっ子の亜紀ちゃんも、流石に否定できない。
「それで、数日前に一江から言われたんだけど、ルーとハーを貸してほしいって」
「どういうことですか?」
「要は、花岡さんに対抗できる抑止力だよ。亜紀ちゃんでもできる話だけど、亜紀ちゃんはつい花岡さんの味方をしちゃうかもしれないってなぁ」
「ああ、なるほど」
「もちろん、酒は飲まない。食事会だな。たこ焼きを考えてるらしいぞ」
「タコパってやつですね!」
「うん。安くて量がこなせるからな。うちの肉大会とは違って、一般庶民でも可能だ」
「そんな、みなさん結構お給料はいいでしょうに」
「あのなぁ。亜紀ちゃんは食糧大臣だから分かってるはずだけど、一体うちの毎月の食費って幾らよ?」
「あ、あの、それは」
「山中が慎ましい生活をしてたのがよく分かるよ」
「それは言わないでー!」
俺は笑って、「悪い」と言った。
亜紀ちゃんたちが大食いになったのは、俺の責任だ。
「でも、俺の給料、役員報酬の何割かが確実に喰われる。まあ、資産運用の金があるから全然余裕だけどな。実際毎年資産は増えてる。まあ、ここんとこ別な理由で減ってるけどなぁ」
「フェラーリ、すいません」
俺たちは笑った。
「それだけじゃなく、宇留間の件では2億だ。俺の自業自得だからしょうがねぇが、あいつだけは絶対許さねぇ」
「アルバイトします」
俺は亜紀ちゃんの頭に軽くチョップを入れる。
「お前らは俺を喰い尽くせばいいんだよ。そのために引き取ったんだからな!」
「タカさん……」
ちょっと小腹が減ったので、冷蔵庫を二人で漁った。
冷凍のシウマイとたこ焼きが出てきた。
手早く解凍して温める。
「たこ焼きって、誰が買ったんだ?」
「ルーとハーだと思います。時々おやつに食べてますから」
「おい、あいつらの食糧に手を付けて大丈夫かよ?」
「明日にでも買っておきますよ」
亜紀ちゃんが笑って、そう言った。
家長は俺だからな、と二人で笑った。
「でも、タカさん。私、ちょっとアルバイトもしてみたいんですけど」
「やめておけよ。生活が苦しいならともかく、アルバイトなんてしなくてもいいものだからな」
「社会経験とか」
「そんなもんは無いよ。社会経験は、社会に出てからしか出来ねぇ。学生のアルバイトなんて、所詮は遊びだよ。だからほとんどは、遊ぶ金欲しさでみんなやってるだろ?」
「まあ、そうかもしれません」
「社会のシステムに組み込まれるのはそうだけど、生活を支える仕事でなければ、遊びなんだ。まあ遊びが悪いわけじゃないけど、もっとやるべきことは他にちゃんとある」
「そうですね」
「世の中には、アルバイトで生活している人間もいる。俺は嫌いだけど、生活のために働くのなら、それでいいんだ」
「でもタカさんは嫌いなんですね」
「そうだな。俺は社会人というのは、ちゃんと責任を負うべきだと考えているからな」
「どこにも就職できないでアルバイトをしている人もいるのでは?」
「それはその人間の言い分だ。俺はどこでも選り好みしなければ、正社員として就職できると考えているからな」
「ブラック企業でも」
「そうだ。ブラック企業に入ったって、そこで嫌なら自分で変えて行けばいいだけなんだよ」
「それは難しいのではないかと」
「だからいつも言ってるじゃない。ダメだと思えば本当にダメになるんだって。俺は一生懸命に働けば、何とでもなると思っているからな」
「そうでした!」
「それに、仕事で死ぬなんて最高じゃないか。結局、楽して金だけ欲しいって連中が多いだけなんだよ」
「なるほど」
二人でたこ焼きを食べる。
意外に美味しい。
「あいつら、ちゃんと舌が肥えてやがるな」
「許しがたいですね!」
「ところで話を戻すけど、亜紀ちゃんは双子が参加するのをどう思う?」
「そうですねぇ。あの子たちなら、どこに放り出しても大丈夫な気がしますが」
「ああ、南極に置いてきても大丈夫そうだよな」
「タロとジロですね! ペンギン食べて生き残ると思います」
また二人で笑った。
「砂漠だとどうよ?」
「サソリとかで食いつないで、ラクダの商隊を襲いそうですね」
「それでちゃんと帰って来るだろうなぁ」
「月だとどうでしょうか」
「かぐや姫でも喰うんじゃねぇか?」
大笑いした。
「じゃあ、安心か!」
「そうですね!」
俺たちは、双子の防御力、生存能力にばかり気を取られていた。
悪魔的な性格と攻撃力を忘れていた。
いつものように、亜紀ちゃんと梅酒会をした。
響子と六花は、昼過ぎに帰っていた。
「亜紀ちゃん、お疲れ」
「タカさんもお疲れ様でした」
梅酒のグラスを乾杯した。
「しかし、何事もなく終わって良かったな」
「そうですね。響子ちゃんも思ったよりも落ち込んでないようで」
両親と久しぶりに会えた。
その反動で、響子が別れを一層悲しむだろうと考えていた。
「響子は強くなったな。甘えているようで、あいつはちゃんと自分の強さを養っていた」
「本当に」
響子は毎日独りの夜を過ごしている。
周りに人はいるが、家族ではない。
響子に優しくとも、家族のそれではない。
「響子ちゃんをうちに引き取ることはできませんか?」
亜紀ちゃんが言った。
「難しいな。いつもの体調ならば問題はないけど、何かあった時に対応できない。ここにMRIを置いたりICUを作るわけにはいかないからな」
「そうですか」
「まあ、しばらくすれば、響子ももう少し体力がつく。成長と共にな。でも、それは数年以上先だ。そうなっても、ある程度の対処が可能な設備はいるな」
「カワイソウに」
「そう言うな。前にも言ったけど、これは響子の運命だ。自分の運命を受け入れてやっていくしかないさ」
「そうですね!」
俺は話題を変えた。
「ちょっと亜紀ちゃんに相談があるんだけど」
「はい、なんですか?」
切り出したはいいが、ちょっと言いよどむ。
「それがなー。亜紀ちゃんもあの地獄の宴会を知ってるじゃない」
「ああ、一江さんとかの」
「うん。4月にもやったそうなんだけど、花見でヤクザ相手に喧嘩したらしいんだよ」
「まあ、通常運転と言いますか」
俺たちはちょっと笑った。
「そうだな。本当にどうなってんのか、まともに終われねぇというなぁ。一江のブサイクは置いといて、問題は花岡さんだ」
「はい」
栞大好きっ子の亜紀ちゃんも、流石に否定できない。
「それで、数日前に一江から言われたんだけど、ルーとハーを貸してほしいって」
「どういうことですか?」
「要は、花岡さんに対抗できる抑止力だよ。亜紀ちゃんでもできる話だけど、亜紀ちゃんはつい花岡さんの味方をしちゃうかもしれないってなぁ」
「ああ、なるほど」
「もちろん、酒は飲まない。食事会だな。たこ焼きを考えてるらしいぞ」
「タコパってやつですね!」
「うん。安くて量がこなせるからな。うちの肉大会とは違って、一般庶民でも可能だ」
「そんな、みなさん結構お給料はいいでしょうに」
「あのなぁ。亜紀ちゃんは食糧大臣だから分かってるはずだけど、一体うちの毎月の食費って幾らよ?」
「あ、あの、それは」
「山中が慎ましい生活をしてたのがよく分かるよ」
「それは言わないでー!」
俺は笑って、「悪い」と言った。
亜紀ちゃんたちが大食いになったのは、俺の責任だ。
「でも、俺の給料、役員報酬の何割かが確実に喰われる。まあ、資産運用の金があるから全然余裕だけどな。実際毎年資産は増えてる。まあ、ここんとこ別な理由で減ってるけどなぁ」
「フェラーリ、すいません」
俺たちは笑った。
「それだけじゃなく、宇留間の件では2億だ。俺の自業自得だからしょうがねぇが、あいつだけは絶対許さねぇ」
「アルバイトします」
俺は亜紀ちゃんの頭に軽くチョップを入れる。
「お前らは俺を喰い尽くせばいいんだよ。そのために引き取ったんだからな!」
「タカさん……」
ちょっと小腹が減ったので、冷蔵庫を二人で漁った。
冷凍のシウマイとたこ焼きが出てきた。
手早く解凍して温める。
「たこ焼きって、誰が買ったんだ?」
「ルーとハーだと思います。時々おやつに食べてますから」
「おい、あいつらの食糧に手を付けて大丈夫かよ?」
「明日にでも買っておきますよ」
亜紀ちゃんが笑って、そう言った。
家長は俺だからな、と二人で笑った。
「でも、タカさん。私、ちょっとアルバイトもしてみたいんですけど」
「やめておけよ。生活が苦しいならともかく、アルバイトなんてしなくてもいいものだからな」
「社会経験とか」
「そんなもんは無いよ。社会経験は、社会に出てからしか出来ねぇ。学生のアルバイトなんて、所詮は遊びだよ。だからほとんどは、遊ぶ金欲しさでみんなやってるだろ?」
「まあ、そうかもしれません」
「社会のシステムに組み込まれるのはそうだけど、生活を支える仕事でなければ、遊びなんだ。まあ遊びが悪いわけじゃないけど、もっとやるべきことは他にちゃんとある」
「そうですね」
「世の中には、アルバイトで生活している人間もいる。俺は嫌いだけど、生活のために働くのなら、それでいいんだ」
「でもタカさんは嫌いなんですね」
「そうだな。俺は社会人というのは、ちゃんと責任を負うべきだと考えているからな」
「どこにも就職できないでアルバイトをしている人もいるのでは?」
「それはその人間の言い分だ。俺はどこでも選り好みしなければ、正社員として就職できると考えているからな」
「ブラック企業でも」
「そうだ。ブラック企業に入ったって、そこで嫌なら自分で変えて行けばいいだけなんだよ」
「それは難しいのではないかと」
「だからいつも言ってるじゃない。ダメだと思えば本当にダメになるんだって。俺は一生懸命に働けば、何とでもなると思っているからな」
「そうでした!」
「それに、仕事で死ぬなんて最高じゃないか。結局、楽して金だけ欲しいって連中が多いだけなんだよ」
「なるほど」
二人でたこ焼きを食べる。
意外に美味しい。
「あいつら、ちゃんと舌が肥えてやがるな」
「許しがたいですね!」
「ところで話を戻すけど、亜紀ちゃんは双子が参加するのをどう思う?」
「そうですねぇ。あの子たちなら、どこに放り出しても大丈夫な気がしますが」
「ああ、南極に置いてきても大丈夫そうだよな」
「タロとジロですね! ペンギン食べて生き残ると思います」
また二人で笑った。
「砂漠だとどうよ?」
「サソリとかで食いつないで、ラクダの商隊を襲いそうですね」
「それでちゃんと帰って来るだろうなぁ」
「月だとどうでしょうか」
「かぐや姫でも喰うんじゃねぇか?」
大笑いした。
「じゃあ、安心か!」
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俺たちは、双子の防御力、生存能力にばかり気を取られていた。
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