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虎と龍 Ⅹ
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翌朝、俺の両腕は柳と亜紀ちゃんに抱きしめられていた。
しっかりした肉感と、ほんのりした肉感に困惑する。
俺は声を掛けるが、二人とも起きない。
腕を動かせばいいのだが、女子高生と女子中学生のオッパイを揺すって起こすのはまずいだろう。
ドアが開いた。
双子が顔を出してくる。
「あ、ハー。王様がいるよ」
「ほんとだ。イヤラシイ王様がいるよ」
「お前ら! 二人を起こせ!」
「これはオチンチンに花岡流を使ってもいいパターンだよね」
「うん。「絶花」はもう済ませたから」
背筋が寒くなる。
「「オチンチンはやめなさい!」」
柳と亜紀ちゃんが飛び起きて言った。
起きてたのかよ。
「柳さん、亜紀ちゃん、おはよー!」
「おはよー」
「二人とも、おはよー」
「てめぇら」
「おはようございます」
「タカさん、おはようございます」
俺はまた二人に腕を抱きしめられて言われた。
「ああ、おはよう」
だから不味いって。
朝食は塩鮭の焼き物とレタスとコーンの野菜サラダ。それに日曜日なので御堂家の卵だ。一人二個まで。
俺はあの日以来、卵は遠慮している。
「あれ、石神さんは卵を食べないんですか?」
柳に言われた。
「ああ、反省しているからな」
「亜紀ちゃん、やっぱり!」
「そう思いますよね!」
何がだよ。
朝食を終え、柳の支度を待って、俺は東京駅まで送っていく。
子どもたちは、絶対にまた来てと別れを惜しむ。
特に皇紀は握手をされると、涙を流した。
こいつ、惚れたか?
車で東京駅まですぐだ。
俺は柳に聞いた。
「どうだ、柳。楽しんでもらえたか?」
「はい、たっぷりと!」
柳は東京の景色を焼きつけようとしていたのか、窓の外をずっと見ている。
「皇紀はお前のことを好きになったらしいぞ?」
「まあ、皇紀くんが私のところまで昇ってくるのは自由ですから」
「皇紀はドイツ語ができるぞ?」
「……」
柳が俺を睨む。
駅の駐車場に車を入れ、俺は新幹線のホームまで柳を送る。
柳は構内で土産を買った。俺が全部出してやる。
大きな荷物になった。
ホームで、新幹線を待った。
「柳、これは俺からの土産だ」
俺は小さな手提げを柳に渡した。
「え、何ですか?」
柳は手提げから本を取り出した。
「昨日話した高橋教授の本だよ」
「え、それって!」
柳は慌てて本を開く。
最初の見返しに、署名がある。
「ほんとうだ!」
柳はそれに魅入った。
「でも、これって大事な本じゃないんですか?」
「大事なものだからお前に持っていてもらいたいんだよ」
柳の目から突然、大粒の涙が毀れる。
俺の胸に顔を埋めた。
「おい、安っぽいドラマじゃねぇぞ」
「だって……」
新幹線が来る。
「じゃあな。また遊びに来いよ」
「はい、必ず」
「みなさんにも宜しくな」
「はい」
柳はまだ泣いている。
「顔を拭け、未来の嫁かもしれない奴!」
柳は泣きながら笑顔を作る。
「はい!」
柳は乗り込み、デッキで俺に手を振った。
俺は両手を顔の脇に置き、指を開いてウネウネさせてやる。
柳が笑った。
新幹線は柳を乗せ、走り去った。
あいつはまた、泣いているのだろう。
しっかりした肉感と、ほんのりした肉感に困惑する。
俺は声を掛けるが、二人とも起きない。
腕を動かせばいいのだが、女子高生と女子中学生のオッパイを揺すって起こすのはまずいだろう。
ドアが開いた。
双子が顔を出してくる。
「あ、ハー。王様がいるよ」
「ほんとだ。イヤラシイ王様がいるよ」
「お前ら! 二人を起こせ!」
「これはオチンチンに花岡流を使ってもいいパターンだよね」
「うん。「絶花」はもう済ませたから」
背筋が寒くなる。
「「オチンチンはやめなさい!」」
柳と亜紀ちゃんが飛び起きて言った。
起きてたのかよ。
「柳さん、亜紀ちゃん、おはよー!」
「おはよー」
「二人とも、おはよー」
「てめぇら」
「おはようございます」
「タカさん、おはようございます」
俺はまた二人に腕を抱きしめられて言われた。
「ああ、おはよう」
だから不味いって。
朝食は塩鮭の焼き物とレタスとコーンの野菜サラダ。それに日曜日なので御堂家の卵だ。一人二個まで。
俺はあの日以来、卵は遠慮している。
「あれ、石神さんは卵を食べないんですか?」
柳に言われた。
「ああ、反省しているからな」
「亜紀ちゃん、やっぱり!」
「そう思いますよね!」
何がだよ。
朝食を終え、柳の支度を待って、俺は東京駅まで送っていく。
子どもたちは、絶対にまた来てと別れを惜しむ。
特に皇紀は握手をされると、涙を流した。
こいつ、惚れたか?
車で東京駅まですぐだ。
俺は柳に聞いた。
「どうだ、柳。楽しんでもらえたか?」
「はい、たっぷりと!」
柳は東京の景色を焼きつけようとしていたのか、窓の外をずっと見ている。
「皇紀はお前のことを好きになったらしいぞ?」
「まあ、皇紀くんが私のところまで昇ってくるのは自由ですから」
「皇紀はドイツ語ができるぞ?」
「……」
柳が俺を睨む。
駅の駐車場に車を入れ、俺は新幹線のホームまで柳を送る。
柳は構内で土産を買った。俺が全部出してやる。
大きな荷物になった。
ホームで、新幹線を待った。
「柳、これは俺からの土産だ」
俺は小さな手提げを柳に渡した。
「え、何ですか?」
柳は手提げから本を取り出した。
「昨日話した高橋教授の本だよ」
「え、それって!」
柳は慌てて本を開く。
最初の見返しに、署名がある。
「ほんとうだ!」
柳はそれに魅入った。
「でも、これって大事な本じゃないんですか?」
「大事なものだからお前に持っていてもらいたいんだよ」
柳の目から突然、大粒の涙が毀れる。
俺の胸に顔を埋めた。
「おい、安っぽいドラマじゃねぇぞ」
「だって……」
新幹線が来る。
「じゃあな。また遊びに来いよ」
「はい、必ず」
「みなさんにも宜しくな」
「はい」
柳はまだ泣いている。
「顔を拭け、未来の嫁かもしれない奴!」
柳は泣きながら笑顔を作る。
「はい!」
柳は乗り込み、デッキで俺に手を振った。
俺は両手を顔の脇に置き、指を開いてウネウネさせてやる。
柳が笑った。
新幹線は柳を乗せ、走り去った。
あいつはまた、泣いているのだろう。
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