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それ隠れたるものの顕れなく、 秘めたるものの知らぬはなく、明らかにならぬはなし:ルカ伝
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月曜日。
俺は花岡斬に電話をした。
嫌で嫌でしょうがないが、こればかりはどうしようもない。
高麗人参のことだ。
「おう、久しぶりだな!」
じじぃが明るい声で出たので、頭に来た。
ヒュー、ヒュー、コフッとかってなってねぇのか。
「おい、じじぃ。高麗人参のことを教えろ」
「お前、口の利き方を教わってないのか!」
「うるせぇ! こっちは死に掛けたんだ!」
じじぃが大笑いした。
「お前がかよ、ハッハッハ!」
俺は無視して、栞のときの状態、そして六花とのときの状態、そして今回の緑子との件、を話した。
そして食事を合間に摂ると意識が明晰になってくること、更に女性の膣分泌液の異常など、気付いたことをすべて伝える。
合間にじじぃがまた大笑いする。
「あれはどういうものなんだ?」
「お前、教えると思うか?」
「このクソジジィ!」
またひとしきりじじぃが笑ってから言った。
「お前、栞に子種を寄越せ。交換条件じゃ」
「じゃあ、俺は金輪際栞と寝ない。交換条件じゃ!」
俺は一歩も退かない。
俺が今後使わなければ、何の問題もないからだ。
このときは、そう思っていた。
じじぃはしばしの沈黙の後で、譲歩した。
「分かった。全ては話せんが、少しは教えてやろう」
「まず、あれは高麗人参ではない」
「正確に言えば、高麗人参の特殊な品種を、花岡独自にまた品種改良したものだ」
そうだろうな。
「そして、加工の際に、特殊なものを入れる」
「麻薬か」
「!」
じじぃは沈黙したが、驚いていることが分かる。
「ふん、教えられんわ」
じじぃがその後話したこと。
あれは性中枢に特化した作用を持つこと。
男性は精嚢の機能がフル回転し、何度でも射精できるようになること。
女性は膣分泌液(じじぃは「マ○汁」と言った)を異常に出し、男性の行為に支障が無いようになること。
食事を摂れば理性を喪うことなく、行為が続けられること。
効果は個人差はあるが、大体三日であること。
異性であれば、見境無く発情すること。
以上の内容を、思い切り下品な表現でじじぃは言った。
まだまだ、隠していることがありそうだ。
「じゃあ、昔の殿様たちには、ずいぶんと重宝しただろうな」
「ふん、何も答えん1
花岡家の収入源の一つであるであろうことが分かった。
「何が入っているんだ?」
「答えん」
「成分分析にかけるぞ」
「やってみろ。お前らなどには見つけられんわ」
「これだけは答えろ。後遺症などはあるのか?」
「バカか。あったら栞に使わせん」
「商売にもならないよな」
「ふん」
「あれを使って死んだ奴は?」
「いるさ。食事抜きで続ければ、当然消耗して死ぬ。最近もどこかのバカが死に掛けたそうじゃぞ」
じじぃがまた大笑いした。
「お前は、栞の子種のために、あれを寄越したのか?」
「ようやくそこか。ずい分と鈍いのう」
くそじじぃ!
「まあ、それはいずれ分かる」
「また遊びに来い。そうすればもう少し話してやろう」
俺は電話を切った。
スマホでも、「叩き切る」ができるようにして欲しい。
さて、じじぃの話を整理しようか。
あいつは、俺が感じたことへの答え合わせをしてくれた。
そして、それ以上のことはあまり教えなかった。
しかし、じじぃの話から、幾つか推測できることがあった。
一つは、あれが高額の値段で売られているだろうこと。
もう一つは、何故俺に使ったか、からだ。
確かに、栞との交渉の数は多くなるだろう。
でも、俺が避妊ピルを使えばすべて無駄になる。
それと、六花は別として、俺に渡したということは、他の女との交渉にも使われることが分かっていたはずだ。
高価な人参を、土産感覚で渡すだろうか。
じじぃは後遺症はないと言った。
肉体的にダメージを負わない、ということでは確かにそうだろう。
俺は、ある恐ろしい想像をしている。
あの人参は、花岡家に優勢に働くものなのではないのか。
上手く言葉にはならないが、花岡家に囲い込むためのもの。
もっと言えば、俺を「花岡」にするためのもの。
じじぃは、外に30人以上の子どもがいると言った。
花岡の技は教えていないが、花岡家のために働いていることを仄めかしていた。
あの人参は、花岡家に繋げる何らかの変容、誘導をもたらすのではないのか?
ロックハート家は強大な表の力で俺を囲い込もうとしている。
そして花岡家は怪しい裏の力で俺を囲い込もうとしているのではないのか。
まったく、どうかしてるぜ。
俺は花岡斬に電話をした。
嫌で嫌でしょうがないが、こればかりはどうしようもない。
高麗人参のことだ。
「おう、久しぶりだな!」
じじぃが明るい声で出たので、頭に来た。
ヒュー、ヒュー、コフッとかってなってねぇのか。
「おい、じじぃ。高麗人参のことを教えろ」
「お前、口の利き方を教わってないのか!」
「うるせぇ! こっちは死に掛けたんだ!」
じじぃが大笑いした。
「お前がかよ、ハッハッハ!」
俺は無視して、栞のときの状態、そして六花とのときの状態、そして今回の緑子との件、を話した。
そして食事を合間に摂ると意識が明晰になってくること、更に女性の膣分泌液の異常など、気付いたことをすべて伝える。
合間にじじぃがまた大笑いする。
「あれはどういうものなんだ?」
「お前、教えると思うか?」
「このクソジジィ!」
またひとしきりじじぃが笑ってから言った。
「お前、栞に子種を寄越せ。交換条件じゃ」
「じゃあ、俺は金輪際栞と寝ない。交換条件じゃ!」
俺は一歩も退かない。
俺が今後使わなければ、何の問題もないからだ。
このときは、そう思っていた。
じじぃはしばしの沈黙の後で、譲歩した。
「分かった。全ては話せんが、少しは教えてやろう」
「まず、あれは高麗人参ではない」
「正確に言えば、高麗人参の特殊な品種を、花岡独自にまた品種改良したものだ」
そうだろうな。
「そして、加工の際に、特殊なものを入れる」
「麻薬か」
「!」
じじぃは沈黙したが、驚いていることが分かる。
「ふん、教えられんわ」
じじぃがその後話したこと。
あれは性中枢に特化した作用を持つこと。
男性は精嚢の機能がフル回転し、何度でも射精できるようになること。
女性は膣分泌液(じじぃは「マ○汁」と言った)を異常に出し、男性の行為に支障が無いようになること。
食事を摂れば理性を喪うことなく、行為が続けられること。
効果は個人差はあるが、大体三日であること。
異性であれば、見境無く発情すること。
以上の内容を、思い切り下品な表現でじじぃは言った。
まだまだ、隠していることがありそうだ。
「じゃあ、昔の殿様たちには、ずいぶんと重宝しただろうな」
「ふん、何も答えん1
花岡家の収入源の一つであるであろうことが分かった。
「何が入っているんだ?」
「答えん」
「成分分析にかけるぞ」
「やってみろ。お前らなどには見つけられんわ」
「これだけは答えろ。後遺症などはあるのか?」
「バカか。あったら栞に使わせん」
「商売にもならないよな」
「ふん」
「あれを使って死んだ奴は?」
「いるさ。食事抜きで続ければ、当然消耗して死ぬ。最近もどこかのバカが死に掛けたそうじゃぞ」
じじぃがまた大笑いした。
「お前は、栞の子種のために、あれを寄越したのか?」
「ようやくそこか。ずい分と鈍いのう」
くそじじぃ!
「まあ、それはいずれ分かる」
「また遊びに来い。そうすればもう少し話してやろう」
俺は電話を切った。
スマホでも、「叩き切る」ができるようにして欲しい。
さて、じじぃの話を整理しようか。
あいつは、俺が感じたことへの答え合わせをしてくれた。
そして、それ以上のことはあまり教えなかった。
しかし、じじぃの話から、幾つか推測できることがあった。
一つは、あれが高額の値段で売られているだろうこと。
もう一つは、何故俺に使ったか、からだ。
確かに、栞との交渉の数は多くなるだろう。
でも、俺が避妊ピルを使えばすべて無駄になる。
それと、六花は別として、俺に渡したということは、他の女との交渉にも使われることが分かっていたはずだ。
高価な人参を、土産感覚で渡すだろうか。
じじぃは後遺症はないと言った。
肉体的にダメージを負わない、ということでは確かにそうだろう。
俺は、ある恐ろしい想像をしている。
あの人参は、花岡家に優勢に働くものなのではないのか。
上手く言葉にはならないが、花岡家に囲い込むためのもの。
もっと言えば、俺を「花岡」にするためのもの。
じじぃは、外に30人以上の子どもがいると言った。
花岡の技は教えていないが、花岡家のために働いていることを仄めかしていた。
あの人参は、花岡家に繋げる何らかの変容、誘導をもたらすのではないのか?
ロックハート家は強大な表の力で俺を囲い込もうとしている。
そして花岡家は怪しい裏の力で俺を囲い込もうとしているのではないのか。
まったく、どうかしてるぜ。
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