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Vergeltungswaffe 1
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子どもたちが夏休みに入った。
7月中に、宿題、課題をすべて終わらせる、という俺の指令の下、ひたすら取り組んでいる最中である。
とはいえ、普段から大量のノルマをこなしているため、まったく問題はない。
三日も過ぎれば、ほぼ宿題程度の量は終わっていた。
但し、問題が一つあった。
小学生の三人に出された「自由課題」だ。
要は、何かを観察したり、研究(小学生が何を?)したり、または何かを創作する、というものである。
簡単にお茶を濁すことも出来たが、どうせなら、と俺は考えた。
俺は皇紀に「ロケット」を製作させ、ルーにはブロンズ像の製作、ハーには因子分析をやらせた。
ロケットは、基本的には「ロケット花火」だ。
30ミリ直径のアルミパイプにロケット花火の火薬を詰めていく。
それが基本だ。
パイプには安定翼が必要だが、それは俺がアルミ板を切ってやり、皇紀がヤスリで端を削って尖らせたものを、強力ボンドで貼り付けた。
火薬を詰めるのも皇紀がやることになるが、俺はそこにこっそりと塩素酸アンモニウムとアルミ板を削った際の粉末を混ぜさせた。
ルーのブロンズ製作は、要は粘土細工だ。
粘土で型を作り、あとはブロンズ鋳造の専門家に任せるだけ。
型は、俺の持っている女性のヴァンパイアの立像を参考にさせ、それにジャコメッティ的要素を込めるように指示。
俺が簡単に素描を描いてやると、ルーはすぐに飲み込んだ。
ハーにはまず因子分析の理解から初めた。
行列の概念、多変量分析の基礎を教えたが、みるみる吸収していった。
実際の因子分析は今はパソコンでできる。
データは病院の仲間に協力してもらい、20項目ほどの簡単な質問に答えてもらい、不安因子の抽出を目指していく。
本来はもっと多くの質問項目が必要だが、まあ小学生だからいいだろう。
双子については、別に問題はなさそうだった。
皇紀のロケットが課題になりそうだった。
ルーは数日で粘土像を完成させる。
俺が思った以上に見事な出来だった。
両腕を少し広げて上に伸ばす女吸血鬼。
背中に羽を広げ、口には小さな鋭い牙。
苦労したのは顔の造形だが、まあそこは俺がちょっと手伝った。
元の像に比べ、ルーの像は細く長い。
特に両手は身長ほどの長さになり、それが針金をたばねたような太さになっている。
全体で50センチほどもある。
俺は早速鋳造の店に頼み、二週間ほどで納品させることとなった。
ハーはひたすらデータの打ち込みだったが、これも数日で完成した。
あとはPCが出した結果に対しての考察だが、俺が手伝えば何の問題も無かった。
一応、心理学の論文程度のものが出来た。
さて、皇紀だ。
実演は一度きりなので、俺は動画で撮影することにする。
機体の製作は数日で終わり、いよいよ実験。
丁度前日の金曜日に栞が電話してきて、俺は皇紀の実験の話をした。
「私も見に行っていいよね!」
栞は絶対に見せて欲しいと言う。
俺も特に断る理由もないので、快諾した。
場所は、子どもたちが通っている小学校の校庭。
一応、許可は取っている。
担任の先生に話し、打ち上げ花火的なものをする、と伝えてある。
栞がうちに来て、みんなでハマーに乗って出発した。
亜紀ちゃんが特に楽しみにしていて、昼食を校庭で食べましょう、とおにぎりを握り、おかずも全部亜紀ちゃんが用意した。
自分は受験生なので、大した宿題がなく、楽しそうに課題をこなす弟たちを羨ましがっていたのだ。
校庭で皇紀は燃料を本体に詰めていく。
アルミ粉末は事前に混ぜていたが、俺が用意した塩素酸アンモニウムは現場で混合する。
最後にキャンプで使用する着火剤を詰めて、コルクを薄く円形に切ったものでフタをした。
ロケットを発射台、まあ角材で作ったただの四角の箱だが、それに乗せ、下にアルコールランプを差し込んだ。
アルコールランプへの点火は俺がやる。
三脚で全体を撮影し、亜紀ちゃんとルーがカメラをそれぞれ構える。
二人には発射したロケットを追うように言ってある。
俺が火を入れた。
アルコールランプの炎は、直上にあるコルクを燃やし、10秒後に着火剤に点火。
そしてその奥にある火薬に火が移った瞬間、ロケットが飛び上がった。
見る見る上空へ消えていく。
大成功だと思った。
見えなくなったロケット。
栞と亜紀ちゃんは抱き合って喜び、双子は皇紀に抱きついた。
爆発音がした。
ロケットが帰ってくる。
どうも燃料にムラがあり、180度向きを変えたようだ。
まずい。
まだ燃料が残っていれば、爆発するかもしれない。
俺は子どもたちを非難させようとした。
栞がロケットが視認できるようになったとき、叫んだ。
「空震花!」
手刀をロケットに向けて30センチほど動かした。
ロケットが20メートルほど上空で爆発した。
50メートル先で落下した破片を見つけた。
アルミの本体が切り裂かれ、溢れた燃料が一気に燃えたようだった。
俺は担任の先生に編集した映像を見せた。
着火から勢いよく飛び立つロケット。
抱き合って喜ぶ子どもたち。
そして爆発音。
空を指差して騒ぐ子どもたち。
美しい女性の謎の動作。
最後に真っ黒になって引き裂かれたロケットの残骸。
それを前に皇紀を中心に肩を組み笑顔で並ぶ全員。
「石神さん」
「はい」
「なんかいい話っぽくなってますけどね」
「はい」
「これ、とんでもない案件ですからね」
「はい、どうもすいません」
「あの」
「なんでしょうか?」
「これ、課題達成ということで、映像を流すっていうのは」
「本気で言ってますか?」
「いえ、すいませんでした」
映像を流すのは断られたが、一応課題達成という認可は得られた。
7月中に、宿題、課題をすべて終わらせる、という俺の指令の下、ひたすら取り組んでいる最中である。
とはいえ、普段から大量のノルマをこなしているため、まったく問題はない。
三日も過ぎれば、ほぼ宿題程度の量は終わっていた。
但し、問題が一つあった。
小学生の三人に出された「自由課題」だ。
要は、何かを観察したり、研究(小学生が何を?)したり、または何かを創作する、というものである。
簡単にお茶を濁すことも出来たが、どうせなら、と俺は考えた。
俺は皇紀に「ロケット」を製作させ、ルーにはブロンズ像の製作、ハーには因子分析をやらせた。
ロケットは、基本的には「ロケット花火」だ。
30ミリ直径のアルミパイプにロケット花火の火薬を詰めていく。
それが基本だ。
パイプには安定翼が必要だが、それは俺がアルミ板を切ってやり、皇紀がヤスリで端を削って尖らせたものを、強力ボンドで貼り付けた。
火薬を詰めるのも皇紀がやることになるが、俺はそこにこっそりと塩素酸アンモニウムとアルミ板を削った際の粉末を混ぜさせた。
ルーのブロンズ製作は、要は粘土細工だ。
粘土で型を作り、あとはブロンズ鋳造の専門家に任せるだけ。
型は、俺の持っている女性のヴァンパイアの立像を参考にさせ、それにジャコメッティ的要素を込めるように指示。
俺が簡単に素描を描いてやると、ルーはすぐに飲み込んだ。
ハーにはまず因子分析の理解から初めた。
行列の概念、多変量分析の基礎を教えたが、みるみる吸収していった。
実際の因子分析は今はパソコンでできる。
データは病院の仲間に協力してもらい、20項目ほどの簡単な質問に答えてもらい、不安因子の抽出を目指していく。
本来はもっと多くの質問項目が必要だが、まあ小学生だからいいだろう。
双子については、別に問題はなさそうだった。
皇紀のロケットが課題になりそうだった。
ルーは数日で粘土像を完成させる。
俺が思った以上に見事な出来だった。
両腕を少し広げて上に伸ばす女吸血鬼。
背中に羽を広げ、口には小さな鋭い牙。
苦労したのは顔の造形だが、まあそこは俺がちょっと手伝った。
元の像に比べ、ルーの像は細く長い。
特に両手は身長ほどの長さになり、それが針金をたばねたような太さになっている。
全体で50センチほどもある。
俺は早速鋳造の店に頼み、二週間ほどで納品させることとなった。
ハーはひたすらデータの打ち込みだったが、これも数日で完成した。
あとはPCが出した結果に対しての考察だが、俺が手伝えば何の問題も無かった。
一応、心理学の論文程度のものが出来た。
さて、皇紀だ。
実演は一度きりなので、俺は動画で撮影することにする。
機体の製作は数日で終わり、いよいよ実験。
丁度前日の金曜日に栞が電話してきて、俺は皇紀の実験の話をした。
「私も見に行っていいよね!」
栞は絶対に見せて欲しいと言う。
俺も特に断る理由もないので、快諾した。
場所は、子どもたちが通っている小学校の校庭。
一応、許可は取っている。
担任の先生に話し、打ち上げ花火的なものをする、と伝えてある。
栞がうちに来て、みんなでハマーに乗って出発した。
亜紀ちゃんが特に楽しみにしていて、昼食を校庭で食べましょう、とおにぎりを握り、おかずも全部亜紀ちゃんが用意した。
自分は受験生なので、大した宿題がなく、楽しそうに課題をこなす弟たちを羨ましがっていたのだ。
校庭で皇紀は燃料を本体に詰めていく。
アルミ粉末は事前に混ぜていたが、俺が用意した塩素酸アンモニウムは現場で混合する。
最後にキャンプで使用する着火剤を詰めて、コルクを薄く円形に切ったものでフタをした。
ロケットを発射台、まあ角材で作ったただの四角の箱だが、それに乗せ、下にアルコールランプを差し込んだ。
アルコールランプへの点火は俺がやる。
三脚で全体を撮影し、亜紀ちゃんとルーがカメラをそれぞれ構える。
二人には発射したロケットを追うように言ってある。
俺が火を入れた。
アルコールランプの炎は、直上にあるコルクを燃やし、10秒後に着火剤に点火。
そしてその奥にある火薬に火が移った瞬間、ロケットが飛び上がった。
見る見る上空へ消えていく。
大成功だと思った。
見えなくなったロケット。
栞と亜紀ちゃんは抱き合って喜び、双子は皇紀に抱きついた。
爆発音がした。
ロケットが帰ってくる。
どうも燃料にムラがあり、180度向きを変えたようだ。
まずい。
まだ燃料が残っていれば、爆発するかもしれない。
俺は子どもたちを非難させようとした。
栞がロケットが視認できるようになったとき、叫んだ。
「空震花!」
手刀をロケットに向けて30センチほど動かした。
ロケットが20メートルほど上空で爆発した。
50メートル先で落下した破片を見つけた。
アルミの本体が切り裂かれ、溢れた燃料が一気に燃えたようだった。
俺は担任の先生に編集した映像を見せた。
着火から勢いよく飛び立つロケット。
抱き合って喜ぶ子どもたち。
そして爆発音。
空を指差して騒ぐ子どもたち。
美しい女性の謎の動作。
最後に真っ黒になって引き裂かれたロケットの残骸。
それを前に皇紀を中心に肩を組み笑顔で並ぶ全員。
「石神さん」
「はい」
「なんかいい話っぽくなってますけどね」
「はい」
「これ、とんでもない案件ですからね」
「はい、どうもすいません」
「あの」
「なんでしょうか?」
「これ、課題達成ということで、映像を流すっていうのは」
「本気で言ってますか?」
「いえ、すいませんでした」
映像を流すのは断られたが、一応課題達成という認可は得られた。
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